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8.2-33 河畔の国33

自主規制注意なのじゃ!

「……先輩。もしかして、いつもわざとやってません?」


「……バレた?」


「……だと思いました」


入ったときと同じように、教会の結界を抜け、そして安全な中庭まで戻ってきたところで、実際に声を出して会話するユリアとシルビア。

そんな彼女たちの言葉通り、天使化した男性が魔法で攻撃して殺害した(?)のは、どうやらユリアが作り出した幻影だったようである。


「ちなみ……どうしてわざと見つかるような真似をしたんですか?いや、見つかってないですけど……」


「んー、いくらでも言い様はあるわよ?相手の本性を見たかったとか、戦闘力を分析したかったとか、警備を混乱させて脱出しやすくしたとか……」


「でも、『言い様』なんですね?」


「……反応を見るの……楽しいじゃない?」


「悪趣味ですよ、先輩……。反対しませんけど……」


「まぁ、いいじゃん。誰も損してないんだし……」


と、言いながら、苦笑を向け合う2人。


そんな彼女たちがいたのは、ミッドエデンの騎士たちの馬車を停車するために、オリージャ政府から充てがわれていた、中庭前の空き地だった。

つまり、彼女たちは、今回見聞きした情報を、騎士たちを統括する立場にあるアトラスへと伝えに来たのである。

一行の中では一番弱い(?)騎士たちの生命に関わることなので、当然のことと言えるだろう。


町から帰ってきた騎士たちの間を2人が歩いていくと……しばらく進んだところで、彼女たちは目的のアトラスの姿を見つけたようである。

ただ、そこにいた彼は……


「…………うっぷ……」


どういうか随分とグロッキーな状態で、簡易椅子に腰掛けていたようだ。


「どうしたんですか?」


「随分と気持ち悪そうですね?」


彼がダウンしている理由が分からなかったために、心配そうに問いかけるユリアとシルビア。


するとアトラスは、げっそりとした表情を浮かべたまま、膨れているのが明らかに分かる上腹部を擦りながら、2人の問いかけにこう返答した。


「き、気持ち悪い……」


「「気持ち悪い?」」


ユリアとシルビアが、オウム返しのようにアトラスの言葉を繰り返すと……彼は近くにあった簡易机へと視線を向けた。

するとそこには……


「「「…………」」」ぐったり


机に突っ伏す、剣士たち男性陣と、シリウス姉妹の姿が……。

そこで皆、アトラスと同じようにうめき声を上げていたところを見ると……全員が腹痛か何かに、襲われていたようである。


なお、そこには、メイド姿の勇者と、オリージャ王国の騎士団長のマクニールの姿もあったのだが、彼らは違う理由で突っ伏しているようだ。

2人の手元に空になった大きなジョッキが山と積まれていたところを見ると、恐らく彼らは、酒の飲み過ぎで、酔いつぶれてしまったのだろう。


そんな仲間たちの見て、シルビアがアトラスへと問いかけた。


「もしかして晩御飯が、ワルツ様方の作った料ry……えっと、おいしくなかったんですか?それともまさか……毒ですか?!」


「いや毒じゃない。それに美味しかった。だけど……量が半端なかったというか……うっぷ。この話を始めると長くなるんだが……今は気持ち悪いから……説明は勘弁してくれ……うっぷ……」


と、真っ青な表情を浮かべながら、ワケアリ気味に返答を返すアトラス。

なお、彼らがこんな状態になってしまった背景には、説明が困難になるほどに複雑な理由があったから……というわけではない。

ただ単に、アトラスたちが食事を取っていた机へと、残飯処理係の担っていた飛竜が気を使ってやってこなかったために、その机の上に載っていた50人分の食事を、アトラスたち数人だけで処理しなくてはならなくなってしまった結果である。


なお、そこにいる誰よりも大量に食事を摂ったはずの飛竜は……


「…………zzz」


人の姿のままで、満足そうな表情を浮かべながら、毛布を被り、草むらの上で丸まって寝ていた。

そんな質量保存の法則を無視する彼女の身体の中にある胃袋は、恐らく異空間へと繋がっているのではないだろうか。


まぁ、それはさておいて。


「それは困りました……。新しい情報を仕入れてきたのですが……」


「ま、マジか……。ちょっと今は一杯一杯……うっぷ」


「そうですか……。んー、どうしよっか?後輩ちゃん」


「仕方がないですし、ワルツ様かコルテックス様に報告するしか無いんじゃないですか?」


「順当に行けばそうなるわよね。だけど……」


と言って周囲に眼を向けるユリア。

そんな彼女たちの視界の中には、ワルツの姿も、そしてコルテックスが操っているマクロファージの姿もなく、見聞きしてきたことを報告しようにも、できなかったようである。

あるいは、無線機を使って報告する方法もあるにはあったのだが……今、ワルツやコルテックスたちが取っているだろう行動の内容を考えると、情報局局長のユリアとしては、不用意に話しかけられなかったようだ。


ただ、そこにいたアトラスは、話を聞けないほどに瀕死な状態……というわけではなかったようで、彼は口を抑えながらも、そこにいた2人に対して、報告を促した。


「うっぷ……だ、大丈夫だ。話を聞くくらいなら、どうってことは……うっぷ……」


「全然、大丈夫に見えないですよ?」


「き、気にするな……」


「そうですか…………分かりました」


アトラスに促されたユリアは、彼の身体を気遣いながらも、報告をすることにしたようである。

まぁ……さすがに、報告の内容までは、気遣えなかったようだが。


「明日の朝、1万の天使たちがやって来て、私たちを蹂躙するようです」


「へ?うっ……******(自主規制)」


「「あー…………」」


胃が痛くなるようなことを聞いたためか、限界を越えて、色々なものをリバースするアトラス。

なお、何をどうリバースしたのかについての説明は、省略する。


「ほら……やっぱり、大丈夫じゃなかったじゃないですか……」


とアトラスの背中を擦りながら、呆れたような表情を見せつつ、幻影魔法で掃除をするユリア。

シルビアの方は、ハンカチを取り出すと、アトラスの口元を拭き始めたようだ。


するとアトラスは申し訳無さそうな表情を浮かべて、2人に対し、謝罪の言葉を口にし始めた。


「すまん……。本当に、食べ過ぎなければよかったと後悔している……。だけど……話を聞いて判断するのが俺の仕事なんだ。それだけはどうか分かって欲しい……」


「えぇ、分かってますよ。それに、こうした後始末は慣れているので、気になさらないで下さい」


「そう言ってもらえて助かる……。報告は……それで終わりか?」


「えっとー……あ、そういえば、この国にエクレリアが攻めてくるかもしれないって話、聞きました?」


「うっ!……******(自主規制)」


「「あー…………」」


そして、リバースを繰り返すアトラス……。

どうやら彼は、これからユリアの報告を聞く度に、リバースを続けなくてはならないようである。

次の話で8-2章を終えて、8-3章に進めようと考えておるのじゃ。

内容的には、特に真新しいことは無いと思うのじゃが、ナンバリングが40代に突入するのはどうかと思っての。

実は、このまま書き続けると……大きな話の転換点まで至るのに、もう少し時間が掛かりそうなのじゃ。

じゃから、ここいらでナンバリングを切り替えさせてもらうのじゃ?

このまま行けば……もしやすると、8-10章とか8-20章とか、2桁代に突入してしまうのではなかろうかのう……。

流石に3桁は…………否定できぬ。


まぁ、それはさておいて、なのじゃ。

明日は多分、書いておる時間が無いと思う故、今日の内に予約投稿をさせてもらうのじゃ。

じゃから、あとがきはここいらで切り上げさせてもらうのじゃ?

明日は明日で……むちゃくちゃ忙しいと思うのじゃ……。

もうダメかもしれぬ…………zzz。

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