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7.5-07 王城代替施設7

そして昼食を終えた後の話。

場面は未だシルビア宅(?)の中である。


食卓の上からは食器が片付けられ、代わりにそこには、ミッドエデン名産の緑茶が置かれているようだ。


「ズゾゾゾ・・・ふぅ。しっかし、困ったのじゃ・・・。ワル・・・未来の夫たちがいるだろう方角が分かっておっても、追いかける手段が無いとはのう・・・」


「はぁ?何言ってるんですか?ワルツ様は、()()旦那様です!」


「わ、ワルツ・・・」プルプル


『・・・・・・』


普段はテレサに対して、敬語で接しているはずのユリアから、容赦なく放たれた深裂な言葉・・・。

どうやら、テレサの発言の中に、ユリアにとって聞き捨てならない言葉があったらしい。

まぁ、それも、リサの発作(?)によって、有耶無耶になってしまったようだが・・・。


言い合いをしていテレサとユリアが、リサに対して、微妙な視線を向けていると・・・


「転移魔法を使える知り合いとか、誰かいないの?」


シルビアから食後のデザートの餌付けされていた(?)イブが、口から()()の欠片をボロボロとこぼしながら、テレサたちに対して問いかけた。

移動するなら、転移魔法・・・。

言うまでもなく、この世界の常套的な移動手段である。


「・・・うむ。妾たちの仲間内で、自由に転移魔法が使える者は、ルシア嬢くらいしかおらぬのじゃ。・・・もう2人、転移魔法を使える者がおるにはおるのじゃが・・・カノープス殿はメルクリオの国王をやっておるし、リア殿は眠ったままで眼を覚まさぬしのう・・・」


と、今もなお、エネルギアの中で眠っているだろう魔法使いのリアのことを思い出しながら、イブの問いかけに答えるテレサ。

するとワルツたちと同行するようになって未だ時間の浅かっために、リサについて何も知らなかったイブは、当然の質問をテレサに対して投げかけた。


「ねぇ、テレサ様?リアって・・・誰?」


「ん?カタリナ殿の部屋(いむしつ)で数ヶ月間眠っておる、勇者パーティーの魔法使いのことなのじゃ?お主も何度か見たことがあるじゃろう?」


「んー・・・医務室に行くのが怖くて、中の様子は覚えてないかも・・・」


『・・・・・・うん』


イブの言葉に対して、リ()以外、皆一斉に頷く一同。

どうやら皆、医務室には、基本的にいい思い出が無いようだ・・・。


「それで・・・そのリアとかいう人は、どうして眠ってるの?」


「それがのう・・・。実は妾も詳しいことは知らぬのじゃが、ワル・・・ルシア嬢の姉が要約した話によると・・・魔王『夏の大三角形』の一角を成すアルなんたらという者が、リア殿に特別な魔法を掛けて、決して目を覚まさぬ呪いを掛けてしまったようなのじゃ。まぁ、結局、夏の大三角形が何者なのかは教えてくれなかったがのう?」


「ふーん・・・。決して眼を覚まさない呪いね・・・」


ワルツが要約した、というテレサの一言に、一瞬だけ怪訝な表情を見せるイブ。


しかし、彼女には何か思うところがあったようで・・・小さくため息を吐くと、窓の外に見えていた真っ青な空に向かって、遠い視線を向けてから・・・こんなことを呟いた。


「・・・とーちゃんも、そんな呪いにかかっちゃったのかな・・・」


『・・・・・・』


この世には既に存在していない父親のことを思い出したのか、どこか悲しげにそう呟くイブを前に、言葉を失ってしまう仲間たち。

もしも自分の父が、今のリアと同じ立場にあったなら、同じようにしてカタリナに助けてもらえたのか・・・。

そんな副音声が、実際に聞こえてきた気がして・・・皆、いたたまれない気持ちになってしまったようだ。


・・・その結果。

その場の空気をどうにか正常なものに戻そうと思ったのか、情報部のトップを任されているユリアが、少々戸惑ったような様子を見せながら話し始めた。


「え、えっと・・・実は、ボレアスからおみやげとして持ち帰ってきたものがあるんですよ」


すると・・・


「えっ・・・ちょっ・・・」


「あー・・・あの昼食のお弁当ですか?」


と、同じく情報部員であるシルビアとリサが、それぞれに何とも言い難い表情を見せながら声を上げる。


しかし、それにユリアが気づいた様子はなく・・・


「・・・コレです!」


彼女はいつも持ち歩いている魔法のカバンの中から、1辺が30cm程度のサイコロ状の箱を、食卓の上に取り出した。

そして、まるでケーキの箱の蓋を開けるようにして、その蓋を開けたのである・・・。


・・・・・・


『うおぉぉぉぁぁぁぁ?!』


『うぎゃぁぁぁぁぁぁ?!』


「ママー?あの家、賑やかだねー!」


「あらあら。パーティーでもしてるのかしらね?」


「・・・一瞬、生首がどうのという声が聞こえた気がするんだが・・・」


「・・・アナタ?一度、お医者様に見てもらったほうがいいんじゃないかしら?最近、南大通にある診療所に、カタリナ様という凄腕のお医者様が、外の町(?)から定期的に来てくれているみたいよ?」


「そうだな・・・。今度行ってみようか・・・」


・・・・・・


そんなこんなでユリアは、家の中でパンドラボックス(?)を開けたわけだが、その中から出てきたのは・・・


「ふぅ、急に蓋を開けるからびっくりしたぜ。・・・で、いつになったらワルツ殿のあられもない姿が見られるのだ?」


ボレアスから持ち帰った、おみやげの喋るケーキ・・・ではなく、隣国エンデルシアの国王、アルコア=エンデルスの生首であった・・・。

流石、不死身の神であるらしく、生首だけの状態でも死ぬことはないようだ。


「・・・のう、ユリア。コレ、どこで拾ったのじゃ?」


「おっと、間違えました!コルテックスさまに焼却処分を命じられた後、政治的な道具に使えるかと思いまして、こっそり中央焼却施設の灰の中から回収したのですが・・・まぁ、コレじゃないので、仕舞っておきますね」


「ちょっ・・・やめっ・・・」カポッ


そして再び、ユリアの鞄の中へと仕舞われるエンデルシア国王・・・。

彼が陽の目を見られる日は・・・もしかすると、もう二度と来ないかもしれない・・・。


「・・・ユリア様。そんなにイブのこと嫌いかもなの?」


「い、いえ!そんなことはありませんよ?次はちゃんとマトモなものを出します!」


「・・・どう考えても、嫌な予感しかしないのじゃが・・・」


その場にいた4人のジトッとした視線を受けながらも・・・再び、同じ形状、同じ色をした箱をバッグの中から机の上へと取り出すユリア。


そして彼女は、その箱の蓋を、再び開いたのである・・・。


・・・・・・


『ぃ幼女ォォォォ!!』


『うぎゃぁぁぁぁぁ?!』


「ねぇ、ママー?」


「・・・ダメよ?坊や。坊やが何を考えているのか大体分かるけど、説明しても理解するのは少し難しいと思うから、あなたがもう少し大きくなってから答えることにするわね?」


「大きくなるまで・・・トイレを我慢しなきゃダメなの?・・・うん、頑張る!」


「・・・・・・ダメよ?我慢したら・・・」


・・・・・・


ユリアが蓋を開けると、そこには・・・カタリナがボレアス帝国から生首だけ持って帰ってきていた、通称ロリコンの入っている生体保存用のカプセルが、生命維持装置と共に詰め込まれていたのである。


『ぃ、ぃ幼女・・・』


「・・・何これ・・・前にも増して気持ち悪いかもなんだけど・・・。やっぱり、ユリア様、イブのこと嫌いかもなんでしょ?絶対そうなんでしょ?!」


「い、いや、そんなことはないですよ?!本当は、ボレアスで仕入れてきた、美味しいおせんべいが入ってるはずだったんですけど・・・」


「煎餅が・・・どうして、生首になるのじゃ・・・」


『・・・ん?なんだ・・・。ロリババァか・・・』


「・・・此奴二妾渾身ノ爆散(コトダマ)魔法ヲカケテモヨイカ?」ゴゴゴゴ


「・・・すみません・・・。今すぐ片付けます・・・」


そう言って、すぐに蓋を閉めようとするユリア。


その直前に・・・


『・・・元気そうだな。イブ』カポッ


ロリコンが一瞬だけ優しげな表情を浮かべて、何かを言おうとしていたようだが・・・それがイブの耳に届くことは無かったようだ。


「・・・その箱、両方共とも焼却炉に捨てて(なげて)きて欲しいかも・・・。もう見たくもないかもだし・・・」


と、ボレアス弁(?)を使いながら抗議の声を上げるイブ。

その言葉自体には、ユリアも同意見だったようだが、彼女には彼女の仕事があったようで・・・


「ごめんなさい、イブちゃん。エンデルシア国王の方は別に燃やしてもいいと思うんだけど、ロリコンと呼ばれている男性の方には、色々と事情聴取をしなくてはいけないの。それにワルツ様も、何か用事があるみたいだし・・・」


流石に、一思いに焼却!、というわけにはいかなかったようである。


「はぁ・・・。世の中、思い通りにならないことばかりかもだね・・・」


イブはそう口にすると、心底疲れてしまったように、食卓の上へと突っ伏してしまったのであった・・・。

近々(8章以降)で、リアの話を進めようかと思っておる故、忘れ去られ気味な彼女のことも、ぼちぼち取り上げていこうと思うのじゃ。


それと、どうでもよいことなのじゃが・・・通りすがりの家族3人が、王都市民代表として、レギュラーに昇格した模様なのじゃ。

なお、休日平日関係なく、家族と共におる夫が、一体どんな職業についておるのかは・・・不明じゃがの?

それが語られることは・・・恐らく、無いじゃろうのう。


ちなみに、現在のところ、王都における代表的なモブは・・・


レギュラー

・通りすがりの家族

・寿司屋の店主

・国教会教皇


サブレギュラー

・王城職員たち

・メイドたち

・ギルド連合のトップたち

・子どもたち


その他

・市民たち

・兵士たち


・・・こんなところかのう?

他、サウスフォートレス周辺やアルクの村まで含めると、モブと主要登場人物の中間に当たる人間が大量に居るのじゃが・・・・まぁ、それについては、機会があれば、触れることにしようかのう。

総勢は・・・そろそろ100人を超えておるのではなかろうかのう?


さて・・・。

補足に入ろうと思うのじゃが・・・今日は特にないのじゃ。

・・・え?もう補足しておる?

・・・そ、そうかのう?


あ、そうそう。

イラストについてなのじゃが、リクエストにお応えして、機動装甲の横からの図を適当に追加しておいたのじゃ。

本当は斜め前などから見た図を書きたかったのじゃが・・・それは、液晶ペンタブレットが届いてからにするのじゃ?


そういうわけで・・・。

今日の補足はこんなところにしておいて・・・昨日の話の続きを書いていくのじゃ?




・・・アレクサンダーは、村を燃やされてしまったことを教訓に、幾つかの行動に出ることを決意したのじゃ。


まずは、村を取り囲む塀を、石造りに変えること。

石造りにすれば、そもそも燃えるものがなくなる故、同じ過ちを繰り返すことは無いはず・・・そう思ったのじゃろうのう。


そして次が・・・周囲の森を伐採する、というものだったのじゃ。

生木に火を付けても、燃えるようなことはまずありえないのじゃが、そうでなくても、魔族が身を隠す場所にはなり得る故、村の安全を考えてできるだけそういったリスクは低減させておきたい・・・そう考えたようじゃ。


その結果、アレクサンダーの興した村を中心に、半径2km程度の範囲の森は、一旦全て伐採されてしまったのじゃ。

そしてその木を使って、一旦は失われてしまった家々を再建して・・・。

気づくと、大規模な村・・・というよりも、町と言っても過言ではないほどの大きさの集落が出来上がっていた、というわけなのじゃ。


・・・あと、もう一つ。

アレクサンダーは、ミッドエデン王国の歴史には残されていない耐火への対策を、村の周辺地域に施しておったのじゃ。

もしも、雨が降らぬようなことが長く続いて、周囲の森から水分が無くなって・・・そして自ずと木々が燃えやすくなってしまったところを放火されたら困る・・・。

彼は余程、火に対して、警戒心を抱いていたようじゃのう。


で、その対策が、サウスフォートレスの地下にある地底湖、というわけなのじゃ。

離れた山脈から流れてくる伏流水を、土魔法で作った地下水路を通して、一旦地底湖に集め・・・それから周囲の森や畑へと水を流す・・・。

畑の干ばつへの対策としても使える故、まさに一石二鳥と言えるものだったのじゃ。

・・・まぁ、どうして伏流水ではなくマナが貯まっておるのか、そして何故記録から消え去ってしまったのかについては、妾も知らぬがのう?


あとは、人間側の国家であるミッドエデン王国が樹立されて、同じ平野にあったアレクサンダーの集落がそこへと自動的に吸収されて・・・。

そして、現在のサウスフォートレスと呼ばれる町へと変わった、という感じなのじゃ?




・・・こんな適当な説明で良いかのう?

もう少し、オチを含ませておいたほうが良かったかも知れぬのう?

・・・まぁ、やっつけじゃからこんなものじゃろう。


で、次回の質問は・・・

『俺・・・最近、何のために生きているのか分からないんだ・・・。だから・・・勇者とは何なのかを教えてほしい・・・』

・・・という勇者殿からの質問なのじゃ。

・・・そうじゃのう・・・。

多分、『勇者』が何たるかを説明しても・・・勇者殿が救われることは無いじゃろうのう・・・。

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