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8.2-01 河畔の国1

「…………で、これからどうする?」


ゾンビたちの退治が終わって一夜明け。

朝日に照らし出されたノースフォートレスから、今もなお黒い煙がモクモクと上がっている様子を目にして、その原因となったワルツが、隣りにいた弟のアトラスへと問いかけた。

そんな姉の問いかけに、


「いや、そんなこと聞かれても、元はと言えば、町を吹き飛ばしたの姉貴だろ……。どうすんだよ、ホントに……」


そう口にするほか、返答のしようが無かった様子のアトラス。

当初の予定では、廃墟と化して誰もいなくなったこの町に、彼は部下たちを置いていくことになっていたが、街の中心からマグマが見え隠れしているなど、とても安全な状況とは言えなかったので、彼としては計画の見直しを図りたかったようである。

だが、ワルツ同様、どうすれば良いのか分からず、ただひたすらに頭が重かったようだ。


そんな弟の返答を聞いてか、聞かずか……。

ワルツは、恐らく最初から言うつもりだっただろう、こんな一言を口にした。


「一旦、コルテックスに話を通しておくべきよね……」


「まだ話してなかったんだな……」


「いやさ……あの娘と話すこと自体は、別にいいのよ?それ自体はね。でもね……このパターンで行くと……」


と、ワルツが、嫌な予感を思い浮かべた瞬間だった。


『空から失礼しまーす!お届け物でーす!』


丁度、頭の上を通過していくところだった黒い戦艦から、そんな声が降ってきたのである。


「ほら来た……」


「ほら来たって……姉貴、少し身構え過ぎなんじゃないか?」


「なら、あんたが対応しなさいよ」


「……おっと。俺は朝の点呼があるんだ。ちょっと行ってくる」スタスタ


「…………はぁ」


ドゴォォォォン!!


そしてアトラスが立ち去っていった場所から、突然土煙が上がり……。

そこから一人の人物が姿を見せた。

どうやらその人物は、空から猛烈な勢いで落下してきたらしい……。


「……残念ですね。あとちょっとだけ早ければ、愚弟の脳天に、激しいツッコミができるところだったのですが……」


そう口にして、手刀で何かを切るような仕草をしながら、ゆっくりと立ち上がったのは……1週間ほど前に、ミッドエデンの北部森林地帯と中央平原を隔てる山脈の麓の町に残してきた、テンポである。

テンポがここへとやって来たということは……恐らく彼女は、反乱を起こした町民たちのことを、王都から駆けつけた別動部隊へと、無事に引き継ぐことが出来たのだろう。


「……コルテックスから話を聞いてきたの?」


「いえ、ポテンティアに聞きました。これほどの大きな失態……お姉さまは、コルテックスには報告せず、適当な理由を付けて、もみ消すつもりだったのではないですか?」


「……よく分かってるじゃない」


と、ワルツとテンポが、それぞれ違う意味で、呆れた雰囲気を見せた時のことだった。


『あ〜、別にわざわざ報告しなくてもいいですよ〜?大抵の場合、お姉さまは、ほぼ完璧に最悪のケースを実現してくださると分かっていますからね〜。まったくもって嘆かわしいですね〜』


どこからともなく、コルテックスの嬉しそうな声が聞こえてきたのである。

その声の出処は、テンポの無線機でも、ワルツの無線通信システムでも、その他の者が持っている通信機でもなかったようだ。


ではどこから聞こえたのかというと……


「コルテックス……?あんた、どうやって喋ってんの?」


『ここですよ〜?ここ〜』


「……朝起きたら、頭の上に、コルの声がするスライムが載っておったのじゃが……これ、何なのじゃ?」


寝起きでボサボサな髪型になっていたテレサの……その頭の上に載っていた物体からだったようだ。


その透明な物体に見覚えがあったのか、ワルツは眉間に皺を寄せて、嫌そうにその物体の名前を口にした。


「マクロファージ……」


『正解です。マクロファージ1号ちゃんです。王都からでも皆さんの行動が確認できるよう、とうさt……監視機能を追加しておきました〜』


「言い直しても、あまり変わってないわよ……」


そしてワルツは、事態をもみ消すことが出来ないことを悟ったのか、頭を抱えてしまったようだ。


その後。

直径30cm程度の空気の塊のような姿をしたマクロファージは、テレサの頭から地面に降りると、まるでナメクジのように地面を滑って、ワルツの前まで移動した。


それからマクロファージは、ワルツのことを見上げながら、コルテックスの声で再び話し始める。


『それで〜……お姉さま〜?判決を言ってもいいですか〜?国家評議会(?)の判決ですけど〜……』


「言っておくけど、わざとやったわけじゃないし、誰かに危害が出たわけでもないからね?っていうか、そんなことより、現状が分かってるなら、騎士たちをどうすればいいのか、その判断くらい手伝いなさいよ……」


『えぇ〜、分かってますよ〜?まぁ、聞いて下さい。そのための判決ですから〜』


そう言うとコルテックスは……ただ聞いただけでは何を目的としているのか分からない発言を口にし始めた。


『この子〜……マクロファージちゃん1号と騎士たちを連れて、ノースフォートレスより北にある、隣国のオリージャの首都に向かって下さい。ノースフォートレスについては〜……まぁ、解散ということにしましょう〜』


「はいはい……。でもいいの?そんな簡単にノースフォートレスを諦めちゃって……」


『……誰が、ノースフォートレスをこんな風にしたのですか〜?』


「あ、はい……。私です……」


『分かっていただければ結構です。あとの詳しい説明については、到着してから話すことにしましょう。それと〜……いつもではないですが、時間がある時はここから眺めているので、下手な行動は謹んでくださいね〜?お姉さま?それにアトラス〜?』


「俺は何もしてねぇよ?!」


そしてコルテックスの気配が無くなり……マクロファージちゃん1号(?)は、テレサの頭の上に戻った。


「ふむふむ……。改めて見ると、ペットのようで可愛いものじゃのう?」


「いや、そりゃどうかと思うわよ?テレサ……」


「あぁ……。同感だ。機会があれば、エネルギアに乗せて、どっかに捨ててきたほうがいいと思うぜ……」


『聞こえてますよ〜?アトラス〜?そんなアトラスのために、もう1匹、送りましょうか〜?いえ、この際ですし、ありったけ送ることにしましょう』


「いや、見ればみるほど可愛いな!このスライム」


「「…………」」


と、態度と表情が、180度近く変わったアトラスの姿を見て、不憫に思ったのか閉口するワルツとテレサ。


そんな中、一人、話から取り残されていたテンポが口をはさむ。


「……で、私はどうしましょう?特にやることがないのなら、王都に戻って、機動装甲の製作に戻りたいと思うのですが……」


「そうね……まぁ、たまには貴女も、旅をするって言うのもいいんj……あ……」


「それもそうですね。では、暫くの間、お供させていただきましょう」


「ちょっ……今のじょうd」


「おや、お姉さま?何か言いたいことでもあるのですか?まさか、今のは冗談だったとか、思わず口が滑ったとか……そんな冷たいことは言いませんよね?」


「……間違えた……何でテンポなんかに……」


とワルツは自分の発言に対して悔いるような呟きを口にするのだが……。

その言葉はテンポにも届いているはずなのに、彼女がそれに気付いた素振りを見せなかったのは……やはりテンポも皆と旅をしたかったから、ということなのだろうか。

なんかのう……。

日に日に修正が大変になっていく気がするのじゃ……。

文のつながりを考えるのが、凄く難しいというか……。

しばらくは、頭を悩ませる日々が続いていくのじゃろうのう……。


まぁ、そんなこんなで、この話から、ミッドエデン国外の話に移っていくのじゃ。

とはいっても、同じ世界の話じゃから、吹っ飛んだ物が出てくることは無いと思うがの。

その点は、ご了承下さいなのじゃ?

…………多分の。


さて……。

今日は新しい話を書くこと以外にやらねばならぬことがある故、あとがきはここで終わらせてもらうのじゃ。

……数式……予測制御……今日はもう寝られぬかも知れぬ……zzz。

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