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8.2-11 河畔の国11

そしてその夜。

シトシトと小雨が降る中、一同は野営をすることになった。

ミッドエデンの王都を出発してからというもの、実は初めての雨である。


「オリージャはミッドエデンに比べたら温かいかもだけど、夜になって雨が降ってると、何となく寒い気がするかもだね……」


馬車の幌の片側を外し、そこ巻かれていた幌の端の部分を展開することで作り出した簡易的な屋根の下で、夕食を摂った後のイブは、馬車の荷台の端で足を掛けながら、隣りにいたルシアに向かって呟いた。


「んー……じゃぁ、暖かくする?」


「えっ?そ、そこまで寒くないかも……」


「遠慮しなくてもいいんだよ?どーん、とやれば、すぐに暖かくなるはずだから」


「う、ううん。大丈夫。イブには作った手袋があるかもだから……」


そう言って、少々歪な形状の手袋がはまっている自身の手に対し、視線を向けるイブ。

彼女が狩人から教えられて作っていた編み物は、どうやらその手袋だったらしい。

とはいえ、完成したのはまだ片方だけだが。


その手袋を見て、今度はルシアが口を開く。


「ふーん。イブちゃんって、手先が器用なんだね?」


「器用……かもなのかな……。シラヌイ様に比べたら、大したこと無いと思うかもだけど……」


「いや、それは……比較する対象をまちがってるんじゃない?」


と、まるで精密機械のように動くシラヌイの手つきを思い出して、苦笑いを浮かべるルシア。

すると間もなくして、彼女は元の表情に戻ると、雨の降る薄暗い闇の中に視線を向けながら、こんなことを呟いた。


「シラヌイちゃん……元気かなぁ……」


「どうかもだろうね……」


「今頃、どうしてるんだろ……」


「……その辺りから、ひょっこり姿を見せるかもだったら……いいのにね」


「そうだね……」


そして、無言になるルシアとイブ。

およそ1ヶ月前に、テレサが事故に遭ったことに責任を感じて、実家に帰るために家出した(?)シラヌイのことを、2人ともが心配になっていたようである。


と、そんな時。

暗い表情を浮かべた彼女たちのところへと、酒を飲んだ狩人に絡まれていたワルツが、弟を替え玉にして、逃げるようにやって来た。

そして開口一番、こう口にする。


「あー、その話なんだけど、実は彼女、本当にオリージャにいるらしいわよ?」


「「…………え?」」


「無線機でユリアから聞いたんだけど、オリージャに忍び込ませてる諜報部員から報告があったんだってさ。ま、大河の向こう側に真っ直ぐ帰ることを考えるなら、オリージャから大河を超えるってのが道理よね。カペラ以外にも、河渡しはいるわけだし……」


と、オリージャの外交官を務めるクラークが聞いたなら卒倒してしまいそうな一言を、さらっと口にするワルツ。

とはいえ、幸いなことに、近くにクラークの姿はなく、彼が胃の痛みで昏倒してしまうことは無さそうだ。

まぁ、昼間のエネルギアやポテンティアのせいか、あるいは酒に酔った狩人に絡まれているせいで、既に、それに近い状態に陥っていたようだが……。


「そっかぁ……。じゃぁ、シラヌイちゃんのこともついでに回収していくの?」


ルシアがそう姉に対して問いかけると、ワルツは難しそうな表情を浮かべながら、こう返した。


「回収したいのは山々なんだけど、今の時点で、彼女が具体的にどこにいるのかは、誰にも分からないのよ。1週間くらい前に、オリージャの首都で、うちの諜報部員が見かけたってだけで、今も追跡してるわけじゃないしね……」


「「ふーん……」」


と、相槌を打ちながらも、残念そうな表情を浮かべるルシアとイブ。


そんな彼女たちに対して……ワルツは、言わなくても良い余計なことを口にした。


「しっかし、どうするのかしらねぇ?大河を超えるのに、河渡しに払うお金が相当額必要になるって話だけど、あの娘、財布を忘れて、家出したのよね……」


「「えっ……」」


「ホント、良くオリージャまでたどり着いたと思うわ……」


「「…………」」


ワルツの言葉を聞いて、シラヌイの財布のことを知らなかったルシアもイブも、思わず言葉を失ってしまったようである。

それから間もなくして、事態を理解した彼女たちは、口々に声を上げた。


「い、今すぐに、シラヌイ様の居場所を探して、財布を届けに……じゃなくて、迎えに行ったほうが良いかもなんじゃない?!」


「うん。私もそう思う。なんかこのままだと、シラヌイちゃん、大変な事になっちゃいそう……」


「そうよね……。私もそう思うわ。だから、今、諜報部員たちに、オリージャ全土の調査をさせてるところよ?私たちは……オリージャの首都に着いたら、町の周辺を捜索することになるかしら?」


と、持っている力のことを考えるなら、少々、後ろ向きとも取れかねない発言を口にするワルツ。

しかし、ルシアもイブも、ただ闇雲に探しても仕方がないことについては理解していたためか、彼女の言葉に反論するようなことは無かったようである。


その代わりに彼女たちは、こう言葉を返した。


「じゃぁ、オリージャの首都に着いたら、みんなでシラヌイちゃんのこと探そ?」


「うん!それまでには、イブも、ちゃんと体力を付けとかないとダメかもだね!」


「う、うん……頼むわね……。っていうか、イブ?無理しちゃダメよ?」


そしてワルツは、使命感に燃えるイブたちをその場に残し、馬車の幌で作った屋根の外へと出て、別のテントへと足を向けたのだった。




『……もう、限界です!ワルツ様がいない生活など、無意味も同然!今すぐそちらに向かうで、今しばらくお待ち下さい!』


「い、いや、待つのじゃ、ユリアよ。主が王都を離れたら、一体誰が情報局を回すというのじゃ?」


『ツーッツーッツーッ……』


「……切れておるのじゃ」


「大変ですね……」


と、無線を使ったユリアとテレサのやり取りを聞いて、苦笑を浮かべるユキ。

どうやらユリアは、自身の翼で飛んで、オリージャまでやってくる腹づもりらしい。


そんなユキの横には、彼女の姉のヌルもいたのだが……彼女は、少々不満げに、こんな言葉を呟いた。


「上の者の命令を聞かないなんて……まったくユリアは、何を考えているのでしょう?」


と、言った後で、はぁ、と溜息を吐くヌル。

恐らく、彼女としては、元部下であるユリアの自分勝手な行動が、目に余ったのだろう。


その言葉に、どういうわけか呆れたような表情を見せながら、テレサが返答する。


「ほぼ間違いなく、ワルツのことしか考えておらぬのではなかろうかの?……お主のように」


「わ、私は、ワルツ様のことだけを考えているわけでは……」


するとテレサは、何を()()()のか、声のトーンを変えてこう言った。


「ほう?違うと?ふむ……。なれば、主程度、らいばるでも、競争相手でもないのじゃ。そんな半端な心持ちでワルツに想いを馳せるなど、片腹痛いのじゃ!さっさと、主がほっぽり出してきた国に帰るが良いのじゃ!」


そして頬を膨らませて、不満げな表情を浮かべるテレサ。

どうやら彼女は、ヌルのワルツに対する想いが半端だったことも然ることながら、親しい間柄にあるユリアの事を悪く言われなくなったようである。


対して相手側の魔王ヌルは……


「……ならば、どちらの想いがワルツ様にふさわしいか、白黒つけようではないか!」


遥かに年下のテレサにコケにされたことが気に食わなかったのか、かつて暴虐の限りを尽くした魔王らしい言葉を口にした。


……しかしである。

その隣にいたユキの方は、表情を真っ青にして、必死になってヌルを止めようとしていたようだ。


「ぬ、ヌル姉様?!それは拙いです!今すぐに撤回して下さい!」


その言葉を聞いて、


「ふん。私がこんな小娘に負けるはず無いだろう!」


と、イライラした様子で返答するヌル。

そんな彼女の返答を聞いたユキは……今度はテレサの方にこう言った。


「て、テレサ様?お手柔らかにお願いしますよ?消えろとか、消滅しろとか、爆散しろとか言わないで下さいよ?!」


「なに、特に問題はないのじゃ。だた一言、こう言えば妾の勝ちなのじゃ?」


そしてテレサは……二人のやり取りに首を傾げていたヌルに対して、言霊魔法を発動し、何気なくこう言った。


「『ヌル殿?妾の勝ちなのじゃ』」


その瞬間、


「あ、はい。私の負けです……」


と、生気のない表情でそう口にするヌル。

たとえ魔王とは言え、通常の生物と同じ頭の作りをしている以上、テレサの言霊魔法によって意識を書き換えられる前に武力を行使しなかったヌルは、その時点で既に負けていたようである。


「ホント、怖い魔法ですね……」


「まぁ、安心するのじゃ。滅多なことでは使わぬからのう」


「そ、そうですか……(あれ?じゃぁ、何で尻尾が3本から2本に減ってたのですか?)」


そしてユキが、今は1本に減ってしまったテレサの尻尾に目を向けた……そんな時。


「……テレサ?ヌルのこと、イジメちゃダメよ?」


3人がいたテントへと、ワルツがやって来た。

そして、生気のないヌルを見たワルツは、事の次第を大体察して、テレサに対しジト目を向けながら、こう口にする。


「何があったのかは知らないけど……ちゃんとヌルのことを、元に戻しておきなさいよ?」


「う、うむ……分かったのじゃ……」


とワルツの言葉に、素直に従うテレサ。

それから彼女は、1日に3回しか使えない言霊魔法の最後の1回を行使したのである。

まったくもって、長い話じゃのう……。

正直、ストックが0になったのと同時に、もちべーしょんも0になっておったりするのじゃ……。

そんな話に、どうやったらメリハリを持たせられるか……最近はそんなことばかりを考えておるのじゃ。


その中で考えておったのが……話の内容の種類について整理する、ということなのじゃ。

これまでは、書きたいことを延々と並べておっただけじゃからのう。

それを整理して、もうすこしスッキリさせたい、と思ったのじゃ。


この物語の内容を分別すると、大体こんな感じになると思うのじゃ?


・キャラクター同士の話

・キャラクター個人の話

・国の話

・戦闘の話

・エセ科学やエセ魔法の話


その中には、更に細かい分類があると思うのじゃ。

それらをまとめると……およそ、20後半〜30前後になるのではなかろうかのう?

数だけを考えるなら、ちょっとかなり多すぎる気がしなくもないのじゃ。

まぁ、長い物語じゃから、章ごとに違うというなら、良いのかも知れぬがの?

じゃが、現状、入り乱れて、そうなっておらぬのじゃ……。


まぁ、本章あたりから、その辺の整理を考えながら、書いていこうと思うのじゃ。

目標は……1章あたり、5〜7種類くらいかのう。

広く浅くではなく、狭く深く、なのじゃ!

……それで、どうにかなる問題なのじゃろうか……。

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