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7.3-20 メルクリオの影7

そして元天使の現兵士たちが、巨大なエネルギアをどうにかするための装備を整えて、空がしらばんできた頃に王城の屋上へと戻ってくると・・・。

額から2対の短い角を生やした少女が、飛行艇の出入り口の前で、金床の上に載せた真っ赤に輝く金属に向かって・・・


カン!カン!カン!・・・ガガガガガ!!


と、一心不乱にハンマーを振り下ろしていた・・・。


『何だあいつは・・・』


逃げも隠れもせず、いくつかある屋上への出入り口の一つから、その姿を眺める元天使たち。

文字通り鬼のような形相で鍛錬を続けるシラヌイに対して、訝しげな視線を向けていたのは・・・しかし、どうやら彼らだけではないようだ。

早朝の訓練か、あるいは朝の見張りに出て来た兵士たちも、奇妙なものを観るような眼を、遠巻きに彼女に向けていたようである・・・。


「どうします?」


「どうするってもな・・・」


「流石に、大勢が見ている前で、邪魔だから、と強制排除するのは難しいだろう」


「・・・そうだな。まだ時間は充分にある。奴がいなくなるタイミング・・・朝食の時間を見計らって、作戦を決行しよう」


『了解!』


そんなやり取りをしてから・・・巡回の兵士のように、王城の屋上付近を定期的に確認することにした元天使たち。


その間、魔神ワルツが戻ってきたり、彼女の仲間たちが何人か船と王城を行き来していたりしたようだが・・・朝食の時間には、全員が下船する、というリーダー役の元天使の読みが当たっていたようで、出入りしていた少女たちは、ある時間を境に、一斉に食堂の方へと移動してしまったようだ。


そして、その時が来て・・・リーダーの元天使は、部下たちに向かって確認の言葉を口にした。


「まともに空を拝むことになるのは、これが最後になってしまうかもしれないが・・・それでもいいか?お前たちは、ここに残ってもいいんだぞ?」


「なに言ってんすか!あの憎き魔神や、この白い化物に一泡吹かせようと、ここまで来たんすよ!むしろ、リーダーこそここに残ったほうがいいんじゃないっすか?」

「・・・だな」

「同感だ」

「・・・リーダー?俺達の決意はすでに決まってるんです。後はあなたが一言『逝こう!』と言えば、俺たちはその後ろを・・・いや、横を喜んで歩いて行くだけです。・・・()()を」


「・・・・・・はぁ・・・」


最悪、自分だけが()()になればいい、と考えていたリーダーは、その考え自体が甘かった事を感じて、大きくため息を吐いた。

そして彼は、苦笑を浮かべながら、その表情の通りに、まるで行きつけの訓練場へと足を向けるかのような口調で、部下たちに告げたのである。


「・・・待たせたな。では、逝こうか」


『了解!』


旧メルクリオ神国特有の敬礼をして・・・そして、大きく口を開けている薄暗いエネルギアの中へと、その足を進める兵士たち。

そんな彼らの姿は、間違いなく他の兵士たちにも見られていたはずだが・・・誰も止めようとはせず、むしろ敬礼を()って見送ったのは・・・彼らが甲冑の上から纏っていたマントに、懐かしい母国の旗が描かれていたからだろうか・・・。




ドゴォォォォン!


・・・そして、エネルギアの内部で爆発が起ったのである。


最初の爆発は、船体後方へと繋がっていそうな通路を遮断する開かずの扉を破壊するための爆発であった。

その一撃によって・・・大きな扉だけでなく、近くにあった厨房や、冷たい箱の中に山のようにクッキーが詰め込まれていた部屋も一緒に巻き込まれてしまったようだ。


少し離れた廊下の先で、その様子を隠れて見ていた5人の兵士たちは・・・


「想定していたよりも、随分大きな爆発だったな・・・」

「小さいよりはマシじゃね?」

「次は、魔道具の量を調節して、爆弾の温存をしましょう」


そんな会話を交わしていたようだ。


その結果、次に見えた隔壁に対して、兵士たちは・・・


ドォン!


と前回よりも随分と少ない量の爆薬(まどうぐ)を使用したようだ。

どうやら、隣国のエクレリアから仕入れた新しい魔道具は、その大きさの割に、随分な威力で爆発する高性能な爆薬だったらしく・・・半分以下に魔道具の量を減らしたというのに、分厚い隔壁の他にも、その近くにあった何やら『通信室』などと扉に書かれていた部屋も一緒に吹き飛ばしてしまったようである。


「行ける・・・!これならこの船を(おと)せそうっすね!」

「あぁ・・・。これでようやく、先に散っていた仲間たちに、まともな手土産が出来そうだな」

「いや、まだだ!安心するのはまだ早い。安堵するのは、この船を墜してからだ」


やはり想像以上に威力の大きかった爆薬について、そう感想を口にしながら、瓦礫の中を進んでいく兵士たち。


そんな彼らが向かっていた場所は・・・この船の主機(コア)があるだろう部屋であった。

弱いながらも船内から漏れ出る魔力を辿っていけば、この()()()飛行艇には欠かせないはずのコアがある部屋へとたどり着けるのではないか・・・。

彼らはそう考えて、魔神が自らの城のように所有する飛行艇の中を、漏れてくる魔力を目印にして、真っすぐに歩き続けていたようだ。




それから間もなくして、船内で最も多くの魔力が漏れ出ている部屋の前へと到達した兵士たち。

そこで彼らは部屋の中へと足を踏み入れる前に、一旦立ち止まると・・・


「この先にも、別に魔力の発生源がありそうだな。・・・念の為に、ここでグループを2つに分けよう。一つは、この部屋へと突入する班。そしてもう一つはこのまま船内の探索を続ける班だ。2対3でいいだろう」


部屋の扉を開く直前で、リーダーがおもむろにそう口を開いた。


「・・・てっきり、俺1人だけ置いて行かれるのかと思いましたよ」

「何だジョン。お前、実は放置プレーが好きだったのか?」


と、最初に口にした2人に対し、


「では、ジョンとジョセフが2人でタッグを組め」


いつも仲の良い彼らの名前を、リーダーはこれまたいつも通り口にした

・・・ただ今回に限っては、その意味は少々異なっていたのだが・・・。


「・・・まじっすか」

「最後の最後まで、先輩と一緒とかほんとキツイですよ・・・。相方は美女が良かった・・・」


そう言いつつも、手に持った魔道具のチェックを始める2人。

どうやら彼らは、その言葉とは違い、リーダーの人選に対して反論するつもりは無いようだ。


「・・・では、また会おう」

「達者でな」

「短い間だったが楽しかったよ、2人とも・・・。うっ・・・」


「うるせぇ!この期に及んで冗談なんていらねぇから、さっさと行けよ!コリンズ!」

「そうですよ。空気が台無しじゃないですか。そういう演技はいいですから、早く行ってください」


と、最後まで、仲よさ気にやり取りをする5人。

そして、皆、真顔に戻ってお互いに敬礼してから・・・いよいよ、2手に別れたのであった。


「・・・行っちまったな」


「また近いうちに会えるんですから、そう気を落とさなくてもいいじゃないですか」


「お前、見た目よりも強いよな・・・」


廊下の先に歩いていた仲間たちの後ろ姿を視線だけで見送りながら、部屋へと突入する準備を始める2人。

今まで特に警戒すること無く船の中を進んできていた彼らが、わざわざ突入の準備をするほどに、なぜ今になって警戒をし始めたのかというと・・・


「この感じ・・・誰かいますね」


と口にしたジョンと呼ばれた青年の言葉通り、ここまで誰もいなかった船内に、始めて人の気配を感じていたからである。

リーダーが班を2つに分けたのも、最初から部屋の中に人がいることを分かっていて、最悪の事態を考え、パーティーが全滅しないようにするための策だったようだ。

・・・要するに彼ら2人は、捨て駒にされたのである。


とは言え、単なる捨て駒、というわけでもなかった。

この部屋の周囲からは、大きな魔力が発生していたのである。

もしもそれが、この船のコアだとするなら・・・手持ちの魔道具で破壊して、今なお宙に浮いているこの船を墜落させることが、ここまでやってきた元天使たちの本来の目的なのだから、ここを無視する手は無かったのだ。


・・・要するに誰かが、魔王級のバケモノが出てくるかもしれない危険を犯しても、部屋の中にこの船のコアか、それに準ずるものが無いかを確認しなくてはならなかったのである。


「当たりでありますように・・・」


「ちょっ、ジョセフ先輩。先輩が祈るとろくな事にならないんでやめてくださいよ・・・」


「はぁ?いつそんなひどい目にあった?」


「・・・覚えてないくらい、殆ど毎日です・・・」


そう言いながら、爆発する球状の魔道具・・・ではなく、それをエクレリアの商人から購入した際に同時に仕入れた筒状の別の魔道具(?)を、魔法のマントの中にある収納庫の中から、衝撃を与えないように慎重に取り出すジョン。

それから彼は、首元に巻いていたスカーフのようなマスクを口元まで上げると、手にしていた魔道具(?)から安全ピンを引き抜いて、一定時間後に特殊なガスを発生させるソレを部屋の中へと投げ込むために、廊下と部屋を隔てている扉へと近づいた。


そして、彼がその扉を開こうと、少し凹んでいた取っ手に手を触れようとした・・・その瞬間、


ガション!


と、いう音を立てて、他の扉と同じように、勢いよく勝手に開く部屋の扉。

これまでの船内の探索で、自動ドアには慣れていたはずのジョンだったが、極度に緊張していたためか、その音に驚いて・・・


「うひゃっ?!」


カラン・・・


手に持っていたその・・・睡眠グレネードを思わず足元に落としてしまった。

しかし・・・


「(・・・この馬鹿!)」


隣りにいたジョセフが、その缶を部屋の中へと蹴飛ばすことで、事なきを得る。

もう少し遅れていれば、眼の前で睡眠ガスが噴射して、自滅するところだったのだが・・・どうやらこのコンビは、2人でお互いのミスを埋めることに慣れているようだ。


・・・そしてその数秒後、


ガシューッ・・・


と部屋から漏れ出てくる白いガス・・・。

こうして、ジョンとジョセフが開けた部屋・・・医務室に、睡眠ガスが充満することになったのだ。

・・・どうしようかのう・・・。

・・・どういう展開に持って行こうかのう・・・。

・・・まぁ、書けるように書くかのう・・・。

・・・要するに、明日考えるのじゃ・・・zzz。


・・・このまま寝てしまいたいのじゃ・・・。

実は眠いのではなく、頭が痛いのじゃ・・・。

それもこれも、全ては睡眠不足が原因なのじゃろうのう・・・。

1日に18時間は寝ていたいのじゃ・・・。

・・・やっぱり、9時間でいいのじゃ・・・。


なんか最近、妾の存在が、zzzな狐になってしまっておるような気がするのじゃ。

そろそろ、妾の存在についても、いのべーしょんを起こすべき時なのかもしれぬのう・・・。

・・・うむ。

無理じゃの。


まぁ、前置きはこんなところで、補足に入るのじゃ。

・・・いやの?

実は、いくつか書き忘れておったことがあって、ちょっと後悔しておるということを書いておこうと思うのじゃ。

例えば、前回の話で、『・・・これだけ大きな船なのに、誰も居ない・・・のじゃ』と元天使たちに言わせようと思っておったのじゃが、すっかり忘れておったのじゃ。

他にも・・・何かあったような・・・。

・・・頭が回らぬから、思い出せぬのじゃ。

何れにしても、後で書いてないことを思い出して・・・追記出来ずに後悔しておる今日このごろなのじゃ。

まぁ、その内にあるかもしれない大修正の時にでも、追記しておくのじゃ。

・・・その時に覚えておったらの。


というわけで、体力と精神的な限界を迎えた故、今日はこの辺でお開きなのじゃ。


次回、『ユキ爆散』乞うご期待!なのじゃ。

・・・え?生存フラグ?

妾の書く物語は基本カオスゆえ、ルールには縛られないのじゃ?

じゃから、突然、ユキ殿やイブ嬢が爆発する可能性も・・・ゼロではないのじゃぞ?

・・・それ相応の理由は必要じゃがの。

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