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8.1-24 北への旅路24

「……ねぇ、お姉ちゃん。ヌルちゃんの背中に……何か生えてない?」


「えっ?魔王なら……あれくらい普通よ?」


「そ、そうなんだ……」


「うむ。魔王たるもの、第2形態以降は、背中から触手が生えておっても何ら不思議はないのじゃ。ヌル殿……狩人殿と狩りに行って、恐らく相当強力な魔物と戦ったのじゃろうのう……」


「う、うん……(なんでかなぁ……この2人が言うと、すごく胡散臭い気がするけど……2人とも真面目に言うから……やっぱり、魔王って、背中から触手が生えてるものなのかなぁ……?)」


背中にあったマントの上から、得も言われぬ謎の触手を生やしているヌルを目の当たりにして、複雑そうな表情を浮かべるルシア。

しかし、ワルツの偏見と、変な知識で記憶を上書きされたテレサの言動を前に、魔王とはそういうものだ、と彼女は自分を納得させることにしたようである。

なお、言っておくが、魔王に第2形態以降の変身があるのは、ゲームの世界の中だけである(?)。


彼女たちがそんなやり取りをしている先では……まぁ、当然のごとく、マントに張り付いて取れなくなったインビンシブルジェリーを剥がそうと、マントの持ち主であるヌルと、それをくっつけた本人であるユキ、それに夕食を作っている狩人……の代わりに時間があったアトラスが、それぞれ奮闘していたようだ。


「おい、ヌル。そのマント諦めろよ……」


「い、嫌です!このマントを諦めると……何となく、ボレアスのことも諦めることになるような気がして……」


「(なら、皇帝をやるのが嫌だからって、国から逃げ出して来るなよ……)」


「(国に戻れば、予備がたくさんあるじゃないですか……)」


と、意味はそれぞれ異なるが、抗議したそうな表情を浮かべるアトラスとユキ。


2人としては、そのまま捨ててしまえばいい、と思っていたようだが、マントを大事にしている様子のヌルをそのまま放置しておくわけにもいかなかったので……


「よし、ヌル。なら、そのマントごと茹でるってのはどうだ?」


アトラスはそんな提案を口にした。

つまり、マントごと調理(ねつしょり)してしまおう、というわけである。

キクラゲというキノコは、茹でることで初めて歯ごたえのある感触が出るので、うまくいけば一石二鳥と言えるだろう。


「マントを茹でても……大丈夫でしょうか?」


「さぁ?でも、そのマント、炎から身を守るためのものなんだろ?」


「それがすべて、というわけではありませんが、確かに炎耐性のエンチャントはかかっていますね」


「なら、大丈夫だろ」


「試してみる価値はありますか……」


とアトラスの提案に、渋々頷くヌル。

こうしてマントごと、インビンシブルジェリーを茹でる事になったのである。




結果。


「……茹でる前と何も変わらねぇ……」


「エンチャントがキノコを守ってしまったようですね……」


「熱さを受け入れれば、炎耐性のエンチャントなんていらないのに……」ボソッ


「(それはユキだけだ……)」

「(アインス……あなた本当に雪女ですか?)」


そんな彼女たちの会話の通り、マントに掛かっていたエンチャントは、装備している者だけを守るのではなく、触れていればすべてのものを守ってしまう特性があったようだ。


「こうなったら、マントが燃えない限界ギリギリの火力の火魔法で、じっくりと(あぶ)るしかなさそうですね……」


「そ、それは承服しかねますアインス!もしも燃えて焦げたりしたらどうするのですか?国章を燃やすなど重罪ですよ?」


「(そんな面倒くさいマント着て、狩りに行くなよ……)……しかし、どうする?このままでも、使い物にならないことに変わりはないと思うんだが……」


「最悪……このまま着ます!」


「「ちょっ……」」


と、ヌルの発言にギョッとする2人。

どうやらこのまま放っておくと、ヌルは本当に第2形態な姿に変わってしまいそうである。


そんな3人のところへと、夕食の準備を進めていた狩人が現れた。


「どうだ?進展は?」


「いや、ダメだ。狩人姉。茹でても、マントに掛かってるエンチャントのせいで、どうにもならなかったぜ」


「そうか……じゃぁ、火魔法で燃やs」


「本当に止めて下さい!」


「……そ、そうか」


そんなやり取りで、ここまでの経緯を把握した様子の狩人。

それから彼女は……


「……あ、そうだ」


何かを思いついたらしく、彼女の腰についていた革製のポシェットに手を入れて、そこから白い砂のようなものが入った小瓶を取り出し、こう言った。


「塩を掛ければ良いんじゃないか?漬物みたいにな」


「「「塩……?」」」


「よくあるだろ?テンタクルナメクジとか、テンタクルカタツムリとか、テンタクルナマコに塩を掛けると、面白いくらいに縮む、ってやつ。キノコも、塩漬けにして水を抜く、っていう調理法があるくらいだからな」


「あ、なるほど」


「確かに、マントには、塩耐性のエンチャントなんてついてないですからね……」


「そうですね。塩耐性など聞いたこともありませんし……」


「んー……だけどな」


提案したはいいものの、何か問題があったのか、狩人はそこで言い淀んでしまった。

それには、旅をしている彼女たち特有の事情があったようだ。


「インビンシブルジェリー全体を塩漬けに出来るほど、塩が余ってないんだよな……」


塩……。

それは、料理に欠かせない存在であると同時に、人が生きていくのに必要な調味料である。

特に旅をしていると、立ち寄った町で購入する以外では、入手方法が限られてしまう上、意外に重量があるために、大量には持ち歩いていなかったのだ。


もちろん、ありったけの塩を、騎士たちからかき集めれば、それなりの量を集めることができるだろう。

だが、ヌルのマントからインビンシブルジェリーを剥がすためだけに塩を消費するというのは、明らかに愚策だった。

まさか、マントを取り戻すために、3000人の騎士たちの命を危険に晒す、というわけにもいかないのだから。


しかし、幸いなことに、ここにはエネルギアもポテンティアもいるので、近くの町までひとっ飛びして、塩を買いに行く、という選択は決して不可能なことではなかった。

それに気づいたのか、


「……よし。ちょっとそこまで塩を買いに行ってくるか」

「手持ちの塩も、ちょうど少なくなってたところだった。いい機会だし、買ってきてくれるか?」

「私たち……本当に旅をしているのでしょうか……」

「ヌル姉様……それを気にしたら負けですよ?」


狩人は夕食の準備があるので出掛けることはできないが、アトラスとヌルとユキには時間があったので、近くの街まで塩を買いに出向くことにしたようである。


そんな彼らの行き先は……


「……ノースフォートレスでいいか」


ワルツたちの間で吹き飛んだと噂になっているノースフォートレスになったようだ。


なお、アトラスは別の馬車に乗っていたために、ヌルはルシアの大出力魔法を目の当たりにして放心していたために、そしてユキはやって来たばかりだったために……ノースフォートレスでの出来事については聞いていなかったりする。

日に日に投稿画面の表示速度が遅くなっていくような気がするのじゃ……。

なお、今のところ、ボタンを押してから表示されるまで12秒なのじゃ?

おかしいのう……低速回線ではないはずなのじゃが……。


まぁ、それはさておいて。

こうしてヌル殿は第2形態に変身(?)したのじゃ?

じゃが、変身したことで、むしろ弱体化しておる可能性も否定はできぬがの。


そして次回、アトラスたちは、ワルツたちよりも先にノースフォートレスへと行くわけじゃが……たまにはこんな方法で、旅を進める、というのも悪くは無いのではないか……そんな風に思うのじゃ。

ただ、問題があってのう……。

本当は一日一日と書き進めることによって書けるネタがあったのじゃが……下手をすると、それが書けなくなるような気がしておるのじゃ……。


まぁ、どうにか工夫しながら書いていくしか無いかのう。

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