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7.2-11 再々訪アルクの村2

3割いのべーしょんしたのじゃ〜?・・・多分の。

村を取り囲むように茂っていた小さな森。

そこにあった、まるで円形脱毛症のように木が生えていない場所へとエネルギアを着陸させて、皆で下船して・・・


「どこだここ・・・?」


・・・そして船から降りたところで、意識を取り戻したばかりの剣士は、未だ混乱しているのか、首をかしげながらその場に立ちすくんだ。


「え?森?」


「そりゃ・・・確かに森だろうよ・・・」


見たままの景色を口にするだけのワルツに、眉を顰めながら、呆れたように呟く剣士。


「ここが何ていう名前の場所なのか聞きたかったんだが・・・」


「・・・あれ?前に、メルクリオにいる神だかなんだかよく分からないのを倒しに行く途中で、一度、剣士たちも立ち寄ったことがあるんだけど・・・覚えてないの?」


「・・・・・・あぁ。少なくとも、空から見た感じでは、あんな()を見た覚えは無いな・・・」


まるで、ボケたのか?、と言わんばかりのワルツの問いかけを受けても、しかし、本当に思い出せないようで、剣士は腕を組みながら考えこんだ。


すると、今なお、まるで瞬間接着剤で固定したかのように彼にくっついて離れなかったエネルギアが、嬉しそうな笑みを浮かべながら、その口を開いた。


『えっとー、《(アク)の村》だよ?』


「・・・その村、立ち寄りたくないわ・・・」


村の名前から『ル』が抜け落ちていたエネルギアに対して、ジト目を向けるワルツ。

それからワルツは、剣士に対して、改めてその村・・・だった場所の名前を口にした。


「・・・アルクの村よ?ま、今じゃ・・・村ではなくなってるみたいだけど・・・」


「・・・え」


ワルツの言葉を聞いて、口の形を『え』にしたまま固まる剣士。


「・・・そんなに驚くことかしら?」


剣士の反応が意外だったためか、ワルツはその理由を問いかけた。


すると、案の定、剣士はワルツの予想とは違う理由で驚いていたらしく、彼は、自分の顔が少々間の抜けた様な表情になっていたことに気づいて、誤魔化すように首を振ってから、固まっていたその原因を口にした。


「・・・お、俺のこと、サウスフォートレスに置いていってくれるんだよな?」


と、意識を失う直前までいた町の名前を口にする剣士。

位置関係から考えると、王都-アルクの村-サウスフォートレスと並んでいるので、このままだと、サウスフォートレスへは連れて行って貰えないかも知れない・・・そんな懸念を持ったようだ。


「そういえば、勇者にも、賢者にも、断りなく貴方を連れてきたんだったわね・・・」


「ちょっ・・・」


剣士は、突然姿を消してしまった自分ことを、今頃必死になって探しているだろう仲間たちのことを思って、思わず頭を抱えてしまった。

そんな彼に対して、ワルツは溜息を吐きながら、トドメを刺すように言葉を続ける。


「ま、大丈夫じゃない?この村からサウスフォートレスまで歩く3日間くらい、待っててくれるわよ・・・きっと」


「あ、歩けと?!」


全く送る気のないワルツの様子に、まじかー・・・、と彼が頭を抱えていると、横でその会話を聞いていたエネルギアが、顔を真っ青(黒?)にしながら、声を上げた。


『も、もしかして、ビクトールさんとまた離ればなれになるの!?』


そう言いながら、剣士の腕を握りしめて、プルプルと震え始めるエネルギア。

どうやら、彼女の禁断症状が、再発を始めたらしい・・・。


(・・・どうしよう・・・)


剣士を元の場所に戻す(?)と、エネルギアは恐らく発狂するはずである。

一方、剣士を元に戻さないと、サウスフォートレスの復興は遅々として進まないことだろう。

このジレンマのような選択のどちらを採ればいいのか・・・。


ワルツは、1秒間だけ考えた後・・・


「うん!後で考えよ・・・」


面倒すぎたためか、思考を停止してしまったようだ・・・。




そして、剣士をどうするのかについて、ワルツが2人をどうにか(けむ)に巻いてから。

基本的に引きこもりなカタリナを船に残した一行は、歩き慣れた森を抜けてから街道へと出て・・・先ほど空から眺めていたアルクの村(?)へとやってきた。


そして、その入り口にあった、村(?)の名前が書かれた木製のアーチに辿り着いたところで・・・おもむろにコルテックスが、その口を開く。


「ここがうわさに聞く大都会、アルクの村ですね〜?」


「村だけどな・・・」


「大都会かそうではないか、というのには、村も町も首都も王都も関係ないのですよ〜?心・・・そう、その街に住む者たちの心の大きさが、街の大きさそのものですから〜」


「・・・なら、仕方ないな」


コルテックスとアトラスが交わしたそんな言葉に、剣士とエネルギアを含めて、皆、『何言ってんだ?こいつら・・・』といったような表情を浮かべていたが、どうやら、兄妹の間では、共通の認識だったようだ。

まぁ、姉の方は、


「・・・・・・」


そもそも、村の姿が大きく変わってしまっていたことに、言葉を失っていたようだが・・・。


そんなワルツたちの眼に映っていたのは、全高300mを超えるビル群・・・ではなく、高くても2階建の家々が立ち並ぶ、この世界では一般的な町並みの姿であった。

そんな町並みの様子の中で、彼女たちが訪れた1ヶ月前と比べて、大きく変わっていたのは・・・その建物の絶対的な数だったのである。


かつてこの村は、街道沿いに家が立ち並ぶという、極端な話、2列しか無いシンプルな家並みであった。

それが今では、東西南北に幾つもの小さな道ができ、区画整理され、何倍、何十倍にも家の数が増えていたのである。

その上、すべての道には、魔道具と思わしき街灯が設置され、夜の暗闇を駆逐するかのように煌々と輝いていて・・・その姿はどう見ても、サウスフォートレスの町とさほど違いが無い程に大きくなっていたのだ。


「・・・どうしてこうなったんだろ・・・」


以前、訪れた際にも、思いの外、村が発展していたことに驚いていたワルツだったが、爆発的に発展し続けているアルクの・・・町の様子を見て、1ヶ月前とは比較にならないほどに、再び驚愕してしまったようだ。


「・・・直接聞きに行くしか無いわね」


そう呟きながら、シワシワの笑みが特徴的な中年男性の姿を思い出すワルツ。

この町の町長なら・・・急に町が大きくなった理由を知っていることだろう・・・。




・・・さて。


ここに、ワイワイガヤガヤと賑やかな一件の酒場がある。

夜なのだから酒場が賑わっても当然なのだが、中にいる者たちが皆、一様に、嬉しそうな笑みを浮かべながら酒樽を浴びるように飲んでいるのは・・・やはり景気が良いから、ということなのだろう。


そんな酒場の扉が・・・


ドゴォォォォン!!


と突然吹き飛んだ。


一般的な展開なら、酒場の中で酔った者たちが喧嘩を初めて、内側から扉を吹き飛ばした、といったアクシデントがその原因になるだろうか。

だが・・・どうやら、今回の場合はそうではなかったらしい。

何故なら・・・吹き飛んだ扉は、内側から吹き飛ばされたのではなく、外側から吹き飛ばされたものだったからだ。


そして、吹き飛んだ扉があった場所から現れたのは・・・長い銀髪が特徴的な、身長の低い狐娘・・・と、彼女に赤い紐を付けられて引っ張られていた、死んだような眼をした少年であった・・・。


店へと入ってきた狐娘は、自身に客達の視線が集中していることを感じて満足気な笑みを浮かべると・・・その場にいた者たちに対して、少々上から目線で告げる。


「宴はおしまいですよ〜?皆、即刻この場から立ち去らないと、不敬罪で処刑しますよ〜?・・・って、アトラスが言ってました〜」


「ちょっ・・・俺かよ!?」


と、急に漫才(?)を始めた闖入者(ちんにゅうしゃ)2人。

すると、アルコールが全身に回って、正常な判断が出来なくなっていた50人にも及ぶ町人や冒険者たちは・・・しかし、気分だけは良かったのか、


ブハハハハハ!!


一斉に笑い始めた。


そんな者たちの反応に対して、


「ふっはっはっはっは〜」


と、狐娘・・・コルテックスは、高笑いのような棒読みの笑いのような・・・そんな、なんとも言い難い妙な笑い声を上げると、


「・・・では、強制行使に入ります。アトラス〜?後はケガ人が出ないように、フォローして下さいね〜?」


相方にそんな言葉を残して・・・


グイッ


「へっ・・・?」


と、近くにいた客の首根っこを掴んで、


ヒョイ・・・

ドゴォォォォン!!


・・・壊した扉の外へと、吹き飛ばし始めたのである・・・。


ヒョイ・・・

ドゴォォォォン!!

ヒョイ・・・

ドゴォォォォン!!

ヒョイ・・・

ドゴォォォォン!!

・・・・・・


『ひ、ひぃっ?!』


千切っては投げ、千切っては投げ・・・。

そんな様子に見えなくもなかったコルテックスの暴挙に、完全に酔いが覚めた様子で、酒場の中を逃げ惑う客達。


・・・こうして、彼女たちがやってきてから数分と経たない内に、アルクの町に古くからあるという酒場からは、客が全員いなくなってしまったのであった・・・。

・・・なお、客たちだけでなく、店主や店員まで吹き飛ばしてしまったようだが・・・まぁ、アトラスの必死の活躍もあって怪我人だけは出なかった、ということだけは言っておこうと思う。

難しいのう・・・。

新しいことに挑戦するというのは・・・。

じゃが、そこに自分の新しい書き方があるというのなら、挑戦を続けてみようかのう。


そうそう。

これはどうでもいいことなんじゃが、妾には大事にしておる座右の銘があるのじゃ。

『人は考える生き物なのじゃ』

人工知能を扱っておると、『知能』というものを作るのに、どれほどの困難があるのか、身に染みて分かるのじゃ。

同時に、そんな複雑なシステムを持ち合わせておる人間の可能性も信じてやまないのじゃ。

今、出来なくとも、頑張ればそのうちどうにかなる・・・。

・・・この物語の最初の方の黒歴史を見ておると、それがヒシヒシと・・・い、胃が痛いのじゃ・・・。


う、うむ・・・。

この話はこの辺にしておいて、さっさと補足に入るのじゃ・・・。


何かあったかのう・・・。

ここにおるメンバーについては、昨日のメンバー-(マイナス)カタリナなのじゃ、というのは分かってもらえておるとして・・・。


・・・無い・・・。

無いのじゃ・・・。

いや、あるのかもしれぬが、ぱっと見、思いつかないのじゃ。

まぁ、強いていうなら、酒場にやってきたのはコルとアトラスだけではない、ということくらいかのう。

その詳細については、明日語る予定なのじゃ?

んー・・・本当は2話で終わらせる予定だったのじゃが、この分じゃと、4話くらいは行きそうじゃのう・・・。


というわけで。

・・・次回、『酒豪イブ。一口で酔いつぶれるかも?!』乞うご期待!なのじゃ?

・・・人はその液体を『エタノール』と呼ぶのじゃぞ?

・・・まぁ、イブ嬢の場合、ノンアルコールの甘酒の可能性も否定はできぬがの・・・。

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