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8.3-09 魔王の卵9

ピチョン……ピチョン……ピチョン……


王城地下にある暗い通路の天井からは、絶えず水が滴っていた。

より正確に言うなら、壁の亀裂や隙間など、至る所から水が染み出してきていた、と言うべきか。

この地方には珍しいことに、外では大雨が降っていたこともあって、地面に浸透した雨水が、地下道へと流れ込んできているらしい。

とはいえ、城がある町の周囲を高い崖が取り囲んでいるような地形だったこともあってか、水捌けは良いようで、雨水が溜まって水没するようなことは無さそうだったが。


「この地下道、急に崩れたりしないかなぁ?」


「大丈夫だと思うわよ?随分と古い作りのようだし、これまでにも同じような大雨に絶えてきたんじゃないかしら?きっと」


「そうですわね……。少なくとも、私が生まれてからこのかた、この地下道が崩れたという話は聞いたことが無いですわよ?」


「ふむふむ、それは良かったのじゃ。……じゃがのう、ベアよ。いい加減、離れてはくれぬかの?」


「え?何か言いましたかしら?」にっこり


「はぁ…………」げっそり


と、昨夜、訪れたばかりの、牢屋に繋がる地下道を歩きながら、そんな会話を交わすルシア、ワルツ、テレサ、それにベアトリクス。

なお、ルシアだけは、ここに来るのは初めてだったこともあってか、周囲の光景に向かって、(しき)りに視線を飛ばしていたようである。


そんな彼女たちがここを歩いていたのは、崩れてしまった教会の地下に囚われているという『魔王の卵』を見に行くためであった。

ベアトリクス曰く、この王城の地下道は教会の地下にも繋がっているらしく、道を知っている彼女に案内される形で、ワルツたちはここへとやって来たのだ。


「『魔王の卵』って……どんな形をしてるのかなぁ?」


「やっぱり……今朝食べたような、卵っぽい形状の卵じゃない?」


「そんなに小さいのかの?」


「さぁね。案外……人が入れるくらい、おっきな卵だったりして」


「ふーん。もしもそうだったら、食べるのは大変かもしれないね」


「「えっ……」」


と、暗い通路の中でも、いつも通りに明るい様子(?)で、言葉を交わすワルツたち。


一方で、ベアトリクスは、


「魔王……魔王ですか……。少し怖いですわね……」


ワルツたちの会話について行けず、魔王という名前に、戸惑うような素振りを見せていたようだ。


すると、彼女の後ろを歩いていたルシアが、首を傾げながら問いかけた。


「ベアちゃん……やっぱり、魔王が怖いの?」


「え、えぇ……怖いですわ。どんな恐ろしい化物なのか、想像が付かなくて……」


「ふーん……(あ、そっか。そういえばベアちゃん、まだユキちゃんたちとは、会ってなかったんだね)」


と納得げな表情を見せるルシア。

しかし、彼女が、その場でユキたちのことについて言及することはなく……。

どうやらルシアは、本人たちの前で、説明することにしたようである。


ルシアがそこで、言い淀んでいると……今度はベアトリクスが、ルシアに対して逆に問いかけた。


「ルシアちゃんは、魔王が怖くないのですの?」


「んー……知ってる魔王様なら怖くないよ?だけど、見たこと無い魔王だったら……ちょっと、怖いかなぁ?」


「知ってる……魔王様……?」


「……本当かのう?」


「何が言いたいのかなぁ?テレサちゃん?」


「……な、なんでもないのじゃ……」


と、仲よさげ(?)に、ルシアたちが話していると……


「……?行き止まりね?」


ワルツが暗闇の向こう側に、袋小路のような壁を見つけたらしく、そんな言葉を口にして不意に立ち止まった。


すると、ベアトリクスは、ようやくテレサの腕から離れ、壁の先に向かって歩いていき……


「実はこれ、隠し扉ですわ?」


そう言って、近くの壁に開いていた穴の中に、無造作に手を入れると……


ガコン……


その奥にあったレバーらしきものを引いたようだ。

その瞬間、


ザバァァァァ!!


と、袋小路の先にあった隠し壁が開いて、ワルツたちの方へと流れ込んでくる大量の水。

どうやら、王城側の通路とは違い、教会側の通路は水捌けが悪く、相当量の雨水が溜まっていたようである。


その光景を見て……


「……長靴、無いかの?」

「いや、長靴でも濡れるでしょ?」

「少しだけ浮くのって……難しいんだよね……」

「ブーツを持ってくれば良かったですわ……」


4人は、少々、面倒そうな表情を浮かべるものの……ここまで来て、引き返すのもどうかと思ったらしく、そのまま進むことにしたようだ。




「……凄いですわね……」


「これぞ、我が夫の力なのj」ザバァッ「んな!?」


「あら、ごめんなさい?手が滑っちゃったわ?」


「テレサちゃん……変なこと言うからだよ……」


教会側の地下道に入ってからというもの、膝上ほどまで溜まっていた水の上を、ワルツの重力制御システムによって浮かびながら、進んでいく4人。

その際、テレサが、水中へと落ちたようだが……まぁ、日頃の行い、というやつだろう。


それからテレサが水面に引き上げられて、再び移動をはじめてから、ルシアが見える景色に不安げな表情を浮かべながら、こう口にする。


「『魔王の卵』が……もしも、シラヌイちゃんだったとして、こんなに水が溜まってる所で捕まってても大丈夫かなぁ?」


「へっ……ヘックシュッ!んあー…………し、シラヌイ殿のう……。まぁ、大丈夫じゃう。この水は冷たいわけではないからのう。しかし、考えれば考えるほどに思えるのじゃが……シラヌイ殿と、今回の『魔王の卵』の話は、別モノのような気がしてならないのじゃ……」


「最初に、シラヌイちゃんかもしれない、って言ったのって、テレサちゃんだよね……。でも、この町にシラヌイちゃんが来てるかもしれない、って報告があることを考えるなら……タイミング的には、ちょうど合ってるんじゃない?」


「うむ。妾もそう思ったゆえ、もしや『魔王の卵』とは、シラヌイ殿の事を指す隠語なのではないかと思ったのじゃ。じゃがのう……どう考えても、シラヌイ殿には、魔王の『ま』の字も関係ないようにしか思えぬのじゃ」


「うーん……(それ言うなら、ユキちゃんだって、全然、魔王には見えないけどね……)」


と、『魔王の卵』について、意見を交わすルシアとテレサ。

他、ベアトリクスは、魔王どころかシラヌイについても知らなかったので、2人の会話の内容を理解できなかったようである。


一方、事情を理解していたワルツの方は、何やら思うことがあったらしく、こんなことを言い始めた。


「やっぱり……行くのやめましょうか?」


その言葉に、


「「「えっ……」」」


と、耳を疑ってしまった様子の3人。

急にワルツが何を言い出すのか、まったく分からない……そんな様子である。


対してワルツは、難しそうな表情を崩すこと無く、なぜそう言ったのかについて、難しそうな表情を浮かべながら話し始めた。


「いや、行きたくないとか、行かないって話じゃないわよ?今、ここにいる4人で行くのは止めておいたほうがいいかもしれない、っていう話。魔王の卵について仮説を上げるだけなら、色々な可能性が考えられるわけだけど……いずれにしても、あまり結果にはならない気がするのよね……」


「ふむ……つまり、捕らえられておる『魔王の卵』が、シラヌイ殿ではなかった場合、面倒なことになる上……もしもシラヌイ殿が囚われておったとしても……」


「おっと、テレサ?それ以上は、言う必要はないわよ?」


「う、うむ……」


それから、ルシアの方を振り向くテレサ。

そこには、2人が何の話をしているのか分からない様子で首を傾げているルシアがいて……。

その反応を見たテレサは、ワルツの言葉に同意することにしたようである。


しかし……時すでに遅し。

先頭を進んでいたベアトリクスが、不意に立ち止まると……


「……ここですわ」


そう言って、地下道に直接作られていた一つの檻の前で、立ち止まってしまった。

そして彼女はその檻の中を見て……声を上げたのである。


「人が囚われていますわよ?!」


「「…………」」


その言葉を聞いて、心底複雑そうな表情を浮かべるワルツとテレサ。

しかし、聞かなかったふりをするわけにもいかず……。

彼女たちは意を決して、檻の中を覗き込むことにしたようである。


するとそこには、彼女たちが考えていたようなシラヌイの姿は無かった。

だが、檻の中には……それ以上に厄介な人物が囚われていたようである。

それも、最悪に近い人物が……。


「小さいヌル……じゃなくて、ユキB〜Eの誰かね……」


そんなワルツの言葉通り、岩を削って作られただろう硬いベッドの上には、膝を抱えながら俯き、そしてグッタリとしている小さなヌル……もとい、彼女の妹の姿があった。

熱い物に触れたり、魔力を消費したりすると身長が小さくなる今の彼女の姿は、おおよそイブ程度の身長しか無く……。

その見た目は、『魔王の卵』というよりも、暴行を受けた奴隷の少女、と言ったほうが適切な見た目だった。

彼女の身に何が起こったのかについては……もはや言うまでもないだろう。


しかし、何よりも問題は……彼女がここにいることだろう。

ヌルが抜け出してきたボレアスを、代わりに治めているだろう妹の一人が、なぜここにいるのか。

そしてそれが、一体どんな意味を持っているのか。

少なくとも、正常の範囲を越えて事態が進んでいるのは、間違いなさそうである……。

繰り返し読んで修正しておると……段々と感覚が麻痺してきて、何が正しくて、そして何がダメなのかが分からなくなってくるのじゃ。

終いには、もう、いいじゃろ……と思えるようになって、ダメダメな文のままで、チェックをスルーしてしまうのじゃ。

しかも、毎日、時間を決めて書くことを最優先にしておるゆえ……頭をリセットして、日を改めて書き直すことも出来ぬのじゃ……。

もうダメかも知れぬ……。

まぁ、ダメならダメなりに、幾分マシになるよう工夫しながら、駄文を垂れ流すしかないのじゃがの?


という、駄文はさておいて。

今日の展開は、ちょっとかなり考えたのじゃ。

最初は『魔王の卵』=シラヌイ殿にして、適当に話を進めようかとも考えたのじゃが、少し思いついたことがあっての?

その準備のために、以下略なのじゃ!


しかし、困ったのじゃ。

なら、どこでシラヌイ殿と……いや、なんでもないのじゃ。

まぁ、大まかな話の流れ自体は、決まっておるゆえ、何も問題は無いのじゃ?


……そんな事を言っておるから、駄文しか書けぬのじゃろうのう……。

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