8.3-22 セカンドコンタクト10
「……で、エクレリアの連中はいつ来るわけ?」
「それがのう……使者が来て宣戦布告は受けたようなのじゃが、オリージャ側もよく分かっておらぬようなのじゃ」
「ふーん……。それ実は、騙されてるだけなんじゃないの?」
「んー……それはどうかnうひゃん!……って、ベアトリクス!?お主、妾の尻尾に何をしておるのじゃ?!」びくぅ
「オリージャ特産の毛生え薬を塗っているのですわ?1週間も続ければ、フッサフサですわよ?」
「だ、脱毛して毛が無くなったわけではないのじゃ……」がっくり
と、王城での会議が終わった後で、宿屋の壁にユキの形をした穴が開いた部屋……の下の階にあった部屋へと戻ってきたテレサとベアトリクスに対し、ワルツはエクレリアについての事情を問いかけていた。
しかし、オリージャ側も詳細は分かっていなかったらしく、彼らも混乱していたようである。
「もしも、宣戦布告が嘘でなかったとして……いつ来るのかも分からない相手と、どうやって戦えばいいのよ……。ここ、ミッドエデンじゃないんだし……」
「ふむ……。妾たちとて、いつまでもこの町にいるわけにもいかぬからのう……」
「それに……コルテックスは、もういなくなったって話じゃない?」
「うむ。何やらエンデルシアに行ったらしいのじゃ?国王エンデルスの処遇が云々と言っておったが……それが一番の目的、というわけではないのじゃろうのう……」
「オリージャ国民の回収手続き、ってやつかしらね?」
と、コルテックスの話を思い出しながら、ワルツが呟いていると……その言葉に反応したらしく、
「あの……そのことなのですけれど、エンデルシアに我が国の民がいるのですの?」
ベアトリクスがそんな疑問を口にした。
彼女は、数時間前にコルテックスがここに来た時にも、今と似たような会話をしていた場面に同席していたはずだが……その時は、コルテックスとテレサが余りに似すぎていたことに気を取られていたためか、話を聞いていなかったようである。
その結果、今になって、事情を問いかけたわけだが……。
それに対し、テレサが返答しようとした。
「うむ。実はのう……」
しかし、彼女が話し出そうとした所で……
「……今はまだ詳しいことは言えないわ」
と口を挟むワルツ。
「準備が整ったら、そのときに説明するから、もう少し待っててもらえないかしら?」
どうやら彼女は、エンデルシアにいるオリージャ国民たちのことを、ベアトリクスに対して、まだ明かしたくなかったようである。
ただ、ワルツのその発言を聞いていたテレサには、その意図するところが分からなかったらしく、彼女はその話を聞いた後で、首を傾げてしまった。
隠すようなことは何もないはずなので、なぜ伏せておく必要があるのか、不思議に思えたのだろう。
すると、それを見たワルツは……ベアトリクスに分からない範囲で、テレサに対し、その理由について説明を始めた。
「いやさ?今、エンデルシアにいる彼らのことを説明しても、ただ混乱するだけじゃない?これから戦争しようっていうんだし、他に考えなきゃならないことがたくさんあるんだからさ?それにエンデルシアが……こちらの要求を素直に飲むとも限らないしね……」
「うむ……。確かにそうじゃのう……。というわけで、ベアよ?今の話は、今しばらく忘れて貰えぬかのう?コルの言葉ではないのじゃが……決して悪いようにはせぬからの」
それを聞いて、
「分かりましたわ……。私……テレサの事、信じていますから」
そう口にしながら、胸の前で拳を握り、深々と頷くベアトリクス。
なお、そんな彼女の行動を見ていたテレサが、一体どんな表情を浮かべていたのかについては……省略する。
その後、再び、
「で、エクレリアの対策の話……どうしようかしら?」
話題が最初の内容へと戻ってきた。
「やはりここは……グループを2つに分けるべきではなかろうかの?」
「つまり……半分はここで、いつやってくるかも分からないエクレリアへの対応のために残って、もう半分は、ボレアスに行って、ビクセンの街を取り戻す、ってわけね?」
「うむ。両方とも、ぷらいおりてぃーは最高レベルなのじゃ?優劣を付けるわけにはいかぬじゃろう」
「……感謝いたしますわ。テレサ……」
「いや、気にするでない、なのじゃ……(じゃが……一々、手を取るのは、どうにかならぬかの?)」
「じゃぁ、仮にグループを2つに分けるとして……どう分ける?両方とも、多分、エクレリア……っていうかアル○○ルが絡んでるから、それなりに面倒な話のはずよ?」
「ふむ……。まぁ、手っ取り早く、皆に問いかけてみてはどうかの?誰はどこに行きたいか、とのう?」
するとテレサのその言葉を聞いて、
「それだと……何となく、結果が分かるような気がするのよね……」
と、ワルツはそう口にしながら頭を抱えた。
どうやら彼女には、仲間に問いかけた結果、皆から返ってくるだろう返答が、ハッキリと分かっていたようである。
……良くも悪くも、自分が行くところに、皆も付いてくる、と。
しかしそんな時……彼女の脳裏に、何やら閃きが走ったようだ。
「あ、そうよ!騎士たちとアトラスをここに置いていけば良いんじゃないかしら?」
と、以前、壊滅したノースフォートレスで言ったことと、ほぼ同じ発言を口にするワルツ。
それから彼女は、その理由を口にした。
「だって、今回の主役は、エンデルシアにいる人たちと、コルテックスなわけでしょ?ということは、騎士たちがここに残っても、戦いに駆り出されることはない、ってことじゃない?まぁ、下働きを任せられるかもしれないけど……彼らなら問題ないでしょ。多分」
「それ……どうかのう……」
ワルツの話を聞いたテレサは、彼女の発言があまりにも投げやり過ぎて、思わず呆れてしまったようである。
もしも、オリージャ兵たちが作った戦線が崩壊して、この町が攻められることになったなら……次に戦わなくてはならないのは、町に残るミッドエデンの騎士たちなのだから。
とはいえ、話の内容のすべてが適当、というわけではなかったので、彼女はワルツの話に補足するような形で、続けてこう口にした。
まぁ、ワルツは、どこまでも適当だったようだが。
「そうじゃのう……。せめて、回復魔法を使える者が、オリージャ側にいても良いのではなかろうかのう?旗色が悪くとも、戦線が長く保持できれば、こちらも色々と対策の取りようがあるはずじゃからのう」
「いいわね、それ。確かに、ウチの騎士たちも、オリージャの兵士たちも、みんな脳筋で筋肉ダルマだし……」
「じゃがのう……。カタリナ殿は……ボレアス出身じゃから、ここには留まらぬのではなかろうかの?」
「えっ……じゃぁ、そうなると……ルシア?ちょっと、ルシアを一人にするのは……」
「…………そうじゃのう」
と、揃って、微妙な表情を浮かべるワルツとテレサ。
そんな彼女たちの脳裏では……ボレアスから戻ってきたら、更地かクレーターに変わっているオリージャ王国の国土の姿が、如実に浮かび上がってきていたようである。
「悪くない提案なんだけど……」
「うむ……難しいのう……」
それからも思い悩んで、誰か回復魔法を使える人間がいないかを考えるワルツとテレサ。
ベアトリクスもその会話を聞いていたが……しかし、彼女が知っている範囲で、大規模な回復魔法が使える者に心当たりは無かったらしく、2人と並んで、難しそうな表情を浮かべていたようである。
と、そんな時。
「あ、そういえばいたわ……」
不意にワルツが、にやりと笑みを浮かべながら、口を開いた。
「む?誰じゃ?」
「んー……多分、テレサが知らない人たち」
「えっ……」
「まぁ、これで、作戦(?)は安泰でしょ」
「そ、それなら良いのじゃが……」
と、妙に自身ありげなワルツの発言に、何となく嫌な予感がしなくもない様子のテレサ。
とはいえ、マイナスにはならないと思ったらしく……彼女はとりあえず、ワルツに任せることにしたようである。
なお。
彼女たちの話についていけなかったベアトリクスが、その場で何をしていたのかというと……仲睦まじそうな(?)テレサとワルツのやり取りを見て、猛烈に嫉妬していた……というわけではなく、
「…………」にっこり
ただ、静かに微笑みながら、彼女たちのやり取りを眺めていたようである。
例えるなら……まるで、自分に新しい姉妹が出来たかのように……。
こう……もう少し、キレのある話を書きたいのじゃ。
いや、メリハリ、というべきか……。
それともバランスかのう?
まぁ、とにかく、今のままの書き方では、妾自身が納得できぬのじゃ。
……とは言っても、前述の通り、まだ雲を掴むような感覚で、何が良くて何が悪いのか、ハッキリとは分かっておらぬのじゃがのう……。
あと2年くらい書き続ければ、少しは見えてくるのじゃろうか……。
というわけで、なのじゃ。
この話は、昨日書いた話なのじゃ。
……やろうと思えば、どうにかなるものじゃのう?
どうにか、日を跨ぐ前に書き終えられたのじゃ。
じゃからこそ思うのじゃ。
……余った時間を、もう少し有意義な修正に使えなかったのか、とのう……。
……うむ。
夜も遅くて、ほうじ茶ブーストしておらぬし、無理じゃの。
逆に言えば……お茶さえ飲めば……いや、なんでもないのじゃ。




