7.3-21 メルクリオの影8
軽度グロ注なのじゃ?
一方。
ジョンやジョセフと別れて飛行艇の後方へと足を進めていたリーダーたちは、2人を残してきた場所から数えて3箇所目の隔壁を破壊しようとしていた。
「この扉の向こうから魔力が漏れ出てきているようだな」
「いよいよか・・・」
「あー、これ終わったら、酒場でパーッといきてぇな・・・」
『・・・・・・』
空気を読まないコリンズと呼ばれた兵士の言葉に、思わず言葉を失う他2名。
ここには文字通り決死の覚悟でやってきているのだから、無事に戻れる・・・などとは誰も考えていなかったのだ。
故に、コリンズの言葉は、リーダーやもう一人の兵士にとって、少々気に障る言葉だったようだが・・・
「・・・そうだな」
「・・・向こうの世界でな」
2人共、コリンズが口にしたその言葉が、この世界の酒場ではない事を察したのか、苦笑を浮かべて同意した。
「・・・皆、準備はいいか?」
「あぁ」
「俺もいいぜ」
眼の前の扉に、球状の黒い魔道具を、まるで鳥黐のような粘着度の高い特殊な接着剤で固定して・・・。
そして彼らはここまで何度も繰り返してきたように、近くの窪みや、廊下の突き当りに身を隠すと・・・扉から一番近い場所に隠れていたリーダーが、その球体の魔道具へと火魔法を行使した。
その瞬間、
ドォン!
と、白煙と扉の破片を撒き散らしながら、豪快に吹き飛ぶ分厚い金属製の壁。
その結果、その扉の奥に見えてきたのは、空中戦艦エネルギアの主機である3機の核融合炉・・・ではなく、
キィィィィン・・・
と超高回転で回るタービンがひしめき合う部屋であった・・・。
・・・核融合炉内を極真空に保つためのターボ分子ポンプのある部屋。
そう言えばどういった意味合いを持つ部屋なのか、想像が付けられるだろうか。
要するに、少女エネルギアがこの船に宿る原因になった修理を受けたポンプがある部屋である。
あるいは、彼女の本体がある部屋、と言ってもいいかもしれない。
「何だこの部屋は・・・」
「聞いたことのない音だ・・・」
その部屋の中に響き渡る高音を耳にして、物珍しそうに中の装置へと眼を向けながら、口々に感想を述べる兵士たち2人。
一方で、リーダーは、目的のものを淡々と探して・・・
「・・・これだ」
鏡のように光を反射する他の銀筒とは違い、何やら焼けた鉄のような黒光りを放っていた直径2m高さ4mほどの筒の前で立ち止まると、満足げにそう口にした。
どうやら、彼の感じていた魔力は、その筒が発生源のようだ。
そんなリーダーの言葉と、黒鉄で出来ていそうなその筒を眼にして、
「随分、あっけなかったな・・・」
「これで終わりか・・・」
とそれぞれ口にする部下2人。
どうやら彼らは、魔神の部下との戦闘で戦死することを考えていたようだが・・・特に誰かに会うわけでもなく、船のコアと思わしき場所へと簡単にたどり着いてしまったせいで、肩透かし感が否めなかったためか、残念に思っていたようである。
船に乗り込む際に、リーダーが口にした最終確認への返答を少しだけ後悔している・・・そんな様子とも言えるだろう。
しかし彼らの行動はそれで終わりではなかった。
2人は羽織っていたマントの中に手を入れると、そのままリーダーの横まで歩いて行き、そこで黒い球体とチューブに入った接着剤を取り出すと・・・
「せめてこれくらいはしておかないと、後で浮かばれんからな」
「多めに設置しておくか・・・」
そう言いながら、その爆発物を、黒い金属の筒へと設置したのである。
自分たちもこの船の破壊に貢献したい・・・そうでなくては、ここまで来た意味が無い。
・・・このままろくな活躍もせずにここで死ぬ。
『悔しさ』とは少々ベクトルが異なるが、単なる無駄死は、この国の守護者たる元天使をしていた彼らのプライドが許せなかったようだ。
・・・そんな、ここまでの3人の発言や行動通り・・・彼らはここで死ぬつもりだったのである。
浮いている船のコア(?)を破壊すれば、その後に起こるのは必然的に墜落なのだから、船が地面に衝突する前に脱出しないかぎり、運命をこの船と共にしなくてはならないのは、必然的なことだったのだ。
しかし、残念なことに、外からここまでの距離は数秒で逃げ出せるような距離ではなかったため、墜落前の脱出は、転移魔法でも使えないかぎり、まず不可能であった。
外からはどう頑張ってもこの船を破壊できない以上、内部から壊すしかない、と考えていた時点で、彼らの運命はすでに決まっていたのである。
「・・・すまんな、2人とも」
と、この船のコアを破壊して墜落させると、その結果、乗っている人間も死んでしまうことを最初から知っていた様子のリーダー。
船に乗り込む前、『それでもいいか?」と部下たちに確認を取った彼だったが、これが今生の最期であることを察して、その場にいた仲間たちに謝罪した。
するとコリンズが、小さなため息と苦笑を浮かべながら、いつも通りに口を開く。
「いや、リーダー。謝る必要は無い。実はあんたに隠していたことが幾つかあるんだが・・・それを考えるなら一緒に死ぬことくらい何てことはないぜ」
「・・・お前、何やったか死ぬ前に正直に言えよ?」
そして最期の最後で・・・楽しそうに仲間割れを始める元天使たち。
しかし、そんな彼らの・・・いつも通りのその戯れが、今回だけは仇になってしまったようだ。
最初にその異常に気づいたのは、自身もリーダーとコリンズに対して、口出せない隠し事があったため、2人のやり取りに巻き込まれないように傍から見ていた兵士であった。
「・・・っ!?」
彼は、腰に下げていた剣を急いで引き抜いて、すぐに身体の前で構えるのだが・・・
ガァァァァァン!
ドシャァッ!
金属同士がぶつかり合うような音が聞こえたかと思うと、彼は一瞬で部屋の隅まで吹き飛ばされて・・・壁に投げつけたトマトのように全身から真っ赤な血液を吹き出すと、それっきり全く動かなくなってしまったのである。
『?!』
その出来事があったために、ようやく異変に気づく元天使たち。
そして彼らが、直前まで仲間がいた場所へと視線を向けると、そこには・・・
「・・・おかしい・・・。吹き飛ばすつもりは無かったんだが・・・」
全長50cmほどのボロボロになったダガーと、意味不明な文字の書かれた真っ白なTシャツ、それに、全身の血管が真っ黒く浮き上がった様子が特徴的な剣士・・・ビクトールが立っていたのである・・・。
なんとなく思うのじゃ。
・・・小説管理ページが軽くなったと。
いつも、ページにアクセスしてから全てが表示されるまでに、どんな回線であっても、たっぷり20秒近くかかっていたような気がするのじゃが・・・今日見てみると、スカスカな狐・・・ではのうて、スカスカな管理ページになっておったのじゃ。
と言っても、今日気づいただけで、軽くなったのは、随分前からかもしれぬがの?
で、補足に入るのじゃ?
・・・まぁ、補足というわけではないのじゃが、1点だけ釈明なのじゃ。
今日は規定(3000文字)よりも文量が少なかったのじゃ。
別に端折ったわけでも、面倒になったわけでもなく、剣士殿が登場するシーンが、丁度、話の区切りとして良かった、と言う理由から短くなってしまったのじゃ?
あと400文字、追加で書こうとも思ったのじゃが、それこそ余計な駄文が増えるだけのような気がした故、追記はしなかったのじゃ。
それで・・・今日はやらねばならぬことがある故、この辺であとがきを切り上げさせてもらうのじゃ。
・・・え?これでも長い?
・・・そうかのう?
いつも、あとがきも、毎日3000文字を目標に・・・嘘なのじゃ。
もしもそんな目標があったなら、zzzzzとひたすらzを繰り返して、文字数を稼ぐのじゃ?
次回、『剣士爆散』乞うご期待?なのじゃ。
・・・あ、そういえば、昨日爆散するかもしれないと言っておったユキ殿なのじゃが、カタリナの要塞と化しておる医務室におる彼女たちがどうなったのかについては・・・ご想像にお任せするのじゃ?
今日、彼女たちについて取り上げなかったのは・・・あまりに凄惨な状況が繰り広げられておったために、その様子を文に起こすと、全年齢対象を大きく外れて・・・いや、何でもないのじゃ・・・。




