7.8-27 勇者と魔王3
「私が前衛を務めます。魔王さまは後ろから援護をお願いできますか?」
「……心得た」
勇者が前で、ヌルが後ろ、という立ち位置のまま、コルテックスから眼を逸らさずに、そんな作戦会議を交わす2人。
それからも、1言2言、勇者たちは言葉を交わすのだが……そんな折、不意に、コルテックスがこんなことを言い始めた。
「そうそう。お二人には、一つ聞いておきたいことがありました〜」
その言葉を聞いて、
「……負けた場合の、私たちの処遇ですか?」
「……考えただけでも恐ろしい……」
と、眉を顰める勇者とヌル。
だが、コルテックスが聞きたかったことは、負けた時どうするか、という質問ではなかったようだ。
「……難易度はどうします〜?」
『えっ……?』
「難易度ですよ〜?難易度〜。全部で5段階ありまして、一番簡単な1段階目は、武器も何も使わずに素手で戦う、というものです。それで、2段階目は魔道具の防具を追加して〜、3段階目は魔道具の武器も追加します。多分そこまで行くと、人類には勝てないレベルだと思いますけどね〜」
と、2人の質問に対して返答するコルテックス。
その際、勇者には、何か疑問に思うことがあったのか、彼は聞かなくてもいい一言を口にした。
「ちなみに、4段階目と5段階目はどのようなものなのでしょうか?」
「そうですね〜……」
彼女がそう口にした瞬間だった。
ドシャァァァァンッ!!
何の前触れもなく、ヌルが持っていた氷の大剣が、根本から粉砕して吹き飛んでしまったのだ。
「……?!」
「これは飽くまでもデモンストレーションの一つでしかありませんが、王都を取り囲む市壁の上部に設置してある首都防衛用のシステムが、すべて2人に向けられることでしょう〜。ちなみに今のが、4段階目です。ここまで来れば、もしかすると、ルシアちゃんでも太刀打ち出来ないかもしれませんね〜。それで、5段階目は〜……まぁ言わなくてもいいでしょう。どうせ、対人戦闘では使いませんし、それに5段階なんて言ってますけど、非対人ならまだ10段階以上ありますからね〜」
と言って、顎に人差し指を添えながら、どんな戦闘レベルがあったのかを思いだしている様子のコルテックス。
どうやら彼女でも、把握できていない……というよりも、今まさに思いついている最中のようだ。
「……そ、それで、私たちに難易度を選択することは可能なのでしょうか?」
「それはもちろんですよ〜?じゃなきゃ、わざわざ聞くようなことはしないでしょうね〜。もしも聞かなかったら、次の瞬間には肉の欠片……そう、肉塊になっているでしょうね〜」
と肉塊を強調するコルテックス。
その言葉を聞いたからなのか、それとも最初から決めていたのか……。
勇者が選択したコルテックスの戦闘レベルは、
「……では、2段階目でお願いいたします」
という、防御用の魔道具を装備した状態での戦闘だった。
流石に無手の状態というのは、勇者のプライドが許さなかったらしい。
「ゆ、勇者?!別に、1段階目でも十分ではないか!」
「では魔王さまは許せるのですか?無手の少女を襲うようなことになっても……」
「アレをただの少女だと思って侮ってはならん!この前、その1段階ですら、勝負にならずに負けたのだ!」
「もう、戦ってたのですね……」
と、既に戦闘していたらしい魔王に対して、呆れたような表情を向ける勇者。
だが、ヌルの言葉で、勇者が怯んだり、後悔したりする様子は無く、
「……では始めましょう。コルテックス様」
勇者は握っていた箒を再び構えた。
「分かりました〜。……それでは、魔道具を指にはめて……」
と言って、小さな指輪を中指に装着するコルテックス。
そして彼女は、その魔道具を使い、防御するための魔法を展開するのだが……勇者はコルテックスの次の一言を聞いて、自分の発言を後悔してしまった。
何故なら、彼女が魔道具を使って行使したのは、
「魔導重粒子シールド、展開〜」
……エネルギアが船体を守るために展開している重粒子シールドの、その魔法版だったからである。
要するに……
「……魔王さま。どうやら私たちは選択を誤ってしまったようです……」
人の力でどうこうできるレベルを、この時点で軽く超越してしまっていたのだ。
ドゴォォォォン!!
ドゴゴゴゴゴッ!!
朝の鍛錬というには、随分と激しい爆音を上げながら、汗水を流す勇者とヌル。
2人が必死になっていたのは、勝負の相手であるコルテックスに負けを認めさせなければ、壮絶な未来が自分たちを待ち受けているから、だろうか……。
そのコルテックスの方は、重粒子シールドで勇者たちの攻撃を自動的に往なしていたためか、2人の強大な攻撃を受けているというのに、涼しい顔をしていた。
その上、どこからともなく出した机と椅子に腰掛けて、お茶を楽しんでいるようである。
だがそれも束の間、
「はぁ〜。この芳醇な香り、心が落ち着きます〜。ここの庭で育てていたハーブ特有のものなのですが〜……もう在庫分しか飲めないのですよね〜……。……それを思い出したら、なんかイライラしてきました〜」ニッコリ
と、それまでの雰囲気とは打って変わって、まとわり付くようなジメッとした湿気をはらんでいそうな笑みを、コルテックスは勇者たちへと向け始めたのだ。
その様子を見て、勇者が声を上げた。
「魔王さま!攻撃、来ます!」
「くっ!」
そして、間髪入れずに、氷の壁を構築するヌル。
……その直後だった。
「……後ろがガラ空きですよ〜?」
と、ヌルが展開した氷の壁の方向とは逆の方向から、急に聞き慣れた声が聞こえたかと思うと、
『えっ……?』
ドゴォォォォン!!
ドゴォォォォン!!
2人は壁に向かって吹き飛ばされてしまったのである。
目の前に氷の壁が出来たことで気を抜いた勇者たちの隙を突くように、コルテックスがほぼ瞬間移動に近い速度で移動し、2人の後ろから攻撃を加えたのだ。
とはいえ、拳で殴ったり、足で蹴飛ばすなどといった乱暴な行為はせず、ただ撫でるだけだったのだが……。
しかし、亜音速に近い彼女の移動の最中に繰り出されたその撫では、2人にとって、殴打される以上の衝撃だったようである。
「ぐはっ?!」
「がはっ?!」
結果、自分たちが作り出した壁に正面からぶつかって、肺の中から空気を吐き出すことになる勇者とヌル。
そして、その場に崩れると、2人とも動かなくなってしまった……。
「はぁ〜……他愛もありませんね〜。2人とも〜」
たったの一撃で動かなくなってしまった勇者と魔王に対して、残念そうな視線を向けるコルテックス。
それから彼女は、八つ当たりが終わってスッキリしたためか、それ以上、勇者たちに危害を加えること無く、彼らの治療のために医療担当者を呼び寄せようと無線機を耳に当てた。
……しかし、である。
「ま、まだ……です……」
そのままその場に倒れていれば、後は治療を受けて終わりだったものを、意識を取り戻した勇者が、再び立ち上がってきたのだ。
そんな満身創痍な勇者の姿を見て、コルテックスは言った。
「ほう〜?相変わらず、見上げた根性ですね〜。そういう勇者さまの事は嫌いではないですよ〜?何故メイドの姿をしているのかは、知りませんけど〜」
「私は……私は、仲間以外のすべてを捨てる決心をしたのです!」
「そうですか〜。つまり〜……男であることもやめた、というのですね〜?」
そのコルテックスの質問に対して返答せずに、ただ愛用の箒だけを構える勇者。
もしかするとそれは、彼なりの肯定の意思表示、だったのかもしれない……。
「……もうあなたには、言葉は必要ないでしょう。さぁ、かかってくるのです!勇者〜」
「……っ!」
ダッ……
そして構えた箒を振りかざしながら、コルテックスへと踏み込んでいく勇者。
こうして勇者vsコルテックスの第2ラウンドが始まったのだ。
……これまでの妾の文の書き方は、1日に最低3000文字を書くというものじゃった。
じゃが……ここいらで、それをやめようと思うのじゃ。
とはいっても、毎回結局4000文字前後書いておるから、今更大きく変わるものでもないのじゃがの。
ではどうするのか、というと……特に決めておらぬのじゃ。
ただ言えることは、長々とした駄文を書くのをやめたい、ということなのじゃ。
自分で書いておるはずなのに、自分で読んでも、何を書いておるのか分からない……。
そんな誰の得にもならないような駄文はもう書きたくないのじゃ。
モチベーションがだだ下がりで、一切合切を消したくなるからのう。
じゃから……いのべーしょんが必要じゃと思ったのじゃ。
それも、単なる気まぐれな構造改革ではなく、しっかりとした改良が……。
とはいえ、どうすればそれが叶うのか、妾には未だ分からぬ故、結局は試行錯誤によって探すしか無いのじゃろうのう……。




