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7.5-11 王城代替施設11

んー・・・いのべーしょんというのは難しいものなのじゃ・・・。

何より、眠いしのう・・・。

4足歩行の動物の中には、木に登ることは得意でも、下るのは苦手な動物がいる。


例えば熊。

彼らは、手についたその鋭いツメを木にめり込ませながら、腕力と脚力で勢い良く登っていくのだが・・・下るときは、ゆっくりと足場を確かめながら下ることが多く、はたから見ればその姿は、決して下るのが得意なようには見えない。

あるいはヤギ。

ヤギの場合は、ほぼ90度の切り立った崖であっても、軽々と登っていく走破能力が身体に備わっているが・・・自重(じじゅう)によって滑ることを防ぐためか、登る時の移動速度よりも、下る時の方が、遥かに遅くなってしまうようだ。

尤も、当の本人たちは、登るのも下るのも得意だと思っている、という可能性も否定はできないが・・・いずれにしても、登るよりも下るほうが身体に大きな負担がかかるのは、紛れも無い事実であると言えるだろう。


・・・そして猫もまた、4足歩行の動物で、高いところに登るのが大好き(?)にも関わらず、下るのは苦手な動物であった。

まぁ、彼らの場合は、果たして本当に降りられないのか不明なところではあるのだが・・・ただ、ここにいる狩人は、樹から降りることに、不安は感じていなかったようだ。

彼女は猫の獣人かも知れないが、その行動は、本物の猫と大きく異るらしい・・・。


「一体、皆、どこにいるんだろう・・・」


樹の幹に対して、ピッケルとダガーを交互に刺しつつ、下に見える王都を目指して降りていく狩人。

そんな彼女の眼からは、どんなに下っても、部下の兵士たちの姿は見えてこなかったようである。


「おっかしいなぁ・・・」


彼女は登る時と同じように、何度か休憩と補給を摂りながら、地上を目指して樹を降りていった。

その際、樹に生えていた見かけない植物や、虫などを回収していくのは、彼女がここに来た理由の一つである調査の一環である。


・・・その調査は、ワルツから任されたミッションであった。

もしも世界樹(?)が麓にある王都に害を与えるものなら、強制的な排除について考えなくてはならないのである。

今回狩人は、忙しいワルツの代理として、この世界樹(?)を排除すべきかどうかの判断をするためにやってきたのだが・・・どうやら、今のところ、この樹は王都民に対して無害であると言えるようだ。


・・・ただ、今の彼女にとっては、この樹が無害かどうかは、あまり問題では無かったらしく・・・むしろそれよりも、本当なら一緒について来ているはずの他の兵士たちの姿が全く見えないことに対して、不安を感じ始めていたようである。


「まさか・・・私に呆れて、付いてこなかったのか?いや・・・それとも・・・」


ワルツからの教えを優先するあまり、自分のペースでどんどんと樹を登ってきたために、途中で部下の兵士たちがヤル気を失い・・・そして帰ってしまったかもしれない・・・。

最初、狩人は楽観的にそんなことを考えたようだが、すぐに最悪の場合を想定して・・・何らかのアクシデントが部下たちのことを襲ったのではないか、と考えを改めたらしく、彼女はここまでの単独行動を後悔し始めたようだ・・・。


「・・・とりあえず、来た道を戻ってみよう」


果たして、道、と表現して良いのかは不明だが、登ってきた経路を辿って、部下たちのことを探すことにした様子の狩人。

太陽が丁度真上を通過していたために、影の部分に入っていた大樹の側面で、彼女は妙な胸騒ぎを感じながら、帰りの(みち)を急ぐのであった・・・。




そして、彼女が、地面まであと150mほどの高さのところまで戻ってきた辺りで・・・


「・・・こんなところに横穴なんてあったか?」


木の一部が腐った際などにできる(うろ)のような・・・あるいは洞窟ともいうべき雰囲気を漂わせている場所へと差し掛かった。

穴の縦横のサイズはおよそ3mほどで、普通なら見落としてしまうようなサイズではないはずのだが・・・どういうわけかそのありえない出来事が起こってしまったらしい。


「登り始めた時は暗かったからな・・・。もしかして見落としたか?」


と、そんな独り言を口にしながら、その穴の中へと細めた視線を向けつつ、どうして穴を見落としてしまったのか、その原因を考えこむ狩人。

あるいは急に出来たという可能性も考えられなくはなかったが・・・限りなく小さかったために、彼女は思考の中から、その可能性を排除したようである。


普通はそんな得体のしれない穴の中に、誰も入ろうとは思わないはずだが・・・


「・・・念のため、中も調べてみるか・・・」


見失ってしまった部下たちの探索や、ワルツから任された大樹の調査をしなくてはならかったために、狩人はその穴の中へと入ることを決意せざるを得なかったようだ。


「中が、深い洞窟になっていなければいいんだが・・・」


そして、そこに、部下たちがいなければ良いのだが・・・。

もしもそんな場所に部下たちがいたなら、恐らくは碌な事になっていないだろう、というネガティブな思考が彼女の頭の中で渦巻いていたようだが・・・狩人はそんな考えを振り切るように頭を振ると、その場に重いリュックを下ろして・・・そして愛用のダガーとロープを手に、大樹に開いた穴の中へと、足を進めていった。


・・・そして、彼女はさっそく後悔する。


「・・・松明を持ってくればよかった・・・」


完全な暗闇に包まれていたなら、夜目の効く狩人にとっては、何ら問題はないのだが・・・入り口から差し込む外の光と、穴の中に漂う暗闇との間にある明暗の差には、すぐに慣れることが出来なかったらしく、穴の中へと入った瞬間の彼女の眼は、暗闇の底に何が潜んでいるのかを見通すことが出来なかったようだ。


その結果・・・


ビュンッ!


彼女は突然現れたソレに対して、視覚での反応が出来なかった。


・・・しかし、そこは流石の狩人。

一瞬だけ聞こえてきた音と、第七感とも言えるかもしれない『気配』を感じて、反射的に身を翻したのである。

その直後、彼女のすぐ近くを、何かが(かす)めていって・・・


ベチャッ・・・


そんな湿ったような音が、彼女のいた場所の側面の壁から聞こえてきた。


「・・・?!」


そんな出来事に遭遇した結果、狩人は、声を出さずに驚きつつも、自身の気配を極限まで小さくして・・・そして普段、狩りをする際と同じように、闇に潜んでいるだろう何らかの物体に対処すべく、その身を構えた。

・・・いや、正確には、構え()()()()た。()

しかし・・・


ズルッ・・・


「っ・・・!?」


辺りが暗かったためか・・・それとも、穴の先が下り坂だったためか・・・。

おそらくはその両方の条件が重なったために、狩人は足を滑らせて、体勢を崩してしまったのである。

やはり彼女は、普通の猫と同じく、下ることが苦手だったようだ・・・。


そのせいで狩人は、一時的に外部と断絶していた自身の気配を辺りへと撒き散らしてしまった。

・・・しかも、体勢を大きく崩した状態で。


結果、次の瞬間、


ビュンッ!

ベチャッ!


「くっ!?」


狩人の身体に、どこからともなく飛んできた、高い粘り気を持った何かが、大量に付着してしまったのである。

彼女は反射的に、その鳥黐(とりもち)のような粘り気をもつソレから身を剥がそうと、一時は身を(よじ)るのだが・・・


「・・・これは・・・」


無駄に動くことを直ぐにやめて、慎重に行動することにしたようだ。

動けば動くほど、()が絡まっていく・・・。

狩人は、この謎の粘液のようなものを掛けてきた相手が何者なのかを、今までの狩人としての豊富な経験から理解したのだ。


・・・そしてその相手が、暗闇の向こう側から8つの赤い光点を見え隠れさせつつ、ゆっくりと姿を見せ始めた。


「・・・将軍(ジェネラル)・・・!」


全長数メートルにも及ぶジェネラルスパイダーに目を向けながら、思わず相手の愛称を呟いてしまう狩人。

どうやら、この世界樹の中には、彼女の他にも『狩人』が潜んでいたようだ・・・。

せめて・・・登場人物は2人いないと、ダメかも知れぬのう。

狩人殿の振る舞いの説明を、延々と地の文だけで行うというのは、少々難しいのじゃ。

なんというか・・・単調になるというか・・・。


まぁ、次回からは、軍曹・・・ならぬ、将軍が出てくる故、幾ばくかは、まともになるはずなのじゃ?

会話は無いかも知れぬが、1.5人分くらいは書けるのではないかのう。


それで、なのじゃ。

・・・寝るのじゃ。

眠いのじゃ・・・。

しかも明日は早いのじゃ・・・。


・・・あ、そうそう。

例の液晶ペンタブレットが届いて、動作の確認が終わったのじゃ?

先程まで、試験的にルシア嬢のトレースをしておったのじゃが・・・まぁ、それなりに使えそうなのじゃ。

少々、ペンの摩擦係数の変動が気になるところじゃが、工夫すれば、どうにかなるのではなかろうかのう?

まずは・・・狩人殿とカタリナ殿を描く予定なのじゃ。

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