8.2-17 河畔の国17
『……グッジョブですよ〜?アトラス〜。これでようやく、ミッドエデンとオリージャの長い戦いの歴史に、幕が下りそうですね〜』
「何がグッジョブだよ……。ってか、終わるどころか、新しい争いが始まる寸前だよ!」
と言って、左手で頭を抑えながら、倒れた扉の方へと近づいていくアトラス。
そして彼は、あたふたと慌てふためきながら重い扉を退けようとしている兵士や、民衆たちを押しのけて……
「すまねぇな……」
ドゴォォォォン!!
今度こそ、その重い扉を、まるでフリスビーの円板を扱うように、町の外のどこか遠くへと放り投げた。
その瞬間……
「「「…………」」」しーん
と静まり返るオリージャの王都の中。
この分なら、コルテックスの言葉通り、ミッドエデンとオリージャの戦争の歴史に、幕が降りそうである。
それから彼は、そこで扉に潰されて倒れていた老人の元へと駆け寄ると、その安否を確かめ始めた。
「…………まだ、大丈夫そうだ」
老人の手首に指を当てたり、怪我の具合を確認した後で、安堵のため息を吐くアトラス。
そこで倒れていた、豪華そうな服装や髪飾り(?)を身に付けていた老人は……腕や足が、本来なら、曲がりえない方向へと曲がっていたが、それでもアトラスの眼から見ると、まだどうにかなるレベルだったようである。
まぁ、確かに、王冠(?)が重い扉を支えたおかげか、頭部に目立った怪我は無かったので、どうにかなると言えばどうにかなるのだが……。
結果、彼は、少し離れた場所にあった馬車へと、声を投げかけた。
「ルシア!頼む」
すると、
「もう、アトラスくんったら……。カタリナお姉ちゃんにバレたら、怒られちゃんだからね?」
と口にしながら、ルシアが馬車から降りてきた。
そんな彼女は……どういうわけか、普段着とは違って、ミッドエデン式の『勇者装備』を身に着けていたようである。
その姿を見て、アトラスは悟った。
「……コルテックス。俺は、もしかして……計画的に貧乏くじを引かされたのか?ていうか、騙されたのか?!」
その言葉に対し、いつの間にか彼の頭の上に載っていたマクロファージ経由で、コルテックスが返答する。
『いえいえ。お兄様は貧乏くじなど引いていませんよ〜?それに、さすがの私でも、まさか扉の後ろに、オリージャ国王がいるなんて予想は出来ないですからね〜。まぁ、扉を投げ捨てた時点で、既にフラグは回収済みなので良いのではないですか〜?あとはルシアちゃんがそれなりの演出をして、大団円です』
「そんな適当で大丈夫かよ……」
『さぁ〜?それでもどうにもならなかった時は〜……まぁ、頑張ってください』
「…………はぁ……」
そしてアトラスは、再びがっくりと項垂れたのであった。
その後、ルシアがその場へと到着して……そして、彼女の演目(?)が始まる。
「……おねえch……神様!私に力を!」
そう言葉を放った直後、
ドゴォォォォ!!
と、まるで光魔法を使って、老人(?)にトドメの攻撃を仕掛けているようなエフェクトを放ちつつ、回復魔法を放つルシア。
そして間もなくして、治療が終わったようである。
「ふぅ。これでもう大丈夫だと思う」
「助かるよ。ルシア」
「そ、そんなことないよ?」
アトラスからの感謝の言葉を受けて、ルシアがモジモジとしながら、尻尾をブンブンと横に振っていると、
「う、うぅ……」
倒れていた老人(?)の方からうめき声のような声が聞こえてきた。
ルシアの言葉通り、峠を越えたのだろう。
その様子を見て、
「「「…………!」」」
我を取り戻すオリージャ兵士たち。
彼らは、老人(?)へ駆け寄って、そして担架に乗せ、そのまま走り去っていった。
その行き先は恐らく……街の奥で夕日に赤く染まる王城だろう。
そんな老人(?)の姿を、アトラスたちが見送っていると、老人(?)が運ばれていった方角とは反対側から、ようやくクラークとマクニールの2人が馬車で現れた。
それから2人は馬車から降りると、その場の混乱に目をやり始める。
そしてその場にあるはずのものが無くなっている光景と、その場にいた兵士や市民たちが、異様にアトラスたちを怖がっている様子を見て……
「……胃が痛いのである」
「……奇遇だな」
彼らはそんな言葉を呟きつつ、2人揃って何処か遠くの空へと、虚ろな視線を向けていたようだ。
「……ねぇ、ルシア。あの演出なんだけど……どうにかなんない?」
「えっ……ダメかなぁ?」
「ううん。ダメじゃないけど……別に私はルシアに対して、力を貸してるわけでも与えてるわけでもないし……っていうか、神様でも魔神でもないし……」
「んー……じゃぁ……やっぱり、コルちゃんに教えてもらった、『魔法少女』の振り付けをしなきゃダメかなぁ?」
「……ごめん、ルシア。やっぱり、今まで通りでいいわ……」
ルシアが、キラッ、と言いながらクルクルと回っている姿を想像して、背筋がむず痒くなってきたのか、今の話はなかったことにした様子のワルツ。
そんな彼女たちがいるのは……崖に面しているオリージャの、その中でも最も断崖絶壁に近い場所に立てられた王城。
その中にある、妙に天井の高い来賓室である。
なお、3000人の騎士たちは、流石に来賓室に入ることは出来なかったので、王城の中庭で今日も野営である。
まぁ、彼らには彼らの豪邸があるので、特に問題は無いだろう。
そんなこんなで、王城の中にある3つある来賓室には、それぞれミッドエデンを代表する者たちの姿があった。
その1つに、ワルツ、ルシア、それに……
「『魔法少女』って……にんじゃーと何か関係あったかもだったっけ?」
今日もメイド姿のイブの3人が割り当てられていたようである。
そして隣の部屋には、アトラス、勇者、賢者、それに剣士。
最後の部屋には、テンポとヌル、そしてユキと飛竜の4人、といった割り振りになっていたようだ。
なお、テレサとユリアとシルビアは、街の中に宿を確保している。
それは何も、来賓室がいっぱいだったから、というわけではなく、記憶が欠如してしまったテレサの知識的なリハビリを行うためだったようだ。
……まぁ、要するに、自由に王都の観光をしたかったらしい。
その他にも理由はあったのだが……その詳しい内容については後ほど。
というわけで。
そんな部屋の中で、ワルツたちは荷解きをしながら、ミッドエデンの『勇者』について話し合っていたわけだが……そんな部屋へと、不意に客人がやってくる。
コンコンコン……
その扉の音を聞いて、
「開いてるわよー?」
と言いながら、透明になるワルツ……。
どうやらここでも、彼女の人見知りの激しさは、健在だったようだ。
ただ……今回に限っては、ワルツは透明になる必要は無かったようである。
何故なら客人は……
ガチャリ……
「…………」じー
……どういうわけか、部屋の中へ入ってこなかったのだ。
「「「…………?」」」
扉を少しだけ開けて、そこから中を覗くように見つめてくる人物に、首を傾げる2人(+1人)。
それから、その客人が、
ガチャリ……
と扉を締めて、立ち去ろうとしたので……
ドゴォォォォン!!
ワルツは痺れを切らしたらしく、扉を重力制御で開け放って、その向こう側にいるだろう客人を部屋へと強制的に招き入れた。
ただし、ホログラムの姿を消したままで。
その結果、部屋へと落下するように入ってきたのは……
「ふぎゃっ!」
コテン……
全身、フリルだらけの、ふっくらとしたドレスに身を包んだ……
「「「……おひめさま?」」」
……だったようである。
どうやらワルツは、面倒な人物を、さっそく部屋へと招き入れてしまったようだ。
背中が――かゆいのじゃ。
もう、これはダメかも知れぬ……。
やはり……夕食の和え物に使ったごま油が原因かのう……。
まぁ、そんなアレルギーの話はさておいて。
最近はキャラクターの発言が多すぎて、ナレーションの内容がパターン化しておる故、そろそろもう少し建設的な話を書きたいと思う今日このごろなのじゃ。
ホント、どうにかならぬものかのう……。
ナレーション単体で書く分には、それはそれで違和感は感じぬのじゃが、セリフとの割合によっては、箇条書きになってしまうゆえ、ナレーションの違和感が半端ないのじゃ……。
まぁ、セリフが多くなってくると、どうしてもそうなってしまうのじゃがのう。
割り切るしか無いのじゃろうか……。
ちなみに、どうにも出来ない……というわけでもないのじゃ?
キャラクターのセリフを飛び越えて、ナレーションを書けば、箇条書きにはならぬのじゃ。
ただ、それを連発すると、可読性が落ちて、ただでさえスパゲティーな駄文が、スチールウール並に絡まってしまって、解けなくなってしまうのじゃ。
それも、スチールウールと違って、火を付けても燃えぬゴミのような文になってしまうじゃろうのう……。
まぁ、スチールウールが燃える、と判断して良いのかどうかは、また別の話なのじゃがの。
さて……。
そんな心情をここで吐露したところで、事態は何も改善せぬから……今日もこれから新しい駄文を書いて、少しでもまともな文が書けるように工夫してみようかのう……。




