8.1-18 北への旅路18
前回の話では、最初の投稿で『ニンジャー』となっていたところを、『にんじゃー』に修正したのじゃ。
まぁ、どうでもいいことかも知れぬがの?
「で、テンポが帰っちゃったわけだけど……どうすんの?これから……」
「どうすんの、って言われてもなぁ……」
「悪い人たちを懲らしめたかもだけど……全員を懲らしめた、とは限らないかもだからね……」
戦場を荒らしに荒らして、自爆し、そして王都へと帰ってしまったらしいテンポの一連の行動に頭を悩ませるワルツとアトラスと、それにイブ。
空からは既に、ポテンティアの巨大な姿は消えており、テンポも彼と一緒に、燃えた機動装甲(?)の残骸だけを残して、一旦王都に戻ったように見えていたのだが……
「おや、お姉さまに愚弟、それにイブちゃん。おはようございます」
それは3人の思い過ごしだったようだ。
いつも通りに無表情なテンポが、不意に町の方から姿を見せたのである。
その姿を見て、ワルツは眉を顰めながら、問いかけた。
「テンポ、まだ帰ってなかったのね……。じゃなくて、あんた、いつの間に自分の機動装甲を作ってたわけ?」
するとテンポは首を振りながら、残念そうな無表情を浮かべつつ、こう返答する。
「カタリナに工房のフロアを貸して頂いて、時間を見つけては粛々と造っていました。お姉さまがさっさと機動装甲を明け渡してくれれば、こんな手間を書けなくても良かったのですが……」
「いや、私の身体は渡せないけど……造るなら造るで、言ってくれればいいのに……。別に反対するつもりはないんだからさ?」
と、いつも通りの無表情で話すテンポに対し、呆れたような表情を向けるワルツ。
そんないつも通りのようにも見える彼女たちのやり取りは……しかし、ここに来て、新たな展開を迎えたようである。
「そうですか……。では、これからも秘密にしておきます」
テンポが、ワルツの協力の申し出を、断ったのだ。
そのやり取り自体も、正確には普段の範疇を大きく越えるものではなかった、と言えるだろう。
実際、ワルツも、また始まった、といった様子で、疲れたような表情を浮かべていたようだ。
……だが、今回。テンポが纏っていた気配は、いつもとは異なっていた。
どことなく……悲しげな色を含んでいたのである。
そして彼女は、不満げな表情を浮かべているワルツに対し、こう言ったのだ。
「……お姉さまには分かりますか?自分のシステムの中に、ぽっかりと穴が開いているような虚しさに近い感覚を……」
「…………?」
「それが分からないお姉さまには、正直、これ以上、関わってほしくはありませんね」
と、いつもに増して不機嫌な様子のテンポ。
機動装甲の試作一号機が爆発炎上してしまったことも然ることながら、ワルツが最初から自分に機動装甲を与えてくれなかったことを根に持っているようである。
それが分かったためか、ワルツは直前までの表情を改め、申し訳なさそうに呟いた。
「言い訳は……言わないわ」
「……では、放っておいて下さい。後は私の方で、この町を1週間ほど守っておきますから、お姉様は自分の『お仕事』にお戻り頂いても結構です」
そう言って、ワルツたちから離れ……そして、黒く焦げた機動装甲だったものに近寄り、手が汚れることも構わず、それに手を触れるテンポ。
そんな彼女に対して、ワルツは何も言えずに、ただ眼を細めていたようである。
すると、2人がそのやり取りを近くで見ていたアトラスが、テンポが立ち去った後で、ワルツに対しこう口にした。
「俺は……別に、機動装甲のことなんて、気にしてないからな?」
どうやら彼は、テンポと同じホムンクルスである自分に対し、姉が気にかける前に、ひとこと言っておくことにしたようである。
するとワルツは、アトラスに対して、こんな問いかけを口にした。
「……貴方も欲しい?機動装甲」
「そりゃ、欲しい……けど、現状だと、完全にオーバースペックだから、俺はいいよ」
「…………そう」
それだけ口にして、町の方を振り向き……そして歩いて行くワルツ。
その後ろ姿を見ていたイブが、彼女のことを追いかけずに、その場に留まったのは……ワルツの背中に、どこか悲しげな色が浮かんでいたからだろうか。
そして日が昇り、皆の準備が終わってから、町を予定通りに出発した一行。
その後ろには、騎士たちが乗った大小様々な馬車や荷車が、馬代わり動物に引かれて、長い列を成していたようである。
どうやら、魔物のテイムができる一部の騎士たちが、近くの森や平原から魔物を連れてきて、餌をちらつかせることで、彼らに馬車を引かせているらしい。
そんな異様な光景を、先頭を走る大きな馬車に乗った者たちは、興味深そうに眺めていたようだが……
「…………はぁ」
彼女たちと一緒に乗っていたワルツだけは、遠くの景色を見て、大きなため息を吐いていたようである。
その様子に気付いて……どういうわけか眼の下に隈を作っていたユリアが、ワルツと同じ部屋に泊まっていたはずのルシアとテレサ、それにイブに対して、小声で事情を問いかけた。
「(ワルツ様に……何かあったのですか?)」
「(さぁ?私は何も知らないかなぁ)」
「(妾も知らぬのじゃ)」
と言って首を傾げるルシアとテレサ。
朝食の時間ギリギリまで眠っていた2人には、事情が分からなかったようだ。
一方、何となく事情を知っていたイブは、ユリアのその質問に対して、難しい表情を浮かべながら返答した。
「(あんねー……ワルツ様、にんじゃーのメンバーを募ってたみたいかもだよ?)」
「「「(にんじゃー?)」」」
「(うん。悪と戦う黒装束の5人組ユニット!でも、テンポ様に、仲間に入らないか、って声を掛けたみたいかもなんだけど、振られちゃったかもだね)」
と、何か勘違いしている様子のイブ。
機動装甲が何なのかをよく知らなかった彼女は、ワルツとアトラスの適当な『にんじゃー』の説明のせいで、変に誤解してしまったようである。
それを聞いて、『忍者』についての知識があったテレサは、少々困ったような表情を浮かべて、イブに問いかけた。
「(のう、イブ嬢?お主、何か勘違いしておらぬじゃろうか?)」
「(勘違いは無いと思うかもだよ?だって今朝、ワルツ様とアトラス様が、直接、教えてくれたかもなんだから)」
「(……ホントかの?)」
「(うん!)」
と言って、真剣な表情で頷くイブ。
そんな彼女の発言に、戸惑いの色がまったく無かったこともあって、
「(じゃぁ、そうなのかなぁ……)」
「(ふむ……なんか違う気がしなくもないのじゃが……そうなのじゃろうのう)」
「(ワルツ様……特殊部隊でも作るつもりでしょうか?)」
と3人は各々、無理矢理に自分を納得させることにしたようである。
なお、その頃、ワルツは……
(ボレアス、遠いわね……)
『にんじゃー』のことについても、テンポのことについても考えているわけではなく、1週間前に王都を出発してからのここまでの道程を思い出しながら、この先の旅について考えていたようだ。
年が変わって最初に書いた物語なのじゃ。
本当は、もうすこし丁寧に書きたかったのじゃが、頭が飽和してしまった上、時間も相当遅くなってしまった故、いつも通りの拙い文になってしまったのじゃ……。
いのべーしょんを行うためには……まだ経験値が足りぬようじゃのう……。
段々と、次のレベルへの進み具合が、遅くなっているような気がするのじゃ……。
まぁ、それは良いのじゃ。
それで、今日は……再び、大移動をして、自宅に戻ってくる(予定)なのじゃ。
ここ最近の出来事で、ストックが0になってしまったのじゃが……明日なら少々時間がある故、3か4話くらいは、追加で書いておこうかのう。
……モチベーションが残っておれば、じゃがの?




