表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
520/3387

7.4-18 王都のお祭り18

・・・その結果。

自分の身体(せんたい)に纏わりついてくる植物(しょくしゅ)に耐えられなくなったエネルギアは・・・


ドゴォォォォン!!


容赦なく、地下大工房から外へと繋がるハッチを荷電粒子砲で吹き飛ばして・・・


ブチブチブチッ!!

ゴゴゴゴゴ!!


取り付いてくる植物たちを引きちぎりつつ、吹き飛んだハッチの隙間から、その全長300mを超える巨体を、2つの太陽の(もと)へと露わにした。


『ホント、気持ち悪かった・・・』


船体に最後まで付着した状態のままだった植物のツタが、完全に落下したことを確認しながら、船体の外部スピーカーを使って、心底嫌そうな声を上げるエネルギア。

とはいえ、その声が誰かに届くようなことは無かったが・・・


「ママ、見てっ!大っきなお船が出てきたよ?」

「あらあら本当ねぇ・・・」

「今日は何かいいことがありそうだな・・・」


その姿は、一部のコア(?)なエネルギアファンたちの眼に、何かの吉兆のように映っていたようである。

・・・あるいは、エネルギアを見た王都民たちが、いつも通りに喜んでいた、とも言えるだろうか・・・。


まぁ、それはともかく。

空に浮かび上がったエネルギアは・・・そこであることに気付いた。


『・・・あ、ビクトールさんのこと、連れてくるの忘れてた』


つい先程まで、異常な速度で繁殖する植物に対応するため、一緒に(?)戦っていた大切な剣士。

エネルギアは彼のことを、気持ちの悪い植物が蠢いているだろう深い穴蔵の中へと置いてきてしまったことに、脱出した今になってようやく気づいたようだ。


その際、彼女の脳裏に・・・もしも、ここに剣士(ビクトール)がいたなら、いっそのこと誘拐して、どこか遠くへと立ち去るのも悪く無い・・・などと浮かんできていたようだが・・・


『・・・ううん。そんなことしないもん!』


彼女は、何かを否定するような声を上げながら、邪念を振り払うように心の中で頭を振ると・・・剣士だけでなく、自分を守ろうとしてくれていた他の仲間たちのことも思い出して、皆のことを救出しようと思い至ったようである。


そして、今し方、抜けてきたばかりのハッチへと、その意識を向けたエネルギアは・・・しかし、慣性力という物理現象を無視して、空中で不意に固まってしまった。

何故なら彼女の視線(カメラ)の先にあった、大穴の空いたハッチから・・・


『うわぁ・・・やっぱり、やめとこ』


・・・彼女の大嫌いなものが、猛烈な勢いで現れ始めたからである・・・。




その、同時刻。

王都内の大通りの一角には・・・


「お兄ちゃん、お兄ちゃん!スイーツが出来たから、味見しに来て?」


先輩のユリアに借りた無線機(ケータイ)を使って、兄のことを呼ぶシルビアの姿があった。


スイーツが完成したら、味見をしてもらう・・・。

その約束を果たしてもらう時が、ついにやってきたのだ。


しかし・・・


「・・・あれ?お兄ちゃん、聞いてないのかな?」


シルビアがいくら待っても、どういうわけか、兄から返答が戻ってくる気配は無い・・・。


「・・・先輩?お兄ちゃんから返事がこないんですけど・・・もしかしてこの無線機、落として壊しちゃったりしました?」


「・・・後輩ちゃん。それ、分かってて聞いてるでしょ?」


「いやだなぁ、先輩。一体何の話ですか?」


「・・・・・・」


機械をこよなく愛する(?)ブレーズに、動作の原理がよく分からない無線機を渡すとどうなるのか・・・火を見るよりも明らかなはずだが、どうやら妹のシルビアには、それが分かっていなかったようだ・・・。


「多分今頃、後輩ちゃんの無線機、バラバラになってるんじゃないかしら?」


「バラバラに?どうしてですか?」


「いや・・・んー・・・」


全く疑うような様子を見せていないシルビアに対して、彼女の(しんぞく)のことを疑うような発言が出来なかったユリア。

一体どう説明すれば、シルビアの機嫌を損ねる事無く、無線機がもうこの世に存在していないことを分かってもらえるのか・・・。

文字通り説明し難いジレンマの隙間で、彼女は頭を抱えていたようだ。


それからユリアが、説明自体をもう諦めようか、と考えていると・・・今度は、シルビアとは反対側のブースから、明るい声が飛んできた。


「ユリアお姉さま!こちらも完成しました!」


情報部の新入りサキュバス、リサの声である。


「そう。じゃぁ、審査してもらうために、(中央の会場まで)持って行かなきゃね?」


と、言葉を返すユリア。

するとリサは・・・どういうわけか、自身の作ったスイーツを、満面の笑みを浮かべながら、ユリアへと差し出しながら短くこう言った。


「はい!」


「・・・はい?」


「はい!」


「・・・・・・ちょっと何言ってるか分かんないんだけど・・・?」


いきなり『はい』と言って、ソレを差し出してきたリサの意図が分からず、聞き返してしまうユリア。

するとリサは、笑みを崩すこと無く・・・何故か顔を紅潮させながら、口を開いた。


「どこの馬の骨とも分からない野郎共(やろうども)にどうこう言われるんじゃなくて、お姉さまに正当な評価をして欲しいんです!」


「はあ・・・」


最早、コンテストの存在などどうでもいい、といった様子で言い放つリサを前に、呆れた表情を浮かべるユリア。

そんなリサに対して、ユリアは言いたいことが山ほどあったようだが・・・自身が掛けている弱い幻影魔法の影響などを鑑みて、仕方なく、リサの願いを聞き入れることにしたようだ。

そもそも、リサはスイーツを1人分しか作っていない様子なので、コンテストに出展するための規定量に達していなかったことも、ユリアに試食を決めさせた一因と言えるだろう。


「はい、ナイフです!」


「・・・え?あ、ありがとう・・・」


そんなやり取りをして、皿に載ったスイーツと・・・それを切るためと思わしきナイフを、リサから受け取るユリア。

その皿の上には・・・


「・・・分かってるじゃない?」


「それはもちろん、お姉さまの趣味は理解しているつもりですから!」


妙にリアルなワルツの肖像画が、果物とクレープの生地などで形作られていたようである。


「こう・・・一思いに、ナイフを突き立てて下さい!」


「このナイフ、そのためのものだったのね・・・」


クレープを食べるのに、ナイフを使うというのは、特におかしなことではなかったために、ユリアは大きな疑問を浮かべること無くそれを受け取ったわけだが・・・その真意を聞いて、彼女は疲れたような表情を浮かべた。


・・・しかし、それも一瞬のこと。

ユリアはすぐに表情を戻すと、妙に鋭いナイフをその手に構えた。


「じゃぁ、さっそく・・・」


サクッ・・・


「あっ・・・」ぽっ


「・・・・・・」


スイーツで作られたワルツの3D肖像画の額にナイフを滑らせるという罪悪感と、ナイフが突き刺さった瞬間に恍惚(こうこつ)な表情を浮かべて妙な声を上げるリサを前に、内心で深い溜息を吐くユリア。

しかし、新入りの情報部員の前で、先輩として下手な振る舞いを見せることが出来なかったためか、彼女は仮面を被ったように、その表情を一切変えること無く、ナイフでスイーツを一口サイズに切るのだが・・・


「・・・ねぇ、リサ?フォーク持って無い?」


「何に使うんですか?」


「いや、切ったのはいいけど、どうやって口に運ぼうかと思って・・・」


「えっ?食べるんですか?私も、そこまでスプラッタなことは考えていませんでした・・・。流石、先輩!」


「・・・えっ?」


「えっ?」


ドゴォォォォン!!


2人の会話を遮るように、エネルギアの荷電粒子砲による轟音が、王都の中を響き渡ったのである・・・。

その結果、情報部である彼女たちの細やかな休息が、唐突に終わりを迎えてしまったことについては、言うまでもないだろう・・・。

・・・いやの?

多忙のあまり、色々と書き忘れておることがあるのじゃ?

それらをどうやってまとめて、辻褄が合うように書くか・・・。

それを今日一日、悩んでおったのじゃ。

まぁ、それはどうとでもなるのじゃが・・・先週の多忙さが今日もまだ続いておったなら、下手をすれば、本話に登場した者たちの存在を完全に忘れて、そのまま書き進めておったかも知れぬのう・・・。


さて。

それでは、補足に入ろうかのう?

これは・・・今日の話ではないのじゃが、イブ嬢の一人称のゆらぎについて、一応書いておこうと思うのじゃ。

イブ嬢の一人称は、『私』か『イブ』なのじゃ。

これについては以前述べたと思うのじゃが、一本化されない理由について、追加で補足しておこうと思うのじゃ。


まぁ・・・わざわざ言わずとも、大体分かると思うのじゃが、自己アピールの成分が多く含まれておる場合には『イブ』。

例えば、親やワルツなど、目上の人物を前にして使う一人称がこちらなのじゃ?

で、とりとめのない会話のほうで出てくる一人称が『私』。

つまり、背格好の近い、妾やルシア嬢、シラヌイ殿、それに飛竜と会話する際に出てくる一人称がこっち、というわけなのじゃ。

・・・何となく、下に見られておるような気がしなくもないのじゃが・・・・・・まぁよいか・・・。


本来なら、一本化すべきじゃと思っておるのじゃが・・・試しに、全て『私』で書くと、妙に影の薄い犬娘になってしまう一方で、全て『イブ』で書くと、甘えん坊なメイドという意味の分からない存在になってしまったのじゃ・・・。

それなら、両方をケースバイケースで使い分けたほうが良い、かと思い、『私』と『イブ』を両立することにしたかもだしなのじゃ?


イブ嬢の話はこんなところでいいかのう?


さて・・・今日の文については、補足すべきところは無いと思うのじゃ。

とはいえ、大体、いつも何か忘れておるんじゃがのう・・・。


では、なのじゃ。

1週間ほど前に、天使が何たるかを、元天使のシルビアに質問された故、それに答えようと思うのじゃ。


結論から言うと・・・天使とは簡易勇者みたいなものなのじゃ。

神から力を分け与えられると言う意味では勇者と全く同じで、勇者と大きく異なるのは、魔力以外の部分は元の人間のままという点なのじゃ。

・・・そんな説明では中々分かりにくいと思う故、一覧で説明するとこんな感じなのじゃ?


『勇者』が神から授かる能力

・魔力

・物理的な体力

・多額の税金


『天使』が神から授かる能力

・魔力

・少額の税金


魔力の授受(じゅじゅ)は比較的簡単な故、勇者も天使も同じように受け取ることができるのじゃ。

ただ、体力に関しては、そう簡単にはいかないようじゃのう?

どんな原理かは知らぬが・・・。

資金については・・・能力ではないから説明せんでもいいかの?


・・・あ、そうそう。

もう一点、説明すべきことがあったのじゃ。

特殊な『魔法』について・・・。


話の中でも何度か出てきたのじゃが、回復魔法を超える回復力を持つ『修復魔法』や天使固有の転移魔法など、天使化すると、普通の魔法使いが使えないような『特別な魔法』が使えるようになるのじゃ。

その『特別な魔法』には一体どんな魔法があるのか、というと・・・天使たちを使役する神によって異なる故、一概には言えないのじゃ。

その辺の説明は・・・まぁ、そのうち、本文の方で取り上げられるのではなかろうかのう?

・・・いつも通り、妾が覚えておれば、の。


それを考えれば・・・シルビアと主従関係にあった神は、すでに他界しておるというのに、彼女は一体どこから魔力を持って来て天使化しておるのか・・・。

そんな疑問が浮かんでくるところなのじゃが・・・それについては、乞うご期待なのじゃ!


シルビアの質問に対する回答はこんなところでいいかのう。


さて、次回の質問は・・・

『・・・実は悩みごとがあるんです。私、専門でもないのに、ワルツさんが、魔道具の分析をしろって、無茶なことを言ってくるんですよ・・・。これパワハラでしょうか?』

というカタリナ殿からの質問なのじゃ。

つまり、パワハラかどうかの質問に答えれば・・・いや、魔道具が何たるかの質問なのじゃ?

順当に行けば・・・まぁ、明日辺りには、答えられるかのう?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ