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7.4-06 王都のお祭り6

再び場面は変わって・・・。


「・・・あぁ、うん。大丈夫、元気にしてるよ。ちゃんと飯も食べてるし・・・それに、そっちにいた時よりも、ずいぶん睡眠時間も長くなってる。・・・あぁ。だから、気にするなよ。こっちはこっちでどうにかするからさ」


王城にある都市間通信室の部屋の中では、まるで母親と会話をするような男性の声が響いていた。

まぁ、会話の相手は男性の母親ではなく・・・


『お前、大丈夫・・・って言ってる割には、連れて行かれてから、随分としおらしくなったんじゃないか?』


彼の父親・・・・・・でもなく、勇者だったが。

・・・要するに、王城の通信設備を使って勇者と会話をしていたのは、ワルツたちに半ば誘拐される形で、ここまで連れて来られていた剣士だったのである。


当初、ワルツは、不可抗力が働いてコルテックスの休暇についてきてしまった剣士を、メルクリオからの帰宅途中で、サウスフォートレスに連れて行く予定だった。

しかし、剣士にピッタリとくっついて離れないエネルギアをどうやって引き離せばいいかを考えている内に、段々と面倒くさくなり・・・その結果、剣士をサウスフォートレスへと下ろすこと自体を忘れるという暴挙(?)に出たのである・・・。


そのことに剣士が気づいたのは、徐々に近づきつつあるミッドエデンの王城が見えてからだった上、コルテックスが暴走気味だったこともあって・・・まさか、そこから500km近く離れたサウスフォートレスへと連れて行け、とは言えなかったらしく、結局、彼は、どうにもならない不条理を、大人しく受け入れることにしていたのだ。


・・・そういった背景があって、自身が誘拐されたことを知らない勇者たちに対して一報を入れて安心させようと、剣士はミッドエデンの主要都市に設置されていた無線通信機器を使って、勇者と直接会話していたのだが・・・


「・・・んー、どうもこういった魔道具(つうしんき)の使い方に慣れなてなくてな・・・。相手の姿が見えないと、他人行儀になるというか・・・」


・・・といった理由から、普段とは異なる話し方になっていたようだ。

ワルツパーティーのメンバーにも、同じような反応を見せる者がいたように、電話すら存在しないこの世界に住む者たちにとっては、仕方のない現象と言えるのかもしれない。

・・・まぁ、行動力と適応力と社交力だけが取り柄な勇者にとっては、あまり関係のない話だったようだが・・・。


『ビクトール・・・。お前、意外に細かいことを気にするよな・・・』


「だけど・・・もしかしたらこうして話している相手が、実は俺じゃないかもしれない、って考えられないか?例えば、知らないおっさんが代わりに応対してるとか・・・」


『いや、ねぇよ!』


「そうか・・・。勇者は優しいな。声だけで俺だと信じてくれるなんて・・・」


『ごめん、ビクトール・・・。何か気持ち悪いよ・・・』


剣士のしゃべり方が、あまりに普段と違うためか、嫌悪を覚えた様子の勇者レオナルド・・・。

だが、それは、剣士自身も分かっていたようで、彼は苦笑を浮かべながら、そのむず痒さが伝わってくるだろう後頭部を掻きながら、こう口にした。


「ごめんな・・・勇者。俺も頑張って普通にしゃべろうとしてるんだが・・・こう・・・どうしてか背中がむず痒くなってくるというか・・・」


『・・・・・・』


そんな剣士に対して、色々とツッコミたいことはあっても・・・しかし、口には出さずにそのまま飲み込む勇者。


それから彼は、長く無線機を専有するわけにもいかないと思ったようで、小さくため息を吐いた後、通信を終えることにしたようだ。


『・・・まぁ、ビクトールが無事だったようで安心したよ。ニコル(賢者)には俺から無事を伝えておくから、その点は安心してくれ。他に何か変わったことがあったら・・・また連絡する(・・・あ、あれ?ビクトールのしゃべり方が伝染(うつ)ったような・・・)』


「あぁ。こっちも何かあったら連絡するよ。勇者も身体に気を付けてな?」


ガチャッ・・・


そして剣士と勇者の会話は、勇者の思考が汚染(?)されて、終わりを見せたのであった・・・。




・・・一方。

そんな彼らの、精神汚染が気になる会話が繰り広げられていたその後ろでは・・・


「・・・世の中には、訳が分からねぇことばかりが溢れてやがる・・・」


と、口にするブレーズと・・・


『何それ?僕のこと言ってるわけ?』


自身に向かって興味深気な視線を向けてくる彼に、ジト目を向ける少女エネルギア。

そして・・・


「・・・ごめんね?エネルギアちゃん・・・。お兄ちゃん、一度火がつくと、いつもこんな感じなんだよ・・・」


新しくミッドエデンにやってきたブレーズに対して、城内を案内していた実の妹のシルビアが、剣士たちの会話が終わるまでの間、3人それぞれに妙な気配を醸し出しながら雑談(?)していた。


『なにこの人。つまりこれが、いやらしい視線ってこと?』


「違っ!」


「えっ・・・お兄ちゃん、まさか、剣士さんの彼女を奪っちゃうの?大胆・・・」


『ち、違うもん!シルビアちゃん。僕、ビクトールさんの彼女じゃなくて、お婿さんだもん!』


「えっ・・・」

「意味がわからねぇ・・・」


と、大体、いつも通りの混沌としたやり取りをする3人。

そんなカオスな空気の中、一番最初にまとも(?)な言葉を口にしたのは・・・エネルギアをしげしげと観察していたブレーズであった。


「世の中には、しゃべるスライムがいたんだなぁ・・・。俺の知識も、まだまだってこったな」


『僕、スライムじゃないもん!エネルギアだもん!』


魔物と一緒にしてほしくなかったのか、頬を膨らませながら抗議の声を上げるエネルギア。


それから彼女が、自身に対して失礼な態度を取るブレーズをどうやって黙らせようか、と考えていると・・・その殺意を察したのか、シルビアが慌てた様子で口を開いた。


「もう、お兄ちゃんたら!エネルギアちゃんに失礼なことを言ったら、後で怖いんだよ?王城の中の案内も必要かもしれないけど、誰がどんな恐ろしさを持っているか、まずはそっちから教えたほうがいいかもしれないね」


すると、彼女のそんな言葉に反応を示したのはブレーズ・・・だけではなかった。


『何それ?ちょっとそれ、僕も聞きたいんだけど?シルビアちゃん』


つい、今し方まで、ブレーズに対して怪訝そうな表情を向けていたはずのエネルギアである。

どうやら彼女は、自分がシルビアにどう思われているのか、その言葉通り、気になったらしい。


「・・・やっぱり、言わなきゃダメですか?」


『うん』


「はい・・・」


兄を救おうとして・・・何をどう間違えたのか、ミイラ取りがミイラになってしまったことを感じるシルビア。

結局彼女は、エネルギアから逃げる手段が見つけられなかったようで・・・しかし、気を取り直したように明るい表情を浮かべると、その口を開いて話し始めた。


「じゃぁ、まずは、エネルギアちゃんのことから話しますね。えっと・・・エネルギアちゃんに襲われると・・・多分、死にます」


『えっ・・・』


「素直すぎんだろ・・・それ・・・」


オブラートに包むことすら無く、ド直球だったためか、唖然とするエネルギアと兄のブレーズ・・・。


「やっぱりそうかなぁ?隠すようなことでもないと思うけど・・・。で、次行くね」


エネルギアから抗議を受ける前に・・・次の人物へと話を進めるシルビア。

どうやら、彼女のダメコン能力は、先輩のユリアによって着実に増強されていたらしい。


故に、次の一言で、彼女はエネルギアとブレーズを黙らせることに成功する。


「・・・カタリナ様の場合」


『・・・・・・』

「・・・・・・」


「間違いなく、実験台(モルモット)にされると思う」


『同感』


「絶対に喧嘩を売っちゃいけない相手、ってやつだな・・・」


と、2人揃って頷くエネルギアとブレーズ。

それからもシルビアの言葉は続く・・・。


「あと、だいたい同じ理由で、テンポ様とコルテックス様にも注意してね?多分、後悔する暇もなく・・・肉体的にも社会的にも抹殺されると思うから。他は・・・意外にルシアちゃんは優しいからそんなに危険はないと思うけど、怒らせたときは、多分この世界ごと無くなると思うから、やっぱり絶対に失礼が無いようにしてよね?後は・・・意外にユリア先輩も危険かもね。よく分からない理不尽な魔法で、いきなり吹き飛ばされると思うし・・・」


「・・・結局、誰に失礼なことを言っても、殺されるってことじゃねぇか・・・」


「そうそう、大体そういうこと」


と、兄の呟きに、何度か頷きながら答えるシルビア。

なお、彼女自身が、無意識の内に天使化したり悪魔化したりする危険人物なのだが・・・そのことについては、本人もブレーズも気づいていないので、2人とも無害だと思っていたりする・・・。


まぁ、それは置いておいて。

妹のそんな話を聞いていたブレーズは、ふと何かを考えついた表情を見せると、おもむろにその内容を口にした。


「でもやっぱり・・・魔神が一番怖いんだろ?」


すると・・・


「うーん・・・多分、ワルツ様が一番安全で優しいと思う・・・」


と否定するシルビア。

エネルギアも納得げに首を縦に振っているところを見ると、それには同感だったようである。


「意外だな・・・。俺は、てっきり魔神といえば・・・気分次第で隣国の人間を根こそぎ滅ぼしたり、魔王たちを使役して世界征服を企んだりしてるもんだと思ってたがな」


「んー、ワルツ様の場合、魔神というよりも・・・どちらかというと女神様に近いかもね。やってることや知識については魔神って言われてもおかしくないと思うけど、それで害を受けるのって・・・大体、ワルツ様に喧嘩を売った人たちの方だし・・・」


「・・・よく分かんねぇやつだな・・・魔神って・・・」


と言いながら、頭の中の魔神像とワルツとを比較して、首を傾げる新参者のブレーズ。


それからも彼とシルビア、そしてエネルギアは、ワルツ談義に花を咲かせていったのである・・・。

このメンバーの話は、まだ続くのじゃ?


まぁそれはさておいて・・・。

・・・今まで何度も言っておることなのじゃが・・・夕食はお腹いっぱいに食べると、本当にダメなのじゃ・・・。

頭が、全く回らないのじゃ・・・。

これなら、昼食を抜かずにちゃんと食べて、夕食を食べないようにしたほうが、頭の回転は良くなるような気がするのじゃ・・・。

・・・もうダメかもしれぬ・・・zzz。

洒落にならぬほどに眠いのじゃ・・・。


まぁ、それは置いておいて。

今日は2点補足するのじゃ?


まず1点目。

前半は『剣士殿-勇者殿』の話で、後半は『シルビア殿-エネルギア嬢-ブレーズ殿』の話だったのじゃが、この2つの時系列的な関係は、直列ではなくて、並列なのじゃ?

一応それは、本文の方でも書いておるのじゃが、もう一度言うと、剣士たちの会話が終わるまでの間、彼の後ろで3人が雑談しておったのじゃぞ?

要するに、3人が雑談しておるのは、前半よりもすこし時間を遡ったタイミングでの話なのじゃ?

大して重要ではないのじゃが、念のため書いておくのじゃ。


で、次。


『当初、ワルツは、不可抗力が働いてコルテックスの休暇についてきてしまった剣士を、メルクリオからの帰宅途中で、サウスフォートレスに連れて行く予定だった』


という1文。

この文における主語である『ワルツ』をどこに持ってくるかで悩んだのじゃ。

というのも、最近、文の読みやすさについて、ネットを巡回しながら勉強しておるのじゃが、その中で『主語は述語の近くに置くと読みやすい』という文言を見つけたからなのじゃ?


そのルールに則るなら、この一文は・・・


『不可抗力が働いてコルテックスの休暇についてきてしまった剣士を、メルクリオからの帰宅途中で、ワルツは、当初、サウスフォートレスに連れて行く予定だった』


になるかのう・・・。

・・・『当初』を付ける位置が微妙に悩ましいがのう・・・。


これはこれで問題ないと思うのじゃが・・・うーん・・・と悩んでしまったのじゃ。

なんというか・・・その文が、誰に帰属するものなのかを考えた時、文の先頭付近に主語があったほうが、読みやすいような気がしたのじゃ。

20回30回と何度も声に出して呼んでおると・・・いい加減、何がいいのかよく分からなくなってきてしまったがのう・・・。

ついでに眠いしのう・・・。


まぁ、この一文以外にも、似たような理由で悩んだ部分はあるのじゃが・・・そのうちどうにか、読みやすくしていきたいのじゃ。


今日はこんなところかのう。


・・・で、昨日の狩人殿の質問に対する回答なのじゃが・・・申し訳ないのじゃが、今日はお休みさせてもらうのじゃ。

食事の量を実験的に調整した明日こそ、書かせてもらうのじゃ?

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