8.1-17 北への旅路17
一部微修正したかもだし?
日付は変わり……。
「ふあぁ〜……」むくり
ワルツから眠ることを強制された後も、宿の窓の向こう側の出来事が気になって眠れなかったイブは……しかし、乗り物酔いによる疲れが溜まっていたためか、すんなりと眠ってしまっていた。
そして朝になって、空が白くなり始めたころ、彼女は眼を覚ましたわけだが……
「……zzz」
「…………」ぐっすり
彼女の横で眠っていた年長のルシアとテレサは、未だ夢の中だったようだ。
日頃からメイド業(?)を嗜んでいて、毎朝早起きしていたので、年上の2人よりも随分と早く、イブは眼を覚ましてしまったのだろう。
だが、そんな彼女よりも、さらに早く眼を覚ましている人物がそこにいた。
「あら、早いわね?イブ」
早起き……というよりも、そもそも眠らないワルツである。
どうやら昨晩も、彼女は頭の中で、粛々と作業を続けていたようだ。
「あ、ワルツさま……おはようございますかも〜」
と、眠気まなこを擦りながら……すぐに立ち上がって布団をたたみ始めるイブ。
彼女たちがいた部屋の中は、暖房がついておらず、随分と冷え込んでいたようだが、寝起きの彼女にそれを気にした様子は無かったようである。
彼女の出身国であるボレアスの朝は更に寒いはずなので、この程度の気温は、まだ寒い内に入らないのかもしれない。
そんな彼女の8歳児とは思えない行動を見て、ワルツが感心したような表情を見せながら問いかけた。
「へー?凄いわね、イブ。起きてすぐに布団をたたみ始めるなんて……」
「え?えっとねー……なんかコル様が、起きたらすぐにお布団をたたんで、天気が良かったらそのまま干しちゃうのが、淑女の嗜み、って言ってたかも?」
「そう……(貴女……絶対騙されてるわよ?それ……)」
と、コルテックスの言葉通りに生活を送っているイブに対し、微妙な視線を向けるワルツ。
その視線には、呆れと尊敬と申し訳なさが含まれていたようだが……まだ少々眠たかったイブが、そのことに気付くことは無かったようである。
それから、ここは宿だというのに布団をたたみ終わり、そしてある程度、頭がスッキリしてきたところで……イブは、椅子に座ってたワルツに対して問いかけた。
「ワルツ様は……こんな朝早くから、何をしてたかもなの?」
「そうね……瞑想?」
「え?迷走?」
「……貴女、今、何か違う意味の言葉を使わなかったかしら?」
「んー……よく分かんないかも」
「……でしょうね」
と、自分がしていたことをすぐには答えず、瞑想、という言葉で誤魔化そうとしたワルツ。
彼女がしていたことは、自分の中にあった壊れたシステムの修復なのだが、それをイブが分かる形で説明することが面倒(?)だったらしく、それを詳しく言いたくなかったようである。
結果、ワルツは、話題をすり替えるようにして、逆に質問を投げかけた。
「そう言えばイブ?貴女、何かを忘れているんじゃない?」
「忘れてる……?」
「そっ。例えば、あの窓の向こう側の話とか……」
と言って、未だ太陽の光の気配が見えない、木製の窓に視線を向けるワルツ。
すると、間もなくして、イブも昨日のことを思い出したのか、
「……あっ!」
その声が示す通りの表情を見せた。
「そ、そういえば、テンポ様どうしちゃったかもなの?!」
「さぁ?昨日の夜にポテンティアが来てたみたいだけど、朝が来る前には帰っちゃったみたいだから……無事に相手を蹴散らして、王都に戻っちゃったんじゃない?ま、そこから実際に外を見てみれば分かるんじゃないかしら?」
そう言ってワルツは、観音開き式の窓に手をかけると……
ギギギギ……
ゆっくりとそれを外側へと押して、開ききったのである。
「下手をすると……屍の山があるかもなんだよね……?」ぶるぶる
「いや、昨日はそう言ったけど……あれ、冗談よ?」
と言って、イブに対し、苦笑を浮かべるワルツ。
そして彼女たちが外の景色に視線を向けると、そこには……
「「……し、屍の山……」」
ガチャリ……
ワルツも思わず窓を締めてしまいそうな、凄惨な光景が広がっていたようだ。
眠っているテレサとルシアを置いて、宿を抜け出し、そして町の外までやって来たワルツとイブ。
そんな彼女たちを出迎えたのは……
「おう、姉貴にイブ。朝が早いな!」
ワルツと同じく眠ることの無いアトラスであった。
彼の姿を見るや否や、ワルツは戸惑いの表情を浮かべながら問いかけた。
「ちょっと、アトラス!あの屍の山は何?!」
一応人前なので、普段の姿を見られないよう、黒狐娘のコスプレ(?)をしながら、声を荒げるワルツ。
彼女と一緒について来たイブの方も、そこから見える大量の屍(?)を前にして、戸惑いを隠せない様子である。
対してアトラスは、顔の前で手を振りながら、首も振りつつ否定した。
「いやいや、死んでないぞ?ただ、動けないくらい、ボコボコにされただけだ」
「あ……そう……」
ワルツはそれを聞いて、平原に力なく横たわる兵士たちが、妹の暴虐に巻き込まれてしまったことを察したようだ。
とはいえ、その後に続いたアトラスの一言までは、すぐに理解できなかったようだが。
「テンポ姉のやつ、いつの間にか自分の機動装甲を作ってたみたいだぜ?」
「……は?」
「俺たちには秘密にして、コルテックスと一緒に作ってたらしい。で、今回は動作試験を兼ねて、千切っては投げ、千切っては投げを繰り返していたみたいだ。いや、実際には千切ってはないけどな?」
「機動装甲を……作った?」
「あぁ。アレだ」
と言ってアトラスが指を差した先では……高温でドロドロに溶けた金属の塊のような物体が転がっていた。
その表面には、何かが内側から吹き飛んだことによって作られたと思しき大きな穴が空いており、強い衝撃が生じたことを如実に物語っていたようである。
その穴が開いた瞬間には、おそらく街中に相当な爆音が鳴り響いたはずだが……それが寝ているイブたちのところまで聞こえてこなかったのは、ワルツが外部からの音を遮るために展開していた重力障壁のせいだろうか。
よほど彼女は、テンポの行動に、関わりたくなかったようである。
まぁ、小さくはないはずの戦闘の音から、イブたちの安眠を守るために、遮音していた可能性も否定はできないが。
「で、なんで燃えた訳?相手側から強い攻撃を受けた……って感じじゃないわよね?」
「さぁ?魔力動力炉の暴走じゃないか?テレサん時みたいに……」
「……成長しないわね、コルテックス……。いや、テンポが無理矢理に流用しただけかしらね……」
恐らくテンポが機動装甲の内部から脱出した際に開いたと思しきその大穴に対して、呆れたような視線を向けながらそう呟くワルツ。
そんな折、彼女の隣にいたイブが、その機動装甲の残骸を見て、首を傾げつつ呟いた。
「何あれ……」
するとワルツがその疑問に答えるべく、説明しようとするのだが……
「アレねぇ……テンポが直接乗り込んでたはずだから、人が乗り込んで操作するロボット、ってことなんだけど……貴女にはそれを説明する前に、まずロボットについての説明から始めなきゃダm」
「えっ?人が乗り込んで操作するロボット?!」
どうやらイブは『ロボット』という存在について、知識があったようである。
「……貴女、ロボットを知ってるの?」
「うん!『にんじゃー』が乗って戦うやつかもでしょ?!」
「いや、忍者が戦うかどうかは知らないけど……」
「えっ……にんじゃー乗らないかもなの?」
「えっ、いや…………どうなのアトラス?」
「ちょっ……俺に振るなよ……」
眼を輝かせていたイブに対して、何と答えて良いのか分からず、頭を抱えるワルツとアトラス。
それから2人は、イブに対して、テンポが作った機動装甲をどのように説明すれば分かってもらえるかを考えるのだが……。
結局、良い説明が思い付かなかったためか、イブの話に合わせ……機動装甲は謎の秘密結社『にんじゃー』たちが乗り込んで悪と戦う殺戮マシン、ということになったようである。
この話が……今年最後の物語になるのかのう?(2日前に投稿)
時間があればもう少ししっかりと修正したいところなのじゃが……どうかのう。
そしてこのあとがきも、もう少し修正したいのじゃ。
あ、でも、コレだけは言っておこうかのう?
いいお年を、なのじゃ!
それと多分、こうも言っておかねばならぬじゃろうか?
あけおめ、なのじゃ!
……あっぷろーどするのは31日夜23時。
つまり読まれるのは、1日昼間……。
そんなわけで、両方書いておくのじゃ?




