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7.6-06 赤い珠06

微グロ注かもだし?

ブレーズたちに言いたいことだけを言って、逃げるようにさっさと上層階の工房へと戻ってきたワルツ。

そんな彼女が戻った先は、マイクロマシンを製造しているMEMS生産設備のある部屋・・・ではなく、大規模な手術室が設置されていた、どこまでも真っ白で静かな医療区画であった。

・・・幽霊と医者の大嫌いな狩人とイブが、絶対に近づかない区画である・・・。


そんな場所に何故ワルツがやって来たのかは・・・明日から彼女が何をしようとしているのか、ということと、マギマウスの事件には共犯者がいた、と言えば、その理由は分かってもらえるのではないだろうか。

・・・要するに、カタリナに対して事情を話すために、彼女はここまでやって来たのだ。


しかし、医療区画の中心に位置する、カタリナ専用の診察室では・・・ワルツの予想を超えた出来事が展開されていたようである。

まぁ、正確には、予想出来ていなかったというわけではないようだが、それでもわざわざ事情を聞いてしまうほどには、驚いていたようである。


何故ならその部屋では・・・


「もがぁぁぁっ?!」


と、なぜか猿ぐつわをされた状態で、魔王とメイドを兼任しているヌルが、診察用のベッドにロープで縛り付けられていて、彼女の前で・・・


「聞き分けの無いユキさんのお姉さんには、少し痛い目に遭ってもらわはなくてはなりませんね・・・」


と、何故か、医療用のノコを手に持ったカタリナが佇んでいたからである・・・。

・・・拷問。

そう、まさに、拷問数秒前の状態である・・・。


「・・・何でこんなことになってるわけ?」


ワルツは音も無く部屋の中に入った後、カタリナのうしろで、どう対応したらいいのか分からず、落ち着きの無かったユキに対して問いかけた。

議長室でコルテックスとヌルの戦闘が始まったことしか知らず、その結果まで知らされていなかったワルツにとっては、当然の質問と言えるだろう。


「あ、ワルツさん・・・。えっと・・・ボクにもよく分かりません。両手を失ったヌル姉様が、ユリアに連れられてここに突然現れて、カタリナ様に腕を治してもらったのですが・・・その後で突然、死にたい、などと言い始めまして、魔法で作った氷刀を首筋に当てて自殺を図ろうとしたのです。それで、やるならやってみろって、カタリナ様がすごい剣幕でお怒りになられて・・・それでヌル姉さまは一旦はナイフを下ろされたのですが・・・カタリナ様のお怒りはそれで収まらなかったみたいです・・・」


「ふーん・・・。コルテックスに負けたのね・・・ヌル。まったく、困ったものよね・・・プライドとか面子とか・・・」


ワルツが2人の様子を見て・・・しばらく経ってから、また後で来ようか、などと考えていると・・・


「も、もがっ!」


彼女が部屋を離れる前に、ヌルに気づかれてしまったようだ。


それと同時に、カタリナも気づく。


「・・・あ、ワルツさん。何かあったんですか?」


「何かあったって・・・・・・こっちが逆に聞きたいんだけど?」


「・・・?えっと、このノコのことですか?」


「うん、できれば全部・・・」


そんなワルツの質問に、カタリナは大きくため息を吐くと、彼女はヌルに対して哀れむような視線を向けてながら、ゆっくりとその理由を口にし始めた。


「どうやらユキさんのお姉さんの・・・ヌル様は、コルテックスちゃんに負けてしまったみたいです。それで魔王のプライドが傷ついただの何だのとワケの分からないことを言っていましたので、ちょっと現実に引き戻してあげようかと思いまして・・・」


「そう・・・。でも、そのノコは関係ないわよね?」


「本当は、繋げた腕を再び切断して・・・反省するまで牢屋にでも入れていこうかと考えていたんです。ついでに、ヌル様の体細胞を採取して、実験に使おうk・・・いえ、なんでもありません」


『・・・・・・』


「問題は・・・ヌル様の傷付けられたプライドをどうやって治すか、ですね。私は外科医なので、切った貼ったしか出来ませんので・・・。なので、仕方なく、荒療治に出た・・・そんな感じです」


そう言ってから、ようやくノコを白衣の中に仕舞うカタリナ。

その際、ヌルが、心底安堵した様な表情を見せていたところをみると・・・彼女には最早、自傷行為を続けるつもりは無さそうである。


そんな彼女の考えが、ワルツに伝わったかどうかは分からないが・・・ワルツは話題を変えるように、この部屋に来た理由とヌルの事を合わせて話し始めた。


「どうしようかしらね・・・。明日から、マギマウスの対策を始めようと思ってんだけど、まさかヌルが来るとは思ってなかったし・・・」


その言葉を聞いて・・・


「・・・!遂に、始めるのですか!?」


と、ワルツに確認を取る共犯者カタリナ。

実験用のマギマウスを処分せずに野に放していた(?)の半分の原因が、カタリナにあることを考えるなら、彼女もまたワルツと同等の責任を負っていると言っても過言ではないのである。


「えぇ。サウスフォートレス地方では色々と面倒なことになってるみたいよ?カタリナは知ってた?」


「ワルツさんが言うほどの面倒なんですから・・・相当面倒なんでしょうね。今、ワルツさんに聞いて、初めて知りました」


カタリナはそう言うと・・・申し訳無さそうに眼を伏せてしまった。


彼女は、ワルツと違って、しっかりマギマウスの処分さえ行っていれば、現在のような問題は生じなかったはず・・・ということを、痛いほどに分かっていたはずだった。

しかし、眠り始めてから数ヶ月が経過していた、元チームメイトの魔法使いリアの治療を優先するあまり、彼女の頭の中では、マギマウスの話はすっかりと端の方へと追いやられていたようである。

友人を救うことを優先すべきか、それとも後始末を優先すべきか・・・。

そんなジレンマに挟まれていたせいで、マギマウスに対処するという優先度は、知らず知らずのうちに、低くなっていってしまったのだろう。


それからカタリナは、同じ表情のままで顔を上げると、ワルツへと静かに問いかけた。


「私に・・・何かできることはありませんか?」


だが・・・


「んー、無い!」


と、カタリナとは対照的に、明るい顔で彼女の協力を断るワルツ。


「えっ・・・」


「今回、カタリナが協力できるようなことは無いわ。貴女は、このままリアの治療に関する研究を続けてちょうだい?貴女に遺伝子操作の知識や技法を教えたのは私なわけだし、処分しようと思えばいくらでも処分できたはずのマギマウスを、どこかの島に投棄しよう、って言い始めたのも・・・私だしね。それに何より・・・今回のマギマウス対策は、マイクロマシンを散布すれば、あとは単なる時間の問題であって、カタリナにも私にも、その後で出来ることは何もないわけしね」


「えっと、ワルツさんの話を聞く限り、簡単に終わるような口調に聞こえるんですが・・・本当に大丈夫なんですか?」


「えぇ。そりゃもう、バラ撒いた後は、スイッチ一つ押すことなく、勝手に死滅していくはずよ?本来は・・・責任持って、一匹一匹処分していくべきなんでしょうけど・・・ね」


「なんか・・・すみません」


「気にすることはないわよ。そんなわけだからさ・・・」


ワルツはそう言うとカタリナに背を向けて・・・そして診察室の入り口へと歩きながら、言葉を続けた。


「リアのことと・・・それと、そのついで良いから、ヌルの事も頼んだわね?」


「も、もがっ?!」


「・・・承知しました」


そして、部屋から立ち去っていくワルツ。

ヌルはそんなワルツに、言葉では表現しきれない複雑な視線を向けていたようだが・・・それでも彼女が戻ってくることは無かったようだ・・・。

むしろ、ワルツは、その視線の意味が分かっていて、あえて戻ってこなかった、と言うべきか・・・。


「さて・・・それでは、続きをはじめましょう。ユキさんのお姉さんの・・・ヌルさん?敬称は省略させてくださいね?この施設では、上下関係は無くて・・・あるのはただ、理不尽だけですから」ニッコリ


そして、再び自身の白衣の中に手を入れて・・・何か道具を(まさぐ)り始めるカタリナ。


「もがっ!」


その様子を見て、ヌルは、縛られていたせいで動けなかった身体を必死に動かしながら、妹のユキに対して助けを求めるような視線を向けていたようだ。

だが、それに気づいていながらも、ただ苦笑を浮かべるだけで、ユキに何かをしようとする気配が無かったのは・・・彼女もまた、ここには理不尽しか無いことをよく理解していたから、ということだろうか・・・。

・・・今日は早く寝るのじゃ。

いや、今日()早く寝る、と言うべきかのう?

明日・・・明日こそは、神社巡りの旅に行って来たいのじゃ・・・!

それによって、色々とモチベーションが変わってくるからのう。


というわけで、足早に補足へと入ろうと思うのじゃ。

じゃがまぁ・・・これと言って、特に補足すべきことは無いのじゃ。

しいて言えば、テンポとシュバルはどこに行ったのか、ということかのう?

それについては・・・明日、語ろうと思うのじゃ。

2人揃って旅に出た・・・ということは無いのじゃ?

・・・多分の。


まぁ、そんなわけで、ここで御暇させてもらうのじゃ。

土日は・・・話を進めていきたいものじゃのう・・・。

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