7.6-05 赤い珠05
グロ注なのじゃ〜?
ワルツが、どうにもならなそうな3人組を前に、内心で頭を抱えていた頃・・・。
議長室で親睦(?)を深めていたミッドエデン国家議会議長コルテックスとボレアス帝国皇帝ヌルの2人の肉体言語による会話は、いよいよ終盤を迎えていたようだ。
・・・ただし言っておくが、筋肉によるものではない。
「・・・口程にもありません。魔王とはこの程度のものなのですか〜?あまりにも弱すぎて、魔法も武器も・・・一切、使う必要は無かったですね〜。悔しかったら、2、3回、変身してみてはいかがですか〜?私の知っている魔王は、み~んな変身して絶望を振りまいていましたよ〜?(ゲームの中の話ですけど〜)」
「くっ・・・!き、貴様・・・只者ではないな?!」
すべての攻撃をまったく避けなかったにも関わらず、完全に無傷な状態で普通に話しているコルテックスを前に、スタミナ切れで地面にへたり込んでしまった様子のヌル。
彼女の500年以上に渡る魔王人生の中で、ヌルはコルテックスのような人物(?)に出遭ったことは無かったらしく、彼女はかすり傷をつけることすら叶わなかったコルテックスに向かって、悔しそうな表情を見せていたようである。
・・・そしてその後で、こう口にする。
「こ、殺せ!見世物になる気はない!」
「・・・・・・!」
その瞬間・・・どういうわけか、この上なく嬉しそうな表情を浮かべるコルテックス。
彼女はその理由ついて何も口にしなかったが・・・副音声では、ほぼ間違いなく、『その言葉が聞きたかったのですよ〜』と言っていることだろう・・・。
そんな満足気な表情を見せたコルテックスは、室内での戦闘を考えて、書類が吹き飛ばないようにエネルギア用の重粒子シールドを展開していた議長専用デスクを通常モードへと戻すと・・・それから何もなかったかのように、椅子に腰掛けた。
そして、引き出しの中から書類を取り出して、それに対して何気なく眼を向け始める。
それも、眼の前の満身創痍状態のヌルを完全に無視して・・・。
その様子はまさに、満足した結果、どうでも良くなった・・・そんな雰囲気である。
すると当然のごとく・・・
「・・・?」
と、思わず首をかしげてしまう魔王のヌル。
どうやら彼女には、戦意を失って書類に眼を向け始めたコルテックスの姿が・・・獲物に噛みつく寸前で、食べるの止めた捕食者のように見えていたようだ。
あるいは、戯れ半分で弄ばれた、と思ったのかもしれない・・・。
「まさか・・・私に情けをかけるというのか?」
「・・・ふぇ?」
「・・・くっ!」
そして、自らの首に、氷で出来た短剣を突き立てようとするヌル。
そんな彼女に対して、
「はぁ・・・」
と、呆れたような溜息を吐いたコルテックスは・・・遠隔操作で王都の市壁に設置されていた防衛用の対空高射砲の一つを、まるで自分の手足の一部かのように操作して・・・
ドドン!!
と、2発ほど、ヌルに対して発射した。
・・・その直径30mmの砲弾は、音速を超えた速度で、外から議長室へと侵入する。
風でそよぐカーテンの隙間を抜け、コルテックスの右肩を掠め、議長専用デスクのすれすれの場所を通過し・・・そしてヌルの両腕を、短剣ごと超音速で吹き飛ばした。
ドシャッ!
ドゴォォォォン!!
そして、新しい議長室内の壁に当たって粉々に弾けるタングステン弾。
弾が壁を貫通しなかったところをみると・・・やはり、ルシア製の特殊鋼材は、凄まじい強度をもっているようだ。
まぁ、それはともかくとして・・・
「・・・・・・?」
その瞬間、何が起ったのか把握できなかったヌルは、突然無くなってしまった自分の腕を前にして、事態をどうにか理解しようとしていたようだ。
辱めを受けるくらいなら、自害しようと考えていたのに、気づいたら短剣と共に腕が無くなっている・・・。
しかし、理解を進めようとしても、事はあまりにも奇怪すぎたようで、彼女が事情を把握する前に・・・
「ぐあっ・・・!?」
両腕を失ったことによる激しい痛みが、ヌルに襲いかかったようだ。
「はいはい。自殺なんて考えたら駄目ですよ〜?あと、どこかの物語みたいに、かっこ良く止めてもらえる、なんてことも無いですからね〜。それじゃ、うるさいので、さっさと退場してください。仕事の邪魔です」
コルテックスはそう言ってから、書類から眼を離さずに・・・デスクの上に並んでいたボタンの一つを押した。
・・・その瞬間、
ガコン!
と開く、議長室の床。
すると、床でのたうち回っていたヌルは・・・声を上げることもなく、静かにその中へと姿を消してしまったようだ。
・・・その際、ユリアらしき人物の叫び声が、下の階から響いてきたのは・・・気のせいではないだろう。
「ふぅ。これで一件落着ですね〜」
そして、通常通りの業務に戻るコルテックス。
どうやら、魔王らしい魔王だったのは、ヌルではなく、コルテックスの方だったようだ・・・。
一方で。
「ひ、ひぇぇぇぇっ?!」
突然、天井から、両腕を失った血まみれのメイド・・・ヌルが落ちてきたために、真下の階にあった情報局局長室では、部屋の主のユリアが混乱していた。
先程から上の階がドタバタとうるさかったことで、議長室で何かあったことは分かっていたユリアだったが、流石に、母国の魔王が突然天井から落ちてくるとは思っても見なかったらしく、流石に冷静を保つことは出来なかったようだ。
「ぬ、ヌル様、大丈夫ですか?!」
書類を整理していたおかげか、それをクッションにするように落下して・・・しかし、その書類の中でぐったりと横たわっているヌルに対し、ユリアは安否を問いかけた。
するとヌルは、その場で横たわったまま、両腕に氷魔法を掛けて止血しつつ、落ちてきた天井に悔しそうな眼を向けながら、その口を開いた。
「・・・これが負けた勇者の気分ですか・・・。何とも・・・表現しがたい気分ですね・・・」
「えっと・・・よくわかりませんが、とにかく、カタリナ様のところに参りましょう!カタリナ様なら、ヌル様の腕を生やしてくれるはずですから!」
そう言って、ヌルに駆け寄ろうとするユリア。
ヌルの腕を吹き飛ばして、ここに彼女を落したコルテックスも、それを考えてユリアのところに落したはずだが・・・ヌルの魔王としての矜持は、それを潔しとしなかったようだ。
その結果、彼女はこう口にするのだが・・・
「・・・いえ、構いません。この傷を負って生きていくことも、敗者の務めなのでしょう・・・だから、私には構わず、ユリアは・・・」
・・・と、ヌルがそこまで言った時の事だった。
彼女は、何かに気づいたらしく、急に口を噤んでしまったのである。
一方で、声を上げたのは、ヌルの側に駆け寄ったユリアだった。
「・・・何、馬鹿な事を言ってるんですか!」
と、肩を震わせながら、無礼であることなどを考えずに、本気で怒っていることを言葉で表現するユリア。
どうやらヌルは、そんなユリアの怒った表情を前に、言葉を失ってしまったらしい。
「馬鹿って・・・」
「敗者だの勝者だの、そんな下らないことを言ってるヌル様が、馬鹿だと言ってるんです!ほら、つべこべ言ってないで、さっさとカタリナ様のところに行きますよ!」
そして・・・何故か実体のある幻影魔法(?)で創り上げた巨大な手で、ヌルのことを無理矢理に握りしめるユリア。
その際、ヌルは、魔王としての面子を保つためか、残された力を使って、ほぼ全力の抵抗をしようとしていたようだが・・・まったくびくともしなかったらしく・・・
「・・・おかしい・・・。この国、何かおかしいです・・・」
遂に、すべての抵抗を諦めてしまったようだ。
魔王の眼に光が無い・・・という表現は、どこか妙な気もするが、今のヌルの眼からは、文字通り輝きが失われていたようである・・・。
あー、首痛いのじゃ・・・。
朝起きると、頭が枕から落ちて、枕と平行になっておったのじゃ・・・。
2日連続で寝違えたのじゃ・・・。
もう駄目かも知れぬ・・・。
まぁ、そんなことは置いておいて。
・・・どうしようかのう・・・。
実は、昨日の今日で、早速、サボり気味になっておるのじゃ・・・(完成度7割くらい)。
これから明日の分を書かねばならぬことを考えるなら・・・あとがきはこの辺で切り上げておこうかのう。
まぁ、何かあとがきで書くべきことを思い出したら、後で追記しておくのじゃ。
・・・多分、無いと思うがの?




