7.2-20 再々訪アルクの村7
工房の(魔力的な)大掃除を終えて、狩人と合流した後、再びエネルギア本体へと戻ってきたワルツたち一行。
それから彼女たちが艦橋へ入ると、そこにはいち早く戻ってきていたコルテックスたちの姿があった・・・。
「・・・そんなわけで、なんかよく分かんない赤い玉が、地下工房に浮いてたらしいのよ。1個だけだったみたいだけど・・・」
「そうですか〜。本当によく分かりませんね〜。・・・最初から説明してください」
「・・・・・・うん」
いつも通りに説明を端折ろうとして・・・しかし、いつも通りコルテックスにダメ出しされてしまうワルツ。
そんな365日、毎日続けていそうなやり取りをしてから、改めて事の経緯を(イブとシラヌイと飛竜が)説明した後・・・。
「そうでしたか〜。では、覗き見する悪い輩を捕まえて、死刑にしなくてはいけませんね〜。ね〜?アトラス〜?」
コルテックスは、実は自身の私生活(?)も覗かれているのではないか、と思ったのか、にっこり・・・と暗い笑みを浮かべながら、アトラスに対して視線を向けた。
「た、確かに捕まえないと・・・って俺がかよ!」
いい加減、自分でどうにかしたらどうなんだ・・・などと思いながらも、しかし口には出さずに飲み込むアトラス・・・。
その後で、眉を顰めながらムスッとしてしまった彼に対して話しかけたのは・・・何やら落ち着きなく、困ったような表情を浮かべたシラヌイであった。
「あ、あの、アトラスさん!私もその犯人探しを手伝いますよ?」
「えっ・・・そ、そうか?」
普段から、何かと接する機会の多いシラヌイだったが、こういった話題に首を突っ込んでくること事は珍しかったためか、内心で驚くアトラス。
すると、シラヌイとは別にもう一人、おもむろに口を開く。
「ふむ・・・なれば、我も協力しよう。球体が見えるのは、今のところ、我だけのようだからな」
今回、その球体を最初に発見した飛竜である。
先程まで、ワルツから色々と知識を聞いていたは良いが、何かを受け取るだけでなく、パーティーの活動に自身も貢献できないか、と考えたらしい。
「そ、そうだな・・・」
アトラスは、急に2人の少女たち(?)から、同時に協力の打診が来たことで、少々困惑気味の表情を浮かべているようであった。
・・・まぁ、その困惑の99%が、隣りにいた妹の浮かべる笑みに起因するものだったようだが・・・。
むしろ、100%の困惑に対して、9900%のプレッシャーが加わった、と言うべきか・・・。
それから彼が、自身に向かって言い知れぬ笑みを浮かべているコルテックスに対して、チラッチラッとその表情を伺うような素振りを見せていると・・・
「私のことは気にしなくても良いのですよ〜?アトラス〜?」
彼女は・・・どういうわけか、含みの無さそうな純粋な微笑みをアトラスへ向けながら、そんな言葉を口にした。
「(う、うわぁ・・・逆に怖ぇよ・・・)」
なんということはない単なる笑みのはずなのに、それが逆に、嵐の前の静けさのように恐ろしいものに見えたためか・・・彼はコルテックスから、フッとそのまま視線をずらして、そのまま見なかったことにするのであった・・・。
それから彼は、その見えないプレッシャーをどうにか頭の片隅へ押しやると、協力を打診してきた2人に対して返答を口にした。
「・・・な、なら、王都に戻ったら、2人には早速手伝いをしてもらうってことでいいか?」
「はいっ!」
「うむ!」
アトラスの言葉に、元気よく頷くシラヌイと飛竜。
・・・すると当然と言うべきか、
「えっ・・・じゃぁ、私も協力しなきゃダメかも?」
・・・セットでイブも付いて来たようだ。
コルテックスとシラヌイと、そして飛竜と・・・なぜかイブの間で(?)、火花ともオーラとも魔力とも言えない、何か表現しがたい雰囲気が立ち込めていたその背後では・・・
「・・・剣士。・・・お前、ソレどこで手に入れたんだ?」
・・・狩人が、妙にスタイリッシュな真っ黒い鎧を来た剣士に対して、憧れのような色を含んだ視線を向けながら、そんな質問を口にしていた。
その表情を見る限り、自分も欲しい・・・、と思っているのは間違いないだろう・・・。
「姐さん・・・実は、この鎧・・・」
剣士が、その漆黒の鎧が何で作られているのかを口にしようとした・・・そんな時である。
『狩人さんには、ビクトールさんは渡さないんだから!』
鎧を形作っていたエネルギアが、擬態を解くと、ボロ雑巾のようになってしまった服を身体に身につけた剣士に抱きついた状態で、人型へとその姿を戻したのである
「・・・・・・え?」
その様子を見て、狩人が一体どんな表情を浮かべていたのかについては・・・まぁ、言わなくても分かるだろう。
『ねー?ビクトールさん?』
「それ、コルテックス様のマネか?そもそも俺は、モノじゃないぞ?」
『モノでも、人でも、関係ないもん!ビクトールさんは、私だけのものなんだから!』
「・・・・・・(どうしてこうなったんだ・・・?)」
一体どういった理由があって、エネルギアは自身に対して好意を寄せているのか・・・。
そして何故、ミリマシンで出来た彼女に力いっぱい抱きつかれても、彼女の重さを感じることもなければ、身体が苦しくなることも無いのか・・・。
その前者の原因が何なのかはともかくとして、剣士は後者の原因を確かめるために、近くにいたワルツに対して恐る恐る問いかけた。
「・・・なぁ、ワルツ殿。一つ聞きたいんだが・・・俺の身体に何かしたか?」
『・・・え?』
「・・・え?」
剣士が急に何を言い出したのか解らなかったためか、思わず聞き返してしまうエネルギアと狩人。
その言葉には、いくつかの解釈が存在したようで、彼女たちはそれぞれに違う意味で捉えたようだ。
それから2人と剣士は、その視線に色々な意味を含めながら、ワルツへと視線を集中させたのだが・・・
「・・・・・・え?」
剣士の予想とは違い、彼女も、先の2人と同じような反応を見せていた。
「・・・何かしたっけ?」
「いや・・・例えば、50メートルほど吹き飛ばされても死ななくなるような・・・人体改造とか」
「そんなことした覚えはないわよ・・・。もしかして、そのボロボロの服・・・ホントに50メートル吹き飛ばされたの?」
「あぁ、すまない。借りてた服なのに・・・。コルテックス様にちょっと・・・な」
(いやいや、生身の人間なんだから、普通死ぬでしょ?)
と、コルテックスの横暴に頭を抱えるワルツ。
それはともかくとして、どうやらワルツは、剣士の身体に起った出来事については把握していないようだ。
それから彼女が、コルテックスに向かって、チラッと視線を向けると・・・
「・・・・・・」ニッコリ
と、コルテックスは何やら意味深げな笑みを、ワルツと・・・そしてどういうわけかエネルギアへと向けていた。
(あの娘、剣士に何したのよ・・・って、コルテックスがどうにかできるような暇は無かったはずよね・・・。なら、カタリナに改造してもらうように頼んだとか?・・・いえ、カタリナが私に無断でそんなことするはず無いし・・・どういうことかしら?)
コルテックスのその笑みの理由が、一体どういった意味を含んでいたのかを考えるワルツだったが・・・
(・・・ま、いっか)
結局、いつも通り、大した問題ではなかったので、深く考えることを止めるのであった・・・。
「ま、別にいいんじゃない?私はよく分かんないけど、困るようなことはないんでしょ?何か困るようなことがあれば、相談に乗るけど・・・」
「困ることはないが・・・できれば事前に相談して欲しかったな・・・」
(いや、だから、私は知らない・・・って言っても、信じてもらえないわよね・・・。きっと)
弁明したところで、なんとなく墓穴を掘ってしまうような気がして、それ以上反論することを諦めたワルツ。
「そう・・・。それは申し訳ないことをしたわね。なんか身体に異常が出たらあったら言ってちょうだい?カタリナに元に戻すように言っておくから」
コルテックスにも何か考えがあって、剣士に黙って処置を行った(?)ようなので、ワルツはこの件をそのまま自身の行いとして処理することにしたのであった・・・。
「・・・さてと・・・」
ワルツは、単に村に立ち寄っただけなのに、色々面倒なことが起ったわね・・・、などと考えながら、艦長席に腰を下ろすと、艦橋にいた者たちへと次のスケジュールを告げた。
「次の目的地に移動するわよ?」
「つ、次の目的地?」
ワルツに対して・・・疲れた切ったような表情を浮かべながら、逆に問いかけるイブ。
朝から迷宮のような地下空間に閉じ込められ、昼はネズミに襲われて、夜は酒場で面倒な女騎士に絡まれた後で、ワルツ宅の見学をしたのである。
まだ幼い彼女にとっては、大変なハードスケジュール(?)だったのだろう。
そんなイブ対して、ワルツは苦笑しながら簡単に目的地の説明を口にした。
「次はね、メルクリオ暫定王国の首都カロリスにある王城。・・・今日の宿ね」
「王城がホテルって・・・」
「色々あったのよ・・・話が長くなるから説明しないけど・・・」
「・・・・・・」
・・・やはり、いつも通り、説明が面倒そうなワルツに対して、ジト目を向けながら呆れたような表情を浮かべるイブと・・・そしてその会話を聞いていた、事情を知らない他の仲間たち。
その後で、皆、申し合わせたように、一斉に悲しそうな表情を浮かべて・・・その表情が作り出すプレッシャーに耐えられなかったワルツに、結果としてメルクリオでの出来事を無理やり説明させたのは・・・やはり、裏であらかじめ申し合わせていたから、ということなのだろうか・・・。
・・・ともあれ。
こうしてワルツたちは、いつの間にか発展していたアルクの街を離れて、山と湖に囲まれた国メルクリオのその王城へと、空中戦艦エネルギアを離陸させたのであった・・・。
・・・ウハウハな狐なのじゃ。
何がウハウハかって・・・読みにくい自分の文が書いても書いても全く改善しないことに、思わず失笑を禁じ得n(ry
というわけで・・・疲れたのじゃ・・・。
ここいらで妾の一日のスケジュールを自慢したいくらいに疲れたのじゃ・・・。
でも書くと、サイドストーリーの方が破綻する故、書かぬのじゃ・・・。
まぁ、要するに、忙しいということじゃの。
で、今日も補足は省略させてもらう・・・つもりだったのじゃが、アトラスを取り巻く少女たちの流れが徐々に明らかになってきた(?)故、その辺にちょっとだけ触れておこうと思うのじゃ。
前に、『アトラスに対して特別な視線を云々』と言う話をしたと思うのじゃが、それの続きなのじゃ?
・・・アトラスに特別な思いを抱いているのは、シラヌイ殿か・・・それとも、まさかの飛竜か・・・。
大穴でイブ嬢という可能性も否定はできぬがの?
その話は、別に立ち消えになったわけではないのじゃぞ?
材料とタイミングが揃うのを待っておるところなのじゃ。
この辺をどうにか展開させていきたいところなのじゃが・・・実際に触れるのは、8章の予定なのじゃ?
要するに、実時間で3ヶ月後くらい、ということかのう。
その前に、とても重要な登場人物を1名出さねばならぬのじゃ。
奴を出さねば・・・サイドストーリーも進められぬからのう・・・。
そんな感じで、補足になっておらぬ駄文を書いて、今日のあとがきは終わりなのじゃ。
・・・次回、『犬小屋で野宿かもだし?!』乞うご期待!なのじゃ?
・・・イブ嬢なら・・・うむ・・・どうにかなるのではなかろうかのう?




