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8.3-16 セカンドコンタクト4

そして、ワルツたちがいる宿屋へと、大量の案件を持ち帰ってきたユリアたち。

だが、そこには既に、すべての情報を統括する人物(?)が、やって来ていたようである。

とはいえ、話はまだ始まったばかりだったようだが。


『さて〜。どうしましょうか〜?』


「いやいや……どうするも何も、急に現れただけで、何が何なのかまったく説明してないわよね?」


『いえいえ。妾たちにはちゃんと説明しましたよ〜?ね〜?妾〜?』


「うむ。昨日、騎士たちが食べた夕食は、まともな夕食だったのじゃ!」


「……は?」


そんな訳の分からないことを口にするマクロファージ(コルテックス)とテレサの言葉に、頭が痛くて仕方がなかった様子のワルツ。


まぁ、それはさして重要ではないので、さておいて。

主要なメンバーと、ユキBがいる部屋の中にやって来たコルテックスは、この町に到着してからというもの、姿を消していた理由について話し始めた。


『では説明しますね〜。実は〜……この2日間、私は王城の中で、お宝探し〜……ではなくて、オリージャの兵士たちの戦力について分析していたのですよ〜(まぁ、それだけじゃないですけどね〜)』


「「「はあ……」」」


『それで、私が何をしようと考えているのか〜……皆さんには分かりますか〜?』


そんなコルテックスの問いかけに対して……先程のマクニールとのやり取りで、事情をある程度把握していたユリアが返答する。


「……主要な戦力たる男性の数が極端に少なくなっているオリージャの事を考えると……このままオリージャとエクレリアが衝突しても、この国が持ちこたえられるかどうかを判断していた……ってところですか?」


『残念。違いますよ〜?ユリア。……後でお仕置きです』


「ええっ?!」がくがく


『いや、そんな青い顔をしないで下さい。冗談ですから〜』


顔を真っ青にしながら震え始めたユリアに対し、すぐに冗談であることを説明するコルテックス。


その後で彼女は、ようやく話の核心について触れ始めた。


『私が調査していたのは〜……この国の兵士()()を使って、エクレリアをぎゃふんと言わせられないか〜、その可能性についてです。そうすれば、面倒事なんて放っておいて、ボレアスにもすぐに行けますからね〜。まぁ、シラヌイちゃんの行方を調べる話を除いて、ですけど〜』


そんなコルテックスの言葉に対し、


「まさか……ピストルや戦車を使って戦う連中を相手に、弓や槍で応戦しようってわけ?」


そう口にしながら……どういうわけか、ニヤリとした笑みを浮かべるワルツ。

どうやら彼女は、コルテックスのその提案に、興味が湧いたようである。


『さすがお姉さま〜。話が早くて助かります。それで、戦力の評価の結果なのですが〜』


「どうだった?」


『無理です』


「ちょっ……」


『このままだと、ですけどね〜』


「それならそうと、最初から言いなさいよ……。で、どんな条件が必要なわけ?」


『それはですね〜……』


そう言って、マクロファージの向こう側で、何やら紙をめくるような音を立てるコルテックス。

恐らく、今、彼女がめくっているだろうそのメモ用紙には、オリージャがエクレリアに勝つためのシナリオがまとめられていることだろう。


それからさらに何枚か紙をめくった後でコルテックスは、その秘策の一端を口にした。


『まず、必要条件として、エンデルシア送りにした男たちを呼び戻す必要があります』


「え?エンデルシア送りにした男たち?そんなのいたっけ?」


『前にいたではないですか〜。どこから来たのかも、馬の骨とも鹿の骨とも分からない、70万人の兵士たちのことですよ〜?尤も全員が全員、オリージャ出身では無いと思いますけどね〜』


「ああ、いたわね。そんなゾンビたち……」


「…………」ゴゴゴゴ


「……カタリナ?なんか後ろから黒いのが漏れてるわよ?」


と、エンデルシアのゾンビの件で、辛酸を()めさせられたカタリナのことを、まぁまぁと(なだ)めるワルツ。


「で、次は?」


『これまでの報告によると〜……エクレリアの兵士たちは、妙なフィールドを使って、攻撃を無効化してしまうという話〜。なら、それを中和するための魔道具の提供が必要になることでしょう。……まぁ、そのフィールドを暴走させれば、戦わずして勝てるのですけどね〜』


「なら最初からそうしなさいよ……」


『いえいえ。これは飽くまでも、オリージャ王国が自力で戦うためのプランですから、最小限のお手伝いしかできませんよ〜?お姉さまが直接戦えば、一瞬で終わるのと同じことです』


「そういうことね……」


『で、最後の条件ですが〜……』


するとそこで言葉を区切り……何故か言い淀んでしまうコルテックス。

マクロファージの向こう側から聞こえてくる音から推測すると、彼女は手に持っていた紙の束を机の上に置いて、そしてそのままどこかへと歩いていって……。


……それから間もなくしてのことだった。


ブゥン……


そんな低い音が鳴り響いたかと思うと、


がちゃり……


と音を立てて、宿の部屋にあったクローゼットの扉が空いて、そこから……


「よっこいしょっと〜。……これらのプランをオリージャにすべて飲み込ませて、ありったけの対価を要求し、最大限の見返りをふんだくる〜。ただ、それだけですよ〜?」にっこり


と、普段通りの笑みを浮かべたコルテックスが直接姿を見せたのである……。


「は?あんた、何でこんなところにいるのよ……」


「ようやく完成したのですよ〜。この世界の扉という扉に直接転移できる、夢のような魔道具が〜。作るの大変だったんですよ〜?この国の王城に保管されていた紅玉と、それとは別に、かなりの量の魔力が必要でしたからね〜。というわけでルシアちゃん?この指輪に魔力の充填をお願いします」


「うん、いいよ?」ブゥン


「はい、ありがとうございました〜」


と言って、真紅の宝石のようなものが装着された指輪の調子を確認するコルテックス。

どうやら、彼女がこの国にワルツたちを派遣しようとしたのは、この魔道具を作るためでもあったようである。


そして……。

唖然とした表情を向ける仲間たちに対し、コルテックスはもう一度、微笑んでから。

彼女は何もない空間に手を翳して、白っぽい布を2つ取り出すと、


「さぁ、行きますよ〜?妾〜。私たちの戦いの時間です」


その一つをテレサに差し出しながら、そう口にして……そして、部屋の入口の方へと歩いていった。

それも、


バサッ……


真っ白な下地に真っ赤な糸で大きな国旗が刺繍された、ミッドエデン共和国の国家議会議長だけが身につけることが許される、特別なマントを纏いながら……。

ミッドエデンの国旗……。

それがどんなものなのかを説明すると何とも難しいのじゃが……まぁ、簡単に言うと、ドラゴンが木になったリンゴに齧りつこうとしておる……そんな感じなのじゃ?

それ以上は、色々と問題があるゆえ、詳しくは語らぬがの?


あと……この部屋にいる人物について。

アトラスとテンポはおらぬのじゃ?

2人は用事があって、ここには来ておらぬ……というか、ワルツが城を抜け出す時、2人に声を掛けなかったからのう……。


他、ベアトリクスはおるのじゃ?

じゃから、コルがオリージャから色々とふんだくるという話をしておったのを聞いておったのじゃ。

じゃがのう……。

彼女は、諸事情により、言葉を失っておったのじゃ。

それについては……まぁ、次回なのじゃ?


というわけで、今日のあとがきはここで切り上げさせてもらうのじゃ。

買わねばならぬ物を買い忘れておったゆえ、すーぱーに行ってくるのじゃ!

そして妾の大冒険が、今h


ブゥン……

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