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7.7-28 問題と対処13

その日の朝。


「…………」ムスッ


「もぐもぐ〜」にっこり


王城の食堂には、一触即発(?)と言えるような雰囲気が漂っていた。

その空気を作り出していたのは、言うまでもなく、ワルツとコルテックスである。

ワルツが1週間に渡って作り続けていた大半のマイクロマシンが、コルテックスの放った『マクロファージ』によって一瞬で破壊され、その結果、ワルツは不機嫌になっていたのである。

一方で、コルテックスの表情が晴れやかだったのは、やはり、魔道具を壊されてしまったことに対する復讐が果たされたから、だろうか。


「どうするのよ?マイクロマシンを破壊しちゃって……。マギマウスの退治に使うつもりだったのに……」


マイクロマシンを量産し続けていた理由が、サウスフォートレス以南で蔓延っている遺伝子操作マギマウスの討伐に使うためだったので、これからのスケジュールが大幅に狂ってしまう、という副音声を含ませながら抗議の声を上げるワルツ。


するとコルテックスは、太さが疎らな()()()を口にしながら、満足げな表情のまま返答した。


「べふひひひへははいへふは〜(別にいいではないですか〜)。もぐもぐ〜……。これまでに作った分のマイクロマシンと、無線給電設備さえあれば、どうにかなるんじゃないですか〜?最悪、足りなくても、公共事業として冒険者たちを雇えばいいだけですし〜」ずるずる


「でも、この前、見てきた感じだと、並の冒険者たちじゃ、手も足も出てなかったみたいだけど?」


「まぁ、第1段階としてマギマウスの討伐に募集した冒険者たちは、マギマウスたちと戦わせるために集めたわけではなかったですからね〜。次に募集する者たちには、それこそマイクロマシン装備でも授けて、対マギマウス戦闘に特化した部隊にでも仕上げれば良いのではないですか〜?」


「……現状の手札を考えれば……それしか無いわよね」


コルテックスの提案を聞いて、溜息を吐きながら眉を顰めるワルツ。

既に失われてしまったマイクロマシンについては、どうしようもないので、それについては一旦考えるのを止め、彼女は次なる案に思考のリソースを割き始めたようである。


そんな折、2人のやり取りを少し離れた場所から見ていて、彼女たちに関わらないようにしていた仲間たちの方から声が上がった。


「質問があるのだが……良いだろうか?ワルツ様?」


連日、どういうわけか、マイクロマシン(?)に部屋を破壊されている飛竜である。


「ん?なんかあったの?カリーナ」


「非常に聞きにくいのだが……マイクロマシンは、この街から消え去ってしまったのだろうか?」


「そうね……。コルテックス?そこんとこ、どうなってんの?」


「マクロファージたちを放ったのは、今日の早朝だったので、王都全体に行き渡っているマイクロマシンを完全に排除したわけではないと思いますよ〜?ですが、それも恐らくは時間の問題。どこぞのお掃除ロボットのように、放っておけば数日で、お掃除を終わらせてくれるのではないでしょうか〜?我ながら思うのですが、まったくもって、世紀の大発明ですよね〜」


「そうか……」


「どうしたのですか〜?カリーナちゃん?溜息なんか吐いて〜」


「いや、毎日、我の部屋を破壊されるというのは、もう()りごりだったのだ。故に……ワルツ様には申し訳ないのだが、マイクロマシンがいなくなって、我は一安心してな……」


その言葉を聞いて……


『……えっ?』


と、耳を疑う様子のワルツとコルテックス。


そんな2人の反応を前に、飛竜は慌てた様子で、言葉を続けた。


「や、やはり、不謹慎だっただろうか?それなら言葉を訂正するが……」


飛竜は、ワルツたちに対する自分の発言が、失礼なものだったのではないか、と思ったらしく、申し訳なさそうな表情を浮かべながら、ほとんど謝罪のような言葉を口にするのだが……。


どうやら飛竜の懸念とは異なる理由で、ワルツたちは耳を疑っていたようである。


「……ねぇ、飛竜?貴女、記憶無いの?」


「へっ?」


「もしかしてカリーナちゃんは、毎晩、遠吠えするように、空に向かってブレスを放っている事を覚えてないのでしょうか〜?」


「……?!」


その瞬間、眼を大きく開けて、冷や汗を掻きながら、固まってしまう飛竜。

どうやら彼女に、その記憶は、一切無かったらしい。


「そ、そ、そ……それは、真でございますか?!」


「真も何も……真よ?いつもは窓から放ってたみたいだけど、遂に部屋の中で粗相しちゃったのね……。もしかすると、おねsy……おっと食事中だったわね」


「さ、左様ですか……」


一体、いつの間に自分はブレスを放っていたのか。

まったく記憶が無い上、ブレスを放った際に生じる火傷をした覚えもない飛竜は、食べかけのうどんに手を付けることも忘れて、頭を抱えてしまったようだ。


すると、その料理の調理者が、彼女の肩に手をおいて、嬉しそうな表情を浮かべながら、こんなことを口にした。


「大丈夫!ドラゴンちゃん!イブも、たまに、やっちゃうかもだから!」


「む?主殿も間違って部屋を吹き飛ばすことがあるのか?!」


「えっ……いや……」


「流石は主殿!どうやって吹き飛ばすのかは存ぜぬが……我は仲間を見つけたようで嬉しいぞ?……いや、嬉しがっている場合ではないのだがな……」


「う……うん……」


余計なことを言ったせいで、軽く流そうと思っていた自身の黒歴史が露呈することになってしまった上、朝起きると布団に出来ている謎の染みが爆発物であることになってしまったがために、飛竜の隣で、彼女と同じようにして頭を抱えるイブ。


その際、顔を真っ赤にしていた人物が、イブと飛竜の他に約一名ほどいたようだが、彼女のプライバシーを考えて、誰とは言わないでおこうと思う。




「ま、しゃーないわよね」


「…………!」びくぅ


「……ん?何やってんの?ルシア」


「ううん、なんでもない。なんでもないよ?」


「……変なルシア」


と会話するワルツとルシアの2人がいたのは、工房の最上階。

六角形の巨大な花弁のような形状をした、飛行艇発着場である。


そこには彼女たちの他に誰もおらず、その代わりと言うべきか、一辺が1mほどの大きさをした立方体状の無線電力伝送装置が山のように置かれていた。

新しく作ったマイクロマシンたちは失ってしまったが、以前、サウスフォートレスへと散布したマイクロマシンたちは無事なはずなので、この装置を様々な場所に設置することによって、今はサウスフォートレスの郊外に刺さっているエネルギアの周囲でしか活動できない彼らの行動範囲を、ワルツたちは拡張するつもりのようである。


この装置は本来、新しいマイクロマシンたちと合わせて運用し、広い範囲で生息しているだろうマギマウスたちへと対処するためのものだった。

それが叶わない現状では、一体どれだけの効果があるのか、何とも言い難いところなのだが……ワルツは、狩人たちに対して、1週間後までにどうにか目処を付ける、と言った手前、たとえ効果が無くても、何もしないわけにはいかなかったようである。


「さてと……そんじゃ、運びましょうか?」


「じゃぁ……私が、半分持つね?」


「すごいわねルシア……。(合計で1000tくらいはあるんじゃないかしら?もう、女の子とか男の子とか関係なく、人間としてどうかと思う発言よね……)」


「ん?お姉ちゃん、何か言った?」


「ううん、なんでもないわよ?」


「うん……ならいいけど」


それからルシアは、古代魔法に属する重力制御魔法を用いて、大量の装置を空に浮かべ。

そしてワルツは、現代世界の最新科学を元にして作られた重力制御システムを用いて、残りの装置を空に浮かべた。


「さて……それじゃぁ、サウスフォートレスまで競争よ!」


「うん!最近、シルビアちゃんに負けてばかりだから……少しは鍛えないとね!」


「が、頑張ってね?」


そして、空へと浮かび上がる2人。


それから彼女たちは、大量の装置と共に、亜音速で空を飛んで行くのだが……


「……ねぇ、お姉ちゃん?今日はちょっと……勝負するの止めておかない?」


「……奇遇ね。私もちょうど、それを言おうと思っていたのよ」


と、眉を顰めながら、不意に空中で停止する2人。

何やら、2人の周囲で、トラブルが発生したらしい。


この場面において、トラブルが生じるとすれば、ワルツかルシアが装置の一部を地面に落としたか、あるいは、生き残っていたマイクロマシンが装置を溶かして食べ始めた、という可能性が考えられるだろうか。

だが、彼女たちの眼に映っていた光景は、そのどちらでもなかったようである。


「王城の中にいたマイクロマシンって、全部壊したんじゃなかったの?」


「……違ったみたいね?」


「だよね……」


そう言いながら、その『物体』に対して、怪訝な視線を向けるワルツとルシア。

そんな彼女たちの前……いや、後ろにいたのは、


「この戦艦……いったい何がしたいのかしら?」


エネルギアと瓜二つの真っ黒な空中戦艦だった。

どうやら、マイクロマシンによって作られたこの戦艦は、金属の詰まった内部構造とは裏腹に、何らかの意思を持って飛行しているようだ。

納得できない書き方の文があるのじゃ……。

ドコとは限定せぬが、特に長いセンテンスの部分で、承服し難い違和感を感じておるのじゃ……。

何度も読んでしっかりと把握すれば、理解できなくはないのじゃが……それは、もはや、文とは言わず、呪文と呼ぶべきものじゃろうのう。

ある意味、スパゲッティープログラムのようなものかも知れぬ。


今回の場合じゃと、『新しく作ったマイクロマシンたちは失ってしまったが〜』のところ周辺がそうだと思うのじゃ。

ここを書くだけで……1時間は掛かっておる気がするのじゃ。

順番を入れ替えたり、文を切ったり、言葉を言い換えたり……。

それでも、しっくりと来る言い回しが見つからなかったのじゃ。

あまり長いセンテンスは書きたくないのじゃが、時には書かねばならぬ部分もあるのかもしれぬのう。

これについては、後ほど検討してみるのじゃ。


さて。

2話ほど前の話で、補足すべきことを忘れておったのじゃ。

テンポが抱いていたマイクロマシンは、その後どうなったのか。

あれは……形を崩して、元のマイクロマシンに戻って、そして工房の中を再び彷徨い始めたのじゃ。

どこに消えたのかについては……まぁ、言うまでもないじゃろうかのう。


で、もう一点。

今話において、飛竜がワルツやコルに対し、敬語を使ったり、使っておらんかったりする点なのじゃ。

キャラクターが登場する度に、『敬語を使わなくてもいいのに』的な話を書くのは、無理だと思うのじゃ。

じゃから、適当な時間が経過した頃、敬語を使うのは止めた、的な展開なのじゃ?

まぁ、流石に、自分に非がありそうな話になると、敬語を使うのは仕方ないと思うがの。

故に、敬語があったりなかったりするのじゃ。

……別に、間違って書いておるわけではないのじゃぞ?


さて……今日はこんな所かのう。

最後に一言、言いたいのじゃ。

……歯が痛い……。

何処かに、獣人でも入れる健康保険、ないかのう……zzz。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 606/1739 ・いい感じにグダグダでしたねw ・ワルツの仕事の空回り感がクセになりそう。 [気になる点] ・7-7は「もうダメかもしれぬ」率が高かったですね。眠そうなのが伝わった。…
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