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8.0-28 人生の終わりと始まり7

そして場所は食堂へと移る。


メイド(?)のイブが、テレサとコルテックスの食事を台無しにして逃げてしまったので、テレサたちは昼食を食堂で摂らざるを得なくなってしまったのである。

まぁ、正確には、それ以外にも目的があったようだが……。


そして、よく知っているはずなのに、まったく見覚えのない食堂の扉を開けて、その中へと恐る恐る足を進めるテレサ。

なお、仕事中のアトラスは来れなかったようだが、彼女の後ろには、コルテックスとワルツの姿もあったようである。


「ここが……食堂……?」


王城2階にある、異様に広い職員専用の食堂を目の当たりにした途端、テレサは驚いたような表情を浮かべながら、そんな感想を口にした。


それもそのはずで……。

上から見ると六角形型をした王城は、ホールケーキを切ったように別れる6つの区画と、中心部分を含めて合計7つの区画で構成されていたわけだが、そのうち中心部分を除いた隣接する2つの区画を、壁を撤去することで大きな1つ部屋にして、そこに食堂と厨房が設置されていたのである。

要するに、食堂のサイズは、テレサの自室など比ではないほどに、凄まじく広大だったのである。

そんな想像以上の食堂の広さを見て、彼女は困惑してしまったのだ。


すると、そんなテレサの反応を後ろから眺めていたコルテックスが、まるで初めてここへとやってきた人物に話すかのように説明を始めた。


「はい。お姉さまもここで食事を取るのですが、人目が気になるお姉さまのご要望に答え、必要以上に広くしたのです。そうすれば、自ずと人口密度は下がりますからね〜」


「でも……本当は、そのはずなのに、いつも皆、私たちの近くに寄って(たか)って食事を取るのよね……。場所はたくさんあるはずなのに、どうしてかしら?」


とコルテックスの発言に、腕を組みながら、首を傾げるワルツ。


実際、最初はバラバラに別れて座っていた王城職員たちは、ワルツたちがやってきたことを知ると、それに気づかないふりをして席を立ち、一定の距離を保った場所に再び腰を下ろそうとしていた。

……ただ、今回に限っては、席を立ったところで、皆、唖然として立ちすくみ、中には手にしたトレイを落とす者まで居たようだが……。


そんな反応は……どうやら王城職員たちだけに限った話ではなかったようだ。


ガシャンッ!


と急に、厨房から大きな音が聞こえたのだが……どうやらそれは大鍋を運ぼうとして、落としてしまった人物が居たからだったようである。

そんな彼女に対して……すべての原因であるテレサが問いかけた。


「……どうしたのじゃ?狩人殿。そんな化け物を見るかのような視線をこちらに向けて……」


「で、で、で…………」


「……ん?」


「でたぁぁぁぁ?!」


そして一目散に、厨房の奥へと走り去っていく、シェフ姿の狩人。

どうやら彼女は、テレサのことを、何かと勘違いしてしまったようだ。


その場には、彼女の他にも、もう一人、似たような反応をしている者がいた。


「…………?!」


テレサたちがやってきたタイミングで、丁度、昼食の肉塊にありつこうとしていた飛竜である。

彼女も、愕然としながら、


ガタン!


と立ち上がると、何を間違えたのか、


ボンッ!


と元の巨大なドラゴンの姿に戻ってしまい、


ガンッ!


……天井に頭をぶつけてしまったようである。

その際、彼女の周囲にいた者たちが、その巨体に押しのけられる形で、倒れてしまったようだが……何故か彼らの表情に困惑はなく、むしろ嬉しそうだったのはどうしてだろうか……。


まぁ、それはさておいて。

頭を強打してしまった飛竜は、自身の頭を痛そうに押さえながらも、自分の身体の10〜20分の1にしか満たないテレサの姿に、驚愕したような視線を向けながら、口からブレスのようなものを漏らしつつ、こんな言葉を口にした。


「お、お化け?!」


「飛竜よ……。お主、その巨体で、その言葉は無いと思うのじゃ……」


そして、呆れたような表情を飛竜に向けるテレサ。


……と、いったようにテレサは、昼食を摂る以外にも、自分が無事(?)だということを皆に知らせるために、この食堂へとやってきたのである。

だが、皆に安堵を与えるどころか、混乱を植え付ける形になってしまったので、彼女はここへとやってきたことを後悔してしまったようだ。


「すまぬのう……。妾のせいで皆が大混乱なのじゃ……」


そしてしょんぼりとして、尻尾と獣耳を萎れさせるテレサ。


すると、そんな彼女の姿を、厨房のカウンターの影から猫耳をピンッと立てつつ眺めていた狩人が、恐る恐るゆっくりと身体を出しながら、テレサに対して問いかけた。


「……て、テレサ?生きていたのか?」


「いや、違うのじゃ?妾は死んでしまったのじゃ?」


「や、やっぱりお化け?!」


「そこは違ってもいいから、生きているって言いなさいよ……」


流石に今回ばかりは、空気の読めないワルツでも、素直に答えたテレサに対して、色々と言いたいことがあったようである。




それから……。


「……じゃ、じゃぁ、テレサは生き返ったんだな?!」ゆさゆさ


どうにか落ち着きを取り戻した食堂の、テレサを中心に出来上がった王城職員たちの人だかりの中で、彼女の肩を揺らしながら、狩人は嬉しそうに問いかけた。


「う、うむ……生き返ったのじゃ?……多分の」


しかし、自分の身体に何が起ったのか、未だ整理できていなかったテレサには、狩人の質問に対して、断言するような回答ができなかったようである。

その結果、事情を把握していたワルツ……は、人だかりが嫌で、今は透明になっているので、代わりにコルテックスが説明する。


「はい。そのように捉えていただいても差し支えはありません」


と、『生き返った』という言葉は使わずに、肯定するコルテックス。


「そうか。良かった……テレサ」


狩人そう口にすると、テレサのことをギュッと抱きしめた。


すると、その姿を見ていた、元のドラゴンの姿の飛竜が、長い首だけをもたげさせて、テレサの姿をまじまじと観察しながら、その大きな口を開く。


「ふむふむ……尻尾も3本あるし、機械の匂いがする点も同じだ。それに……ちゃんと足もついているようだ」


「お主は、尻尾の数と足が付いておるかで、妾が生きておるかどうかを判断するのかの?」


「うむ。大抵の場合、死体やゾンビたちには、足や腕や尻尾が、ちゃんと付いていなかったりするものなのだ。それを考えれば、手足や尻尾を確認するのは、当然のことだろう?」


「……確かにゾンビなら、尻尾や腕の1本くらい無くてもおかしくはないのじゃが……何故じゃろう……。飛竜が、至極まっとうな事を言ったように聞こえるのに、何か違う気しかしないのじゃ……」


とはいえ、死んでいるのではないか、という疑念が晴れたことについては違いは無かったので、一応は納得したような表情を見せるテレサ。


それから彼女は、一人で食事を摂っていた飛竜に、こんなことを問いかけた。


「そう言えば……もう一人、幽霊が怖い犬っころがおったような気がするのじゃが……お主?あやつが、どこに行ったか知らぬか?」


「イブ師匠か?いつもはここで共に食事を摂るのだが……今日は、まだ見ておらん。何かあったのかもしれんな……」


「……まぁ、何があったのかは、知っておるのじゃがの……」


そして、自分の姿を見て、走り去っていったメイド(?)の少女のことを思い出すテレサ。

彼女は、可能ならこの場で、飛竜や狩人と共に、イブの疑念も晴らしたかったようだが……どうやら事はそう簡単に、解決しないようだ。

この話、予約投稿かもなんだけど……あとがきを書ける時間があったら、多分、テレサ様が書くかもだよ?

っていうか、イブがあとがきをハックしたらダメって、おかしいかもだよね……。

ルシアちゃんとか、ポテちゃんとか、コル様とか、みんな書いてるかもじゃん。

だから、イブが書いたところで、あまり変わらないと思うかもなんだけど……。

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