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7.4-01 王都のお祭り1

軽度グロ注かもだし?

メルクリオの王城から、ミッドエデンの地下大工房へと無事に戻ってきたエネルギア。

それから1日が経過して、ドタバタしていたコルテックスの休暇(?)が終わってから・・・。


「・・・散々。ホント、散々だったわ・・・」


ワルツは壊されてしまったエネルギアの船体内部の状況を確認しながら、深い溜息を吐きつつ、そんな言葉を口にした。


「ふーん。話を聞いてる限りだと、随分と楽しそうに聞こえたけどね?」


ワルツの小言まみれの視察に付き合ってたのは、ミッドエデンに用事があると言って残っていたルシアである。

彼女は、姉の説明や、コルテックスたちの話を聞いて、サウスフォートレスからメルクリオに至るまでの出来事を頭の中で想像していたようだが・・・どうやら、その想像は、大分、コルテックスナイズされていたようだ。


というのも、コルテックス自身は、今回の初めての休暇をしっかりと楽しんでいたようなのである。

その殆どは・・・とある少年を、民衆の前で(はずかし)めていただけのような気がしなくもないのだが・・・ともかく彼女は、それで今回の旅に満足していたらしい。


そのためか、居残り組のルシアや、休暇の間、議長の仕事を肩代わりしていたテレサたち、それに情報部のユリアたちに対して、コルテックスは満足気に今回の旅の報告をしたわけだが・・・それが、どうやら、一緒に旅には行かなかった仲間たちにとっては、魅力的な話に聞こえていたようである。


「いやいや。ホント、大変なだけだったんだから。なんか、サウスフォートレスの地下には大量のホルスタイン(ミノタウロス)が湧いてたし・・・その後、海岸に行ったら、なんでか雪が降ってて、無人島はネズミたち()夢の国と化してたし・・・それに、アルクの村に立ち寄ったら、面倒くさい酔っぱらいに絡まれて・・・メルクリオでは、王城や潜水艦が勝手に爆発したり、エネルギアを爆破されたり・・・」


「う、うん。コルちゃんたちの話を事前に聞いてないと、全然分かんないよ、お姉ちゃん・・・」


「そうよね・・・。ま、要するに、こんな感じで、エネルギアが大変なことになりそうだったのよ」


と言いながら、自己修復を続けるエネルギアのミリマシンの姿に眼を向けるワルツ。

その様子は・・・まるで小さなアリが、少しずつ食べ物を運んでいるような姿に見えていたが、運んでいるのはタンパク質やアミノ酸で作られた食べ物ではなく・・・ニッケルや鉄、マグネシウムなどからなる、合金の材料であった。


それが、ミリマシンの一匹一匹によって所定の場所まで運ばれると・・・彼らの口元(?)から金属加工用の赤外レーザーが放たれ、高温で材料を融解させながら、元の扉の形を、ゆっくりとだが、再構築しつつあったのである。

現代世界の技術に例えるなら、金属粉末焼結(SLS)式の3Dプリンターと同じ原理である、と言えるだろう。


・・・まぁ、それはさておいて。

ワルツの小言はまだ続いていた・・・。


「全く、困ったものよ・・・。あの娘(エネルギア)が身体を形成しているミリマシンを開放してくれれば、本来ならあと2日くらいで完全に修復できるのに、剣士をサウスフォートレスに置いてくるのを忘れたせいで、余計に時間がかかっちゃいそうなのよね・・・」


「・・・どのくらい?」


「・・・多分、1ヶ月くらい」


「だめじゃん・・・それ」


「うん・・・。だから、エネルギアのためにも、ミリマシンを増産しようと思うのよね。ミリマシンを使って、マギマウスたちを駆逐するっていう計画もあるわけだし・・・」


そう言って、修復中の扉に背を向けるワルツ。

それから彼女は、ルシアに向かって、こう言った。


「というわけだから、この数日間、ルシアも手伝ってね?」


妹に向けられた、そんなワルツの言葉は、いつも通りの言葉であった。

故に、普段なら、ルシアから返ってくる言葉は『うん!分かった!』のはずなのだが・・・


「えっ・・・」


・・・どういうわけか、ルシアの反応は(かんば)しくなかったのである・・・。


「・・・なんかあった?」


普段とは大きく違うルシアの反応を見て、思わず問いかけてしまうワルツ。

すると、ルシアは苦笑を浮かべながら、その理由について話し始めた。


「お姉ちゃん、すっかり忘れてるでしょ?」


「えっ・・・何?今日の朝ごはん?」


「やっぱり、覚えてないんだ・・・」


果たして覚えていないのは、これからの数日後のイベントのことなのか、それとも今日の朝ごはんのことなのか・・・。

ルシアは『多分、両方だね・・・』と思いながら、朝ごはんのことはとりあえず棚に上げて、言葉を続けた。


「・・・スイーツフェスティバル」


「・・・?!」


「今日から3日後だけど・・・そうだよね・・・・・・うん。お姉ちゃんの手伝いを優先するね?」


「えっ・・・いや・・・」


言葉と共に自身に向けられていた、3割ほど悲しみの成分を含んでいたルシアの笑みを前に・・・急に挙動がおかしくなってしまうワルツ。

それから彼女は、勝手に垂れ下がってきていた頭を支えるように、額に手を当てると、申し訳無さそうに口を開いた。


「・・・ごめん。すっかり忘れてたわ。私のことを手伝うのは、スイーツフェスの後でいいわ・・・。っていうか、私も出ろって狩人さんに言われてたのよね・・・」


「・・・うん。だと思った」


と言って、小さくため息を吐いた後に、嬉しそうな笑みを浮かべるルシア。

恐らく彼女は、姉と一緒にスイーツフェスティバルに出ることを、楽しみにしていたのだろう。


「私ね?実は・・・お姉ちゃんたちがいなかったこの2日間、お城で、クッキーを作る修行をしてたんだよ?」


「あぁ、そういうことね・・・」


「今度こそ・・・美味しいクッキーを焼いて、お姉ちゃんに食べさせてあげる!」


「う、うん・・・。楽しみにしてるわね?」


「うん!絶対美味しいよ?稲荷寿司クッキー」


「・・・・・・」


ルシアの口から、何か聞き捨てならない言葉が聞こえてきたような気がしたワルツ・・・。

しかし彼女は・・・聞き返しても同じ言葉が飛んでくるかもしれない、と怖くなったのか、ついに問いかけ直すようなことはしなかったのである。

せめて、空耳であって欲しい・・・彼女はそう思っていたに違いない・・・。




それから、壊れた扉の調査を中断して、ルシアと共に、スイーツ作りの練習をすべく、下船することにしたワルツ。

しかし彼女たちは、すぐに王城に向かうのではなく、せっかくここまで来たのだから・・・と、エネルギアの船内にあった医務室に立ち寄ることにしたようだ。


ガション!


「どう?カタリナ?息してる?」


医務室の扉を開けると、いつも通りに他愛もない挨拶を部屋の中へと投げかけるワルツ。

・・・その瞬間であった。


「うぉぉぉぉぁぁぁぁ?!」


・・・急に、医務室の中から、男性の叫び声が聞こえてきたのである・・・。


「えっ・・・?!な、何やってんの?!」


その声があまりに悲痛なものだったためか、自身の背中に隠れてしまったルシアの事を庇いながら、部屋の中をそっと覗き込むワルツ。

するとそこでは・・・


「あ、ワルツさんとルシアちゃん。すみません。今、ちょっと、取り込んでました」


カタリナが、どういうわけかガタガタと勝手に揺れる、1辺が30cmほどの大きさをしたサイコロ状の何かに、注射器で薬物を注入していたのだ・・・。


「・・・なにそれ?」


単なる金属製の箱のはずなのに、言い知れぬ不安が掻き立てられてしまうその物体が何であるのか・・・ワルツが問いかけると・・・


「これは、最近まで生体保存用のシリンダーの中に入っていた・・・あの犯罪者みたいな名前の人の生首を閉じ込めた箱です。むしろ、箱ではなく、義体と言った方がいいでしょうか?自由に動ける身体を与えてしまうと、また犯罪じみた事をされても困りますから、足も手もない箱の中に閉じ込めておこうかと思いまして・・・」


「犯罪者みたいな名前の人・・・?」


「えっと・・・確か、ショタコンでしたっけ?」


「あぁ・・・いや、シスコンだったような・・・」


「え?シスコンって何?」


「ううん?気にしないで、ルシア。単なる言葉の綾だから・・・」


自身とカタリナの会話に入ってきたルシアに対して、ゆっくりと首を振りながら、優しく答えるワルツ・・・。

それから彼女は、何をごまかすように、彼の名前(?)を口にした。


「確か、ロリコンね・・・」


ロリコン・・・。

それは、ミッドエデンのはるか北方にあるユキたちが治めていたボレアス帝国で、イブを始めとした少年少女たちを誘拐して、何やら怪しげな実験に使おうとしていた、現代世界からの転移者(転生者?)らしき、男性の名前(?)であった。

彼は、仲間であるカペラという男性と共に、カタリナによって首を飛ばされて・・・そして今まで、怪しげな緑色の液体の入ったシリンダーの中に保存されていたのである。

どうやらカタリナは、メルクリオにおいて、元天使たちであるジョンやジョセフたちの身体を修復したことを期に、ロリコンにも新しい身体(?)を与えることにしたらしい。


・・・ただ、そこにカペラの首が入っているだろう別の箱は見当たらなかった。

恐らく彼は・・・未だ冷蔵庫の内にあるだろうシリンダーの内部で、手付かずの状態で保管されているのだろう・・・。


「はい。確かに、そんな感じの名前でした。実は情報部のユリアたちから、彼を喋れる状態にして、調査のために引き渡して欲しい、との問い合わせが前からあったんですよ。でも・・・彼は言わば女の敵なので、あまり治したくなかったんですよね・・・。なので、仕方なく、元の身体ではなくて、これ以上犯罪のしようがない箱の中に閉じ込めることにしたんですけど・・・神経の接続がうまくいかなくて、さっきみたいに叫び声を上げちゃうんです。まぁ、仕様だと思って気にしないでいただけると助かります」


『えっ・・・・・・』


そのあまりの残酷さに、言葉を失ってしまうワルツとルシア・・・。

とはいえ、彼がしてきたことを鑑みるなら仕方がないことだと思ったようで、2人とも異論を口にすることは無かったようである。

・・・まぁ、異論があったとしても、今のカタリナの前で、堂々と口に出せるかどうかは甚だ疑問だが・・・。


「・・・程々にね?」


「えぇ。生命は大切にしないといけませんからね」


そう言って、箱の身体になってしまったロリコンのことを、丁寧に布で包み込んで包装するカタリナ。

いま彼は、睡眠薬のようなもので眠らされてしまったためか、先ほど違い、全く動きを見せるようなことは無かったが・・・もしも眼を覚ました際、今の彼に自身の状態を認知する手段が備わっていたとすれば・・・あまりの絶望的な状況を前に、神経の接続云々は関係なく、再び叫び声を上げてしまうことだろう・・・。


それを知ってか知らずか、カタリナはその包みを手にして、白衣の中に仕舞い込むと、特に表情を変えることなく話し始めた。


「・・・それでは、ちょっと、配達に行ってきます」


「へぇ、珍しいわね?カタリナが自ら出向くなんて・・・」


「実は・・・3日後のスイーツフェスティバルに・・・」


・・・そして、ルシアと同じように、スイーツフェスティバルが楽しみだ、と口にするカタリナ。

彼女はこれから久しぶりに王城へと出向いて、狩人の下で料理の練習をするのだという。


それからワルツとルシアは、カタリナと共に料理の練習をすべく、王城へと向かうことになるのだが・・・彼女が持っていたそのピンク色の包みを、フェスティバルの会場でもお目にかかるようなことが無いことを・・・2人は切に願ったとか、願わなかったとか・・・。

眠いのじゃ!

眠すぎるのじゃ!

zzzzz・・・。


・・・575?

『じゃ』は、1文字でいいのかのう?

・・・まぁ、それはいいのじゃ。


というわけで、章が0.1進んだのじゃ?

ここでは、主にフェスティバルの話をする予定なのじゃ。

ついでに、その周辺にまつわることと、のう。

ミリマシン云々については・・・この章で書くかどうか、まだ悩んでおるところなのじゃ。

まぁ、間違いなく、次の章で何らかの結論が出ておるとは思うのじゃが・・・。

詳しくは乞うご期待なのじゃ!


で、補足するのじゃ?

・・・うむ。

無くもないのじゃが、まだ章が始まったばかり故、補足すべきことはとりあえず無いのじゃ。

例えば、剣士たち然り、ブレーズ然り、妾然り・・・。

・・・って、妾の出番が無さ過ぎて、眼から汗が零れ落ちそうなのじゃ・・・。


まぁ、今日()かなり眠い故・・・こんなところで御暇させてもらうのじゃ?


次回、『な、なんでルシアちゃんとイブは、こんなに扱いが違うかもだし!』乞うご期待?なのじゃ。

それはのう・・・イブがそういうキャラクターじゃから、なのじゃ?

・・・冗談じゃがの。

基本的にワルツは、見知らぬ人でなければ、誰にでも別け隔てなく接しておるのじゃ?

もしも、イブ嬢に対して冷たく当たっておるというなら・・・わざわざ、ロリコンに誘拐されたイブ嬢を、どこまでも探しに行くなどということは、まずしないはずじゃからのう・・・。

・・・なんでじゃろう・・・これ、次回予告じゃない気しかしないのじゃ・・・。



---追記---

そう言えば・・・前回、1日前のことを書くと言って・・・いや、なんでもないのじゃ・・・。

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