表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
711/3387

8.2-06 河畔の国6

ユキ殿の一人称を修正……。

「さて……先方はどう動くのかしらね?」


百数十メートルほど離れた場所で、自分たちを囲む兵士たちの姿を、馬車の幌の内側から覗き見るワルツ。

果たして戦闘が始まるのか、それともそれ以外のことが起こるのか……。

一応、皆を引き連れる立場にあった彼女は、そんなことを考えながら、念のために周囲を警戒していたようである。


そんな彼女がいる馬車の中では……


「どーん、と吹き飛ばしても良いかなぁ?もちろん、本当にやるんじゃなくて、脅しでね?」

「ふっふっふ……妾たちが乗ったこの馬車に近づいたが最後。言霊魔法で、ふれんどりーふぁいやーなのじゃ!」

「……このシリウス様……じゃなくて、ワルツ様やテンポ様の馬車を取り囲むとは、下賤な奴ら……。皆、凍りつかせて見せよう!」


と、外を警戒しつつも、いつも通りに和気あいあいとしながら、皆、やる気満々な様子だったようである。

もしかすると、この馬車は、今、世界で一番危険な弾薬庫と化しているのかもしれない……。


そんな中、表情を変えず、そして外にも眼をくれず、淡々と編み物を続けていたテンポが口を開いた。


「皆様、まずは落ち着きましょう」


その言葉に、どういうわけか、


「う、うん……そうだね」

「そ、そうじゃな。まだ何か始まったわけではないからの……」

「えっ……あ、はい。テンポ様がおっしゃられるなら……」


と、急に落ち着きを取り戻す一同。

これがアトラス辺りのセリフだったならどうなったかは分からないが、普段、何を考えているのか分からないテンポの言葉だったためか、皆が一様に口を閉ざしてしまったようだ。


その後でテンポは、こんな一言を口にする。


「慌てても仕方ありません。もう終わってますからね」


「「「……えっ?」」」


ドゴォォォォン!!


テンポが言い終わるのと同時に、外から聞こえてくる大きな音。

その音源は、ワルツたちや騎士たちの馬車を取り囲む、オリージャの兵士たちの……その背後の方から聞こえてきたようだ。




「……勇者様。この辺りまで来ると、吹き飛ばせる木が生えていないので、今までのように特訓することが出来ません。したがって、その辺にいる兵士たちを代わりに吹き飛ばすことで、今日の訓練としましょう。どうやら皆さん、ワルツ様方の馬車を狙っているようですし……一石二鳥ってやつですね!」


ドゴォォォォ!!


「……あの、ユキ様?私は走り込みをしているつもりはありますが……もしかして、木々や人々を吹き飛ばすのが、本当の特訓内容だったのでしょうか?あのー……ユキ様ー?聞こえてますー?」


「諦めろ、レオ……」


と、今日も猛烈な速度で走り去っていったユキに対し、呆れを隠せない様子の賢者。

一方、勇者の方は、未だユキの意図を理解できなさそうではあったものの、徐々に慣れつつあるようだ。


その後、勇者は、その場にいても仕方がないので、いつも通りにユキの背中を追いかけ始めた。

もちろん、今日も、賢者を背に負って、である。


そんな3人は、馬車から少し離れた場所で、魔物を倒しながら走っていたためか、オリージャ兵たちには見つかっていなかったらしい。

そのため、彼らは、兵士たちの背後から近づくことに成功したらしいのだが……それを知ったユキが、どういうわけか、変な気を起こしたようである。

結果、彼女は、誰も歩いていない新雪の上を歩くようにして、殺気立った兵士たちの中へと突っ込んでいったわけだが……


ドゴォォォォン!!


どうやらそれが、ワルツたちの耳に届いた轟音の原因だったようである。


「清々しいほどに吹き飛ばしていきますね……。アレは確か、放物線と言いましたか……」


「あれ食らって、生きてるんだろうか……」


と、どうにかこうにかユキを追いかけながら、その光景を眺めて、呟く2人。


すると、ユキに吹き飛ばされて倒れていたオリージャ兵の内、まだ動ける余力を残していた者が、槍を持って勇者たちに襲い掛かってきた。


「よくも仲m」


「……遅いです」


ドゴォォォォ!!


「ぐはっ!!」


襲い掛かってきた兵士を、巧みな体捌きで避けて、腹部に回し蹴りをお見舞する勇者。

その際、兵士の槍が、賢者の本に突き刺さり、穴が開いてしまったのは、偶然のことか……。


「……レオ。少しは背中にいる俺のことも考えてくれ……」


「これは失礼いたしました。では、もう少し丁寧に……」


ドゴォォォォ!!


「……回し蹴ろうと思います」


「……あぁ、頼んだ」


そして勇者たちは、ユキが作り出した戦場の中を、何食わぬ顔で走り抜けていったのである……。


一方、先を走っていったユキの方は、というと……


「ちょっと通りますよー」


ズドォォォォン!!


ファランクスのような陣形を作られて、長い槍を向けられても何のその。

物理的な攻撃も、魔法的な攻撃も、一切防御することなく、ただひたすらにオリージャ兵たちの中を走り抜けていた。


その様子を見て兵士たちは……


「ば、化け物?!」

「目の前にはミッドエデンの奴らがいるってのに!」

「た、隊列を乱すな!!」


と、ユキが暴れている姿を見ても、彼女がミッドエデンから来たとは考えなかったらしく、皆、大混乱に陥っていたようだ。

いや、むしろ彼らは、彼女がミッドエデンから来た者だと分かっていて、しかし素直に受け入れられなかったのではないだろうか。


血に染まりながら、それに似合わない明るい表情を浮かべつつ、喜々として戦場を駆け抜けていく少女がミッドエデンの出身だとするなら、未だ何も動きを見せていない隊列の中からは、一体何が出てくるというのか……。

兵士たちは、一体どんな者たちを相手に戦おうとしているのかを考えて……程なく思考が停止してしまったようである。




そして、彼女たちがオリージャ兵の隊列の中を20週ほど走り込んで、地面に立っている物が誰1人としていなくなった後。

ルシアが彼らに対して申し訳程度に広域回復魔法を放ってから、何もなかったかのように再び隊列を先へと進めて……。

道が二股に別れている場所で、ワルツたちは野営を張ることにしたようだ。


その分かれ道の、さらにその先を眺めて……


「こっちの道をまっすぐに行けば、イブたちの国があるかもなの?ユキちゃん」


「さぁ、どうでしょう?方角的には合っているかもしれませんけれど、その手前には大河がありますから、それをどうにかしないと、ボレアスには行けないかもしれませんね」


と、会話を交わすイブとユキ。


するとイブは、何か疑問に思ったことがあったのか、首を傾げながら、ユキに対して問いかけた。


「そういえばイブは、その『大河』っていうのを見たことが無いかもなんだけど……船とかで越えられないかもなの?」


彼女は、ボレアスからミッドエデンに来る際、エネルギアに乗ってやって来たわけだが、雲の上を飛んでいたために、下に広がっていた大河を見たことが無かったようだ。

さらに述べるなら、ロリコンに誘拐されて、ワルツたちに救出された際にも、彼女はエネルギアに乗って大河の上を飛んでいたのだが、その際はカタリナの医務室で理不尽な注射を受けていたので、やはり大河を見ていなかったりする。


「そうでしたか……。実はボクも、大河に行くのは初めてなんですよ。なので詳しいことはボクにも分かりませんが、大河には溶岩が満ちていて、船では渡れないようです。いつも見に行きたいと思っていたのですが、ヌル姉様や他の姉妹たちから、行くことをきつく止められて……。……アインスは熱いものが好きだから、大河に行くと絶対泳ぐ、とか言われてたのですよ?まったく、溶岩の中で泳ぐわけないじゃないですか…………じゅるっ」


「う、うん。ユキちゃん。絶対、大河で泳がないでね?ユキちゃんがいなくなったら、イブ、もう立ち直れないかもなんだから……」うるうる


「えっ……あ、はい……。大丈夫ですよ。イブちゃんの前から消えるなんて事はしないですから」


そう言って微笑んで、イブの肩に手をそっと置くユキ。

その際、イブが、その手に残念そうな視線を向けながら、そちらに向かって少し頭を傾けていたのは、何故だろうか……。


と、そんな時である。

二股に別れた道の内、西側の首都へと続くだろう道の先から、こちらに向かってやってくる馬車の姿が、イブたちの視界に入ってきたようだ。


「何だろ?あれ……」


「行商の方の馬車……というわけでは無さそうですね」


妙に凝った装飾が施された馬車を見て、そんなやり取りを交わすイブとユキ。


その馬車は、そのままイブたちの前を通過すると、ワルツたちの馬車の前……を、更に通過して、その後ろにあった、最も豪華そうな装飾が施されている馬車の前で停車した。

そして、間もなくして、皺のない燕尾服のような服を来た男性が、止まった馬車の中から降りてきて……。

そして彼は、目の前の馬車と、周囲の騎士たちを一通り眺めてから、こんな声を上げた。


「……吾輩は偉大なるオリージャ王国からの使者である!ミッドエデンの勇士たちを率いる代表者に、お目通り願いたい!」


どうやら彼は、オリージャ政府が派遣してきた使者だったらしい。


その声を聞いたのか、彼の近くにあった馬車から、今日も(かんな)と金槌を装備した騎士が、何事かと降りてくる。

そしてその騎士は、そこにいた男性の姿と、先程の声の内容から、彼が何者であるかを察して……結果、困ったような表情を浮かべて、こう返答した。


「あの……こっちは一般兵の馬車です。そういった話は、あちらの馬車に乗っている方々のところでしていただけませんか?」


「む?あちらの……馬車だと?」


「えぇ。あそこに止まってる、一番こきたない馬車……あ、すみません。アトラス様からは、オンボロ馬車と呼ぶように言われていました」


「…………」


騎士が視線を向けた先を見て……そして閉口する使者の男性。

どうやら、そこにあった馬車は、彼の想像とは大きくかけ離れて……凄まじくボロかったようである。

うむ……。

やはり、書くのが大変なのじゃ。

前にも書いたのじゃが、これまでなら、1時間程度で終わっていた修正作業が、凄まじく長く掛かるようになってしまったのじゃ。

もう少し手を抜いて、修正に掛ける時間を短くすべきかのう……。


どうしてこんなことになっておるのか、自分でもよく分からぬのじゃ。

ただとにかく、修正に時間が掛かるのじゃ。

いや、もしかすると、これが普通なのかも知れぬのう……。


まぁ、悩んでおっても、どーせ解決しない類の問題なのじゃ。

その内、時間が解決してくれるじゃろう……。

多分の。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ