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8.3-14 セカンドコンタクト2

再び場面は変わり。

意識を取り戻したユキBの容態に、何も問題がないことを確認した後。


廊下で待っているようにと告げられたイブとベアトリクスが、晴れて部屋へと招き入れられたことで、2人に付き添う必要が無くなったユリアたちは……宿から抜け出して、街の中にある、細くもなく広くもない通りを歩いていた。

そんな彼女たちの目的は、ルシアの転移魔法によってどこかへと飛ばされてしまったテレサの捜索……ではなく、この町にいる情報提供者との接触である。

要するに彼女たちは、シラヌイがこの街に来ていると教えてくれた者に直接会って、詳しい話を聞きに行くところだったのだ。


「たしか、この通りをまっすぐに行って、角に協会のある交差点を右に曲がって……」


「えっ?左じゃなかったでしたっけ?


「えっ?そうだっけ?」


「んー……まぁ、行けば、どうにかなりますよね!」


と、手にした傘をクルクルと回しながら、適当な様子で会話を交わすユリアとシルビア。

どうやら彼女たちは、長い間、ワルツと行動を共にしてきたためか、徐々に彼女の性格に似てきてしまっているようだ……。


それから、通りを西に向かってしばらく歩いていくと……それほど大きくはない教会の姿が、彼女たちの眼に入っていくる。


「で、どっちかしらね?」


「近くにいる人に聞いてみましょうか。それで……何ていう場所で待ち合わせでしたっけ?」


「えーとね……ちょっと待ってよー……」


と言って、手に持っていた書類に向かって眼を落とすユリア。

そこに待ち合わせ場所の名前が書いてあったようで……彼女はそこから顔を上げると、こう口にした。


「『勇者の酒場』だってさ?」


それを聞いた途端、


「えっと……あの……先輩?私は良いとして、先輩は大丈夫ですかね?」


ユリアが魔族である事を思い出したのか、心配になってしまった様子のシルビア。


するとユリアは、そんな後輩に向かって苦笑を浮かべつつ、彼女の懸念を払拭するように、こう返答する。


「まぁ、変身魔法を使って翼は消してるし、店の中に勇者みたいなのがたくさんいたとしても、変な魔眼とかを持ってて見破られない限りは大丈夫だと思うわよ?(それに今の時間なら誰もいないと思うし、後輩ちゃんに喧嘩売って、生きて帰れるとも思えないし……。というか、勇者が魔眼使ってたら、多分それ、勇者じゃないと思うし……)」


「うーん……なんか、『勇者の』っていうのが気になりますけど……」


ユリアが自身が大丈夫と言っても、しかし不安は拭えなかったのか、シルビアの表情は冴えなかったようである。


それから、教会の建っている十字路までやって来てから、左右を見渡すシルビア。

その結果、そこから(くだん)の酒場の看板が見えたようだが……


「あ!あそこにありましたよ?角を曲がるんじゃなくて、真っ直ぐだったみたいですね」


「あ、ホントだ」


先程の彼女たちのやり取りとは違って、左右どちらかに曲がるのではなく、真っ直ぐ進む、だったようである。




カランコロン……


万国共通、どの店にも備え付けられている入り口のベルを揺らしながら、表に大きく『勇者の酒場』と書かれた店へと入るユリアたち。

その中は……その名の通り酒場だったらしく、酒樽や木製のジョッキなどが、カウンターの奥に整然と並んでいた。

とはいえ、流石に今はまだ午前中だったこともあって、人の姿はまったく無かったようだが。


「ほらね?心配ないでしょ?」


「昼間は営業してないんですね……」


「午前中から営業してるのなんて、ミッドエデンの王都と、アルクの町の酒場くらいよ……。あのー、ごめんくださーい?」


(けな)しているのか褒めているのか、そのどちらとも言えない態度で、ミッドエデンの酒場の開店時間について口にするユリア。

彼女はそれから、店の中に向かって、声を投げたわけだが……


「……誰も来ないですね?」


「……あれ?聞こえなかったかな?一応、アポ取ったつもりなんだけど……」


そんな彼女たちのやり取り通り、店の奥から人が出てくるような気配は無かったようだ。


「情報提供者って、ここの店主さんなんですか?」


「いや、違うわよ?ここに出入りしてる常連さんらしいわ」


「じゃぁ、ここに来たのはどうしてですか?店が関係ないなら、外でもいいと思うんですけど……」


「なんかよく分かんないけど、どうしてもこの店が良かったらしいわよ?まぁ、人も居ないようだし、ゆっくりと話す分には良いかもしれないわね」


「そうですね。でも……」


「誰も出てこないわね……。じゃぁ、もう一回。ごめんくださーい!」


「早く出てこないと、勝手に中に入りますよー?」


「いや、後輩ちゃん……もう入ってるから……」


と、シルビアの言葉に、ユリアが呆れたような反応を見せた……そんな時だった。


ドゴォン!!


酒場の扉が勢い良く開けられて、


ズササッ!!


大量のオリージャ兵たちが、流れ込んできたのである。

それも、皆が、今すぐにでも戦場に行けそうな、フル装備の姿で……。


「……もしかして、開店時間ですかね?」


「そんなわけ無いでしょ……」


一般的には危機的とも言える状況の中、危機感など一切無縁の表情で、いつも通りに冗談なのか天然なのかよく分からない反応を見せているシルビアに対して、ユリアが頭を抱えていると……


「……やはり、お前たちか……」


何処かで見たことのあるムッツリとした表情が特徴的な(?)男性が、部屋に突入してきた兵士たちをかき分けて、ユリアたちの前へと姿を見せた。

オリージャ王国中央騎士団長、マクニールである。


「あ、弱い人!」


「ちょっ……後輩ちゃん!思ってても、そういうこと言っちゃダメよ。心の中だけに留めておきなさい?」


マクニールの姿を見た瞬間、失礼極まりない発言を口にするシルビア……とユリア。

なお、一応断っておくが、アトラスたちが異常なだけであって、マクニールは決して弱くはない。


そんな彼女たちのやり取りを聞いていたはずのマクニールは……しかし、元からムッツリとしていたためか、表情を変えることは無かったようだ。


そればかりか、そこに居た兵士たちを引き上げさせて……。

そして皆が外に出た後で、単刀直入に、ここへとやって来た理由を口にした。


「……俺がインサイダー(情報提供者)だ」


その発言に返答したのは、情報局局長を務めるユリアである。


「……何となく、そんな気はしていました。街の中にあふれる魔族の情報へと、一手にアクセスできる権限を持っているのは、貴方くらいのものですからね」


と口にしながら、何処か納得げな表情を浮かべるユリア。

それから彼女は、マクニールに対して、続けざまに問いかけた。


「それで、なぜ……こんな物々しい真似を?私たちが来ると分かってたのよね?」


それに対しマクニールは、仏頂面のまま、こう返答する。


「……もしも相手が、ミッドエデンから来たお前たちでなかったら……消すつもりでいたからだ」


「それは随分と物騒な話ね……」


「一人の少女についての情報を漏らしたところで、俺たちに痛みはない。だが、大きい小さいに限らず、人様の国から情報を抜き出そうとする輩がいれば、消して然るべきだろう」


「つまり……シラヌイさんに関する情報はブラフで、私たちを誘き出す罠だった、というわけですね……」


ユリアは、相手がこの国の守りを司る立場にある人物であることを考え、これが諜報員(スパイ)を誘き出すための罠だったことを悟って、心底残念そうな表情を浮かべた。

それについては彼女の隣りにいたシルビアも同じだったようである。


だが……マクニールの言葉は、そこで終わりではなかったようだ。


「いや、ブラフではない。お前たちが出てくると予想が付いているのに、怒らせるような真似をしてどうする?」


「「……え?」」


「今日、俺がここに来たのは、そのシラヌイとか言う少女についての追加の情報を伝えるためだ。ただし……」


「「……ただし?」」


「情報提供の見返りに……一つ条件がある」


ムッツリとした表情を浮かべたままで、そう口にするマクニール。


その際、彼の顔色が良くなく、そしてその額に大粒の汗が滲んでいたところを見ると……どうやら彼は、相当に具合の悪い相談をしに、ここへとやって来たようだ……。

タイトルのナンバリングを書くのが……正直、面倒くさいのじゃ。

『xx.x-14 〜〜〜〜14』とかなら、迷うことは無いのじゃが、番号がずれておると、間違って入力しそうで怖いのじゃ。

まぁ、番号など、飾りに過ぎぬのじゃがの?


というわけで。

昨日の話とは視点が変わって、ユリアたちのところにシフトしたのじゃ?

これには色々な理由があってのう……。

まぁ、気になることは後出しにする……的な表現と捉えてもらえれば助かるのじゃ?

……べ、別に、ネタが思いつかなかったゆえ、問題を先送りにしたわけではな無いのじゃからね?なのじゃ。

とは言っても、ハードルを上げたところで、面白い話が書ける訳ではないがの。


さて。

今日はこれからやらねばならぬことが2つほどある故、あとがきはここでお開きなのじゃ?

なんか、いつも同じことを書いておるような気がしなくもないのじゃが……つまり、いつも同じ問題を抱えておる、ということなのじゃろうか……。

あー……頭痛が痛いのじゃ……。

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