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7.8-25 勇者と魔王1

グロ……注?

いや、そうとも言い切れぬが、一応、注意なのじゃ。

そして次の日の朝。


「ほら、ワルツの大好物だ!たーんと食えよ?」


王都の新王城にある食堂には、1周間ぶりの狩人の笑みがあった。

彼女は休暇を終えて帰ってきたその次の日から、早速、本業(?)に戻ることにしたらしい。


そんな普段通りの言葉を口にしながら、朝食を出してきた狩人に対して、


「あの、これ……私の好物じゃ……いえ、なんでもありません……」


と、これまた普段通りに抗議の言葉を上げようとした様子のワルツ。

しかし、それらは狩人の好意で作ってもらったものである上……


(ま、美味しいから、いっか)


彼女の作る料理は、味も彩りも決して悪いものではなかったので、ワルツはまるで好物を食べるかのように、狩人の作った和風の朝食を、口にすることにしたようだ。


と、ここまでは、何気ない普段の朝食の風景、と言えるだろう。

だが、それはワルツに限った話である。

問題は……もっと視点を引いて、ワルツや狩人の周囲にいた人々の表情にあった。


例えば、ワルツの隣りに座っていた、妹のルシアの場合。

彼女はテーブルに置いてあった温かな食事に、一応は手を付けていたものの、


「…………!」ゴゴゴゴ……もぐもぐ


と言い知れぬ殺気も同時に放ちながら、口を動かしていたようだ。

なお、彼女のその反応は、朝食が稲荷寿司ではなかったから……というわけではない。


あるいは、その更に隣に座っていたイブの場合。

彼女もどういうわけか、


「……おかしい。世の中、何かおかしいかもだよね……」


食事に一切手を付けず、頭を抱えていた。

もちろん彼女の場合も、いつも以上に癖毛が爆発していたから……というわけではない。

彼女の癖毛は、これ以上悪化しないので、それが標準である。


そして、その隣……というよりも、斜め後ろにいたユリアも、


「あの……どうして……こんなことになったんですか?」


顔を真っ青にしつつ、机から5mほど離れた位置に座っていた。

彼女の場合は、どうしても机には近寄りたくない事情があったようだ。


といったように、例に挙げた彼女たちを含め、その場にいた大半の者たちの殆どが、皆一様に不快そうな表情を浮かべていたのだ。

では、そんな彼女たちの前で、一体何が起こっていたのか、というと……


カサカサカサ……


食卓の上にあった、とある皿に、黒い物体Gが群がっていたのである……。

朝食の席に、そんな異様な物があって、平気で食事が出来る者がいるとするなら、それは、


「ぬ?どうしたのだ?皆の者。早く食べねば食事が冷えてしまうぞ?」


……つい最近まで野生だった飛竜か、あるいは、物体Gに関する事情を知っている者くらいのものだろう。


「どうしてこんなことになったかって?気にしたら負けよ?ユリア」


とユリアの質問に対して、答えになっていない返答を口にするワルツ。


すると今度は、黒光りする物体Gの群がる皿が置かれた席の、その隣の席に座り、普通に食事を取っていたテンポが、姉の言葉を補足した。


「お姉さまが何故説明しないのか、理解に苦しむところですが……この子は虫などではなく、れっきとした(元)人間です」


その瞬間、


シーン……


と静まり返る食堂内の空気。

テンポのその言葉が、あまりにショッキングだったらしく、その場にいた大半の者たちは、人という存在について、再考を始めたようである。

……人というものは果たして、黒光りして、カサカサと動く生き物だっただろうか、と。

まぁ、広い世の中、それに該当する人間がいない、とは言い切れないのだが……。


そんな難しそうな表情を浮かべている仲間たちに向かって、事情を知っていたために、物体Gたちの事を気にせず、普通に食事を摂っていたワルツが、再び口を開いた。


「人かどうかって言い切るのは難しいところだけど、まずそれをどうこう言う前に……彼が何なのかについて簡単に説明しておかなきゃいけないわよね。彼、ポテンティアって名前の男の子よ?今もそうだけど、私たちの工房に刺さってる飛行艇の『心』のようなものだから……エネルギアと同じ存在って言えば分かるかしら?」


すると今度は、


『んー……』


と難しそうな色を含んだ唸り声を上げる仲間たち。

素直に現実を受け入れられない一方で、しかし受け入れざるを得ない状況に葛藤している……そんな様子である。


「いやさ?みんながポテンティアのことを信じられない、っていうのは、私にもよく分かるのよ?この姿を見て、素直に受け入れられる人物がいれば、それは相当な変t……変わり者のはずだし……」


「おや、お姉さま?今何か、私に言いたいことがあったようですね?確か変わり者と言っていたような、違ったような……」


「貴女は黙ってなさいよ……」


と、話を脱線して、ワルツとテンポがいつも通りの口論を始めると、今度は料理人である狩人が口を開いた。

なお、彼女の場合も、ポテンティアの異様な姿に対して、特に忌避感を抱いていなかった人物の一人である。


「私も最初はびっくりしたが、彼はこういう存在なんだ。どうかありのままを受け入れてやってほしい……」


と言いながら、ポテンティアの小さなマイクロマシンの塊たちが戯れていた皿の上に、新しい食事……ゼリーを追加する狩人。

彼女は、ポテンティアのことを、カブトムシかクワガタムシのような愛玩用の昆虫か何かのように考えているようだが、ゼリーを追加してもらったポテンティアのマイクロマシンたちの方も、嬉しそうにゼリーへと群がり始めたところを見ると、どうやら彼は、ゼリーが好物だったようである。


そんな、大人しくゼリーを食していたポテンティアのことを、遠い場所で観察していたユリアは、事情を知っていそうな人物たちに向かって、こう問いかけた。


「エ、エネルギアちゃんと同じ存在なら、人の形になって普通に食事をすればいいではないですか。どうして、よりにもよって、この……精神的にグッとくる姿なんですか?」


その問いかけに対して、テンポが返答する。


「なるほど……。では逆にお尋ねします、ユリア様。……果たして人間という生き物は、他の生物からはどのように見えているのでしょうか?身体の中心に骨という構造材があって、その周囲をブヨブヨとしたタンパク質と脂質とその他諸々で構成される、毛の無い肉が取り巻いている……。そんな肉の塊のような人間というのは、見ていて嫌悪を感じない、美しい存在に見えるのでしょうか?……例えば、手を見てみてください。そこには、不気味な模様のシワと、不均一な形をした爪が付いていて、皮膚の表面からは、汗という名の得体の知れない体液が染み出している……。それは手だけでなく、腕や足、その他、身体全体……」


「いや、もういいです……。もう、何も言いません……」


「そうですか……。それは残念です。あまりに残念なので、今晩辺りから、夜な夜なユリア様のベッドの側で、続きの説明をすることにしましょう」


「も、もう、やめてください……!」


普段はワルツだけに向けられているはずのテンポのネチネチとした口撃を受けた結果、食欲の他、すべての意欲を失ってしまった様子のユリア。

どうやら、ポテンティアの母親役であるテンポにとっては、ユリアの発言と態度が気に食わなかったようだ。


そんな2人のやり取りを横目で見ながら、ワルツは他の者たちに、事情の続きを説明する。


「こんな朝食の場面で言うことでもないんだけど……って、皆、まだ食事してないから良いわよね?(ま、ルシアは知ってることだから良いでしょ)実はさー、実験に使ったマギマウスを責任持って殺処分してたら、その亡霊たちがマイクロマシンを乗っ取っちゃって、街中が大変なことになったのよ。そのことは……みんな知ってるわよね?」


「ううん……。いま初めて聞いたかもなんだけど……」


「じゃぁ、覚えといて?町中で暴れてるマイクロマシンたちは、マギマウスの亡霊が原因だから」


と、自身に怪訝な表情を向けてくるイブに対してそう言ってから、ワルツは再び話し始めた。


「それで、ポテンティアの話に戻ってくるんだけど、そのマギマウスの亡霊があまりに多すぎるせいで、彼、自分のマイクロマシンをうまく制御できないみたいなのよ。彼も幽霊みたいなものらしいし……」


その瞬間、


ビクゥ?!


と獣耳から、尻尾の先端まで、全身の毛を逆立たせて、黒光りするポテンティアのマイクロマシンたちから、余計に距離を取ろうとする大多数の仲間たち。

その中には、これまで涼しい顔をしていた狩人も含まれていたようである。


「でも、困ったわよね……。そこらじゅうにいるみたいよ?マギマウスの亡霊」


ワルツがそう口にした瞬間、仲間たちが口々に、


「ちょっ?!」

「む、無理……」

「もう許してください……」


と、精神的限界(?)を口にし始めたので……


「そうよね……。私も幽霊、得意じゃないのよね……。ま、その辺の対策について、何か知ってそうなヌルに、後で相談してみるわ」


普段は面倒くさがり屋のワルツだったが、ポテンティアが人の姿になって、皆の憂いが晴れるよう、今回ばかりは急いで行動を起こすことにしたようである。

んー……。

頭をもっと回すために、甘いものが食べたいのじゃ。

じゃが食べると、体重が増えてしまうのじゃ。

よく、食べ過ぎ注意、などという言葉を聞くのじゃが、身体を動かさずに、ひたすらキーボードを叩き続けるという作業の中で、一体どれだけの量の糖分を摂取すれば、それを食べ過ぎと言うのじゃろうのう……。

まったく身体を動かしておらぬ故、角砂糖1個食べるだけで、アウトな気がするのじゃが……それは気のせいじゃろうか……。


まぁ、そんなどうでもいいことは置いておいて。

本章のファイナライズとして、サブタイトルにあるような話を書いていくのじゃ。

7章の20%は、コレとこれからの話が書きたくて、駄文を積み重ねてきたようなものじゃからのう。


ちなみに、7章で書きたかったことの内訳を書くと、

・今回の話20%

・ポテンティアの登場40%

・コルの話20%

・マギマウスの話20%

・その他(地竜と狩人兄)


ってな感じになるのじゃ?

100%を超えておるような気がしなくもないのじゃが……まぁ、気にしないでほしいのじゃ。


さて。

次回からの話は……どうデザインしていこうかのう……zzz。

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