7.6-20 サウスフォートレスでの戦い05
妾は激怒しておる!
サウスフォートレスを守る都市結界は、前線基地を守っていたものとまったく同じものであった。
マギマウスたちが殺到したなら、当然、同じように壊れてしまうのである。
そうならないようにするためにどうすればいいのかというと……要するに、一箇所にマギマウスたちが集まらないように、分散させればいいのだ。
そのため、サウスフォートレスには、町の結界を守るための防衛隊が組織されていた。
普段からここを拠点に活動している騎士たちや兵士たち、それに臨時で雇われた冒険者たちや魔女たち、そしてミノタウロスたちが、異常に集まったマギマウスたちによって結界が破られないよう見張るために、定期的に歩哨を行っていたのである。
その際は、結界の内側からマギマウスたちを突いても、その攻撃が自分たちに飛んで来ることは無いので、比較的安全にマギマウスたちを討伐できるのだが……ただし、その反面、マギマウスを討伐しても、追加報酬が支払われなかったこともあって、あまり人気のない仕事だったようだ。
故に、その仕事は、元々町に住んでいる住民たちや、ここを拠点に活動している冒険者たち、あるいは魔女たちのように近隣に住まう者たちなど、言わば、町内会メンバーのように顔見知りの者たちばかりが集まって、善意で行っていたようである。
そのためか、ガラの悪い冒険者などはおらず、そこで活動する人々同士の雰囲気は、決して悪くなかったようだ。
街の近くで苦戦していた勇者のところに助けが来たのも、我先にとマギマウスたちに戦いを挑んでいった自己中心的な冒険者たちではなく、穏健な彼らが歩哨を行っていたおかげであった、と言えるだろう。
だからこそ……
「くっ……みんな!無事でいてくれ……!」
……勇者は胸騒ぎがしてならなかった。
町を守るために戦っている者たちの中には、知り合いが多く含まれていたことも理由の一つだが……そんな彼らが組織立って活動し、今日この日まで特に問題なく機能していたはずの防衛網が、何の前触れもなく瓦解してしまうことに、彼は言い知れぬ違和感を感じていたのである。
果たして、単なる事故なのか……それとも、それ以外の『想定外』が生じたのか……。
いずれの場合であったとしても、勇者は、とにかく皆が無事であって欲しい、と心の底から願った。
それが、単なる誤報であってほしいと……。
……しかし残念なことに、それは夢でも幻でも、そして誤報でも無かったようである。
彼が町の正門からほど近い、今は誰もいない屋台の並ぶ、中央広場の噴水に差し掛かった時の事だった。
ドゴォォォォン!!
今日、何度となく聞いたその爆音が、再び彼の耳に届いてきたのである。
それも、ちょうど1週間前に、町を取り囲むように建設が終わったばかりの市壁の内側からだ。
「……?!」
その音を聞いて、鉄パイプを握り直し、物陰に隠れながら、すみやかに現場へと急行する勇者。
マギマウスたちの攻撃は、基本的に遠距離からの魔法による攻撃が主だったので……彼はまるで、弾が飛び交う現代世界の戦場を駆けるように、障害物だらけで見通しの悪い街の中を、爆音が聞こえてきた方向……正門の方へと、まだ傷んでいた身体を我慢して走らせながら、ただひたすらに進んで行った。
……ただ、その際、
「……くそっ!やっちまった!」
と、独り言を口にしながら、何かを後悔するような表情で彼が毒づいたのは……満身創痍のはずなのに、妙に軽かった身体のことに、今更になってようやく気が付いたからだろうか……。
……どうやら彼の思考は、今この瞬間も、寝ぼけている状態にあるようだ。
それから、通路のどこかに鎧のようなものが転がっていないかを探しながら、周囲に警戒しつつ町の正門までやって来た勇者レオナルド。
しかし残念なことに、ゲームと違って、彼が着れるような防具は、町中でもそう簡単には転がっていなかったようである。
だが、勇者には、町の人々が敵に襲われているかもしれないというのに、自分の身を守ることを優先して防具を取りに施療院まで引き返す、という選択肢は無かったようで……鉄パイプとズボンだけしか身に着けていない、という、傍から見ると本当に戦う気があるのかどうかすら疑われてしまいそうな格好で、彼は渋々戦うことを選んだようだ。
「(……ぽ、ポジティブに考えよう。身が軽い分、いつもより早く動ける、って!)」
今もなお、時折、空から降り注ぐみぞれの粒が、裸の上半身に触れた際の冷たさを感じながら、戦いに集中するために余計な思考を止める勇者。
そして彼は……ついに町の正門へとたどり着く
その場には……
ドゴォォォォン!!
……彼が見たくなかった最悪の光景が広がっていた。
『…………』
身体を真っ赤に染めて地面に沈んでいる、モノ言わぬ兵士とミノタウロスたち……。
荒い息を吐きながら、真っ青な表情で地面に膝を付いたり、へたり込んだりしている魔女たち……。
そして、無残に壊れてしまっていた正門と、その周辺一帯の市壁の残骸……。
その姿を見て……勇者は混乱した。
握っていた相棒の鉄パイプを思わず落としてしまいそうなほどに、心は動揺して、身体はまるで寒さに絶えるように震え、焦点は一箇所に定まらなかった。
眼に見える光景を受け入れたくなかった、という観点においては、その意味が違えることは無かったが……しかし、彼が狼狽えてしまったのは、最悪の光景が広がっていたために、心が折れてしまいそうだったから……というわけではない。
ではどのような理由があったのか、というと……町の人々を傷付けて、市壁を破壊し、蹂躙の限りを尽くしていたのが、マギマウスではなかったからである……。
「なん……だ。これは……」
どうにか動かせた口から出てきた言葉は、受け入れがたい現状に対する疑問だった。
こう表現するのは間違いかもしれないが……彼は、敵がマギマウスならよかったのに、と心の底から思ったようである。
そんな勇者がやって来たことに気付いた彼の敵は……おもむろに黒い何かを耳に当てると、それに対して口を開いた。
「……ミッションは粗方終えたが、鉄パイプを持った目つきの怪しい怪しげな少年が現れた。どうする?ついでに排除しておくか?嫌な予感がするんだが……」
と、誰かと話すように喋る、見たこともない黒い甲冑を纏った……男性。
そしてもう一体、
「グルァ……?」
首に金色の大きな首輪が輝くドラゴンが、真横にいた黒甲冑の男性に対し、勇者の処遇を伺うように首を傾げた。
そんなドラゴンに対して、まるで彼が自身のペットであるかのように、黒甲冑の男性は話しかける。
「あ?お前が喰うか?……よし、マテだぞ?」
……彼がそう口にした瞬間であった。
グルァァァァァ!!
大きな鳴き声を上げたドラゴン……地竜が、そんな声を上げつつ、地面に伏せている兵士たちやミノタウロスたち、それに町並みまでも大きく吹き飛ばしながら、勇者に向かって突進してきたのである。
「……?!」
マギマウスと戦おうと思っていたら、ドラゴンの種類の中でも最も硬い種である地竜に襲われて……。
勇者は、これまでの人生で2番目くらいに、混乱の度が高まってしまったようだ。
彼が、突進してくる地竜と現状を前に、どう行動していいのか考えあぐねていると……
「あー、『マテ』っつったのに……って、その前に、『よし』、って言ったか……。まぁいいや。喰い終わったら、ちゃんと口洗って戻ってこいよ?地竜」
黒甲冑の男性は、そう口にした後で……
ブゥン……
と、低い音を立てて、転移魔法を行使し、地竜を街に残したままで、姿を消してしまった。
ミッションを終えたと口にした彼にとっては、その場でやるべきことはもう無かったのだろう。
あるいは……彼が話しかけていた、その『黒い小さな箱』から、何らかの返答が聞こえてきたのかもしれない……。
「……くそったれ!」
町並みや人々を容赦なく吹き飛ばしながら、自身に対して突っ込んでくる地竜と、そんなドラゴンを連れてきただろうテイマーと思わしき男性の姿を思い出しながら、今日何度目になるか分からない罵声の言葉を口にする勇者。
彼は、この瞬間、自分が人を守る『勇者』であることを呪った、という話だ……。
……12時までに投稿が間に合わなかったのじゃ……。
この1年4ヶ月と4日、日数にすると492日。
例え地球の裏側にいたとて(実話)、ネットの入らない太平洋上にいたとて(実話)、なんとかどうにか毎日絶やさず投稿してきた記録が、500日連続投稿まであと1週間ちょっとというタイミングで……途絶えてしまったのじゃ!
もう……ダメなのじゃ……。
DNS ampでトラフィック汚染したやつ、出て来い!なのじゃ!うわーーーーん!!
はぁ…………。
もう、いいがの…………。
今日は疲れてしまったのじゃ……。
仕方がないから、回線の調子が治って、あとがきが投稿できるようになるまで、長々と駄文でも書くことにするかのう……。
というわけで、本文で書くところがなかった故、書きたかったことをここに書くという暴挙に出るのじゃ。
……いつも通りの、補足じゃがの?
勇者殿が正門にたどり着いた時点では、まだ結界は壊れておらぬのじゃ?
じゃから、マギマウスたちは街の中には入ってきておらぬのじゃ。
勇者殿が街の中でマギマウスたちと接敵しなかったのも、それが理由なのじゃ。
……たまにあるじゃろ?
ボス戦直前で、やたら静かな通路とか……。
そんな感じに近いのかも知れぬのう。
それと、昨日の話で、施療院に現れた兵士……。
彼は、大事なことを喋らなかったのじゃ。
言うまでもなく、ドラゴンが攻めてきた、という言葉なのじゃ?
市壁を破られたと言う言葉以外、何も喋れぬほどに、満身創痍だったのじゃろうのう。
今の妾のように……。
他は……そうそう。
勇者殿の思考で、ワルツが暴力を振るっておらぬというのは『一般市民に対して』という条件付きだったのじゃ?
というのも、勇者殿の立場に立って考えてみると……ワルツに関する思い出は、重力制御で理不尽な暴力を与えられたことしか浮かばなかったのじゃ……。
それを今朝起きた時に思い出したのじゃが……まぁ、勇者殿に対しても、真面目に重力制御を加えたことは、1度も無いはずじゃから、問題ない、と考えてもらえると助かるのじゃ。
そう。
少し理不尽なだけの戯れなのじゃ!
……え?プレッシャーで議会コントロール?
んー……妾はプレッシャーをプレッシャーを向けられたことはない故、分からぬのじゃ!
……ネットワークががまだ復帰せぬ……。
つまり、あとがきをアップロードできぬのじゃ……。
アクセスできるようになるまで、次は何を書こうかのう……。
……眠いし、やる気も爆散してしもうたし……。
もう、何もかもを忘れて、夢の世界に旅立ちたいのじゃ……。
明日は景気付けに稲荷寿司でも食べてこようかのう……。
……ルシア嬢?ニヤニヤしながらこっちを見るでない……。
んー、これまで書いてきた話の中で、補足するのを忘れておることが、たくさんあったような気がするのじゃが……こうして書こうとすると、いつも思い出せぬのじゃ。
一応、メモ帳には、伏線リストとネタリストがあるのじゃが、それを補足で説明するわけにもいかぬしのう……。
もちろんそこには、補足からの発展で、ネタ化したものもあるのじゃ。
妾が覚えておれば、おそらく次回か、その次あたりで、伏線の一つが回収されるのではなかろうかのう?
例えば……何故、魔女が迫害されておるのか……とかのう?
例え話になっておらぬか……。
まぁ、そのくらいの予告は良いじゃろう。
……眠たい……眠たいのじゃ……。
じゃが、ネットワークが妾を寝かせてくれぬのじゃ……。
早く、鯖との通信が回復せぬかのう……。
というか、明日からどうしようかのう……。
今日の分は特例として、昨日投稿したことにしてくれぬかのう……。




