7.2-05 予想外の海5
誤字報告があったゆえ修正しておったら、ほぼ全文、書き換えることになったのじゃ。
許して欲しいのじゃ……。
3000話ほど未来の妾の文章は、今、こうなっておる、という参考にしてもらえると幸いなのじゃ。
改めて見ると、イブ嬢の言葉遣いも性格も、大分、変わった気がするのじゃ。
コルは……まぁ、変わらぬかの。
そして、ワルツたちは再びエネルギアへと戻ってきた。そこでは、マギマウスの大群が押し寄せていて、仲間たちが大変なことになって——はいなかった。
「おや、お姉さま方。もうお帰りですか?ずいぶんとお早いお帰りですね?」
推進器の吸気口以外に全く穴のない流線型をしたエネルギアの、その唯一の昇降口にある空間で、テンポが船番(?)をしていたのである。ホムンクルスである彼女がいれば、船内にマギマウスの侵入を許してしまうなどということは、まず起こりえないだろう。
「どう?何か来た?ネズミとかネズミとかネズミとか……」
「いいえ。何も来ておりません。ちょっと、面倒な、弟と妹……あと姉がやってきたくらいですね」
「そりゃ、出てったんだから戻ってくるわよ……ん?最後のって、今の私のことじゃ……」
と言って、眉を顰めるワルツ。その一方で、アトラスとコルテックスに機嫌を害した様子がないところを見るに、2人はテンポの毒舌に対して特に思うことは無いらしい。姉なので諦めているのか、それとも完全になれきっているのか……。
「それで、原因は分かったのですか?」
「原因?もちろん、私だけど?」
さも、当然であるかように開き直って話すワルツ。そんな彼女の態度に、腕を組んで、うんうんと頭を縦に振りながら、テンポは納得げに言った。
「そうですか。えぇ、お姉さまはいつか何かを仕出かす方だと思っていましたよ。最寄りの騎士の出張所を調べておきましたので、お教えしましょう」
「あら、気が利くわね?カタリナも、原因の1人だから、2人で出頭しろってことね。仕方ないわねぇ……」
と、ワルツが共犯者(?)の名を口にすると——、
「……さて、茶番はこれくらいにして、戻るとします。長い間、医務室を開けると、ユキ様がシュバルちゃんに対して何をするか分かりませんからね」
——テンポにとって何か不都合な事でもあったのか、彼女はまるで逃げるようにして、その場を後にした。
「やれやれ……」
立ち去っていくテンポに対して、ワルツが呆れたような表情を浮かべていると——、
「えっと……何かすごい音が響いていたようですが、大丈夫でしたか?」
——自室には戻らず、イブや飛竜たちと雑談していたシラヌイが、ワルツの所に近付いてきた。先ほどのテンポとの会話の内容を聞いていながら、ワルツとカタリナが何をしたのか、と問いかけてこないところを見るに、もしかするとシラヌイたちは、ワルツとテンポの会話の内容を、単なる冗談か何かだと思ったのかもしれない。
そんなシラヌイに対し、ワルツが肩を竦めながら助言をする。
「えぇ、何も無かったわ?でもねぇ……離陸する時、外を見ないことをお勧めするわ?」
「えっ?」
「見ても良いけど……多分、後悔すると思うから」
「…………」
ワルツの言葉に、一体どんな光景を想像したのか……。シラヌイの顔色が急に悪くなった。その顔色の変わり様があまりに極端すぎるので、シラヌイの脳裏では、ワルツの想像を絶するような光景が展開されているのかもしれない。
◇
キィィィンッ……!
エネルギアがガスタービン特有の甲高い音を上げながら、宙へと浮かび上がっていく。
そんなエネルギアから見えていた雪景色には、一面、肉で出来た赤い花畑が広がって——はいなかった。一見して、単なる雪景色だ。ワルツが知らないうちに、コルテックス辺りが雪を使って整地でもしたのだろう。
その光景を見て、シラヌイは安堵の息を吐いた。
「よかったぁ……」ホッ
やはり、彼女の脳裏では、映像や文章にすると規制に引っかかりそうな景色が広がっていたらしい。
まぁ、それはさておき。
「さてと……どうやって島を破壊しましょうか?」
見たくないものは見ない主義のワルツは、離れていく地面の方には視線を向けずに、20kmほど先にある海上の孤島に眼を向けた。
その島は、ワルツたちが生体実験に使ったマギマウスのたちを隔離していた——つもりの場所で、島の周囲を50mほどの直角の崖——もとい壁に包まれた監獄のような場所だった。外から見ても高さ50m。内側から見ても高さ50m。島に出入りする事を想定していない、世界から隔離された場所である。
そんな島からマギマウスたちが、群れを成して脱出してしまったのは、その身体の小ささとすばしっこさが原因だったようだ。人であれば、崖を登ることも然る事ながら、崖から飛び降りることも不可能。当然、壁面に穴を開けることも不可能である。しかし、マギマウスの場合は、身体が軽くて小さかったために、壁を登ることなど造作も無く……。また、崖から飛び降りても、満潮時であれば、海面から海底までそれなりの深さがあるので、死なずに済んだのだ。
まったくもって、計算が甘かった……。そんな事を考えながら、ワルツが忌々しげに島を見つめていると——、
「え?なにかするの?!ワルツ様!」
——ワルツたちと一緒に艦橋へと戻ってきていたイブが、何やら嬉しそうに尻尾ブンブンと振りながら、問いかけてくる。以前、イブは、エネルギアの武装を操作した事があったので、"破壊"という言葉に反応したらしい。何も知らない子どもらしい反応と言えるだろう。
「もしかして……このボタンを押したかったりする?」
ワルツは宙に浮かべたスクリーンをイブに見せた。そこには"発射"の2文字が……。
それを見たイブは、爛々と眼を輝かせながら——、
「うん!」
——と深く頷いた。やはり彼女は、エネルギアの砲撃のことを、新手のゲームか何かのように考えていたようである。
もうこのまま、イブにボタンを押させてしまおうか……。一瞬はそう思ったワルツだったものの、彼女は思いとどまった。
「ごめんね。イブ。今回に限っては、貴女にボタンを押させることは出来ないのよ」
その途端、イブは「えっ?」と声を発したまま固まってしまう。ワルツの返答が予想外だったらしい。
対するワルツも、イブの反応に心を痛めていたようだが、心を鬼にして首を横に振る。
当然だ。ボタンを押せば、島ごと無数のマギマウスたちを殺めてしまうのである。しかも、その原因を作ったのはワルツ本人。今回ばかりは、ワルツが責任を持って、ボタンを押す必要があったのだ。
対するイブは、元々の性格ゆえか、すぐに引き下がった。
「んー……ワルツ様がそう言うなら仕方ないかもだね」
「……随分、素直じゃない?」
「イブ、そんなに素直じゃないように見えていたかもなの?ちょっと心外かもだけど……でもワルツ様、なんとなく元気がないかもだから、今回は譲るかも!」
そう言って、えっへん!、といった様子で胸を張るイブ。
対するワルツは、イブから同列かそれ以下のように見られている気がしなくもなかったためか——、
「そ、そう……」
——なんとも煮え切らない様子のまま、相づちを打ったようである。
とはいえ、彼女も長いこと悩むことの無い性格の持ち主。すぐに気分を切り替える。
「さてと……どの兵器を使おうかしら……」
武装の操作画面で適当にレールガンを選んだものの、ワルツはそのままキャンセルボタンを押した。レールガンでは、島ごと吹き飛ばすのは無理だと判断したらしい。
その上で、彼女は、改めて武器を選ぶ。どの武器を使えば、効率よく目の前の島を破壊できるのか……。島に住みついた——封じられたマギマウスたちを苦しめることなく死に至らしめることが出来るのか……。
考えた末——、
「……うん、無い」
——ワルツは結論を出した。どの武器もワルツが求める性能は有していなかったらしい。
すると、ワルツの画面操作を覗き込んでいたイブが、すっ、と操作パネルのある部分を指す。
「前から思ってたかもだけど、コレは?」
イブの小さな人差し指が向いていたのは、パネルの一番右下にあったボタン。誰も実際に発射した瞬間を見たことが無い謎の武器のボタンだ。
「……いえ。今回もコレは使わないわ」
そう言って、再び首を横に振るワルツ。
すると当然、イブが首を傾げる。
「前から疑問に思ってたかもだけど、どうしてそれ、使わないかもなの?」
「それは……」
果たして言うべきか否か……。ワルツが悩ましげな様子でその理由を口にしようとした。
まさにその瞬間——、
ドゴォォォォン!!
——エネルギアのモニターが一瞬白く塗りつぶされて、すぐに元通りに戻る。エネルギアの船体を揺るがす程の威力は無かったが、外から攻撃を受けたらしい。
「画面が壊れた?」
イブが率直な感想を口にしていると、今まで静かに事の成り行きを見ていたコルテックスが口を開く。
「ふむふむ〜。どうやら、あの島から飛んできた魔法のようですね〜?まったく〜……あの島には、一体、何が潜んでいるんでしょう?ね〜?お姉様〜?」
とても嬉しそうな様子で、コルテックスはワルツに向かって問いかけた。煽りである。
対するワルツは、どういうわけか、余裕の無い様子で、高速でパネルを叩き……。そして声を上げる。
「……やっば!」
「「「えっ?」」」
普段は"ヤバい"などとそう口にすることのないワルツの発言に、皆が耳を疑った。その瞬間だ。
ブゥゥゥゥン・・・
エネルギアの甲高いタービンの音が、急にくぐもった音に変わり、景色が上に向かって流れ始めた。船体が急激に降下し始めたのだ。
「つ、墜落する!?」
「「「ちょっ?!」」」
目まぐるしく変わるステータスモニターの数値を見ながら声を上げるワルツを前に、その場にいた者たちは混乱状態に陥った。いったい何が起こっているのか……。そんな疑問が皆の表情に張り付いていた。
「き、急激に船体が凍り始めてるのよ。それで、設計上の動作温度の範囲を超えて、主機に負荷が掛かって、発電量が落ちて……」
「「「………」」」
大多数の者たちには、ワルツの説明を理解する事は出来なかった。それでも理解出来た事はある。現在、エネルギアは、非常に拙い状態にあるのだ、と。
以下、アップロード当時の妾の一言。
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あー、最近、忙しくて、話を書くのが(一日の内で)不定期になっておるためか、モチベーションが上がらないのじゃ・・・。
決まっておるなら、どうとでもなるんじゃがのう・・・。
例えば夜に書くなら、昼間の内におやつを大量に買い込ん・・・いや、何でもないのじゃ。
まさか、朝には持って来れぬしのう・・・。
・・・いや、試してみようかのう?
さて。
時間も時間じゃから、さっさと補足してしまうのじゃ。
どうでもいいことなのじゃが、2名ほど、話しておらぬものがおる。
飛竜とアトラス。
2人ともちゃんと生きておるし、その場にもいるのじゃぞ?
単に、面d・・・・・・出番が無かっただけなのじゃ。
まぁ、アトラスの場合は、ミノタウロス編で、いいだけ話しておったから別に書かんでも良いじゃろ?
・・・え?それならイブも同じ?
いや・・・イブ嬢は、すごく書きやすいのじゃ・・・。
どうしてじゃろうのう・・・?
で、次。
シラヌイ殿がどんな悲惨な光景を想像しておったのか。
・・・知らぬ。
いや、洒落ではないのじゃぞ?
本人に取材したわけではないから、文字通り分からないのじゃ。
まぁ、適当に想像して欲しいのじゃ。
例えば・・・血沸き肉踊る光景、とかどうじゃろうか?
・・・それでは、単なる祭りになってしまうかのう・・・。
まぁ、今日はこんなところかのう。
・・・次回、『気づいたらイブだけ無人島に辿り着いたかもだし?!』乞うご期待!なのじゃ?
なお、顔を書いた椰子の実が友人になる模様・・・なのじゃ?




