8.3-19 セカンドコンタクト7
サブタイトルの番号が違ったゆえ、修正。
「…………というわけで〜、金目のものは一切いらない……というか、むしろ払うので、この国の資源の開発をさせてください」
「「「…………?」」」
コルテックスとテレサが残った王城の会議室の中は、ワルツたちが去った後も、混乱の真っ只中にあった。
いま彼女たちは、協力の見返りについて話し合っていたわけだが……それがオリージャ側の者たちにとっては、理解できない内容だったようである。
より直接的に表現するなら……コルテックスが何を企んでいるのか分からない、というべきか。
尤も、ミッドエデン側の者たちにとっても、コルテックスが何を考えているのかは、往々にして分からないので、今日初めて会った者たちなら、余計に分からなくて当然なのだが。
「資源を開発させて欲しいというのは……一体どういうことだ?」
と問いかけたのは、戦争のための資金で私服を肥やしていた財務大臣である。
本来彼は、即刻、斬首刑も良いところのはずだが……そうすると、その場にいた者たちは、ほぼ全員死刑になり、オリージャ政府がなり立たなくなるので、かろうじて死罪を免れていたようである。
そんな彼の質問に対し、コルテックスは……
「詳しくは配布資料の54ページを御覧ください。……あ、間違えました〜。こちらのページは、汚職者とその内容のリストですね〜」
「「「なんっ?!」」」
「正しくは、1154ページを御覧ください」
と、さらっとジャブ(ストレート?)を与えた後で、理由について話し始めた。
「金、銀、宝石などなど〜……そのようなものは必要ありません。間に合ってますし、作ろうと思えば作れますからね〜」
「「「えっ……」」」
「私たちミッドエデンが欲しているのは、大量の鉄や銅、ボーキサイトに、石炭や石油、それに〜……大河を流れるマグマに含まれる卑金属や硫黄などです。……あ、一応、言っておきますが〜、私たちがそれを何にどうやって使うのかは、調べるだけ無駄ですよ〜?(調べたところで、向こう数百年間は、使いこなせないはずですからね〜)」
「「「…………」」」
コルテックスのその言葉に、頭を抱えながら考え込むオリージャの政府関係者たち。
彼女のその言葉は、裏を返せば、自国の領土の中に、自国の利益になりうるチャンスが眠っていることを示唆していて……そして、その場にいた誰しもが、そのことを感じ取っていたようである。
しかし、石炭や石油などのエネルギー資源や、ボーキサイトなどのアルミニウムの原料となる鉱石の……そもそもの存在や使い道について、彼らが知っているわけもなく……。
なぜミッドエデンがそれらを要求してくるのか、どんなに頭を悩ませても理解できなかったようだ。
「まぁまぁ〜、そう難しく考えないで下さい。採掘した分の費用はちゃんと払いますし、決してオリージャの悪いようにはしませんから〜」にっこり
「(コルの話を聞けば聞くほど、罠に誘っておるようにしか聞こえぬのじゃ……)」
と、オリージャ政府関係者たちに対して甘い言葉をかけるコルテックスの隣で、ポーカーフェイスを浮かべながらも、内心で呆れていた様子のテレサ。
そんな彼女が、これからのオリージャの未来について憂いでいると……
「……皆様?何を悩んでいるのですの?」
その場で難しそうな表情を浮かべていた政府高官たちに向かって、空いた席に座っていたベアトリクスが、不意にそんな言葉を口にした。
「これは私たちがどうこうできる問題ではなく、ミッドエデンからの半強制的な要求なのですわよ?もはや、議論の余地などありませんのに……」
それに対し口を開いたのは、外交室長のクラークである。
「しかし、姫様。どのような内容の対価なのかをしっかりと精査せねば、後々痛手を被るのは我が国ですぞ?受け入れられるモノは受け入れて、受け入れられないものはハッキリ、受け入れられないと言うべきです」
その言葉を受けても……しかしベアトリクスが、態度を変えることはなかった。
「それを主張できる立場にあるのなら、ですけれどね。詳しい話については、ここにある資料に詳しく書いてあるはずですから、後で好きなだけ、穴が空くくらい、チェックすればいいのですわ。すぐここで返事をしなくてはならないというわけでもないのですし……。でも、ここにコルテックス様とテレサが来ているのは、もしかすると今日が最後かもしれないのですわよ?なら、話し合うべきは、そこに書いてある内容に落とし穴が有るか無いかではなく、これからオリージャとミッドエデンがどうあるべきなのかを話し合うべきではなくって?そうすれば、相手が何を考えているのか、自ずと分かる……私はそう思いますわ」
それに対し、
「…………」
と口を閉ざして、考え込む様子のクラーク。
ベアトリクスの言葉には一理あったらしく、どうやら彼は、この会議の意義について、考え直すことにしたようだ。
一方、コルテックスもテレサも、それには同意見だったようである。
「確かに、こちら側の要求は、その資料にすべて書いてあります。それに〜……ベアトリクス王姫が仰られた通り、何もすぐに回答して欲しいなどとは言いません。エクレリアが攻めて来て、ここにやってくるまでに回答してもらえれば結構ですよ〜?」
「うむ。こちらはこちらで勝手に準備を進めておくゆえ、判断はギリギリでも問題ないのじゃ?まぁ、土壇場でこの話をご破産にした場合は、それなりのぺなるてぃーを覚悟してもらわねばならぬやも知れぬがの?」
そんな2人の言葉を聞いた、その場の者たちは
「「「…………」」」
どこか安堵したような表情を浮かべながら、揃って小さくため息を吐いたようである。
とは言っても、顔が青かったことに、変わりはなかったが。
それからコルテックスは、話題を改めるようにして、目の前の机の一番奥にある立派な椅子に腰掛けていた男性へと言葉を送り……そして彼の言葉を求めようとした。
「……というわけで、オリージャ国王陛下〜?最近、我が国は、ミッドエデン王国から、ミッドエデン共和国に生まれ変わったわけですが〜、この機会ですし、2国間の関係について話し合いませんか〜?」
「ふむ。それは吾も考えt」
と、オリージャ国王が口を開きかけたとき、タイミング悪く、
ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ……
そんな電子音が、どこからともなく聞こえてくる。
一体どこから聞こえた音なのかは、腕に付けた小さなバンドに目を向けるコルテックスのこんな言葉から推測できるのではないだろうか。
「おっと〜、次の会合の時間になってしまいました〜。私はこれからエンデルシアのキュムラス宰相のところに行って、国王エンデルスの処遇について話し合わなくてはなりません。というわけで、後はお願いしますね〜?妾〜?」
「えっ?!妾が?!」
「それでは皆様、ごきげんよう〜」
そして席を立ち、バルコニーに繋がる会議室の窓の前まで行って、取っ手ではなく窓のガラスに直接手を触れるコルテックス。
それからそこで彼女が何かを念ずると……
ブゥン……
急にそんな低い音が聞こえて、彼女の触れた窓だけが真っ黒に染まり……
ガチャリ……
そして彼女が開け放ったその窓の向こう側は……見たことのない妙に近代的なデザインの建物の内部へとつながっていた。
どうやらこれが、彼女の開発した、転移魔法の代替となる魔道具の効果らしい。
それからコルテックスは、一旦振り返ると、その場に笑みだけを残して……
ガチャリ……
颯爽とオリージャを去っていったのである。
その後、いつも通りに外の町並みと……ついでに、巨大なエネルギアの姿を映し出す、元の窓に戻ったその光景を見て、
「「「…………」」」ぼかーん
と口を開けたまま、唖然とするオリージャ政府関係者たち。
進んだ科学は魔法と見分けがつかないという言葉があるわけだが、では進んだ魔法は一体何に見えるのか……。
いまそこで固まっている彼らなら……その答えを知っているのかもしれない。
毎週土曜日は、週課の……ONSENなのじゃ?
たとえ、どんなことがあっても、毎日欠かさず書いておるこの物語と同じように……土曜日は温泉に言って、身体を解すと決めておるのじゃ!
さもなくば……凝り固まった狐になってしまうじゃろうからのう……。
というわけで、ちょっと行ってくるのじゃ?
……え?どうしたのじゃ?アメよ?
なぜワシだけ留守番か、じゃと?
いやお主……今、毛の生え変わり時期で、風呂の栓を詰まらせて(以下略
PS:
行ったら……休みじゃったがの…………




