7.2-09 予想外の海9
昇降口前の格納庫の壁に、ワルツがホログラムを使って表示していた南国の風景。
そこに映しだされていた1つだけのオレンジ色をした太陽が、水平線の彼方へと沈んだ頃。
ザバァーーー・・・
ワルツは船内に溜まった水を、ハッチを開けることで外へと投棄した。
「んあ?!な、流されるかも!!」
・・・その際、黄色っぽい毛玉が、水と一緒に船外へと流れていったようだが・・・まぁ、気のせいだろう。
「さてと。じゃぁこれから、エネルギアの核融合炉を再起動して・・・」
船外へと流れていった黄色い何かを、重力制御で回収しながら、仲間たちにこれからの予定を説明するワルツ。
・・・しかし、彼女は、そこまで口にしてから、一旦、言いよどむと、仲間たちの予想とは反する言葉を口にした。
「王都に帰りましょうか」
『えっ・・・』
そんなワルツの言葉に、2つの意味で驚きの表情を浮かべる仲間たち。
『休暇を取りに来たはずなのにその日の内に帰るのは何故か』『無人島のマギマウスたちを放置して帰るのか』、そんな疑問が顔に現れていたのは、気のせいでは無いだろう。
「いやさー、本当は、狩人さんのところの別荘に泊まるつもりだったんだけど、この天候やマギマウスたちがドコにいるかも分からない現状を考えると、大人しく帰ったほうが良いかなー・・・って思って」
仲間たちが皆同じような表情を浮かべていたために、流石に疑問の内容を予想できたのか、ワルツは後頭部を掻きながら、疑問の半分について説明した。
それから、その説明に対して、異論がないことを確認してから、もう半分も説明する。
「それと、マギマウスたちを吹き飛ばさずに帰ることについてだけど・・・」
ワルツがそこまで言うと、コルテックスがその先の彼女の言葉を予想して、代わりに説明を続けた。
「このまま島ごと吹き飛ばすと〜・・・マギマウスの生き残りが周囲に飛び散って、もっとヒドイことになるかもしれない、ってことですよね〜?」
「そ。別に、島ごとマイクロじゃないブラックホールで蒸発させても良いんだけど、相当なエネルギーを消費することになるし(面倒くさいから・・・)・・・・・・それに、気になることがあってね」
『・・・?』
そんなワルツの意味深げな発言に、思わず頭を傾げてしまう仲間たち。
その場にいた大体のメンバーが、思い当たるフシは無い、といった様子である。
ちなみに。
ワルツがマギマウスたちを自身の重力制御や荷電粒子砲で吹き飛ばさないのは、殺生をすることに対して罪の意識に苛まれた、という面も少なからずあった。
それ自体は、これまでのヘタレな普段の彼女の判断と、何ら変わったところは無かったのだが・・・それとは別に、気になることがあったというのも、また偽りでは無かったようである。
「さっき、こっちに向かって飛んできた強大な氷魔法。あれを誰が放ったのかを知っておきたかったのよ。そのための探査機・・・まぁ、ロボットみたいなものを用意しようと思ってさ?ま、ミリマシンでいいと思うけど・・・」
全長300mを超えるエネルギアの外装の殆どを凍りつかせてしまうほどの氷魔法。
恐らく、ユキの姉の現魔王であるヌルでも、そこまでの強大な氷魔法を行使するのは、至難の業のはずである。
そんな魔法が、島から十数キロ離れた場所に浮かんでいたエネルギアに向かって飛んできたことを考えるなら・・・つまり、マギマウスたちが幽閉されている無人島には、魔王を超えるような魔力を持った何かが潜んでいる・・・ということに他ならないと言えるだろう。
それが何なのか・・・ワルツは知りたかったのである。
・・・まぁ、遺伝子操作の結果、怪獣化したマギマウスが原因である可能性が一番高いのだが・・・。
「そうですか〜。確かに、あの島からは、ただならぬ気配が漏れ出しているようですからね〜。一度調査してみるのも良いかもしれません。もしかしたら〜・・・資源として利用できるかもしれませんしね〜?」
『・・・・・・』
そんなコルテックスの言葉に、何を想像したのか・・・どういうわけか苦笑を浮かべたり、納得げな表情を浮かべたりする仲間たち。
恐らく、狩人当たりは、大きな回転車の中で、同じく大きなマギマウスが走っている姿でも想像しているのだろう。
「もしも、魔力を魔素として自由に取り出せて、再利用できるような仕組みを作ることができれば・・・産業革命待った無しですよ〜?」
「・・・その根底を支えてるのが、マギマウスたちっていうのも、いかがなものかと思うけどね・・・」
そう口にしながら、魔力発電所(?)の中で大量に発電機に繋がれるだろうマギマウスたちの姿を想像して、その目を細めてしまうワルツ。
彼女の場合、回転車ではなく・・・どちらかと言うと、大昔の映画に出て来たような、生体発電所のようなものを想像していたようである・・・。
「そんなわけで、申し訳ないんだけど、今回の旅行は・・・ここで中止、ってことで良いかしら?」
ワルツは、その言葉を仲間たち・・・特に、今回の旅行を楽しみ(?)にしていたコルテックスへと向けた。
その視線の先では、コルテックスが、何やら栄養ドリンクが入っていそうな茶色い瓶を口の中に傾けていたのだが・・・。
彼女はその中身を飲み干して、萎々になっていた尻尾全体へと栄養が行き行き渡るように、その尻尾をブンブンと振ってから、ワルツへと言葉を返した。
「なら、お姉さまは死刑ですね〜」にっこり
「いや、だって、ここ以外に、まともな海岸線は知らないしさぁ・・・それに、隣国のエンデルシアとか、あるいは海を超えてその向こうにあるだろう別の大陸に行っても、そこに住んでいる人たちを不必要に驚かせるだけじゃん?エネルギア(少女)だって、ダウンしてるわけだし・・・。ま、そこは私の代わりに、アトラスでも可愛がって、どうにか我慢してちょうだい?今度、ミリマシンを散布するときに、連れてきてあげるから」
「はぁ・・・仕方ありませんね〜」
「ちょっ・・・何で俺が・・・」
と言いつつも、コルテックスに大人しく赤いロープで引かれていくアトラス。
そんな彼のTシャツと短パンが全く濡れていないところを見ると・・・どうやら彼の服も、防水加工を施された水着だったようだ。
コルテックスにしても、アトラスにしても、やはり、海で泳ぐことを楽しみにしていたのだろう・・・。
(この埋め合わせは・・・その内にしなきゃね。その時は、ルシアやテレサも一緒に連れて来られればいいんだけど・・・)
と、全員で休暇を取った時に、国が立ち行くかどうかを考えるワルツ。
そして彼女は・・・人知れずある決断をするのであった・・・。
キュイィィィィン・・・
「さすがはコルテックス。アトラスとは違って万能ね」
「フッフッフ〜。当たり前ではないですか〜。兄や姉みたいなポンコツと一緒にしてもらっては困りますよ〜?」
『・・・・・・』
と、暗にワルツとアトラスのことを批判するコルテックス。
そんな3人がやってきていたのは・・・核融合炉のある部屋の中であった。
そこで、さきほどマナを大量に飲み込んだコルテックスが、再び発電魔法を行使して、停止していた3機の核融合炉を再起動したのである。
もしもコルテックスがこの場にいなかったのなら・・・恐らく、アトラスが必死になって自転車を漕ぐか、ワルツが本気になって重力制御で巨大なタービンを回していたのではないだろうか・・・。
「・・・そういえば、ストレラは元気にやっているのでしょうか〜?」
『・・・あ』
ボレアス帝国から戻ってきてから、一度も彼女に連絡していなことに気づくワルツとアトラス、それにコルテックス。
どうやら、数週間以内に彼女を本国に戻すという約束は・・・このままだと反故になってしまいそうだ。
とはいえ、ストレラ側からも連絡が無いところを見ると、彼女自身、日々の生活に満足しているようである・・・。
「むしろさ・・・南国巡りをするよりも、そっちの様子を見に行ったほうが良いんじゃない?」
「同感だな・・・」
「こればっかりは〜・・・同意せざるを得ませんね〜」
と、このまま王都に帰るのが・・・実は嫌だった3人は、意気投合する形で、今まで忘れていた兄弟に会いに行くというタスクを急遽、設定するのであった・・・。
どうやら、メルクリオの王宮は、ミッドエデン共和国から連絡も無しに押しかける迷惑な者たちを、半強制的に受け入れなくてはならない運びにあるようだ・・・。
噂によると〜・・・24日は小説家になろうで、ジャンルの再編成があるみたいですね〜。
この物語も、ジャンルが変わるのでしょうか〜?
・・・まぁ、SFファンタジー(?)なのは明らかですけどね〜。
・・・え?私が誰か?
それは〜・・・・・・妾なのじゃ。
ようやく、ここまでコルのモノマネが出来るようになったのじゃ。
正直言うと、コルのモノマネは辛すぎるのじゃ・・・。
何が辛いって・・・あとがきを書く速度が3倍以上時間がかかってしまう、と言えば、その辛さが分かってもらえるじゃろうか?
実は簡単ではないのじゃぞ?
さて。
補足に入ろうかのう。
じゃが・・・今日は特に補足することは無さそうなのじゃ。
あとがきリストが真っさらじゃからのう。
たまにはサボろうかのう。
え?いつもサボってる?
・・・細かいことは気にするでない!
あ、そうそう。
一点だけ。
『仲間たち』と書いてはおっても、その場に誰がいたのかについては、重要ではなかった故、書いておらんかったから、一応、そのリストを書いておくのじゃ。
・カタリナ
・狩人
・シラヌイ
・イブ
・飛竜
・アトラス
・コル
それとワルツなのじゃ。
・・・妾の出番は、まだかのう・・・。
さて。
今日はこんなところかのう。
・・・次回、『ライバルかもだし?!』乞うご期待!なのじゃ?
・・・それを書く前に、1〜2話だけ追加しておかねばならぬことがあるんじゃがの?




