表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
604/3387

7.7-26 問題と対処11

「……す、すごいでちゅねー?シュバルちゃん……。増えることも出来るんでちゅねー……?」


「うん。たぶん、そういうわけじゃないと思う……」

「うむ。シュバル殿が増えたわけではないな……」

「そうですね。確かに、シュバルちゃんでは無いと思います……」


テンポの言葉に、否定的な言葉を口にする3人。


だが、シュバルが2体に増えた原因は、実のところ、テンポ本人にも分かっていたようで、


「……えぇ、分かっています。こちらの子は、お姉さまの作ったマイクロマシンの集合体ですね?」


黒いもう一人のシュバルが生じたその瞬間を目の当たりにしていた3人が、彼(?)の正体がマイクロマシンであると口にする前に、テンポの方から自ら、そう口にした。


すると、


「テンポ様、背中を向けてたから見てなかったかもだけど……よく分かったね?」


自分たちとは違って、マイクロマシンたちが集合して赤子の形を作った瞬間を見たわけではなかったはずなのに、テンポが直ぐにその黒い影の正体を見破ってしまった理由が分からなかったためか、イブはそんな疑問を彼女へと投げかけた。

その際、彼女が、その黒い塊に向かって怪訝な視線を向けていたところを見ると、この数日間、自分たちをかき回しているマイクロマシンのことが、イブにはあまり好ましくはない存在に見えていたのだろう。


しかし、である。

いったい何を考えたのか、テンポはイブに対して理由を答える前に、シュバルを膝の上に上げた後で、その黒いもう一人のシュバル(?)を、


「さぁ、おいで?」


と言いながら、抱き上げてしまう。


『えっ……』


その様子を見て、思わず固まってしまう3人。

彼女たちにとって、テンポのその行動は、完全に予想の範疇を超えていたようである。

その際、ユキも、イブと飛竜と同じように、唖然としていたところを見ると、彼女もマイクロマシンに対しては、あまり良い印象を持っていなかったらしい。

まぁ、彼女の場合は、まったく懐かないシュバルのことがあまり得意ではなかったことも、少なからず関係しているようだが。


「それで……私が何故、この子の正体をすぐに見破れたのか、と言う話でしたか?」


「えっと……う、うん……」


同じ姿をした2人の赤子を抱き上げながら、愛おしげにあやしているテンポに対して、微妙な表情を隠せない様子のイブ。

するとテンポは、無表情のままで赤子に優しげな視線を送りながら、説明を始めた。


「その理由は……お姉さまが作ったマイクロマシンだから、というわけではないですよ?シュバルちゃんと少し違うから、というわけでもなければ、こういった黒い姿の謎生物が好きだから見破れた、というわけでもありません」


「えっ……謎生物って……」


「シュバルちゃんにしても、この子にしても、謎の多い生物であることに変わりはありませんし、それを否定したところで、誰にも得はありませんからね。尤も、こちらの子の身体はマイクロマシンなので、正確に言えば、生物ではないのかもしれませんが……」


「……テンポ様、シュバルちゃんがよく分からない生物だ、って分かってて、シュバルちゃんのこと育ててたかもなんだね?」


「はい、もちろんです。ですが、子どもの可愛いさに、見た目や種族の違いなどは関係ないですからね。子どもには皆、平等に愛情を注ぐべき。……それがたとえ、国の滅亡につながっても、です」


「そ、そうなんだね……」


テンポは、子どものことを、一体どのように考えているのか。

子どもに愛情を注ぐということについては、ある程度理解しているつもりのイブだったが、テンポの力説までは理解できなかったようである。


それからもテンポの言葉は続いていく。


「それで、2人を見極めることができた理由ですが……実は……」


『……実は?』


テンポが言葉の続きを中々口に出さないことで、その先の言葉を催促する3人。


すると彼女は眼を細めて、こんな言葉を口にした。


「実は……見えるのですよ?」


その瞬間、


ゴクリ……


と固唾を呑むイブと飛竜。

ユキは流石に、テンポと短くない時間を一緒にいたために、単に苦笑を浮かべていただけのようだが、空気を壊さないようにするためか、身長の低い2人の後ろへと下がったようである。


すると、どういうわけか、今度は飛竜が、首を縦に振りながら話し始めた。


「う、うむ。実は……我にも見えるのだ……」


『えっ?』


「主殿方には見えぬ赤い珠が、この部屋の中、そこらじゅうで怪しげに輝いて……我にはどうも、ここが恐ろしい場所のように思えてならないのだ。そして今、テンポ殿が腕に抱いておられるシュバル殿ではない方の黒い赤子……。我には此奴(こやつ)から出ている魔力が、赤い珠と繋がっているように見えて、赤い珠と同じく、どうにも恐ろしげなものに感じられるのだ……」


「……もう帰ってもいいかな?」


飛竜の言葉を聞いた瞬間、眼から輝きが失われて、まるで油の切れたロボットのように、ぎこちなく入り口の方へと振り返えろうとするイブ。


しかし、そこにはユキがいて、


「安心して下さい、イブちゃん。そんなに怖がることではないですよ?」


彼女から優しげな笑みを向けられたイブは、渋々、話している途中だったテンポの話へと戻ることにしたようだ。


「ど、ドラゴンちゃんが恐ろしい、って言ってるのに……本当に怖くない話かもなの?」ぐすっ


「そこまでイブちゃんが怖がるとは思っていませんでしたが……そうですね。それほど怖い話ではないですよ?」


「なら……一体、何が見えるかもなの?」


もしもテンポが、それを本気で言っているというのなら、自分の部屋の扉や、飛竜の部屋自体を壊してしまっただろうマイクロマシンたちが何を考えて、そしてテンポの腕の中で赤子の形を(かたど)っているのか分かるような気がしたためか、イブは嫌々ながら、その真相を聞き届けることにしたようである。

あるいは、これから先、否が応でも共に生活をしていかなくてはならないだろうマイクロマシンたちの事を考えた結果、彼女はその新しく怪しげな隣人のことについて、何も知らないままでいられなかったのかもしれない。


その結果、彼女の問いかけに対して、テンポが口にしたのは、


「……男の子です」


という、短い返答だった。


「……え?」


「ですから、男の子です。カリーナちゃんが言った赤い珠は、私にも見えていて……実は、それらがエネルギアちゃんのような謎思考生命体となっているらしく、私の認知システムに介入して、小さな男の子の幻影を見せてくるんです」


「んー……なるほどねー…………」


テンポの言葉を聞いて、そして深く考え込むイブ。

男の子がどうして自分の部屋の扉を壊したのか、ということについては、とりあえず何も考えずに端の方に置いておいて、それ以外のことについて思慮を巡らせていたようである。

街中の人々から食事を強奪したり、モノリスを溶かしエネルギアのような戦艦を作り出したり、飛竜の部屋を丸ごと破壊したり、そして赤子の姿を模してテンポの腕の中で大人しく眠ったり。


イブはそれらを考えた結果、仮説を確かめるように、テンポへと問いかけた。


「テンポ様?もしかしてだけど、その男の子って……たくさんいるかもなの?」


イブが思い出した限りの犯行(?)には、まるで一貫性が無かったためか、もしかして複数の犯人(?)がいたのではないか、と彼女は思い至ったようだ。


だが、テンポから戻ってきた言葉は、


「いえ、一人だけですよ?」


という、イブの仮説を否定するようなものだった。


「んー……なら、いたずら好きとか?」


「いたずら好きかどうかは、まだはっきりとした性格までは分からないので、何とも言えません。もしかしたら、隠れた場所でいたずらをしている可能性はありますが、今のところ私は把握していませんね。お姉さまの部屋の中でマイクロマシンが暴走した際も、そこで見かけはしましたが、実際に荒らしている瞬間は見ていないですし……。もちろん、否定はできませんけどね」


「そっかー……」


「……どうしたのですか?イブちゃん。何か考え込んでいるようですが……」


「ううん。なんでもないかも!」


自身の予想が外れてしまったためか、あるいはこのままだと、テンポが愛でる(?)マイクロマシン集合体が、町の中を荒らし回っていることになってしまうためか。

イブは考えていることを口に出さずに、この場では誤魔化すことにしたようである。


しかし、テンポには、イブが何を考えているのか、だいたい分かっていたようで、


「イブちゃんはこの子……ポテンティアが、色々と悪いことをしている、と疑っているのかもしれませんが、ポテンティアは悪いことなど何もしていませんよ?」


いつも通りの無表情ではなく、小さな笑みを黒い赤子へと向けながら、自ら付けたその名前を口にしつつ、彼の関与を否定した。


「ぽ、ぽてん……?」


ポテンティア(Potentia)です。名前の意味はエネルギア(Energia)ちゃんと殆ど同じですね。恐らくは似たような存在なので、ちょうどいい名前だと思うのですが?」


「お、男の子……ううん。なんでもないかも……」


そして再び言葉を飲み込むイブ。

果たしてそれは、言葉の音と、性別の不一致が原因だったのか。

それとも、少年ポテンティアの無実を心底信じ込んでいるテンポにどう対応して良いのか分からなくなってしまったためか。


いずれにしてもイブは、それ以上、テンポに対して、ポテンティアに関する踏み込んだ話を聞くことができなかったようだ。

これのう……思うのじゃ。

3点リーダーを排除してナレーターの文を書いていくと……恐らく、2、3ヶ月後には、まるで異なるナレーションに変わっておるのではないか、とのう。

……現状のままじゃと、酷く書きにくいのじゃ……。

おかげで、キャラクターの発言や、このあとがきでは、無駄に3点リーダーの数が増えてしまって……いや、元々だったのう……。


まぁ、いいのじゃ。

そんなわけで、大昔にワルツがコルたちに名付けようとした際に1度だけ出て来た(?)『ポテンティア』と言う名前が、再びここで出てきたのじゃ。

ずーっと出したくて、機会を狙っておったのじゃが……まさか、1年以上時間が掛かるとは思わなかったのじゃ。

いやそもそも、その頃、1年以上書き続けるとは思ってもみなかったのじゃがの?


これで1つ、肩の荷(?)が降りたわけじゃが……今度は違う問題が発生して困っておるのじゃ。

……7章が7.7で終わらない問題……。

今の状況じゃと、まず確実に、7.8章に突入してしまうのじゃ。

流石に7.9章までは行かぬとは思うのじゃが……困ったものじゃのう。

ブーストして圧縮するという暴挙に出るというのも方法の一つじゃが……時間が無いのじゃ。

連休も休日も、妾には関係ないからのう……。


というわけで、ポテンティアの話に、もうしばらくお付き合いくださいなのじゃ!




カサカサカサ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ