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7.8-01 狩人講座1

微グロ注なのじゃ?

ワルツたちが王都を出発する6日ほど前の話。


辺りを囲む緑色のシダ植物。

色とりどりの花々や木の実。

そして……それらに積もる真っ白な雪。

サウスフォートレス近くにある森の中は、まるで南国と北国が同居したような雰囲気に包まれていた。


そんな森の中を、およそ4人の声が木霊する。


「待てよー!エネルギアー?そんなに(はしゃ)いでると、マギマウスが隠れてても分からないぞー?」

『だって、嬉しいんだもん!ビクトールさんとデートするの、久しぶりだしね!』

「一応、俺たちもいるんだがな……?」

「ふむ……。雪が降っているのに植物は枯れないのか……。いかにも魔法の影響を受けていそうな特殊な現象だ」


剣士ビクトール、少女エネルギア、勇者レオナルド、賢者ニコル、の4人である。

彼らは、何か理由があってこの森へとやって来たようだが、燥ぎまわっているエネルギアの言葉通り、いつの間にか彼女と剣士のデートにすり替わっていたようだ。


そんな嬉しそうなエネルギアは、いつも通りの裸ではなく、冒険者装備(狩人)を身に着けているようである。

その他、剣士は剣士装備、勇者は鉄パイプ・Tシャツ装備、賢者は通常の冒険者モード、といった装いで、4人の様子は、さながら新生勇者パーティー(?)のようであった。


その中で、一人、寒さの中で身体を鍛えるためか、薄着だった勇者がこんなことを口にする。


「なんだろうな……。すっごく嫌な予感がするんだ」


「どうしたのだ勇者?薄着のし過ぎで、身体でも冷えたのか?」


と勇者のつぶやきに反応して、森の植物とマギマウスの大規模氷魔法の関係を調べていた賢者が問いかけた。


「それだけだと良いんだがな……。どうも、こう……背筋に冷たいものを感じるんだ。大抵こういう場合って、剣士が痛い目に遭うんだよ……」


「俺がかよ!?」


「なに、気にすんなって!死にそうになって、動けなくなってもカタリナの所に届けてやっから。最悪、死んでても、カタリナならどうにかしてくれるだろ」


「はぁ……」


と溜息を吐きながら、これまでにあった痛い出来事を思い出す剣士。

その際、彼が、エネルギアの背中に向かって、何か言いたげな視線を向けていたところを見ると、どうやら彼の痛い思い出は、エネルギアに起因するものが多いようだ。


と、そんな時である。

不意に、


チュゥ!

チュゥ……

チュゥ?


3匹のマギマウスが、彼らの前に現れた。


「早速、痛い目に遭うのか……」げっそり


「んなわけねぇだろッ!」


ドゴォォォォン!


「……ほらな?」


範囲攻撃魔法の効果を印加させた、伝説の鋼管(てつぱいぷ)による攻撃で、3匹のマギマウスたちを、一撃で葬り去った勇者。

それによって、どこかのRPGのように、経験値のようなものが貯まっていくことはないが、少なくても、自身の発言によって憂鬱な表情を浮かべていた賢者のその憂いは、晴らすことが出来たようである。


一方、スキップしながら、パーティーの先頭を歩いていたエネルギアにも、何か変化があったようだ。


『僕も捕まえたよ?』


「……えっ?」

「……?!」

「…………」


その言葉と、彼女が手に持っていたソレを見て、表情を固まらせてしまう男たち3人衆。

要するに、エネルギアが、先ほどとは異なるマギマウスを、素手で捕まえていたのだ。


「ちょっ……エネルギア!それを離せ……じゃなくて、離すな……でもなくて……えーと、この場合、どうすればいいんだ?」

「強いエネルギアちゃんのことを考えるなら、俺たちは逃げるべきなのだろうな……」

「そんなわけには、いかねぇだろ……」


『どうしたの?ビクトールさんたち?』


剣士たちがどうして慌てているのか理解できなかったためか、首を傾げるエネルギア。


その時点で遠くへと投げるなり、討伐するなりしていれば、大きな問題にはならなかったのだが、彼女がマギマウスを離すのが遅れてしまったために、


ドゴォォォォ!!


彼女が掴んでいた魔力特異体のマギマウスは、その身体に秘めていた強大な魔力を、エネルギアへと放ってしまった。


それは、凶風だった。

積っていた雪を、周囲の植物や地面に落ちていた重い石、更には大木などと共に巻き上げると、それらを秒速200mにも及ぶ、とてつもない速度まで加速させて、自身を掴んでいる少女に向かってぶつけようとしたのである。

あるいは、森の中に突如として発生した、雪崩や土石流、と言い換えてもいい光景かもしれない。


そんな、魔法というよりも物理攻撃、と言ったほうが適切と思えるほどの風魔法を受けたエネルギアは、しかし特に表情を変えること無く、


『あー、せっかく狩人さんに貰った服がボロボロになっちゃいそう』


などと言いながら……


ぐしゃり


と、気持ちの悪い音を立てながら、その手に力を加えたようだ。


『まさか、捕まえたネズミがこんなことをしてくるなんて思わなかった。かわいそうだけど、ごめんね?』


そう口にしながら、すぐには収まらなかった凶風の中で、巨大な岩石や大木が当たっても、黒い壁のような重粒子フィールドを展開して、自身の身体を守るエネルギア。

彼女は、たとえ人の姿をしていても、やはり空中戦艦エネルギアの一部のようである。


その後で、


『あれ?そう言えば、なんか静か…………?!』


彼女は何かに気付いて、思わず叫び声を上げるのだが、そこで一体何が起っていたのかについては、言うまでもないだろう。




「……で、頼んでいた収穫はどうだったんだ?」


サウスフォートレスの施療院の中に響き渡る、重々しい狩人の声。

そんな少々、苛立っている彼女の言葉が向けられていたのは、


「……無理っす、(あね)さん……」

「……だから嫌な予感がするって言ったんだよ……」

「…………」ちーん


先程まで元気だったはずなのに、今は包帯まみれになっていた男衆3人組と、


『ごめんなさい……』


重粒子フィールドを展開したために、身に付けていた狩人装備を吹き飛ばして、再び全裸になっていたエネルギアだった。

どうやら、新生勇者パーティーは、結成後たった数時間で解散する運びになってしまったようである。


「マギマウスを避けながら、森で果実を収穫してくるだけのはずだったのに、どうしてエネルギア以外、全員全滅したんだ……」


全裸の少女以外、傷だらけになっていた男たちに向かって、情けなさそうな表情を向ける狩人。

すると、パーティーのリーダーである勇者が、弁明の言葉を口にし始めた。


「その……マギマウスを攻撃できなかったんだよ……」


「攻撃できない?かわいそうだとでも思ったのか?それでも貴様、勇者か!」


「こ、これには深い事情が……」


「そうか。なら、その事情とやらを言ってみろ!」


「そ、それは……」


と、そこまで口にしてから、事情の説明に困ってしまう勇者。

彼は、エネルギアがマギマウスを持っていたから攻撃できなかった、などと他人のせいにしてしまう自分が許せなかったようである。


そんな優柔不断そうに見える勇者のその反応を眺めていた狩人は、経験からなんとなく事情を察していたのか、深い溜め息を吐きながら、彼に対してこう言った。


「お前、今のままで、ワルツの仲間になれると思うか?」


「……難しいだろうな」


「じゃぁ、諦めるか?」


「……嫌だ。俺は……俺は守りたい人のために、もっと強くなりたいんだ!」


「そうか……。なら、私がお前たちにしてやれることは、一つしか無い」


「そ、それは……?」


「ワルツの右腕(?)の狩人として、今まで生きてきた私の経験を教えることだ。この短い期間で、お前たちがどこまで私の技術を身につけられるのかは分からないが、私が用意した訓練を乗り越えたあかつきには、お前たちを仲間に入れてもらえるよう、私からワルツに進言してもいいだろう!」


「……分かりました」


どこかの魔王配下の四天王が口にしていそうな、そんな狩人の言葉に、重々しく頷く勇者。


だが、一方で、


『えー』

「いや、俺は間に合ってるんだが……」


エネルギアと剣士の方は、遠慮気味だったようである。


だが、勇者を落とした(?)ことで勢いに乗った狩人が止まることは無かったようだ。


「なぁ、エネルギア。ワルツが言ってたよな?お(しと)やかな女の子にならないと、剣士の……婿になれないって」


『……?!う、うん、分かった!僕もやる!』


「さて、剣士?外堀は埋めたわけだが……お前はどうする?」


「うっ……わ、分かりましたよ、姉さん……」


「うん。分かればよろしい!」


そして、意識のない賢者を除いて、新生勇者パーティーの過半数を、自身の配下(?)に加えることに成功する狩人。


「それじゃぁ、早速、コスチュームを用意しなきゃな!」


こうして、狩人による特別講義が、幕を開けたのである……。

最近、急激に空気が乾燥したせいか、喉がカラカラと音を立てそうなのじゃ。

中に何が入ってるのかは知らぬがの?

まぁ、そんなリアルタイムで読んでおる者以外には分からぬ季節のネタはさておいて……。

今話を書いておって、思ったことを書き留めておくのじゃ。


最近なのか、昔からなのか、妾にはよく分からぬのじゃが……目上の者に叱られたことによって、吃り気味になってしまう者をよく見かけるのじゃ。

要するに、今話の勇者みたいな反応じゃのう?

果たして叱られておる者は何を思い、そして叱っておる者は何を考えておるのか。

(はた)から見ると、その両方が、中身の分からぬブラックボックスになっておって、その中身を想像すると、様々な解釈が出来るように思えてならないのじゃ。

頭の中に何が詰まってるかなど、本人にしか分からぬからのう。

何も考えておらぬのか、それとも特別な理由があって反論できず、言いたいことを飲み込んでおるのか……。

そして叱っておる者は、それを理解しておるのか、それとも思い込みだけで叱っておるのか……。


それ以外にも色々と考えられるのじゃが……そういったことをゆっくりと考えながら、キャラクターの構成を考えていくというのも、秋の夜長には良いのかも知れぬのう。

……という、取り留めのない話なのじゃ?


まぁ、そんなわけで、7.8章が始まったのじゃ。

むしろこの話を前の方に持ってくるべきじゃと思わなくもないのじゃが、妾自身、自分が何を考えておるのか分からぬ故、あまり気にしないでほしいのじゃ。


それで、狩人殿の話が始まったわけじゃが、今とても悩んでおるのじゃ。

すんなり7章を終わらせるか、少し捻って終わらせるか……。

それによっては、狩人殿の話を圧縮しようと思うのじゃが……毎日、頭が回っておるというわけではない故、ひねった話を書ききれるとも限らぬのが、悩みどころなのじゃ。

……困ったのう……zzz。

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