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8.2-07 河畔の国7

「お、おっほん……。吾輩はオリージャのしsy」


「おっとすまない。鍋を運ぶのに邪魔だから、そこどいてくれ」


「おお、すまない……」


と、まるでたらい回しされるかのように、オンボロ馬車に近づいたところで……そこから大きな鍋を下ろしていた猫の獣人女性に邪魔者扱いされてしまうオリージャ王国の使いの男性。


その他にも、


「テレサちゃん、またトランプでイカサマしたでしょ?」


「そ、そんなことはないのじゃ?」


「だって尻尾、一本消えてるじゃん……」


「おっと、狩人殿の手伝いをせねば……!」しゅたっ


「あ、逃げた!」


と追いかけっこを始める少女たちや、


「ふぅ。靴下をとりあえず100足分作りました。これで、1年は大丈夫でしょう」


「す、凄い量ですね……(あれ?でも、シュバルちゃんも、ポテンティアちゃん、足はあったでしょうか?)」


袋に詰めた大量の靴下に眼を向けながら、そんな会話を交わす美女たち。


更には……


「コルテックス!いい加減、国境の位置を教えなさい!一体どこまで行ったら、国境を超えるのよ!?」


『…………zzz』


と、透明なスライムのような物体と格闘する、黒い狐娘(?)の姿をした少女の姿があったようだ。


その様子を見る限り、どう考えても、そこにこの隊を率いている責任者がいるようには見えなかったためか……


「……吾輩はコケにされておるのか?」


使者の男性は、いい加減、苛つき始めてしまったようだ。


そんな折、彼は一人のメイドの少女に話しかけられる。

ただ、そのメイドの少女は……何故か細身の中年男性を背負っていたようだが……。


「確かあなたは、オリージャの外交官の…………申し訳ございません。名前を忘れてしまいました。賢者(ニコル)は覚えていますか?」


「あぁ、見た事があるのは覚えている。だが……名前までは、俺も忘れてしまったな」


「……クラークだ」イラッ


と、今にも爆発しそうな様子で、自らをクラークと名乗った男性。


しかし彼は、目の前の2人が自分のことを知っている、という旨の発言したためか、どうにか怒りを抑えて、会話をすることにしたようだ。

というより、彼自身も、2人のことが思い出せなかったらしく、それが彼の怒りを抑える一番の原因になっていたようである。


「……申し訳ないのだが、2人とはどこでお会いしただろうか?」


と、直接名前を問いかけるのではなく、あった場所を問うことで、どうにか2人の名前を思い出そうとしている様子のクラーク。


そんな彼に対し、メイドの少女は特に表情を変えずに、そして細身の中年男性の方は、残念そうな表情を浮かべながら返答を始めた。


「確かあれは、オリージャの王宮でしたね……」


「あぁ……。立食パーティーでは、共に酒坏を交わしたな……」


「えっ……」


「あの時は、オリージャ国王の招きにあって、随分と良い歓迎をされたことを覚えています」


「うまかったよな……あの料理……」


そこまで言って……


「「もしかして、私(俺)たちの名前を忘れたのですか?」」にっこり


と、同時に口にするメイドと中年男性。

その様子に……


「うぐっ……!」


と、大ダメージを受けた様子のクラーク。

どうやら言葉とは、噂通り、武器にもなるようだ。


その後で、メイドに背負われていた中年男性の方が、真面目そうな表情を浮かべながら、こう口にした。


「確かあれは……大河の中に住み着いた魔物を退治した時のことだったな……」


その一言を受けて……クラークはようやく中年男性のことを思い出したようである。

ただ、当然のことだが、メイドが誰なのかについては思い出せていなかったようだが……。


「確かあなたは……エンデルシアが派遣した勇者パーティーの賢者様でしたかな?」


「あぁ、良かった。ようやく思い出していただけましたか。すっかり忘れ去られたかと思ってしまいました」


「いえいえ。あの時は、国民皆が助かりましたよ。あの御恩、まさか忘れるわけがないではありませんか」


と、今度は笑みを浮かべながら返答するクラーク。

そんな彼に対し、未だ思い出してもらっていないメイドの少女……もとい勇者は、しかし、表情を変えること無く、クラークに対して、こう言った。


「しかし、ニコルのことは思い出せても、やはり私の事は思い出せないのですね。まぁ、良いでしょう」


「えっ……いや……た、確か……カタリナ……」


「いえ、私はカタリナではありませんし、今や彼女は、勇者パーティーにも属していません。いえ、そもそも、既に勇者パーティーは解散した、と言ったほうが良いかもしれませんね」


その瞬間、


「…………?!」


と困惑の表情を浮かべるクラーク。

それは、目の前の少女が誰なのかに気づいたためか、それとも、勇者パーティーがもうこの世には存在しないことを知ったためか……。

いずれにしても、彼の驚き様は、相当なものだったようである。


そんなクラークに対して、勇者はお構いなしに、話題を変えて問いかけた。


「ところでクラーク様。ここへは何をしにやって来たのでございますか?」


その問いかけに、クラークはハッとして、自分の目的を思い出すと、その理由を話し始めた。


「そ、そうであった。吾輩は、このミッドエデンからやって来た者たちに、事情を聞くのと、話し合いの用意があることを伝えに参ったのだ。もしやこの者たちは……ゆ、勇者様が率いておられるのか?」


「いえ、私ではありません」


「やはり、貴方様が勇者様だったのですな……」


と口にした後で、勇者の過去にどんなことがあったのかを想像したのか、頭を抱えてしまうクラーク。

そんな彼に対し、メイドの姿をしていた勇者は、誰がこの一行の責任者なのかを説明した。


「この部隊を率いているのは……あの方です」


「あの方……」


そして勇者と同じ方向に視線を向けるクラーク。

するとそこには……


「ズルをするテレサちゃんのこんな尻尾なんて、引っこ抜いてあげる!」ぐぐぐぐ


「や、やめっ……もげる……もげるのじゃ!!」ぎぎぎぎ


と、残り2本に減ったテレサの尻尾を、両手で引っ張るルシアの姿が……。


「……あの者たちが、責任者……?」


「いえ、違います。その向こう側です」


「その向こう側…………」


そして、2人のその向こう側にいた人物の姿を見て……クラークは言葉を失った。

そこには、スライムのような物体を追いかけている狐の獣人と思しき少女がいたのだが……そんな彼女の姿が、どう見ても異様だったのだ。


「逃げようったって、そうは行かないわよ!コルテックス!」


そう口にする彼女がどう異様だったのか……。

それを端的に言うなら……人の姿を保っていなかった、と表現すべきだろうか。

外れて動く腕、スライムの後ろに回り込んで追い込もうとしている胴体、更には宙に浮く頭などなど……。

まさに常軌を逸していたのである。


その様子を見て、クラークは悟ってしまったようだ。

自分は、来てはならない場所に、やって来てしまったと……。


こうして彼は、死以上の何かを覚悟して、話し合いの場に着くことになったのである……。

今日は予定があった故、この文は昨日書いたものなのじゃ。

じゃが、どういうわけか、前話とは違い、30分程度で修正が終わってしまったのじゃ。

この間には、どんな違いがあるのじゃろうかのう……。

まぁ、何となく分かっておるのじゃがの。


ともあれ、なのじゃ。

コレを書いておる昨日の妾は……実は、朝早く起きねばならぬというタスクがある故、あとがきを書いておる余裕がなかったりするのじゃ。

というわけで、あとがきは、ここでショートカットさせてもらうのじゃ?

ご了承くださいなのじゃ!

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