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7.4-14 王都のお祭り14

視点は再び変わって。


騒がしい王都とは違い、静かで薄暗い工房の中では・・・


「お花に水を与えるかもだし〜♪」


などと鼻歌を歌いながら・・・


ブチブチッ・・・


と、地下に蔓延(はびこ)っていた植物を片手で豪快に引き千切るイブの姿があった・・・。


「・・・えっと、イブちゃん?気持ちは・・・気持ちは分からなくもないです。でも、そんな新芽ばかり抜いても、仕方ないと思いますよ・・・?」


そう口にしたのは、イブと共に居残り組として、工房で植物の対策にあたっていたシラヌイである。

鬼人である彼女は、ユリアたちと同じく、本来は魔族側の人間なので、あまり表立って人前には出たくなかったようだ。

それに輪をかけて、社交的(?)なユリアたちとは違い、ひとりぼっちをあまり気にしない性格だったことも、彼女をこの場に居残り組として留めた理由であると言えるかもしれない。


そんなシラヌイと共に、ワルツから草むしり(?)を頼まれていたイブが、少しだけ眉を顰めながら言葉を返す。


「だって・・・私に、こんな大っきな根っこをどうにかと思う?ドラゴンさんたちみたいに、ブレスを吐けるわけでもないし、ルシアちゃんみたいに大っきな魔法が使えるわけでもないし・・・。あそこで狂戦士(きょーせんし)みたいになってる剣士さんやエネルギアちゃんみたいに大っきな武器を振り回すことなんで、もちろんできないしね。おっきくなったら、狩人さんみたいにカッコいいレディーになれるかもだけどさ?」


そう言いながら・・・工房の中を見渡すイブ。

そこでは、イブとシラヌイの他、エネルギアと剣士のコンビ、それに水竜と飛竜のドラゴンコンビがいて、皆で緑色の触手のような・・・あるいは樹の根のような、急激に増えていた植物と格闘していた。

その他、一応テンポもいたが・・・彼女は、エネルギアの艦内で、カタリナの代わりにリアの看護をしているので、表には姿を見せていない。


まぁ、それはさておいて・・・。

その場にいた者たちだけでは、残念なことにどうあがいても、植物を駆逐することは難しい話だった。

そもそも、絶対的な力を持つワルツが、2日間かけて駆逐しても、植物のツタ(?)を完全に取り除くことは出来なかったのである。

それを考えれば、植物の駆逐がどれほど難しいことなのか、分かってもらえるのではないだろうか。

もしもここにルシアとカタリナがいれば、話はまた違ったのかもしれないが、彼女たちがスイーツフェスに参加している現状では、絶対的に戦力が足りなかった、と言わざるを得ないだろう。


故に、居残り組である彼女たちの目的は、植物の駆逐・・・ではなかった。

ワルツたちがスイーツコンテストから戻ってくるまでの間、植物の足止めをして、工房をどうにか守ること・・・それが役割だったのだ。


故に、イブもシラヌイも、自分ができることをしていたわけだが・・・


「んー・・・厳しいですね・・・」ドシャッ


何を思ったのか、そんな言葉を呟きながら、大きな破城槌を植物へと振り下ろすシラヌイ。


イブとの話の流れ的に、彼女のつぶやきは・・・


「えっ・・・?い、イブの未来をそんな簡単に否定しちゃうの?!」


ということになってしまうのだが・・・


「え?いや、植物をどうにかするのが、難しいっていう話です」


「あ・・・そういうことね・・・」


シラヌイの言葉は、どうやらイブに宛てられた言葉では無かったようだ。


それからいつも通りにメイド姿のイブは、いつかは狩人のようになるだろうその平たい胸に小さな手を当て、ホッとした表情を見せてから、言葉を続けた。


「しっかし、こんなイタイケな私に草むしりをさせて、一体どうするつもりなんだろうね?ワルツ様は・・・」


「やはり・・・ワルツ様は、イブちゃんにも期待しておられるのではないでしょうか?」


「んー・・・だとすれば、何を私に期待してるのかなぁ?」


「それは・・・恐らく、あんな感じになることを、ではないですか?」


と言いながらシラヌイが指を刺した先では・・・


「うぉぉぉぉ!!」


ドゴォォォォン!!


とエネルギアのミリマシンを纏った剣士が、異様に大きな大剣を豪快に振り回しながら、エネルギアの船体へと近づきつつある植物を切り刻んでいた。

昨日から、殆ど休みなく働かされている点が気になるところだが、今のところ彼に限界を迎えた様子は・・・


「疲れたっ!エネルギア!そろそろ休憩させてくれっ!」


『うわーん!触手気持ち悪いよぅ!』


・・・・・・まぁ、まだ喋れるところを見ると余裕はあるようなので、当分、エネルギアから開放されることは無さそうである。


「・・・ちょっと、あんな風にはなれないと思うかもなんだけど?」ブチブチッ


「やっぱりそうですかね?でも、もしかすると、努力次第でどうにかなるかもしれませんよ?」ドシャッ


と、自分にできることを続けながら、そんなやり取りを続けるイブとシラヌイ。

それからも彼女たちの不毛な草刈りは・・・その終わりを見せること無く、延々と続いていった・・・。




そして、それからしばらく経ち、植物が減る・・・ことなく、むしろ朝に比べて4割ほど増えた頃・・・。


「んはっ!もう無理!」


植物の新芽ばかりを引きちぎっていたイブが、常に中腰になっていたために負担が掛かっていた腰を押さえながら、そんな諦めの言葉を口にした。

彼女の心を折ったのは、腰の痛みではなく、報われない努力の方であることは言うまでもないだろう。


「もう疲れてしまったのですか?」ドシャッ


と問いかけたのは、朝からずっとペースを変えること無く、フォージハンマーを振り下ろし続けていたシラヌイである。

普通に考えれば、自身の体重ほどはありそうなそのハンマーを一日中ずっと振り続けることは、手練の兵士であっても不可能なことのはずだが・・・彼女はまるでそれが普段からの日課だと言わんばかりに、全く疲れたような表情を見せること無く、植物を潰し続けていたのだ。


「・・・うん。そうなんだけどさ・・・何て言えばいいんだろうね・・・」


軽い運動をしているようにしか見えないシラヌイの姿や、今もなお剣を振るっている剣士たちを見て、体力的に何とも言い難い理不尽さを感じている様子のイブ。


何故、自分は、こんな化け物みたいな体力を持った者たちの間に紛れ込んでいるのか・・・。

彼女は考えても一向に分かる気配のないその疑問に対して、思わず頭を抱えてしまったようだ

・・・まぁ、本物の化け物(ドラゴン)たちは、ブレスの吐き過ぎで疲れてしまい、休憩しているようだが・・・。


「疲れたなら、休んでいても構いませんよ?後のことは任せて下さい」ドシャッ


「うん・・・ごめんね?シラヌイちゃん・・・」


そう言って、戦線を離れるイブ。


そして彼女は、自身の近くにあった、植物の(ツタ)まみれの椅子に腰を掛けると、天井まで届いていた植物の姿に眼を向けながら、おもむろに呟いた。


「・・・イブには、一体何ができるんだろ・・・」


・・・力もなく、持久力もない。

美貌(びぼー)があるわけでもなく、格好良さがあるわけでもない。

魔法が使えても、他のメンバーより(ひい)でているわけでもない・・・。


自分の取り柄が何なのか・・・そして自分の役割は何なのか・・・。

イブは、ただひたすらに考え続けた。


考えて、考え抜いて・・・そして飽和して・・・。

その結果、気づいたことは・・・


「何もないじゃん・・・」


非力で何も出来ない現状の自分の惨めさだったようである・・・。


「はぁ・・・。私、どうしてこんなところにいるんだろ・・・」


そんなことを呟きながら、天井の薄い暗闇に、今はもう会うことの出来ない父親の顔を思い浮かべるイブ。


「とーちゃん・・・イブには何ができるんだろ?」


今の自分には、浮かんできた疑問に対して、頭を悩ませることしか出来ない、と考えながら彼女はその視線を細めた。


そんなイブが・・・仲間たちのところへと、ふと視線を下ろした時のことである。


「・・・・・・?」


彼女は、頭の縁に、何らかの引っかかりを感じたようだ。


「・・・何か、みんなの効率が悪い気がするかも・・・」


皆から離れた場所まで移動した結果、見えてきた違和感。

それに気づいて、イブはおもむろにこんな言葉を口にする。


「シラヌイちゃん?試しに、そこのちょっと太い根っこを潰してもらえない?」


「・・・?どうしたんですか?」


「んー、なんとなくかもだね」


「はあ・・・。分かりました」ドシャッ


そしてイブに言われた通りに、植物を潰すシラヌイ。

すると・・・


ピタッ・・・


今まで急激に成長を続けていた植物の一部分の動きが不意に止まり、次の瞬間には・・・


シュゥゥゥ・・・


という音を立てて、急に枯れ始めたのである。


「あー、やっぱり・・・」


その様子を見て、納得するイブ。

一方、シラヌイの方は、


「えっと・・・何がどうなっているんですか?」


全く状況が掴めていない様子であった。


「んー・・・簡単に言うと、枝分かれしてる植物の上流部分を潰してもらったかも?」


「えっ・・・そんな簡単に分かるんですか?」


「うん。じっくり眺めてたら、大体だけどね」


そう言いながら、ジーっと植物の観察を始めるイブ。

そんな彼女に、シラヌイは感心しながら呟いた。


「・・・何か、すごいです。イブちゃん・・・」


「えっ?」


「いいえ。なんでもありませんよ?それで・・・次はどこを潰せばいいですか?」


「次はねぇ・・・あそこかも!」ビシッ


「分かりました!」


そんなやり取りをしながら・・・次々と、ピンポイントで、植物の根幹部分を狙って潰し始めるイブとシラヌイ。

今もなお、自分に何ができるのか、と悩んでいそうな表情を見せながらも、無意識の内に植物を分析して指示を出しているイブに対して・・・何故彼女が悩んでいるのか分からなかったシラヌイは、苦笑を浮かべつつ、イブの指示に従って、植物潰しを続けていくのであった・・・。

ちょっ・・・きょ、今日は、ホントに無理なのじゃ・・・。

あとがきはお休みさせてもらうのじゃ・・・。

本文を書き切るのが精一杯・・・zzz。

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