7.3-06 反逆者6
正体不明の訪問者がやってきて、ワルツたちが作戦を開始してから・・・。
彼女たちがやってきた者たちに対して、そのまま返事をしないでいると・・・
ガチャッ・・・
扉の隙間から部屋の中を伺うようにして、兵士の格好をした男性が覗き込んできた。
そんな彼の眼には・・・
zzz・・・
と寝込む仲間たちと、
「zzz〜・・・」
「zzz・・・」
と同じように寝込む(?)コルテックスと、狸寝入りをするストレラの姿が映っていたようである。
・・・そのせいか、
「ストレラ様・・・?」
と、一同が寝ているか試すような色を含ませた声を、覗き込んだ会議室の中に対して投げかける兵士(?)。
「・・・・・・」
それから彼は・・・どういうわけか、何も言わず、そして何もせずに、部屋の外へと消えていった・・・。
「・・・あれ?おかしいわね?」
「いや、いきなり犯行には及ばないんじゃないか?」
「・・・なんか、こうしたシチュエーションを良く知ってる、って感じね?アトラス」
「そりゃ・・・まぁ・・・コルテックスに扱き使われていると、色々あるんだよ」
と、兵士(?)が消えた後の部屋の中で、ホログラムで景色に溶け込みながら、そんなやり取りをするワルツとアトラス。
そんな彼女たちが、一体どんな作戦に出たのかというと・・・眠ってしまった仲間たちを囮にして、不審者(?)を一網打尽にするつもりで、2手に別れることにしたのである。
今回の場合は、捕まえる側がワルツとアトラスで、潜入する側がストレラとコルテックスの予定である。
・・・尤も、寝たふりをしているコルテックスに、協力するつもりは無さそうだが・・・。
「・・・この後、どうなると思う?」
と、突っ伏していた机から起き上がって、2人に問いかけるストレラ。
そんな彼女に対して、アトラスは、腕を組んで考えこむような素振りを見せながら答えた。
「パターンで考えるなら、その内、仲間と共に戻ってきて、みんなのことを誘拐するか、この場でサクッと殺害するんじゃね?」
「・・・もしも後者だとして、いきなり刃物や魔法で襲いかかってくるとすれば面倒ね・・・。大丈夫だとは思うけど、みんなが怪我する危険もゼロではないわけだし・・・」
「一人だけ捕まえて、カタリナ姉に引き渡して拷問するって手もあるだろうけど・・・カタリナ姉、今、忙しいだろうしな・・・」
そう口にしながら・・・試験官の中に入れた拷問用の寄生虫(?)に対して、心底、嬉しそうな表情を見せていたカタリナの表情を思い出して、嫌そうな表情を浮かべるアトラス。
ストレラの方も、承服し難そうな表情を浮かべていたところを見ると・・・一部、同情すべき余地のある元天使たちに対して、そこまでする必要はあるのか、と悩んでいるようである。
・・・ただ、今もなお机に突っ伏していたコルテックスの方は、片手だけを上げて、シッシッ、とやっていたので・・・面倒だから強制的に天使たちを『処理』してしまえばいいのに・・・と考えているようだ。
そんな、二分する意見(?)の中、ホムンクルスたちを事実上取り仕切っているワルツが採った選択は・・・
「ま、面白そうだから、しばらく様子見で良いんじゃない?まだ、どうするかを決めなきゃいけない、って段階なわけでもないわけだしね」
という、文字通りどっちつかずのものであった。
優柔不断な彼女らしい選択と言えるだろうか。
そんなワルツの提案に、
「んー、まぁ、それもそうね」
「確かに、危機的状況に陥っても、俺たちがここにいる以上、いくらでもどうとでもなりそうだしな」
「zzz〜・・・」
と、同意する3人(?)。
そんな折、
コンコンコン・・・
再び、ドアをノックする音が聞こえてきた。
「ふーん、今度は1人じゃなくて・・・5人いるみたいね」
と、生体反応センサーに映る人影を確認しながら呟くワルツ。
すると、囮班であるストレラとコルテックスは・・・
「そう。じゃぁ、姉さんたち?なんかあった時は頼むわね」
「zzz〜・・・」
そんな言葉を残して、再び机に突っ伏し始めた。
「さて・・・私たちも隠れるわよ?」
「・・・最初からホログラムは解いてないけどな・・・」
そう言葉を交わしてから、再び気配を消し、やってきた『客人たち』を招き入れる準備をするワルツとアトラス。
その直後、
ガチャッ・・・
再び部屋の扉が開かれる。
「ストレラ様・・・?あれ?寝てる・・・」
「確かに・・・」
「どうする・・・?」
「どうするって言ってもなぁ・・・寝てるところを邪魔すると、後が怖いしな・・・」
「・・・やはり、見なかったことにするしか無いのでは?」
「仕方ない・・・。小屋から逃げ出したポチ様方は、俺たちが探しに行くしか無いか・・・」
「どうせ、食料庫だろ?」
「あいつら、見た目とは違って大飯喰らいだからな・・・」
ガチャッ・・・
そして、再び部屋の中へと静寂が戻ってきた・・・。
「・・・ねえ、ストレラ?」
「・・・皆まで言わずとも分かってるわ・・・」
そしてストレラは、机に突っ伏したまま・・・ポチの保護者としての監督責任(?)を感じたのか、痛む頭を両腕で抱え始めた・・・。
ワルツは、そんなストレラに生暖かい視線を向けると、隣りにいたアトラスに対し、言葉を投げかける。
「今回やってきた人たちは・・・元天使とは違う人たちだったみたいね?」
「緊張させやがって・・・。って、まさかと思うけど、みんなが寝たのって、ただ疲れて眠ってるだけ、とか無いよな?実は俺たちが過剰反応してるだけとか・・・」
「イブとか飛竜とかシラヌイの場合は否定は出来ないけど・・・流石にエルメスが倒れるように眠ったのは、普通じゃ・・・・・・って、もしかして、過労死?」
「いや、死んでねぇし・・・・・・多分な」
床に倒れこんでいるために死んでいるように見えるものの、実際にはただ寝ているだけのエルメス。
それを知っていたアトラスだったが・・・しかし、心配になったのか、彼がエルメスの脈を確認するために、彼女の側へと寄ろうとした・・・そんな時である。
ガチャッ!
ノックもなく、部屋の扉が急に開いたのだ。
「?!」
その音に、思わず身体を硬直させるアトラス。
・・・しかし幸いな事に、彼はワルツのホログラムの圏内にいたために、その姿を来訪者に見られることは無かったようだ。
ただし、少しでも動けば、物音で気づかれる可能性は否定出来ないが・・・。
・・・そんなこんなで。
頭を両手で押さえながら机に突っ伏すストレラと、中腰の状態で右手をエルメスに差し出しながらその場で固まっているアトラスのいる空間へと・・・
「・・・ふん。これは一石二鳥だな」
「紛い物の娘と侵略者か・・・。で、どれがワルツとか言う奴なんだ?」
「さぁな?少女の見た目をしてるって話だが・・・こう多いとな・・・」
そんなやり取りをする3人の兵士たちがやってきた。
内、1人は最初にこの部屋の様子を見に来た兵士で、残り2人は初めてやってくる兵士である。
どうやら、彼らが反逆者、ということらしい。
「だが、大人しく寝ているようなら、どれが誰でも計画に支障はない」
「・・・だな」
「さて、中身は確認できたんだ。さっさとずらかるか・・・」
それだけ言ってから・・・
ガチャッ・・・
・・・何故か、やはり何もせずに、その場をソソクサと後にする男たち。
どうやら彼らにも、何らかの計画があるようだが・・・その内容を今の話から推測するには、少々、情報が足りなすぎるようだ。
それはそうと・・・
「・・・私の名前、この国でも轟いてるのね・・・」
と、呟きながら、ホログラムの身体を表示していないために、機動装甲の頭を抱えるワルツ。
それから彼女が、
「もう、いっそのこと、ど田舎の奥深くに移り住もうかしら・・・現代世界でそうだったように・・・」
などと呟いていると、それを聞いていたアトラスが、しばらく変な体制を維持していたために凝り固まりそうだった身体の筋肉を伸ばしながら指摘した。
「姉貴・・・。正直言うけど・・・それ無理じゃね?アルクの村で、同じような状況だったんだろ?田舎に移り住んでも、結局、国を乗っ取って、好き放題やるような気がするけどな・・・」
「やっぱそうかしらね・・・。機動装甲の修復のために、工房を作ったり、食料をかき集めたりしていると、どうしても、お金が必要になったりするのよね・・・」
と兵士とは全く関係のない話を交わすワルツとアトラス。
すると、机に突っ伏しながら頭を抱えていたストレラが、頭に手を当てたまま上体を起こすと、2人にジト目を向けながら口を開いた。
「って、そんな事はどうでもいいのよ。今は、あいつらをどうにかする方法を考えるべきじゃないかしら?口調から推測すると、何か計画が進行していて・・・それでいて、ここには戻ってこないような感じだったじゃない?この際、追いかけて捕まえたほうがいいんじゃないの?」
「もう一回くらいなら来てもおかしくない気がするんだけどな・・・。でも確かに、戻ってこないようなの口ぶりだったかもしれないな」
と、ワルツのホログラムの隠れ蓑の中で、腕を組みながら首を傾げるアトラス。
ワルツもそれには同意見だったようで・・・
「追いかけるのは・・・確かに賛成ね。でも一体、どんな計画なのかしらね?」
彼女は、アトラスと同じように、頭を傾げた。
「誘拐でもなく、殺害でもない・・・なら、何だ?社会的な抹殺か?」
「なにそれ・・・もしかしてストレラか誰かが、あられもない姿を盗撮されたとか?」
「いや、それは無いわよ・・・・・・多分だけど・・・」
と、それぞれに意見を口にするアトラス、ワルツ、ストレラ。
それから少しの間、3人が頭を悩ませていると・・・それまで寝ていた(?)コルテックスが、何かを感じ取ったのか、銀色の髪と同じ色の獣耳を、ピクッと動かしながら身体を起こして・・・そして、こんなことを口にしたのである。
「では、カウントダウン行きますね〜。1〜・・・」
・・・その瞬間、
ドゴォォォォン!!
と、吹き飛ぶ会議室の壁と扉と天井と床材・・・。
どうやら、反逆者たちは、爆発する魔法か魔道具のようなものを使って、寝ている仲間たちを、会議室ごと吹き飛ばそうとしていたようである・・・。
最近思うのじゃ。
・・・爆発成分が足りないと。
要するに、戦闘回がもう少し多くても良いのではないか、と思う今日このごろなのじゃ。
じゃがの・・・。
ホムンクルスたち&ワルツが戦闘して、まともな戦闘が繰り広げられるようには思えないのじゃ。
じゃから・・・ちょっと趣向を変えてみようと思うのじゃ?
・・・結局、いつも通りの駄文かもしれぬがの?
それはそうと、なのじゃ。
・・・眠いのじゃ・・・。
いつもは帰宅してから仮眠して・・・それから書くのじゃが、今日は仮眠せずに書いておるのじゃ。
じゃから、頭がボーっとして、自分でも何を書いておるか分からなく・・・は、なっておらぬつもりじゃが、読みにくい箇所があるという点については否定できぬかもしれぬのじゃ・・・。
・・・まぁ、読みにくいのはいつも通りじゃがの。
さて。
駄文はこんなところで打ち切って・・・補足に入ろうかのう?
・・・って言っても、特に無いのじゃがの?
あるとすれば・・・2番目にやってきた者たちが何者だったのか、という点かのう?
端的に言ってしまえば、普通の兵士たちだったのじゃ。
そんな彼らが、ストレラのところへと何をしに来たのかというと・・・ポチ嬢たちが何処かへといなくなってしまった旨を報告しに来たのじゃ。
元がケルベロスである彼女たちは、変身して人の姿になっておったとしても、一般市民からすると化物であることは変わらぬ事実じゃったから、普段は兵士たちかストレラたちが監視しておるのじゃが・・・それがいなくなってしまったのじゃから、大変な騒ぎになってしまった、というわけなのじゃ。
一体彼女たちがどこへと姿を消したのか・・・。
乞うご期待!なのじゃ?
・・・期待するほどのことでもないがの。
ま、今日はこんな所かのう?
・・・次回、『気づいたらお花畑だったかもだし〜』乞うご期待!なのじゃ?
・・・こうしてイブ嬢は、空の上に架かる川を渡りましたとさ?なのじゃ。




