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7.4-23 王都のお祭り23

「・・・魔力しゃてき?」


「魔力射的というのは、用意されたマトに向かって魔力を打ち出して倒す、一種のゲームのようなものですね〜」


「ふむ、なるほど・・・。・・・ところでゲームとは何ですかな?」


「・・・・・・アトラスに聞いて下さい」


「もがぁぁぁッ!!」


細かいことまで説明するのが面倒になったのか、飛竜からの質問を、猿轡が付けられていたアトラスへと丸投げするコルテックス。

しかし、そんな質問を向けられたアトラスには、ワルツのように口ではない場所から声を出せるわけもなく・・・言葉にならない声を上げて、抗議をしようとしていたようだ。


すると、飛竜の質問に答える者がいないことを悟ったイブが、アトラスの代わりに返答する。


「あんねー、ドラゴンちゃん。ゲームっていうのは、もてる力で相手を打ち負かす遊び、って感じかもだね?」


「力で・・・相手を打ち負かす・・・」


「あの・・・イブちゃん?飛竜さんが、明らかに、何かを勘違いしているみたいですけど・・・」


イブの説明が、的確に(?)適当すぎたためか、妙に『力で』を強調しながら呟く飛竜の様子を見て、苦笑を浮かべるシラヌイ。

しかし、どうやら、彼女の悪い予感は覆ることが出来なかったようで・・・


「・・・仕方ない。勝利のために、本当の姿を見せよう・・・!」


飛竜はそう呟くと・・・


ブゥン・・・!


「グォォォォォ!!」


翼を広げれば横幅20mにも及ぶ、本来の巨大な身体へと、その姿を変えたのである。

そして彼女は辺りを見回しながら、口から炎を見え隠れさせつつ、おもむろに言った。


「・・・で、しゃてきとやらは、どこでやるのでございますか?」


『ひぃ?!』


飛竜のその言葉を聞いた瞬間、急に店をたたみ始める一部(射的屋)の業者たち。

・・・それでも、王都の中に混乱した空気が広がっていかなかったのは・・・やはり、飛竜のその大きな姿が、王都民たちの間では、見慣れたものになっていたから、ということなのだろう。


・・・とはいえ、王都民が良くても、一人、納得いかない者がいたようだが・・・。


「・・・飛竜ちゃん?飛竜ちゃんが驚かせたせいで、射的屋さんたちが皆、いなくなってしまったではないですか〜。どうしてくれるんです?」ゴゴゴゴ


「ひ、ひぃ?!」


自身とは比べ物にならないくらいに姿が小さいはずなのに、眼の笑っていないコルテックスの微笑みを見て、その身を縮込ませてしまう大きな姿の飛竜。

その様子を例えるなら・・・警戒して木に擬態しているミミズクなどとほぼ同じ、である。


「まったく〜・・・仕方ありませんね〜。1回戦目は勝者無し、ということで、2回戦目に進みましょうか〜」

「も、申し訳ございませぬ・・・」

「・・・次は、力比べではない方がいいと思いますよ?」

「もがぁぁ・・・」

「喉乾いたかも・・・」


こうして、1回戦目の射的は、王都民に一人の犠牲者も出すことなく、()()()中止となってしまったのであった。




それからイブが、メイド服のポケットの中に常備しているマナを飛竜に飲ませて、彼女のことを身長138cmの少女の姿へと再び変身させた後。


今は冬だというのに何故か出店で売っていたかき氷のようなもので喉を潤しながら、5人は街の中を、ふらふらと練り歩いていた。

かき氷の他にも、ホットドッグと言うには巨大過ぎるウィンナーを5人で分けて食べたり、祭りの期間限定の稲荷寿司を皆で1個ずつ摘んだり・・・。

あるいは、クッキー製の型抜きや、千本引き、輪投げなどを楽しみながら・・・一同は祭りで賑やかだった王都の中を、それなりに楽しみながら歩いていたようだ。


そしてしばらく経って、先頭にいたコルテックスが不意に立ち止まったのは・・・


「2回戦目は〜・・・金魚すくいです!」


・・・決して金魚とは思えない大きさと姿をしてる川魚が泳いでいた、生簀(いけす)の前であった。

そもそも、この世界には、金魚がいない(?)ので・・・コルテックスは、金魚の()()()()()を使って、金魚すくいの真似事をすることにしたようだ。


「きんぎょ・・・ですか?」


「黄金に輝く魚・・・すなわち、ゴールドフィッシュです。そして金魚すくいとは・・・あえて脆い道具を使って、その金魚を掬い上げる、伝統的な漁法(?)ですよ〜?ワルツお姉さまのいた世界では、メジャーなスポーツだったようですね〜」


「へぇ・・・そうなんですか・・・」


「・・・なんだろう・・・。なんか違う気がするかも・・・」


聞いたことのない魚の名前を耳にして、首を傾げるシラヌイに対し、金魚そのものと、金魚すくいがどのようなものなのかを簡単に説明するコルテックス。

どうやらイブも、金魚の存在については知らなかったようだが・・・彼女はコルテックスの怪しげな説明に、何か違和感のようなものを感じていたようだ。


そんな中で、最も不思議そうな表情を浮かべていたのは・・・飛竜であった。


「漁業、か・・・。我は魚を食すとき、大抵の場合、川に頭ごと沈めて魚を取るのだが・・・人は魚をどのように捕まえるのだろうか?高い空から見る限りでは、何やら棒のようなものを振り回していたように見えたのだが・・・」


「そうですね〜・・・それはきっと、魔法の杖だと思いますよ〜?」


「魔法の杖・・・ですか・・・?」


「そう、魔法の杖です。それを軽く振るうだけで、面白いくらいに魚を取ることができるのですよ〜」


と、冗談なのか、本気なのか・・・『竿』のことを『魔法の杖』と呼ぶコルテックス。

人によっては、あながち間違いではないかもしれないが・・・この世界においては、魔法の杖を使っても、睡眠魔法や雷魔法を使えば、漁が出来ないわけではない。

彼女たちの目の前にいる生きた魚たちも、恐らく魔法を使って、傷つかないように捕らえられた魚たちではないだろうか。


まぁ、それはさておいて。


「でも残念ですが、今回勝負に使うのは、プロたちが使う魔法の杖〜・・・ではなく、A4のコピー用紙です」


コルテックスは、再びそんな冗談のような事を口にすると・・・しかし、本当にA4の紙束を魔法のポシェットの中から取り出して、同じく取り出したY字型の枝のようなものに、トリモチ風の接着剤を使って固定した。

そしてそれを5セット作り・・・アトラスを含めた全員に渡す。


「いいですか〜?この紙か接着剤が取れてしまうまでに掬い上げた魚の数を競う〜・・・というのが、この勝負の内容です」


「なるほど・・・。数を競うというのは、分かりやすい勝負ですね。ですけど、意外に、頭を使った戦略が重要になりそうです」


「道具を使って掬う、か・・・。中々に難しそうだ・・・」


「なんか色々と違う気がするかもなんだけど・・・面白そうだからいっか」


「もがぁぁっ?(俺もやんの?)」


と、金魚すくい(?)で使う即席の『ポイ』を手にとって、その感触を確かめながら、それぞれに感想を口にする少年少女たち。


そして、全員に行き渡った後で・・・コルテックスは、出店の奥にいた魚屋の店主に対して、宣言した。


「というわけで〜・・・今からこの出店は、()()()が占拠するのじゃ〜!何か文句があるなら、議会に抗議文を送るが良い、なのじゃ〜!受け取らぬがの〜!」


と、自身とテレサのしゃべり方をごちゃ混ぜにしたような、適当な口調で、そんな言葉を店主に投げかけてから・・・同時に金貨の詰まった麻袋も、店主めがけて投げつけるコルテックス。


ドゴォォォォン!!


「ぐはぁっ?!」


「さて〜。これでこの出店は、私の所有物になりました〜。どうぞ皆さん、気兼ねなく勝負を楽しんで下さい」


『・・・・・・』


水揚げされた魚のように、眼の前でピクピクと痙攣している店主がいるというのに、一体どうやったら勝負を楽しむことができるのか・・・。

4人は思わず頭を抱えたが・・・


「・・・ユリア〜?」


「はいはい!今、片付けます!」


ズサーッ・・・


と、どこからともなく現れたユリアたち情報部員が、魚屋の店主を何処かへと連れて行ったので・・・そこにいた4人は、痙攣していた店主が治療のためにカタリナのところへ連れて行かれたのだ、と安心(?)したようである。

・・・まぁ、実際に彼がどこへ連れて行かれたのかについては、ユリアたち情報部員しか知らないことだが・・・。


「では〜・・・試合開始です!」


『・・・!』


・・・そして、ようやく始まる5人の大勝負。

アトラスを自由にしていいという権利を勝ち取るのは、一体、誰なのか・・・。


順当に行けば、この3本勝負を企画したコルテックスが勝つはずなのだが・・・いつの間にか、祭りを楽しんでいる様子の彼女に、今でも勝つ気があるのかどうかは・・・不明である。

少し前までコルは、妾の影武者(?)をする際、完全に妾の口調を真似ておったのじゃが・・・この時点においては、徐々にそれが変わってきたようで、一人称は『私』のままで語尾を伸ばす・・・というアレンジを加えておるようじゃのう。

・・・え?取って付けたような『なのじゃ』が気になる?

そ、それは、気にするでない!


さて。

今日は一つだけ補足させてもらうのじゃ。

・・・飛竜のしゃべり方について。

彼女の話し方には、幾つか、ゆらぎがあるのじゃ。


例えば・・・『〜なのだな?』という言葉遣い。

実際に書いてみたり、喋ってみたりすれば分かると思うのじゃが、目上の者に対して、『〜なのだな?』という言葉を使うのは、中々に挑戦的なことなのじゃ。

試しに、先輩や上司、親に対して使ってみると、効果てきめんだと思うのじゃ?

どうなっても、保証はできぬがのう・・・。


そんな理由があって、ワルツやコルや水竜などに対しては、『〜ですな?』や『〜ですかな?』という話し方に変わっておるのじゃ。

別に書き方にムラがあるせいでこうなっておるわけではないのじゃぞ?

飛竜なりに、どうにか敬語を使おうと頑張っておるのじゃ。

・・・ちなみに、水竜も然り、なのじゃ?


他は・・・まぁ、良いじゃろう。

今日もとんでもない時間になってしまったゆえ・・・質問に対する回答は、明日か明後日に回させてもらうのじゃ。

ご了承くださいなのじゃ。

・・・zzz・・・。

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