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7.2-17 ダブルデート4

「〜〜〜♪」


「大丈夫か・・・?」


鼻歌交じりに道を黙々と歩いて行くコルテックス。

その後ろを付いて歩いていたアトラスは、嬉しそうに尻尾をブンブンと振っている彼女の姿を眺めながら、そう呟かずにはいられなかった・・・。


何故なら、彼女が向かっていた先には町並は無く・・・もっと言えば、道さえ無かったからである。

道無き道を進む・・・そんな言葉がぴったりと合うような状況だったのだ。

デートのプランとしては、さっそく破綻している、と言っても過言だろう。


「な〜んにも心配することはないですよ〜?」


「・・・・・・(し、心配だ・・・)」


暗闇に向かって魔法で作り出した灯火(ともしび)を振り回しながら、まるで詐欺師が使うような常套文句を口にするコルテックスに対して、思わず頭を抱えてしまう小心者のアトラス。


そんな彼らの後ろからは・・・


『〜〜〜♪』


どこかの誰かと同じように、嬉しそうに鼻歌を口ずさむ剣士・・・ではなく、鼻歌を口ずさむエネルギアを装備(?)した剣士が、これまたどこかの誰かと同じような()()()の表情を浮かべながら、コルテックスたちに付かず離れずついて来ていた。


「・・・エネルギア?随分、楽しそうだな?」


『うん!』


剣士の問いかけに、ナノマシンを振動させて声を作り、素直に肯定するエネルギア。

どうやら彼女にとっては、近くに剣士さえ居れば、街の中でなくとも満足したデートが出来るらしい・・・。


・・・その一方で。

先の通り、そんな嬉しそうな女性陣とは対照的に、剣士もアトラスも、その表情は優れなかった。

どうやら、コルテックスがどこへ向かおうとしているのか分からないことが心配だったらしく、このまま道無き道を歩き続けて・・・そして単に迷って時間が無くなって、何もできずに終わってしまうのではないか、などと懸念していたようだ。


「・・・・・・(どこに向かってるんだ?)」

「・・・・・・(道に迷ってたりしないよな?)」


真っ暗な夜道(獣道)を喜々として歩き続けていたコルテックスの後ろから、心配そうな視線を向ける2人。


するとそんな折、彼女が、ふと立ち止まった。


「・・・?」

「・・・?」


特に何かあるわけではない、森の中。

あるものは、大きな木々と、腰くらいの高さの草と、そして3人(?)のことを吸い込んでしまいそうな真っ暗闇だけだったのだが・・・。


コルテックスは、その場でクルッと踵を返すと、後ろにいた仲間たちの方へと振り返って・・・男性陣2人が心配していた通り、こんなことを口にした。


「道に迷いました〜」ニッコリ


「・・・・・・はぁ・・・・・・」

「・・・・・・はぁ・・・・・・」


いつも通りの柔和な笑みを浮かべながら、そう口にするコルテックスを前に、吐いた息以上の何かを口から出しながら、大きな溜息を吐く、剣士とアトラス。


そんな彼らに対して、コルテックスは・・・どういうわけか、クスッ、っと小さく微笑んでから、言葉を続けた。


「・・・冗談ですよ〜?これは〜・・・私からエネルギアちゃんに対してのお詫びみたいなものです。それでは皆さん?楽しんでください」


彼女はそう口にすると・・・どういうわけか、指の先で光らせていた魔法の灯火を、そっと消したのである・・・。




・・・そして、急に真っ暗になってしまった辺りの景色。

そんな暗闇の中で、剣士は、コルテックスの言葉の真意が理解できなかったためか、怪訝な表情を浮かべていた。


「・・・一体、何を楽しめばいいんだ?」


そう思っていたのは、どうやらアトラスも同じだったようで、彼も似たような表情を浮かべながら、剣士に対して言葉を返す。


「・・・やっぱ、暗闇じゃね?」


「暗闇をどう楽しめと?」


「大都市とかなら、夜でも星が見えないくらいに明るくて・・・そういったところだと、星空を求めて暗い場所へと人が集まって、それで空を眺める、っていう話はよくあるけどな・・・」


そう口にしながら、空を見上げるアトラス。

しかしそこには、満天の星空・・・の手前に、木の葉があって、その向こう側を拝むことは難しそうであった。

・・・尤も、夜半を過ぎないと、夜空を煌々と照らす大きな月が地平線の向こう側に沈まないので、今の時間を考えるなら、どの道、星空を望むことはできないのだが・・・。


「あー、つまりあれか。周囲の木を切って、空が見せるようにしてから、夜空を楽しめばいいんだな?」


「いや、それはないだろ・・・」


2人が、暗闇をどうやって楽しめばいいのか、半ば本気で考え初めて・・・そして、コルテックスに対して真意を問いかけようとした・・・そんな時であった。


『あ・・・』


暗闇の中でも感じられていた剣士の温もりを確かめながら、見えない夜空ではなく周囲の木々に視線(カメラ)を向けていたエネルギアが、何に気づいた様子でそんな小さな声を上げたのである。


「ん?どうした?」


周囲から聞こえてくる虫の鳴き声よりも、はっきりと耳に届いてきた彼女のその声を聞いて、その理由を問いかける剣士。


するとエネルギアは、見えた光景を説明する適切な言葉が浮かんでこなかったのか、表現に困るような口ぶりで言葉を返す。


『えっとねー、光が走ったの』


「・・・?」


そんな彼女の言葉を聞いて、剣士は辺りを見回した。

・・・しかし、彼には、エネルギアの言っていた『光』を見つけることができなかったようで、眉間にしわを作りながら首を傾げてしまう。


その直後、再びエネルギアが声を上げた。


『あ、ほら、また!』


そう言って、鎧の姿を解き、再び人の形に姿を戻ると、その光が見えた方向へと指をさすエネルギア。


『ほら、あそこ!』


「・・・すまない、エネルギア。何も見えない・・・」


だが、そもそも真っ黒な姿だったために闇に溶け込んでいた彼女の手が、一般的な人間と同じ感度しか持たない剣士の眼には見えなかったらしく、彼は仕方なく、エネルギアの声が聞こえた方向へとその視線を向けた。


それでも剣士には、エネルギアの姿を含めて、彼女の手の先も見ることはできなかったが・・・それ以外の何かが、彼の眼にも映り込んできたようだ。


「・・・ん?」


黄色とも、緑色とも言えない、小さな光点・・・。

そんな(かす)かな光の点が、明滅しながら、木々の隙間を飛んでいった姿が見えたのだ。


「光虫か・・・」


この世界の住人で、勇者たちと共に旅をしていた剣士には、光が見えた瞬間、その正体が分かったらしく、小さな光を見つめながら、そんな言葉を口にした。


すると、剣士とは違って、知識に乏しかったエネルギアは、思わず彼に聞き返す。


『こうちゅう?』


「そう、光虫。光る虫のことだ」


『虫なの?』


「あぁ。大抵の場合は、小指の先よりも小さい、か弱い虫だな。一年でも、一時期しか見ることのできない特別な虫のはずなんだが・・・」


そう言って、コルテックスがいるだろう方向へと、その視線を向ける剣士。


するとコルテックスは、彼の視線と、その言葉の副音声に含まれていた自身に対する問いかけの内容を感じ取って、返答を口にした。


「・・・何のために、この時期を狙って、休暇を取ったと思っているのですか〜?この国の全ては調査済みなのです。だ〜か〜ら〜、言ったのですよ〜?デートなら、この私に任せてくださいと〜」


そう言って・・・何故か、小さな風魔法を行使するコルテックス。

左手で風魔法を行使した彼女は、右手で違う魔法を行使して・・・集まってきた空気に対し、魔法で何らかの操作を行ってから、周囲の空間へとその空気を放出した。


・・・その瞬間である。


ブワッ!


まるで、光り輝く小さな星々を手のひらからこぼしたかのように、コルテックスを中心に小さな光の粒が広まっていったのである・・・。

もちろん、その光の一つ一つは本物の星ではなく、先ほどエネルギアと剣士が見つけた小さな光虫の・・・その群れであった。

最初、彼らは全く光っていなかったのだが、コルテックスが魔法を使った直後から一斉に光りだしたところを見ると・・・つまり、彼女は、光虫たちの群れを輝かせる文字通りの『魔法』を行使した、ということなのだろう。


『コルちゃん、すごい・・・』


「ふっふっふ〜。この程度、どうってことはないですよ〜?あ、でも、火は使わないでくださいね〜?ルシフェリンの反応を活性化するために、周囲の酸素濃度をちょっと上げてましたから〜。爆発することはないと思いますが、多分、大変なことになってしまうはずですからね〜」


と、注意喚起を口にするコルテックス。


・・・しかし、周囲の景色に見とれていたエネルギアに届くことはなかったようで、彼女は剣士の手を掴みながら、嬉しそうに光の絨毯の中を歩き回っていた。


『ビクトールさん!これ光ってるのに熱くないよ?』


「あぁ・・・。しかし、すごいな・・・」


先程までの戸惑いの表情はどこへ行ったのか・・・。

剣士も、エネルギアに手を引かれながら、その光景に純粋に関心していたようである。


そんな2人の様子に眼を向けつつ・・・コルテックスの隣に立っていたアトラスは、同じく2人を微笑ましく眺めていた妹に対して、小さな声で問いかけた。


「・・・ホタルの季節って話。あれ、ここに来る前に調べたものじゃないだろ?」


「・・・さぁ、どうでしょうか〜?」ニッコリ


「・・・俺が知らないってことは、お前も知らない・・・・・・まぁ、いいや」


調べてここに来たにしても、そうでなかったにしても、結果としてエネルギアと剣士が喜んでいるようなので、アトラスはそれ以上、詮索しないことにしたようだ。


それから彼も、そしてコルテックスも、浮かれるエネルギアたちが光虫に飽きるまでの間、小さな光りに包まれたその景色を、静かに堪能することにしたのであった・・・。

もう・・・辛すぎなのじゃ・・・。

しかも明日は、なお辛い・・・。

か、書けるのじゃろうか・・・。


というわけで、あとがきは今日も省略させてもらうのじゃ。

ご了承くださいなのじゃ。


・・・次回、『え?シラヌイちゃんが、ホタル装備作りたいから、火を起こs ドゴォォォォン!!』乞うご期待!なのじゃ?

・・・そんな展開が完全には否定出来ない今日このごろ、なのじゃ。

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