7.7-18 問題と対処3
ブゥン……
風を切断して、
サクッ……
ルシア製の特殊鋼を両断し、
「ちょっ……!」
真っ直ぐにアトラスへと迫る赤黒い刃の雨、嵐……。
その刀の切れ味も然ることながら……その狂刃を扱うシラヌイの技量も、相当なものであった。
少しでも刃の角度が狂ってしまったなら、壁を切断している間に、真剣白刃取りの要領と同じく、その刀は壁に挟まれて動かなくなってしまうはずなのである。
更に言えば、刀の軌道が真っ直ぐだったとしても、どこかの誰かが使ってる超重力刀(?)のように物理的な厚みがゼロなわけではないので、刃が壁の中を切り分けて進むためには、それ相応の抵抗は必ず発生するはずだったのだ。
それでも、刃の速度が落ちることはなく、常に一定で、その上、狂いのない滑らかな軌道を描いていたのは……その持ち主であるシラヌイの精密なコントロールと……そして、何より、彼女の馬鹿力が生み出した結果であることに、他ならないと言えるだろう。
「アトラス様……。どうして……どうして、幼いイブちゃんなんかに手を出したのですか?!もしかして、異常性癖者ですか?!……いえ。もしもそうだったとしても私は……!」
ブォン!
そんな意味深げな言葉を口にしながら、2本の刃を平行に寝かせて、まるで草刈り機のように身体を回転させつつ、アトラスへと斬りかかる鬼人の少女シラヌイ。
アトラスに刃が近づくその瞬間、彼女が手首の角度を調整することで、切っ先の速度を上げていたところを見ると……シラヌイは本気でアトラスのことを殺そうと考えているようだ。
「いや、そんなことしてないって!それシラヌイの誤解d……」
「問答無用!」
「えっ……」
ブゥン……
スパンッ!!
言い訳を聞かれたために、釈明の言葉を口にした途端、容赦なく突っぱねられたアトラスが、口撃と刃の回避のために2歩後退すると……彼に迫っていた刃は、壁の近くにあった配管を、およそ金属を切断したとは思えないような音を上げながら通過した。
その瞬間、
ブシュゥゥゥ!!
どうやらそれは、空調の熱交換用触媒が通っている配管だったらしく、相当な勢いで、辺りを白いガスが立ち込め始めてしまう。
「…………(どうする……?)」
有視界距離がほぼゼロになったことで……しかし、慌てること無く、音も立てず、逆にその白煙を活用することにした様子のアトラス。
自身の眼に搭載されていた高ダイナミックレンジカメラでも、その霧の向こう側を見通すことは叶わなかったが、それは相手も同じはず……と、彼は考えたようだ。
だが……
ブォン!
「ちょっ、待って!」
シラヌイの刃は、その程度の白煙では、アトラスを見失うことはなかったようだ。
「どうして見えるんだ?!」
その切っ先の速度が、かろうじて音速以下だったおかげで、どうにか音だけでシラヌイの刃を避けることに成功したアトラス。
彼は、霧のせいで伝わることがないはずの双方の動きが、どうしてシラヌイだけには分かってしまうのか理解できず、声を出すことで霧の中の自分の位置が相手に伝わってしまうことは承知の上で、その理由をシラヌイに問いかけた。
相手には自分の位置が特定されているので、今更、わざわざ隠したところで意味は無い、と考えたのだろう。
すると、霧の向こう側から、壁に反射して木霊しながら、シラヌイの返事が戻ってきた。
「……アトラス様の匂い。アトラス様の服が擦れ合う音。アトラス様の息遣い。そして、アトラス様の気配……。そのすべてが、アトラス様の居場所を、私に教えてくれているのです……」
「お、おう……(匂いってなんだよ?!っていうか、さっき息してなかったぞ?俺……)」
「というわけで、死んで下さい!」
「どういう理屈だよ!?」
ブォン!
そして、再びアトラスに襲いかかる刃。
だが、そこから先のアトラスの行動は……ここまでの回避だけのものとは、少し違っていたようだ。
「……っ!」
ここまで回避一辺倒だったアトラスが、遂に攻勢へと転じたのである。
そんな最初の彼の行動は……彼にしか出来ない、とんでもない動きだった。
流れるようにして襲いかかる刃が、自分の目の前を過ぎ去っていった1/1000秒後に、逆に刃の背中を、霧の中に向かって、突進したのである。
刃が見えている内に、それを手にしているだろうシラヌイへと接近して、そして次の攻撃が飛んで来る前に無力化する……。
まさに、ワルツの弟分ならではの、人間には絶対にできない芸当であると言えるだろう。
そして、それから数ミリ秒後。
アトラスは刀の持ち主であるシラヌイの左手を目視することに成功する。
だが、そこで彼を待ち構えていたのは……シラヌイが右手で振るった、2つ目の刃だった。
ブォォォォン……
思考を高速化していたアトラスには、刃の切っ先で生じた乱流の音が、異様に遅く聞こえていたことだろう。
つまり、今の彼にとって、その刀の動きは……ゆっくりと動いているように見えていたのである。
故に、それを避けることは簡単で……彼はシラヌイに辿り着くまでのあと数歩の距離を詰める前に、姿勢を低くして、迫りつつあった刃の回避を優先することにしたようだ。
そして彼は、頭の直上を通過していく狂刃を確認すると、一気にシラヌイへと近づこうとした。
……しかしどういうわけか、
「(は?なんで1発目の刃が、もうこっち向いてんだよ……)」
シラヌイが先に左腕で放って、通り過ぎていったはずの刃が、彼女の身体を一周して……今度は真っ直ぐ的確に、アトラスの身体を突くコースで、再び向かってきていたのである
この間、数十ミリ秒……。
「(シラヌイ……。お前、まさか化け物か?!あ……そういえば化け物だったな……)」
彼女が超速で折り紙を折ったり、手がボロボロになってもお構いなしにフォージハンマーを振るったり、ルシア製の特殊合金を軽々と切断したり……。
アトラスは、シラヌイが人間離れした行動ばかりしていることを、ここでようやく思い出したようだ。
だが、それでも、彼がシラヌイに対して、恐怖を感じていなかったのは……アトラス自身も化け物に名を連ねる人物の一人だったためか。
彼はそれからしばらく、シラヌイの刃を巧みに避けながら、彼女の腕から刃を落とそうと試み続けていたようである……。
……そして、数分が経過した頃。
上層階にいたワルツとイブが、空調が壊れたことを不審に思い、配管を辿って溶鉱炉のある部屋へとやって来た。
彼女たちがやって来た時には、そこで漂っていた白煙は、すっかりと消え去っていたようだが……しかし、その代わりと言うべきか。
施設の中には、異様な音が響き渡っていたようである。
ドガガガガ!!
「……何の音だろ?ワルツ様?」
「さぁ?誰か地面に穴でも掘ってるんじゃないの?」
「ここを掘っても、その下にある王城しか無いと思うかもなんだけど……(つまり……金庫泥棒かも?!)」
そんないつも通りの冗談を口にしながら、音が響き渡っている場所へと足を進めるイブとワルツ。
そして、その音源となっていた溶鉱炉のある部屋までやって来た彼女たちの眼に、写り込んできた光景は……
ドガガガガ!!
「…………!」にやり
「…………!」にっこり
と、何故か笑みを浮かべながら……目にも留まらぬ速さで応酬を繰り広げるアトラスとシラヌイの姿だったようだ。
いつもよりも、600文字くらい短いのじゃ。
切りの良いところを見ておったら、ここで切るのが良さげじゃった故、短くなってしまったのじゃ?
……別に、楽をしようと思ったわけではないのじゃぞ?
ただのう……。
短いくせに、あまり文がキレイではないのじゃ。
今日、昨日としっかりと寝ておることもあって、普段程は眠くはないのじゃが……頭がモヤりはどうにもならない故、結局、いつも通りカオスな文になってしまっておるのじゃ……。
どうすれば読みやすい文が書けるか……。
明日あたり、今日の文を見直してみて、解析しようと思うのじゃ?
大体は、文が長すぎて、前の部分と後ろの結論とが一致しておらぬことが原因だということは分かっておるのじゃがの?
じゃがそれだけではなくて、語尾のつながりや、韻のふみかた、文の切り方などなど……複合的な原因が関係しておることも、自覚しておるのじゃ。
あ、それと、『ひらがな』の使い方も、のう?
明日はゆっくりと時間を取る予定じゃから、その辺を一度、考えてみるのじゃ!
……む?何じゃ?ルシア嬢?
明日、時間があるなら稲荷寿s……ちょっ、やめっ…………zzz。




