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7.8-24 黒い飛行艇6

マギマウスによって真っ白に染められてからというもの、サウスフォートレスでは珍しくなりつつあった青い空の下を、


ドゴォォォォ!!


と紫電を纏いながら突き抜けていく重金属の塊。

それはエネルギアから放たれた巨大な弾頭で、一瞬後には、


ドゴォォォォン!!


と団子状の岩の一部に突き刺さって、その岩を粉々に粉砕する。

その結果、それを見ていたエネルギアが、嬉しそうに声を上げた。


『よしっ!崩れなかったねー。じゃぁ、次は、ポテンティアくんの番だよ?』


と、自信の隣で宙に浮いている、自分そっくりな黒い空中戦艦ポテンティアに対して、言葉を向けるエネルギア。


するとポテンティアは、自身の背中で、ブンブンと2対のレールを振り回すと、その軸線を、エネルギアが狙っていたものとは別の岩へと向けた。


そして、


『では、行きますっ!』


ドゴォォォォ!!


と、紫電は纏っていなかったものの、エネルギアが放ったものと同じような大きさの黒い物体を、極超音速で放出する。

その結果、その砲撃の対象となっていた、直径100mほどの巨大な岩は、弾頭の直撃を受けて、


ドゴォォォォン!!


と簡単に砕け散ってしまった。

どうやら、ポテンティアも、エネルギアと同等な攻撃手段を有しているらしい。


そして、その光景に向かってポテンティアが、


『まだ持ち堪えそうですね』


そんな感想を口にした……そんな時である。


ガラガラガラ……


彼が吹き飛ばした岩の上にあった別の巨石が、自重を支えるものがなくなったために、落下してきたのだ。


『?!』


『はい、僕の勝ち!』


その様子を見て、嬉しそうに、そんな声を上げるエネルギア。

この不毛な戦いは、どうやら重なっている岩を、先に落としたほうが負け、というルールだったようだ。


結果、ポテンティアが素直に負けを認めた様子で口(?)を開く。


『くっ……もう少しで勝てると思っていたのですが、これは僕の負けですね。では、エネルギアちゃん。僕はどうすればいいでしょう?』


その言葉を聞いて、


『……え?』


と、特に何もペナルティーを考えていなかったのか、不思議そうに聞き返すエネルギア。


『だって、これは、勝負だったのですよね?』


『あれ?そうだったっけ?』


『……いえ、忘れているのでしたら、そのまま思い出さないでください』


勝負に夢中になっていたせいか、エネルギアが本来の目的である勝負のことをすっかり忘れていたようなので、そのまま何もなかったことにしようと考えたのか、ポテンティアはわざわざ言う必要のない、そんな一言を口(?)にした。

もしも何も言わなければ、2人の勝負を眺めていたテンポやワルツが、タイミングを見計らって介入してくるところだったのだが、その一言によってエネルギアが目的を思い出したらしく、彼女は姉たちがやってくる前に、こう言ったのである。


『じゃぁ、白黒ハッキリ付けるために、負けたポテンティアは、僕のことをこう呼んで?『お姉ちゃん』って!』


その一言を聞いて、


『えっ……それは構いませんが、それだけでいいんですか?』


あまりに拍子抜けするペナルティーだったためか、思わず聞き返してしまった様子のポテンティア。


『えっ……じゃぁ、『お兄ちゃん』って呼ぶ?』


『あの……『お姉ちゃん』で結構です。お姉ちゃん……』


エネルギアの頭の中の性別というものが、最早、カオスとしか言いようの無い状況になっていることに気付いたようで、彼女とは違って、明らかに男性側の性別にいたポテンティアは、エネルギアが気変わりする前に、彼女のペナルティーを飲み込むことにしたようである。


『お姉ちゃん……お姉ちゃんか……。一度呼ばれたかったんだよね。なんか大人になった気がする!今度、イブちゃんに自慢しよっ!』


『そ、そうですか……』


姉の言葉を聞いていたポテンティアは、何か言いたげな様子だったが、それ以上余計なことを言うと、本当に『兄』と呼ばなくてはならなくなるような気がして、口を噤むことにしたようだ。




2人(?)の勝負が、そんな結末を迎えてから、再び伯爵邸の来賓室へと戻ってきたワルツ他3名。

そこにはすっかりと荷造りを済ませていた狩人と、勇者たち数名の姿があった。


その他にも、


「これはワルツ様。いつもお世話になっております」

「あら、ワルツ様。ちょうど美味しいお菓子が焼けましたので、お一ついかがかしら?」


狩人の父のベルツ伯爵と、母のキャロライン夫人もいたようである。

どうやら彼らは、ワルツたちが戻ってくるまでの間、その場にいたものたちと雑談を交わしていたらしい。


「これはこれは、お気遣いなく……」ばりっ、もぐもぐ


と言いながら、夫人の持っていたバスケットから、できたてホヤホヤのスコーンのようなお菓子を摘んで、そして口の中へと放り込むワルツ。


そして、彼女が、美味しいですねこれ、と口にしようとした……そんな時。

彼女よりも先に伯爵の方が口を開いた。


「もう、出発するようなので、単刀直入にお聞きしますが……マギマウスたちは、駆逐はどうなったのでしょうか?」


その瞬間、


ピタッ……


と時間が止まったかのように動きを止めるワルツ。

その一言だけは、聞いてほしくなかった……。

彼女のその行動は、まさにそれを体現していると言えるだろう。


そんな彼女の行動が何を意味していたのかを理解した伯爵は、怪訝な表情を浮かべて、ワルツに再び問いかけた。


「まさかとは存じますが……どうにもならない、というわけではございませんよね?」


彼の他にも、同じようにして、心配そうな視線をワルツに向ける夫人と狩人。

もしも、大量の魔力特異体のマギマウスたちが、これから先もサウスフォートレス周辺で活動を続けるようなことがあれば、この地は人の住みにくい土地になってしまうので、この地を治める立場にあった3人にとっては、この上ないほどの懸念事項だったのである。

端的に言うなら、先祖代々治めてきた土地が急に無くなってしまうことと同義なのだから。


そんな重責を伴う視線が向けられていたワルツは……明後日の方向に輝きのない視線を向けながら、口をモグモグと動かしつつ、口ではない場所から返答した。


「……た、多分」もぐもぐ


「えっ……」

「えっ……」

「えっ……」


「あのー……ものすごく言いにくいのですが……もう少し時間がかかりそうなんです」


そんな自信なさげなワルツに対して、伯爵が再び問いかける。


「それは……どのくらいの期間でしょうか?」


「んー……何もなければ4日……いや3日くらいで、どうにか……」


その瞬間、


「えっ……」

「えっ……」

「えっ……」


と再び声を上げる伯爵一家。

だがそこには戸惑いの色は無く、安堵の色が多く含まれていたようである。


しかし、明後日の方を向いていたために、それに気づかなかったのか、


「じゃ、じゃぁ……」


と、さらに期間を短縮しようかと考えていた様子のワルツ。

その際、彼女は、コルテックスの作り出した『マクロファージ』や、マギマウスの亡霊たちという大問題をどう片付けるかを考えて頭を悩ませていたのだが……。


そんなワルツの訳ありそうな表情を見た伯爵は、苦笑を浮かべると、彼女に対してこう言った。


「1週間や2週間程度なら、まだ大きな問題はありません。各地に点在している村々には、1ヶ月分の食料が届けてありますので、家の中でジッとしている分には問題は無いかと存じます。ただ、それを大きく越えるようなことがあると……なんとも言えないところですね」


するとワルツは、安堵したように小さく息を吐くと、表情を軟化させて、伯爵に対し返答する。


「さすがに1ヶ月も時間が掛かるなんてことはないと思います。最悪でも半月、最短で3日ってところですかね」


「随分と開きがありますね?」


「実は……ウチのコルテックスが、癇癪持ちで、気に食わないことがあると、国を上げて私のことを村八分にするって言ってくるんですよ。国なのに……。それ以外にも、色々根回ししなきゃならないことがあったり、面倒くさい奴らと戦わなきゃならなかったりして、本当なら短時間で終わる作業なのに、もしかすると時間が伸びるかもしれない、ってわけなんです」


「おや?呼びになりましたか?お姉さま?」


「いや、呼んでないわよ……」


と、面倒な人物の()えある第1位(?)であるテンポが話に介入してきたことで、頭を抱えるワルツ。

ただ、そんな2人のやり取りを見ていた伯爵たちは、どこか納得したような表情を浮かべていたようだ。




「それじゃぁ、もう暫くお待ち下さい。必ずコルテックスたちをどうにかして、無事にこの地を守ってみせますので……!」


「あ、あの……いえ。なんでもありません……。頑張って下さい……」


街から出て、白と黒の飛行艇が並ぶ場所までやって来て、そして別れの挨拶をするワルツと伯爵、他数名。


それから一通り挨拶が終わって、皆がエネルギアのタラップを登り……。

そして、父や母に対して一番最後まで挨拶をしていた狩人が、船内に入ろうとしたところで……しかし、彼女はおもむろに立ち止まると、再び両親の方を振り返って、こんなことを問いかけた。


「そう言えば、父様、母様。最後にお聞きしたいのですが、兄は……一番上の兄さんは、一体、今どこにいるのか、2人は知っていますか?」


と、普段の喋り方とはまるで異なる話し方で問いかける狩人。


すると彼女の父である伯爵は、これまたワルツに向けていたものは異なる本来の喋り方で、末娘に対して返答した。


「前王が崩御されてからというもの、一旦政治の世界から離れて、王都のさる剣豪の下で修行していると聞いたが……中央にいるリーゼは把握していないのか?」


「私の方でも調べてはみたのですが、どうしても兄さんの足取りだけは掴めなくて……。父様の言った剣豪については、王都に戻り次第、調べてみようと思います」


「そうか……。だが、どうしたんだ?急に。あいつとお前は、歳も離れているし、つながりはあまり無いはずだが?」


「実は…………いえ。推測で話すのは止しましょう。いらぬ誤解や心配を招くことになります」


「気になるところだが……お前がそう考えたのなら、そうするといい」


「こちらで調べて、何か分かったことがありましたら、その都度、連絡します」


「あぁ。頼む」


それから両親に対して一礼して、エネルギアの奥へと消える狩人。


そして彼女を乗せたエネルギアと、その隣りにいたポテンティアが青い空へと浮かび上がり……長いようで短かった、狩人たちのサウスフォートレスでの休暇は、この瞬間、終わったのである。

今日は修正した結果、文が増えたのじゃ。

まるで乾燥ワカメみたいな駄文じゃのう。


ところで、なのじゃ。

……どうしようかと悩んでおるのじゃ。

ここで無理やり8章に突入するか、それともアフターストーリー……というわけではないのじゃが、妹たちとネズミたちとの間で揺れるワルツの苦悩(?)を書くか……。

まぁ、簡単に後者を書いて、8章に入る感じになるのが、自然かのう。


ちなみに、アンバーやソフィアたちは、王都にはやって来ないのじゃ?

彼女たちは、彼女たちで、アルクの町でやることがあるからのう。

その辺、一言書いても良かったのかも知れぬが、2人と会うタイミングが無かった故、割愛させてもらったのじゃ。

まぁ、単なるサブキャラというわけでもないのじゃが、暫くは触れなくとも問題は無いじゃろう。

……忘れる可能性も否定はできぬがの……。

次回、2人に会うとすれば……恐らくはアルクの町で、ということになるかのう。


さて……もう1時なのじゃ。

さっさと寝ねば、明日に支障をきたすのじゃ?

昨晩なんか、茶を飲んだの遅かった故、眼が覚めてしまって、結局、朝4時ころまで寝られなかったのじゃ。

お陰で今朝は寝坊してしまったのじゃ。

まぁ、寝坊する気満々だったのじゃがの?

じゃが、明日はそういう訳にはいかないのじゃ。

じゃから、今すぐ突入角90[deg]で、枕に衝t


ドゴォォォォォン!!!


すやー

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