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8.1-28 北への旅路28

少しだけ修正したのじゃ。

「こ、このゾンビたちって、倒さなきゃならないんですよね……?」


あー、うー、と言いながら(?)、新鮮な肉を見つけたと言わんばかりの様子で近寄ってくる元町人のゾンビたちを前に、どう行動していいのか分からなくなったユキは、隣りにいたアトラスへと、ある意味、当然とも言えるそんな質問を投げかけた。

果たして、彼らのことを、ひと思いに吹き飛ばしていいものなのか……。

今や医療を学ぶという立場にいた彼女には、簡単に決められなかったようである。


それに対してアトラスは……


「そうだな……」


と言って、数秒間考え込み、そしてこれからの行動について、短く結論を口にした。


「……逃げるか」


「あ、はい」


そして迫り来るゾンビたちへと背を向けて、迷うこと無く走り始めるアトラスとユキ。

どうやらアトラスも、元は町人だった彼らへとそう簡単に手を下していいかどうか、決めかねたようである。


そんな2人の行く先は、今もなお教会の屋根の上で意識を失って横になっているだろう、ヌルと剣士たち2人のところだった。

町に漂っているだろう毒ガスを抜く手立ては講じたので、あとは、意識の無い2人をどうにか町の外へと連れ出して、ワルツたちと合流した後で体勢を立て直してから、対処に移れば良い……そう判断したようだ。


そして2人は、広場からほど近い距離にあった教会へと辿り着いたわけだが……そこには、今まで姿を見せていなかったというのに、


ア゛〜……


と、僧侶の姿をしたゾンビが徘徊していたようだ。


その姿を見て、ユキが思ったことを素直に口にする。


「……ゾンビ取りがなんとやら、とは、このことを言うのでしょうか?」


「さぁな。僧侶がゾンビを浄化できるってのは、おとぎ話の世界だけだと思うぞ?」


「……そうだと思ってました」


と、苦々しい表情を浮かべるユキ。

彼女のその表情は、幾つもの理由があって浮かんできたもののようだが……その中には、早く姉たちのところへと戻りたい、という焦りが大きく関係していたようである。

何も進路上にいるゾンビは、眼の前の1体だけ、とは限らないのだから……。


結果、2人は強行手段に出ることにしたようだ。

それは進路上に出現したゾンビを、手当たり次第にすべて粉砕する……というものではなく、超人的な体力をもった2人だけにしかできない方法だった。


「……ユキ!跳ぶぞ!」

「はいっ!」


シュタッ!

シュタッ!


と、ジャンプして僧侶ゾンビを飛び越え、そして教会の屋根へと飛び乗ったのである。


……ただまぁ、


ズドォォォォン!!


……重金属製の骨格が重すぎて、2人とも着地の衝撃で屋根を突き破り、教会の中へと落ちてしまったようだが……。




そして、どうにかこうにか、ヌルと剣士のところへと戻ってきたアトラスたち。

幸いなことに、ゾンビたちの姿は、屋根の上に無かったようだ。


「ひ、酷い目に遭いました……」げっそり


「今度、反重力魔法をルシアに教えてもらうか……」げっそり


そんな2人が、疲れたような表情を浮かべていた理由については、言うまでもないだろう。

ただ、彼らのその表情は、何も屋根から落ちてしまったことだけが原因だったわけではなかったようである。


「問題は帰りだよな……」


「そうですね……」


これからヌルたちを担いで、再び戻らなければならないだろう帰り道のことを考えて、悩んでいたのだ。


ユキたちの運動能力を考えるなら、15mほどの高さがある屋根から飛び降りて、超高速で地面を走る……というのも、決して不可能な話ではなかった。

だが、生身の人を連れて、となると話は別だったのである。


地面に着地する際の衝撃、走る際の小刻みな上下振動、もしもの際の急ブレーキなどなど……。

その加速度は、恐らく、ビルの4階から地面に叩き付けられる衝撃と同等で……それも、町から抜けるまで、延々と同じような衝撃が続くはずだった。

それも、背中に担がれている者に意識が無いとなると、彼らが衝撃に構えることは出来ないので、意識がある状態の時よりも、大きな怪我を負ってしまう可能性が高かったのである。


「下に降りないで、屋根の上を走る、っていうのはダメでしょうか?」


「……ユキ。着地でミスらない自信はあるか?」


「無いです」


と、今さっき、失敗したばかりだったためか、真顔で即答するユキ。


対してアトラスの方には、何か案があったらしく、ユキに対してこんな言葉を投げかけた。


「エネルギアに協力してもらおう。本体の方じゃなくて、マイクロマシンの方な?アイツなら、剣士を喜んで運ぶだろうし……そうすれば、俺たちのどちらかが前衛に出て戦えるはずだから、安全に町を抜け出せるだろう」


「なるほど。それは名案ですね」


「なら早速……」


と言って、自身に内蔵された無線通信システムを起動するアトラス。

その通信相手は、言うまでもなく()()()()()である。




……そのはずだった。

実際、エネルギアには、しっかりと連絡が取れていたのである。

いま行く、と。


しかし、結果として、空飛ぶエネルギアの船体から教会の屋根の上へと降りて来たのは……


シュタッ……


「…………」ムスッ


と、着地早々、不機嫌そうな表情を浮かべたカタリナと……


「…………」にょろ


彼女の白衣の隙間から見え隠れする、黒い影のようなシュバルだった……。

どうやらエネルギアが、剣士を救いたい一心で、船内にいた彼女たちへと声を掛けたらしい。


「ど、どうしてカタリナ姉が……」

「な、何故、カタリナ様が……」


その姿を見て、ゾンビが出てきたときよりも、驚いたような表情を見せるアトラスとユキ。

するとカタリナは、大きなため息を吐きながら、彼らに対してこう言った。


「2人とも、けが人がいると言うのに、何を遊んでいるのですか?対処できないなら、早く私を呼んで下さい」イラッ


そう口にしつつも、ヌルと剣士の治療を始めるカタリナ。

その際、シュバルも、カタリナの白衣の中から手(?)と首(?)だけを出して、ヌルのマントに付着していたインビンシブルジェリーに齧りついたようだ。

もしかすると、彼も活躍したかったのかもしれない。


そんな2人に対し、アトラスは言い訳を口にする。


「町中が毒ガスらしい雰囲気に包まれててな……。カタリナ姉を呼んだはいいが、それで何かあったら大変だと思って、あえて連絡は取らなかったんだ」


するとカタリナは、ルルたちに掛けていた回復魔法を止めること無く、返答した。


「心配してくれてありがとう……と言うべきでしょうか?しかし、アトラス。私は、毒ガスやVXガス程度で、どうにもなりませんよ?常に回復魔法もかかっていますし、コルテックスから分けてもらったナノマシンも血液中を流れていますからね」


「そ、そうだったんだな……(か、完全に化け物じゃねぇか……カタリナ姉……)」


「ほ、ほう……(すみません……何を言ってるのか、さっぱり分かりません……)」


と、カタリナの発言に対して、どうにか戸惑いを隠そうとするアトラスとユキ。

だがそれでも、2人とも困惑を誤魔化しきれていなかったようだが……。


そんな2人の反応を見つつ、目の前の患者たちの治療を早々に終えたカタリナは、おもむろに立ち上がると、教会の屋根の端の方まで歩いていき、


「ゾンビ、ですか……」


眼を細めて彼らを見つめ、そして白衣の中に手を入れて小さな瓶を取り出した。


「今となってはあまり意味のないものになってしまいましたが、これを掛けると、どうなるんでしょう……」


そしてそれを迷うこと無く、


ブゥン!


真下にいた僧侶の姿をしたゾンビへと投げつけたのである。


するとその瓶は……残念なことにゾンビに当たることは無く、そのまま地面へと落下して、


パリンッ!


と、割れて弾けた。

するとそこからは、当然のごとく中の液体が周囲へと飛び散って、


ベチャッ……


と、近くにいた僧侶ゾンビに付着するわけだが……


ア〜…………バタッ……


それを浴びて間もなくして、ゾンビは地面へと倒れ込むと……どういうわけか、彼はそれっきり動かなくなってしまった。


そればかりか、


サァー……


身体が砂のような状態になり、町壁が無くなった町の中を流れる新鮮な風によって運ばれて、来ていた法衣以外、完全に姿を消してしまったのである。

その様子を例えるなら……浄化された、と表現できるだろうか。


「……やはり、既に命を落としてしまった人を救うには至りませんか……」


風に乗って、消えていった僧侶に対し、感慨深げな表情を見せるカタリナ。


それを見て、アトラスが彼女に問いかける。


「それってまさか……聖水か?」


するとカタリナは、空を見上げて、そこで輝いていた大きな月を眺めながら、どこか忌々しげにこう言った。


「……昔。どこかの王様に台無しにされた研究成果……ですかね」


「王様に台無しにされた研究……あ」


そしてアトラスは思い出した。

かつて、エンデルシアの首都近郊に、人為的に作られた大量のゾンビたち現れた際、彼らをどうにか救おうと、カタリナが必死になって研究を進めていた治療薬のことを。

そして、彼女の努力を無駄にするかのように、自らの力を誇示して、事態を収束させたエンデルシア国王のことを……。


それからアトラスは、ゆっくりと後ろに下がって、カタリナから距離を取ろうとしたようである。

今の彼女に関わると、とばっちりを受ける……そんな予感があったようだ。


だが、そのせいで彼は、


メキッ……グラッ……


「うおっ?!」


ドゴォォォォン!!


自身が開けた屋根の穴を拡張して、自ら教会内へと再び落ちてしまった。

どうやら、カタリナから逃げても逃げなくても、彼が痛い目に遭うことに変わりはなかったようである。


一方、アトラスが不意に姿を消した際、その様子は近くにいユキは……姿を消した彼のことを、恨めしく思ったのだとか。

それほどに、この時のカタリナは、言い知れないドス黒いオーラを放っていたようだ。

うーむ……。

もうすこし……こう……あるのじゃ……?

それが何なのかまだ分からぬのじゃが、多分何かがあると予想して、新しい修正の方法を模索した……そんな今日このごろなのじゃ。

あ、修正と言っても、この話を投稿する時の修正の話なのじゃがの?


『いのべーしょん』のヒントは……おそらく、今まで着目していなかった所に、隠れておると思うのじゃ。

今回の場合は、活動報告にも書いた通り、修正のやり方を変えることでそれを見つけようと思ったのじゃ。


じゃがのう。

修正しても修正しても、いつまで経ってもバグが消えなかったのじゃ……。

まぁ、分の修正というものは、往々にしてそういうものじゃから、仕方ないのやも知れぬがのう。

あるいは、もしかして修正の方法が間違っておるのではないか……そんな風にも思うのじゃ。

まさに、雲をつかむような試行錯誤、と言えるじゃろうのう。


とはいえ、やり方を変えたのは今日が初日。

これからも少しずつ、工夫(?)を凝らしてみようと思うのじゃ?

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