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7.4-24 王都のお祭り24

結果、金魚すくい(もどき)の勝者は・・・


「もがぁぁぁっ!」


自身の自由が掛かっていたためか、必死になって巨大魚を掬っていたアトラス・・・


「アトラスは勝負に参加できませんから無効ですよ〜?」


「も、もがぁぁ?!」


・・・ではなく、


「・・・ん?なんでみんな、こっち見てるの?」


彼の隣りにいた、メイド服の袖をびしょ濡れにしているイブであった・・・。


シラヌイと飛竜はお互いに足を引っ張り合って、開始早々にあえなく敗退。

コルテックスはアトラスと()っていたものの、不意に、A4の紙を固定していた接着剤が剥がれてしまい、比較的早い段階で先頭争いからは離脱してしまっていた。

最終的には、アトラスの独走を許す形になったのだが・・・彼は、前述のように、コルテックスからいつも通りに不条理を突きつけられたために、あえなく失格になってしまったのである。


こうして、ダークホース的な位置で、コツコツと小魚ばかり救い上げていたイブが、栄光の勝利(?)を収めたのだ。


「はぁ〜。こうなってしまっては仕方がありません。早速、最後の勝負に入ることにしましょう〜」


敗北してしまったことを、不本意ながらも受け入れたような表情を見せながら、次の勝負について話し始めるコルテックス。

そして、彼女の口から語られた第3回目(?)の勝負は・・・


「・・・一通り遊んでしまったので、もう、大食いくらいしか残ってないんですよね〜・・・」


という、言った本人でも、あまり気の進まなそうな内容であった。

本来なら、彼女はもっと勝負らしい勝負をしたかったようだが、金魚すくい(?)をするまでに、祭りの出店を一通り遊びつくしてしまっていたため、まともな勝負は残っていなかったようである。


「でも、食べ物を粗末にしてはいけないとも思うんですよね〜・・・」


それだけでなく、せっかくのお祭りなのに、苦しい思いをするのはいかがなものか・・・。

あるいは、ただ大食いを競うだけなら、身体の大きさでモノ言わせる飛竜の勝利で終わってしまうのではないか・・・。

そんな考えがコルテックスの脳裏を()ぎっていたらしく、彼女は大食いの勝負をすることに対して、忌避感があったようである。


コルテックスが、自ら言い出した勝負の内容について、微妙な表情を浮かべながら、腕を組んで考え込んでいると・・・


「・・・つまり、コルテックス様は、勝負ができて、白黒付けばいいかもなんだよね?だけど、さっき、ご飯の代わりに色々なものを食べたからお腹が一杯だし、無理矢理に詰め込むようなことはしたくない・・・そんな感じ?」


イブは、掬った魚をワルツ製のビニール袋の中に水ごと詰め込みながら、おもむろにコルテックスへと問いかけた。


「・・・そうですね〜。大体、合ってます。確かに、勝負ができれば問題はありません。イブちゃんには、何かしたいゲームなどがあるのですか〜?」


「んー・・・無い!」


と、コルテックスの問いかけに対して、すぐに否定の言葉を返すイブ。


そんな彼女の返答に、コルテックスは呆れたような表情を浮かべて、大きくため息を吐こうとした・・・そんな時である。

イブの言葉は、まだ終わってなかったらしく、彼女はいつも通りに明るい笑みを浮かべると、こんな言葉を口にしたのだ。


「でもー・・・スイーツコンテストに出てたスイーツを食べてみたいとは思うかも?どうせ食べるなら、デザートがいいかなー、って」


「えっ・・・」


イブのそんな一言に、少なくとも2つ以上の意味で固まるコルテックス。


ただ他の2人は・・・


「そうですね・・・。私も食べてみたいです」


「ふむ・・・。コンテストとやらでは、この国の珍しい食べ物が数多く出展された聞く。可能ならば、我も食べてみたい」


といったように、イブの一言に対して前向きだったようだ。


「えっと〜・・・皆さん、本気ですか〜?」


急に先程までの威勢が無くなって、苦笑を浮かべながら、額に脂汗をかいている様子のコルテックス。


しかし、3人には、否やは無かったようで・・・


「うん。なんか、さっき、審査会場をチラッと見たら、たくさん余ってたみたいだし、ちょうどいいかも?」

「てっきり、今回は、食べられないものだと思っていました」

「余っているなら、我らが食べても別に問題は無いだろう。我も人間の食文化とやらを学んでみたいと思っていたのだ。もしも、我の大食いを懸念しているなら・・・我が元の姿に戻らなければ、特に問題はあるまい?」


それぞれそんな言葉を口にした。

どうやら、仲間になってまだ浅いイブたちの方は、ワルツたちの絶望的な料理について、()()()詳しくは知らなかったようだ・・・。


「・・・後悔しても知らないですよ〜?」


「んー、そりゃ一部には、ヘタクソな料理があるかもしれないけど、見れば大体、気配で分かるはずだから、それだけ避けるようにすれば問題ないかもなんじゃない?(例えば、ルシアちゃんの料理とか・・・)」


「・・・分かりました〜」


3人に説得される形で、渋々頷くコルテックス。

もしも、姉たちが作った料理と出会(でくわ)したなら、食べる前に避ければいい・・・。

この時点で彼女は、イブと同じく、そんな楽観的なことを考えていたようである。


その際、コンテストの会場の警備をしていたアトラスが・・・


「も、もがぁぁっ!(や、やめろ!)」


と本気の警告を口にしていたようだが・・・猿轡は付けられていた彼のその言葉に気づいた者は、残念ながら誰もいなかったようだ・・・。




『・・・・・・』


ちーん・・・


・・・それ以外に、現状を表現できる、的確な擬音は存在するだろうか・・・。

5人で嬉しそうに(?)コンテストの会場へと出向いて、間もなく焼却炉行きになるはずだった余りのスイーツをコルテックスの強権を使って分けてもらい・・・そして、その中から美味しそうなスイーツを試しに口の中に放り込んだ瞬間、食べなかったアトラスを除いた全員が、文字通り沈黙したのである。

見た目の形を優先してスイーツを選んだ結果、どうやら彼女たちは、見事に地雷を踏んでしまったようだ。


「もがぁぁ・・・(だから言ったのに・・・)」


『ユークリッド=E=シリウス(ユキ)作』と書かれている立て札が飾られていたその物体Aに対して、残念そうな視線を向けながら、猿轡の内側で呟くアトラス。

もしも、コルテックスが開会式で余計なことを言わず、審査会の時に姿を見せていれば、こんなことにはならなかったのではないか・・・。

地面に手と足をついて、崩れ落ちている妹の姿を見て、アトラスはそんなことを考えていたようである。


「・・・まさか、こんなところに毒物が紛れ込んでいるとは〜・・・」

「・・・やっぱり、やめません?これ・・・」

「・・・もう、我の負けでよい・・・」

「・・・見た目は普通なのに・・・」


食べた瞬間に、口の中を辛味成分が支配して、それ以外の味をまったく感じられなくなりながら、それぞれに呟く少女たち4人。

元魔王の作ったスイーツを前に、皆、完全に戦意を失ったようである。


「・・・ワルツ様が作った、こっちのスイーツのほうが、もしかして美味しかったんじゃない?」


本来なら飛竜に飲ませるために持ち歩いていたはずマナで口の中を洗い流しながら、おもむろにそんな言葉を口にするイブ。


そんな彼女に対して、ポシェットの中からテンタクルゴートのミルクを出し、同じく口の中に流し込んでいたコルテックスが、微妙な表情を浮かべながら、短く返答を口にした。


「・・・死にますよ〜?」


「・・・うん。絶対食べないことにする・・・」


見た目は、綺麗なきつね色に焼けていた、円盤状の『ホットケーキもどき』に眼を向けながら、首を振るイブ。

そのついでに彼女は、ワルツ製のスイーツ(?)の近くにあった『稲荷寿司』や『果物の盛り合わせ』についても、絶対に口にしないことを心に決めたようだ。


ともあれ・・・。

戦意を消失させた4人の勝負は、この時点で決着が付いたようである。

選手でありながら、ゲームマスターでもあったコルテックスが、地面から立ち上がると、その結果を宣言したのだ。


「ん〜・・・結局、1回しか勝負が出来ませんでしたが、この勝負、イブちゃんの勝ちですね〜」


「・・・えっ」


「遠慮しなくていいのですよ〜?これから1ヶ月の間は、イブちゃんが、アトラスを自由にする権利を獲得したのです。不束(ふつつ)かな兄ですが、よろしくおねがいしますね〜?」


「えっ・・・いや・・・いらないかも・・・」


敗北を認めたコルテックスの言葉に、戸惑いの表情を見せるメイド姿のイブ。

シラヌイや飛竜からも、異論が出ないところを見ると・・・これから1ヶ月の間、アトラスはイブの所有物(?)になることが決まったようだ。


「もがぁ。もがもがぁ?(勝ったのがイブでよかったよ。よろしく頼むぜ?)」


そう言いながら(?)イブの前にしゃがみ込むアトラス。


「(・・・どうしてこうなったんだろう・・・)」


嫌いな勇者によく似た少年が、自身に対して嬉しそうな表情を向けてくることに、イブは内心で頭を抱えるのだが・・・そのことに気づいている者は、恐らく誰もいないのではないだろうか・・・。

zzz・・・。

・・・眠いのじゃ・・・。

・・・正確には、眠いだけでなく、頭がおーばーひーとして、深く考えられぬ状態にあるのじゃ。

今日はずっと、文を眺めて修正する作業をしておったからのう・・・。


というわけで、申し訳ないのじゃが、質問に答えるコーナーも、補足についても、お休みさせてもらうのじゃ?

・・・まぁ、いつも通り、補足するようなことは・・・あ、そうじゃ。

一つだけあったのじゃ。


イブもシラヌイも飛竜も、基本的にはワルツたちの作った料理が絶望的なことについては、知らないのじゃ?

唯一、イブが、ルシア嬢の作ったクッキーを食べて、1日を無駄にした経験があるのじゃが・・・ワルツとカタリナ殿の料理の腕前を知らぬことについては、他の2人と同様なのじゃ。

これが・・・ご都合主義というやつかも知れぬのう。


ちなみにそんなイブ嬢は、マトモな料理が作れるのじゃ?

前にうどん(?)を作って食べてたくらいじゃからのう。

そのうち、議長専属メイド、イブの料理講座についての話でも書いてみようかのう?


てな感じで補足は終えて・・・・・・今日はもう寝るのじゃ・・・。

もうダメなのじゃ・・・。

zzz・・・。

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