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7.4-02 王都のお祭り2

はるか昔から、大きな石や大理石を積み上げることで形作られていた、ミッドエデンの王城。

国の中で一番大きなこの建物は・・・実のところ、()()()()()3階しかなく、1階1階が縦にとても広く作られていた建築物であった。

その姿は、昔も今も大して変わることはなく、ある意味でこの国のシンボル的な存在になっていたようだ。


・・・とはいえ、見た目が同じなのは、外見だけであった。

内部は、魔法技術の進歩と、科学技術の導入によって、常に最新の設備が導入されていたのである。

特に、数カ月前にワルツたちがやってきてからというのも、それは加速度的に進んでいたと言えるだろう。

魔導的な自動ドア、機械的なエレベーター、魔導的とも機械的とも判断できない動力源が不明な壁掛け時計・・・。

そんなファンタジーと工学が同居する城のことを、そこで働く者たちや国民たちは・・・しかし、ポジティブに受け入れていたようで、内部は連日のごとく、まるで観光地のように(?)活気にあふれていたようだ。

・・・というよりも、今ではこの城が、現代世界でいう市役所のような役割を担っていたので、騒がしくて当然、と言うべきか・・・。


まぁ、それはさておいて。

そんな城の中で、一部の職員しか出入りができない特別な廊下を、2人の狐娘と1人の()狐娘が似たように尻尾を振らせながら歩いていた。

そして彼女たちは暫く廊下を歩いて・・・目的の部屋へとたどり着いたのか、おもむろにその足を止める。


コンコンコン・・・

ガチャッ・・・


「ユリアさんにお届け物です」


そう口にしたのは・・・赤い毛並みの尻尾と、身に付けていた白衣が特徴的なカタリナであった。

どうやら彼女は、この部屋にいる人物に、届けたい荷物があったようである。

その荷物の中身が何であるのか・・・ピンク色の布によって包まれていたために、外から窺い知ることは出来なかったが、何も知らない者が一見すると、差し入れの弁当のように見えなくもないだろう・・・。


実際、彼女が手に持っていたそれを、弁当だと思い込んだ女性が、自分のデスクから立ち上がって、受け取るために入り口まで歩いてきたようだ。


「はいはい、お弁当ですね?」


部屋へとやってきたカタリナに対応したのは・・・情報部の新人であるサキュバスのリサであった。

彼女は、つい先週まで、ボレアス帝国の諜報部隊に所属していたのだが、訳あってワルツの背中を刺してから、その後で殺されかけて・・・と、説明していくと非常に長くなるので結論だけ述べると、ミッドエデンの情報部部長を務める同じサキュバスであるユリアに引き抜かれて、この国で働く流れになっていたのである。


そんな新人の彼女は、弁当のようなものを届けに来たカタリナがどんな人物であるのか・・・残念なことに知らなかったようだ。

リサは、どこぞの魔神によって吹き飛ばされて死にそうになった際、カタリナの治療を受けて九死に一生を得ていたのだが・・・その後で意識のない彼女のことを看病したのが、現同僚であるユリアやシルビアだったので、治療したカタリナのことは殆ど記憶に残っていなかったのである。


そして更に言えば・・・彼女は、二度とワルツのことを刺さないように、ユリアによって幻影魔法による精神治療を施されている最中だったので、こうして来客に対応している瞬間にも、軽い錯乱状態にあったのである。

その為もあって、薄っすらと記憶に残っているはずのカタリナの姿も、そして、彼女の差し入れ(?)から滲み出る怪しげなオーラにも、全く気づかなかったようなのだ。

あるいは今が昼時だったことも、リサに包みの中身を食べ物だと思い込ませてしまった原因の一つと言えるだろうか・・・。


「いえ、食べ物ではありm」


「ユリアお姉さまー?お弁当が届きましたよー?」


「・・・・・・」


訂正しようとしたら、リサがその前にそそくさと包みを持って部屋の奥へと消えてしまったがために、言葉を向ける先を失ってしまい、思わず閉口してしまうカタリナ・・・。

それから彼女は入口の方へと振り返ると、部屋に入らずに廊下で待っていたワルツとルシアの2人に対して、


「・・・では、厨房へ行きましょうか」


・・・まるで恙無(つつがな)く荷物を渡せたかのように、そんな言葉を口にしたのである。


「えっ・・・いいの?放っといても・・・」


包みの中身が何であるのかを知っていたために、カタリナのその言葉に戸惑うルシア。

するとカタリナは、ゆっくりと首を振ると、小さく笑みを浮かべて、こう言った。


「中を開けて直接見れば、最初は驚くかもしれませんが、すぐに分かってもらえるはずです。まさか、昼ごはんと間違えて食べようとは思わないでしょう」


「・・・それもそうだね」


よく考えてみると、当たり前のことだったので、その説明で納得するルシア。


一方で、ルシアと共にその一部始終を見ていたワルツは、リサの眼に光が無かったことで、なんとなく不安を感じていたようだが・・・それを口に出すこと無く、情報部のある部屋に背を向けると、厨房の方へと歩き始めたのであった。


その後で・・・


『うわぁー!美味しそう!』

『うぉぉぉぉぉぁぁぁぁ?!』

『うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ?!』


・・・そんな悲鳴のような叫び声(?)が情報部の部屋から響き渡ってきたのを、少なくない人物が聞いたという話である・・・。




そして、場面は厨房前へと代わり、今度はワルツがその扉を開いた。


ガチャッ・・・


「あ、すみません。今からここを占拠するんで、皆さん外に出て行っt」


「お?ワルツたちじゃないか!」


ワルツが何かを言いかけていたようだが・・・それらを一切合財無視して、王城の巨大な厨房の中で、他の調理人たちと一緒になって料理を作っていた狩人が、やってきた3人に向かって声をかけてくる。


「あ、狩人さん。先に来てたんですね」


「そりゃ、カタリナに料理を教えるって約束をしてたからな」


と言いながら、手慣れた様子で泡立て器を回し続ける狩人。

彼女はワルツたちよりも一足先(ひとあしさき)に来て、スイーツづくりを進めていたらしく、卵の白身だけを丁寧にかき混ぜているところだったようだ。


それから、みるみるうちに泡立っていく狩人が持ったボウルの中身に対して、3人が興味深げに視線を集中させていると・・・再び彼女が口を開く。


「もしかして、ワルツとルシアも・・・料理の練習に来たのか?」


「えぇ。そのつもりでした」


「えっと、はい」


とそれぞれに、狩人の問いかけに対して答えるワルツとルシア。

すると狩人は、適切な硬さになったメレンゲの入ったボウルをその場の机の上に置くと・・・近くにあった魔導冷蔵庫の中から、冷えた小皿を取り出して、3人の前に置いた。


「これな、試作中のスイーツでまだ名前はないんだが・・・3人に試食して欲しいんだ。もしも気に入ったら、あとで作り方を教えるよ」


そう言いながら、まるでチョコレートのような・・・あるいはクッキーのような、3枚のスイーツ(?)を差し出す狩人。

訪れた人数と、丁度同じ枚数があったので、ワルツたちは遠慮なく、それをいただくことにしたようだ。


ポリッ・・・コリッ・・・


「・・・?なんだろうこれ・・・」


その触感が、あまりにも予想外過ぎたためか、疑問の声を上げるワルツ。

彼女の横にいたルシアとカタリナも、難しそうな表情を浮かべていたところを見ると・・・おいしくないわけでは無さそうだが、想像していたようなスイーツというわけでも無かったようだ。


狩人はそんな3人の表情を見て・・・


「うーん・・・やっぱりそうだよな・・・。意外性はこれ以上無いくらいの代物だと思うんだが、味や食感はまだまだ詰めるべき部分が残ってるよな・・・」


・・・言葉による感想を聞く前に、彼女たちがどう思ったのかを察してしまったようである。

むしろ、自分自身も同じように考えていた、と言うべきか・・・。


「・・・で、何なんですか?これ・・・」ポリポリ


口の中でチョコレートのような甘い菓子が溶けた結果、直径2mmほどの粒状の何かが舌の上に残ってしまって・・・それをグミのように噛み潰しながら、ワルツは問いかけた。

その結果、狩人が口にした言葉は・・・スイーツとはかけ離れたものだったのである。


「これ・・・実は、鳥の軟骨だ」


『・・・えっ?』


スイーツかと思わせておいて、実は肉でした、と言わんばかりの狩人の言葉に、自身の耳を疑うワルツたち3人。

しかし、彼女の説明は、冗談では無かったようだ。


「軟骨から余計な肉をキレイに削いで、強い酒で煮込んで臭みを消した後、ハチミツや砂糖で作ったシロップに3週間漬け込んで寝かせたものを適当なサイズに切ってから、乾燥させたヘルチェリーの種子を砕いて粉状にしたものと一緒に、蜜飴で固めたものだ」


「肉のスイーツ・・・なんですね・・・」


「あぁ。肉が好きだからな!肉が苦手で食べれない子どもや女性たちにも食べれるようと思って作ってみたんだ」


(どうしてかしら・・・。なんか方向性が間違ってるような、間違ってないような・・・)


野菜が苦手な者に対して、どうにかして野菜を食べさせようとするというアプローチはよく耳にするが、肉を食べさせようとするアプローチについては聞いたことがなかったために、考え込んでしまうワルツ。

それでも、狩人の作ったその肉製のスイーツは、れっきとしたスイーツだったので、こういった料理なのだろう、と思うことにしたようである。

まぁ、軟骨の成分がコラーゲンでできていることを考えるなら、製法は違うかもしれないが、所謂グミと言えなくもないだろうか・・・。


「狩人さん、これ、蜜飴で固めないほうが美味しいと思いますよ?」


「・・・え?じゃぁ、ワルツは元の形のままのほうがいいのか?」


「いや・・・そうではなくて・・・」


それからも、元の形状のままの軟骨を提供しようとしてくる狩人に、どうにかグミの説明を続けようとするワルツ。


こうして、本来なら先生役を務めるはずの狩人を巻き込んでの料理教室(?)が、幕を開けたのである・・・。

んー・・・。

眠くは無いのじゃが・・・頭が回らぬのじゃ・・・。

こう、もうちょっと、キレのある文を書きたかったのじゃが、思い通りにいかぬのじゃ。

まぁ、今日は少し表現を豊かにしてみた故、その分、普段と難易度が上がっておるはずじゃから、書きにくくて当然なのじゃがのう・・・。

・・・とは言え、途中で燃え尽きておるがのう・・・。

できれば、いつも、もっと表現が豊かになるように、書いていきたいと思う今日このごろなのじゃ。


あ、そういえばなのじゃが、もしかすると明日は、更新できぬ可能性が13%ほどあるのじゃ。

極端に高いわけではないのじゃが、いつもに比べれば比較的高い故、一応ここで報告しておくのじゃ?

ちなみに、本当に13%かどうかは・・・不明なのじゃ?


で、ようやく補足に入るのじゃ。

リサに関しては、覚えておるじゃろうか?

もういい加減、妾は忘れそうになってたがのう・・・。


彼女は、ボレアスで、神殺しの剣とやらを使ってワルツを背中から刺した罪人なのじゃ。

それ自体は、結局どうにもならなかったのじゃが・・・彼女は、民衆の前でワルツのことを刺し続けるという罰を受けて、ワルツの背中に重力制御で括りつけられ、市中を引き回されていた(?)のじゃ。

で、刑を終えてワルツが背中から離そうとした際、快感じゃと申して、ワルツに気持ち悪がられて吹き飛ばされ、大怪我を負ってしまったのじゃ。

その結果、カタリナ殿による治療が終わっても、一部の記憶を失うなどの障害が残ってしまったのじゃ。


故に、ワルツは彼女のことをミッドエデンに連れ帰って面倒を見ることにしたのじゃが・・・どういうわけか、彼女は、ワルツのことだけは覚えていた(?)らしく、ワルツを見ると、喜々として刃物で刺そうとしてくるのじゃ・・・。

まぁ、物語の登場人物で言うなら、ヤンデレ枠、というやつかのう?


一応、彼女は、これからも情報部職員として何度も登場する予定なのじゃ?

・・・正直、あまり書きたくないがのう・・・。


今日の補足は・・・まぁ、こんなところかのう。


というわけで。

次回、『野菜のスイーツと肉のスイーツがあるなら・・・薬品のスイーツがあってもいいですよね?』乞うご期待?したくないのじゃ・・・。

なお、念の為に言っておくのじゃが、カタリナ殿は間違ってもそんなことはしないのじゃぞ?

やるとすれば、テンp・・・いや、なんでもないのじゃ・・。

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