表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
521/3387

7.4-19 王都のお祭り19

王都内に爆音が響き渡って、急にエネルギアが空へと現れたタイミングで・・・。

スイーツコンテストの会場にも、突如として姿を現した者がいた。


「・・・・・・」ぐったり


かろうじて黒い髪と黒い狐耳、そして黒い尻尾をホログラムで作り出していたワルツである。

彼女は、力なくうつ伏せ状態で地面に伏せており・・・一見すると、何らかの病気の発作を起こして崩れ落ちてしまった少女のようにも見えなくなかった。

何故そうなっているかについては・・・まぁ、明白なので割愛しよう。


その結果、今まで姿を消していた彼女の姿は、ついに民衆の眼に晒されることになったわけだが・・・


「誰だか知らないが・・・恐らく、あの3人のスイーツの試食をした哀れな犠牲者だろう・・・」

「余程、飢えてたんだろうな・・・」

「ママー?あれ何してるの?」

「坊や?いい子なら見ちゃダメよ?」


と、口々に話す市民たちの言葉通り、それが『ワルツ』であるとは、誰も気づかなかったようである。

エネルギアによる砲撃の音を聞いて、市民たちの視線が空へと集中したために、ワルツが姿を現して倒れた瞬間を誰も見ていなかったのだろう。


「お、お姉ちゃん・・・」


わるふはん(ワルツさん)・・・」


その姿に対して、同情の視線を向けるルシアとカタリナ。

彼女たちも、自身の作ったスイーツ(?)で大きなダメージを受けていたが・・・どうやら、喋れるくらいには回復していたようだ。


そんな2人に声を掛けられたワルツは、地面に寝転がったまま、ぐるりと身体を転がして仰向けになると・・・頂点からは随分と傾いていた2つの太陽が、それでも自分の顔を遠慮無く照らしてきたことに眼を細めながら、短くこう言った。


「・・・もう無理・・・」


「・・・うん・・・そうだね・・・」


「・・・はへひほは、はべはひほひひへひへはひんへほう・・・(・・・何故人は、食べないと生きていけないんでしょう・・・)」


『・・・・・・』


カタリナが何を言っているのか分からなかったが、おそらくは自分たちと同じことを考えているのだろう、と思うことにして、呆然とした視線を空に向ける姉妹2人。

もちろん彼女たちだけでなく、カタリナも同じように空を見上げたことについては、言うまでもないだろう・・・。


「・・・あれ?なんでエネルギアちゃん、空飛んでるの?」


「・・・さぁ?遂に植物(しょくしゅ)に我慢できなくなって、出てきたんじゃない?きっと」


「・・・〜〜〜っ!はぁ・・・ようやく、舌からガラス片が抜けました」


『・・・・・・』


カタリナの一言一言が、聞いているだけで自身も痛くなってくるような気がして・・・空を飛ぶエネルギアに視線を向けたまま、口を噤むワルツとルシア。


そんな折、3人の視線の中に・・・


「・・・あれ?なんか、変なもの飛んでない?飛蚊症かしら・・・」

「・・・うん。私もそう思いたい・・・」

「・・・サイズが違いますけど、得物を捕まえた猛禽類ってあんな感じですよね・・・」


思わず自身の眼を疑ってしまいそうになる奇妙なモノが、映り込んできたようである。


それは、ワルツたちのところへとゆっくりと近づいてきて・・・


ドゴォォォォン!!


という爆音を上げながら、コンテストの会場の開けている場所へと()()した。

そして開口一番、


「もう飛べませぬ・・・。アルゴ(水竜)殿、重すぎでございます!」

「か、カリーナ(飛竜)よ!おなごに、その言い草はあんまりではないか?!」


というやり取りをする飛竜と水竜。


・・・そう。

飛竜が自分の倍ほどの長さはありそうな水竜を掴んで、王都の中心部へと落下してきたのだ。

飛竜の口ぶりから推測すると、王都に降りるつもりは無かったようだが・・・あまりに水竜が重すぎたようで、飛行が困難になってしまったらしい。


まぁ、それはそうと・・・。


彼女たちが現れた瞬間から、王都の中では奇妙な現象が起こっていた。

人が大勢住んでいるところに、突然巨大なドラゴンが2体も現れたならどうなってしまうのか・・・考えるほどのことでもないのだが、どういうわけか、市民たちには動じた様子が全く無かったのである。

そればかりか・・・


「あ!ドラゴンちゃんたちだー!」

「遊んでくれるのー?」

「また勇者ごっこしよー?」


という声を上げて、走り寄っていこうとする王都の子どもたち。

そんな声が所々から上がっているところを見ると・・・どうやら2(ひき)は、日頃から王都の子どもたちと何らかのつながりを持っていたようだ。


その様子を見て・・・


「・・・なんか、私の中で、異世界の印象が大きく崩れ去っていっているような気がするんだけど・・・。なんか、こう、思ったよりもラブアンドピースっていうか・・・」


「・・・お姉ちゃんの印象がどんな風なのかは分かんないけど・・・多分、こんなことになってるのって、この街だけなんじゃないかなぁ?」


「・・・羨ましいですね・・・。王都でたまに診察をしてるんですけど、子どもたち、私には絶対に近づいてこないんですよね・・・。どうしてでしょうか・・・」


『・・・・・・うん』


と、それぞれに感想を口にするワルツとルシアとカタリナ。


そのタイミングで・・・


「んはっ!もう地下とか絶対に入りたくないかもだし!本気で死ぬかと思ったかも!」

「っていうか、この人、もう死んでるんじゃないですか?!」

「・・・・・・」


イブとシラヌイと剣士も、王都の中に設置しているエレベーターから、地上へと姿を現した。

なお、力なく四肢を投げ出している剣士は、シラヌイの馬鹿力で引きずられていたわけだが・・・恐らく、いつも通り、瀕死状態ではあるが、絶命はしてないことだろう・・・。


「・・・ねぇ、言いたいことあるんだけどさ?」


3人とドラゴンたち、そしてエネルギアが、地上へと現れたことで・・・青い空(?)へと遠い視線を向けながら、ゆっくりと口を開くワルツ。


「・・・何をいいたいのか分かるよ?お姉ちゃん」


姉と同じく、空(?)を見上げて、眩しそうに眼を細めながら呟くルシア。


「・・・どうしましょうね・・・。これが・・・手遅れってやつでしょうか?」


2人が見ているだろう()()へと、同じく眼を向けながら、問いかけるカタリナ。

そんな3人が視線を向けていた先では・・・


ゴゴゴゴゴ・・・


・・・見える景色を埋め尽くさんばかりの勢いで、重力に逆らって空へと伸びていく巨大な植物の姿が・・・。


「何、あれ・・・」

「地下で蔓延(はびこ)ってた触手でしょ?きっと・・・」

「触手が樹になるわけ、ないじゃないですか・・・」


その巨大な樹のようなものに向かって、それぞれに口を開く3人。


彼女たちが唖然として空を見上げる中、有力な情報を口にしたのは・・・つい先程、地下工房から脱出して、外へと出てきていた鬼人の少女、シラヌイであった。


「せ、世界樹・・・?!」


「・・・えーと・・・世界樹って、何もないところから生えてくるものだったっけ?」


シラヌイの言葉を聞いて、仰向けのままで首を傾げるワルツ。

それからもワルツは空を眺めながら、頭を抱えるのだが・・・その原因が自分にあることを、彼女は未だ知らなかったりする・・・。

地下はもう嫌!、と言いながら、最近、地下怖いゲー(?)を好きこんでしておるイブ嬢・・・。

よく分からぬが、彼女はスリルを求めておるようじゃ。

・・・生きているだけで、スリリングな毎日を送っておるような気がしなくもないのじゃが・・・。


まぁ、それはさておいて。

さっさと補足に入るのじゃ。

そんなわけで、ここら辺で時系列を整理しておくのじゃ。

最近、場面が、ボンボンと飛びまくっておるからのう。


1、イブ嬢がコマンドーになる

2、ユキ殿が審査員たちを毒殺しようと試みる

3、ルシア嬢たちが審査員たちを毒殺する

4-1、ワルツたちが服毒による自害を試みる

4-2、ユリアがこの世の(ことわり)をシルビアに説く

5、エネルギア嬢が天井ドンをする

6、今話


大体、こんな感じなのじゃ。

・・・え?内容とかなり違う?

細かいことは気にするでない!


次回は・・・最近、話で出てきておらぬ約2名について語る予定なのじゃが・・・・・・少々、ランディングアプローチを間違えた感が・・・まぁ、よいか。


さて。

補足はこんなところで終えておいて・・・。

昨日の質問、パワハラ・・・ではなく、魔道具とは何か、について答えようと思うのじゃ。


魔道具は、2つの機能からなる魔法の道具なのじゃ。

一つが『魔力の蓄積』、もう一つが『魔力-魔法変換』なのじゃ?

現代世界で言うなら・・・『バッテリー』と『電子機器』といったところかのう。

この2つの機能があるおかげで、魔力が使えぬ者でも、自由に魔法が使えるのじゃ。

バッテリーの中に溜まった魔力がある限り、何度も魔法が使えるからのう。


で、ワルツが、カタリナや賢者に対して、都市結界用の魔道具の解析を依頼しておったのは、後者の『魔力-魔法変換』を行う部分の、制御ロジックの部分なのじゃ。

その場から動かすと機能を失う都市結界用魔道具の制限を解除して欲しい・・・。

アルタイルからの転移魔法攻撃に備えて、ワルツは、これをエネルギアにも搭載したかったのじゃが・・・常に動いておるエネルギアに対して、転移魔法による攻撃を行うのは難しい、と判断して、結局、搭載しなかったのじゃ。

まぁ・・・どこぞの変態国王は、転移魔法を使って、堂々と船内に侵入してきたがのう・・・。


あと・・・これは完全に余談になってしまうのじゃが、魔道具には、魔力の充填の速度や最大の容量、それに魔力-魔法変換効率などでグレードがあって、高性能なほど価格が高い、という傾向があるのじゃ?

その辺も、電子機器と全く同じ、と言えるかもしれぬのう。

本当は、その辺の話もしたいのじゃが・・・魔道具を使ってでも魔法が使いたいという者が、約一名(狩人殿)しかおらぬゆえ、なかなか話す機会が無いのじゃ。

・・・それを取り上げるシチュエーション、これからの話であるのかのう・・・。


ってな感じで、カタリナ殿への回答は、これで良いかのう?


次回は・・・

『ヘルチェリーを加熱しないで食べる方がいらっしゃるみたいですが、彼ら、味音痴なのではないでしょうか?』

という、頭と舌のおかしいユキ殿の質問・・・多分、この世界の果実について教えてほしい、という質問に答えるのじゃ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ