7.2-02 予想外の海2
読みにくかったら・・・どうか、脳内補完・修正して欲しいのじゃ!
能力の限界を迎えて、修正が追いつかなかったのじゃ・・・。
「冬ですね・・・」
「確かに冬っぽいな・・・」
艦橋の外の景色を見て、そのままの様子を口にするシラヌイと狩人。
「いやいや、冬って・・・ミッドエデンには雪、振らないですよね?しかもこんな平地に・・・」
周辺地域の温暖な気候や海流、気流、そしてこの地に住んでいた者の証言(狩人)などから、ミッドエデンの特に南に位置するサウスフォートレス以南の海岸近くでは、1年を通して、雪が振るといったことは通常考えられない出来事だった。
それを思い出したワルツは、特に変わった様子はない、と言わんばかりの狩人たちに対して、思わずツッコんでしまったようである。
「狩人さんは良いんですか?本来なら温暖なはずのアレクサンドロス地方(サウスフォートレス周辺)に雪なんか降ったりしたら、農作物とか大変なことになりますよ?」
と、続けて問いかけるワルツ。
そんな彼女に、狩人は、うーん、と首をひねって唸ってから返答した。
「まぁ・・・大丈夫じゃないか?畑らしい畑もないし、人も殆ど住んでないしな・・・。確かに、ここに住んでいる者たちにとっては、大変な出来事かも知れないが、彼らの生活については・・・ミッドエデン政府が保証してくれるだろ?」
と言って、先程から随分と静かになっていたコルテックスたちの方に視線を向ける狩人。
するとそこでは・・・
「・・・・・・」にっこり
と、顔に言い知れぬ笑みのようなものを浮かべているコルテックスの姿が・・・。
「ひぃっ?!」
そんなコルテックスの言い知れぬ表情を目の当たりにして、彼女の近くにいいたアトラスは怯えたような表情を浮かべながら、小さく叫び声を上げて後退ろうとした。
・・・しかし、残念なことに(?)、ミスリル製の頑丈な赤い紐で全身を縛られていた彼が、座席から立って逃げることは叶わなそうであった。
・・・というよりも、その紐の先をコルテックスが握っている以上、どんなことをしても逃げられないというべきか・・・。
そんなアトラスや仲間たちの視線を一手に集めていたコルテックスは、肩をワナワナと震わせて、どす黒いオーラを放ちながら、艦橋の外の景色へと向かって、言葉を放った。
「・・・死刑です。神だか、仏だか、自然現象だか、愚民だかは知りませんが、私の休暇を台無しにする者たちは、全員即皆殺し。無慈悲に虐殺ですよ〜」ゴゴゴゴ
・・・どうやら彼女は、普通ならありえないその状況に、完全におかんむり状態のようである。
先程まで、地底湖で泳いでいた(?)とはいえ、楽しみにしていた南国の海でのバカンスを妨害されてしまったことが、腹立たしくて仕方がないのだろう。
そんな彼女に対して、ワルツは何か不思議に思う事でもあったのか、首をかしげながらおもむろに問いかけた。
「・・・ねぇ、コルテックス?今の貴女に・・・暑いとか寒いとか関係あるの?」
「無いですよ〜?」
「・・・・・・」
と、迷わず即答するコルテックスに対して、眼を細めるワルツ・・・。
するとコルテックスは、流石にその詳しい意味合いまで伝わっていないことを察したのか、自身の言葉を補足し始めた。
「重要なのは、温度ではなく、雰囲気です。周りが銀世界だというのに、泳ぐなんて・・・頭がオカシイとは思いませんか〜?」
(・・・地底湖で泳ぐのも、似たようなものだと思うけど・・・)
どういった理由で雪が降っているのかについては、ワルツにもその原因は皆目見当が付けられなかったが、単に雪が降っているだけなら、よっぽど日の当たらない地底湖よりも、海のほうが温かいのではないか、と思ったようである。
とはいえ、コルテックスが求めているのは、温かい海水などという眼には見えないものではなく、例えば椰子の木だったり、あるいは空から降り注ぐ眩しい日差しだったり、と言ったような『南国に来た』という雰囲気だったようなので・・・ワルツは、また下手なことを口にしたら、彼女が余計にへそを曲げてしまうと考えたらしく、それ以上、コルテックスに対して指摘の言葉を口にするようなことはしなかった。
まぁ、海でのバカンスの半分以上が、泳ぐことだけでないことを考えるなら、彼女の言い分も当然といえば、当然だろう。
「じゃぁ・・・どうすんの?この異常現象の原因をどうにかするとか?」
そんなワルツの言葉に、つい直前まで憤っていたコルテックスは・・・急に、眼を細めて眉を顰めると、悩ましげに話し始めた。
「今日は本当ならオフのはずなのですが〜・・・国民のことを考えるなら、緊急事態と思って、対処するしか無いですよね〜。今回の一件、あとで代休は取れるんでしょうか〜?」
(・・・それ決めるの、貴女よね?)
と、再び、自身の中だけで指摘するワルツ。
他の仲間達も、彼女と同じような苦笑を浮かべていたのは・・・恐らく、偶然ではないだろう・・・。
・・・ともあれ、
「んじゃ、とりあえず、さっさとこの異常気象の原因を突き止めて、休暇の続きを楽しんでもらうことにしましょうか」
そんなワルツの言葉通りに、コルテックスの休暇は、再び一旦ここで取りやめになって、ミッドエデン政府関係者としての仕事が始まることになったのである・・・。
あるいは、コルテックスの憂さ晴らしが始まった、とも言えるかもしれないが・・・。
その後、狩人が用意した昼食をその場にいた5人で頂いて、そして、食べ終わった頃。
ゴォォォォン・・・
エネルギアの降着装置が、以前、ワルツたちが訪れたことのある海岸の砂浜へと、その装置の名前通りに降着した音が聞こえてきた。
それから昇降口前まで移動し、ハッチを開いてタラップを下ろしたところで・・・
『・・・・・・』
・・・仲間たちはそこから降りることなく、そのままの状態で固まってしまう。
「雪だな・・・」
「雪ですね・・・」
「寒そうだ・・・」
「多分、寒いわよ?」
「・・・・・・」にっこり
「ひぃっ?!」
と、各々に感想(?)を口にする仲間たち。
その様子を例えるなら・・・水着と浮き輪を準備してバスから降りたら、真冬のスキー場だった・・・といったような状況と言えるだろうか・・・。
・・・そんな中。
固まる仲間たちとは対照的に、1人だけ元気な者がいた。
「ひゃっはー!!」
・・・犬の獣人のイブである。
イブは、昼食会には参加していなかったものの、タラップ前の大きな空間の中でグッタリとしていた元の姿の飛竜に付き添っていたために、彼女と共に最初からこの場にいたのである。
尤も、タラップの外へと、狂ったように走っていったのは、彼女一人だけだが・・・。
その結果・・・
ぼふっ・・・
という低い音を上げて、黄色い尻尾を覗かせていた青い服のメイドは、突如として白いキャンバスの中へとその姿を消してしまった。
「あー・・・船体の重粒子シールドに触れて、蒸発しちゃったわね」
『えっ・・・』
「いや、冗談よ」
ワルツは溜息を吐きながらそんなことを口にした後で、タラップの下へと歩いて行き・・・そして分厚く積もっていた雪の中から、黄色い尻尾を見つけて、
グイッ
と手で引っ張った。
その瞬間、
「んぎゃっ?!」
と、掴まれた尻尾をタワシのように膨らませながら、変な声を上げるイブ。
ワルツが尻尾を引っ張った際、何か、ゴキゴキ・・・、という怪しげな音が聞こえてきたようだが・・・まぁ、気のせいだろう。
そして、ワルツは、雪の積もっていないタラップまでイブを引き上げると、呆れた様子を見せながらその口を開いた。
「・・・イブ?一人で雪中行軍(?)とか、その度胸は認めるけど、生還率は多分0%よ?」
「んはーっ!!もう、飛び込まないかもだし!?!?」
そう言いながら、自身の尻尾を押さえて、その場でぐるぐると回るイブ。
その様子は・・・まぎれもなく、犬である・・・。
そんな彼女の尻尾が骨折していないことをX線カメラで確認した後、ワルツは仲間たちの所に戻って、相談を始めた。
「このままだと、外に出るのも一苦労ね・・・。悪いことは言わないから、みんなは今回、外に出ないほうがいいと思うわ」
イブを包み込んでしまうほどに、柔らかく振り積もっていたパウダースノー。
そんな軽くて柔らかい雪が降り積もる条件は、単に寒いこと、である。
エネルギアの艦内は常に一定の温度なので仲間たちには分からなかったが・・・外は、相当の寒さだったのだ。
この寒さと雪の厚みを考えるなら・・・生身の人間である仲間たちが無闇に外に出るのは、雪の中で迷子になって遭難してしまう可能性が極めて高い以上、やめておいたほうが賢明であると言えるだろう。
「そうか・・・。なら、私は、大人しく自室で待っているとしよう」
と最初に口にしたのは、狩人であった。
猫はコタツでなんとやら、というやつだろうか。
「わ、我も、寒いのは苦手故、今回は留守番をさせていただきます」
と、震えながら、白い雪に怯えたような視線を向ける飛竜。
その様子は、寒いのが苦手・・・と言うよりは、雪を恐れているようですらあった。
どうやら、彼女は、降りしきる雪か、あるいはそこから見えていた海に対して、何かトラウマを抱えているようだ。
その後も、
「わ、私も留守番してるかも!」
「では、私もここでお待ちしています」
と続けるイブとシラヌイ。
その後で・・・
「じゃぁ、俺m」
とアトラスが言葉を続けようとしたが・・・
「行きますよ〜?アトラス〜?」
彼に拒否権は無かったようで、スク水姿のコルテックスに言葉をかき消されてしまったようだ。
「・・・そうね。私とコルテックスだけじゃ、ちょっと人手が足りないかもしれないから、アトラスには付いて来てもらえると助かるわ」
今日一日はアトラスの肩を持つつもりのワルツだったが、外の景色を見る限り、そんなことも言ってられなくなったのか、少しだけ申し訳無さそうに、アトラスへと声を掛けた。
「・・・・・・仕方ないな・・・」
姉の真面目そうな頼みを流石に断れなかったのか、そう言って肩を落とすアトラス。
・・・と、そんな時であった。
外には分厚く雪が積もっているというのに、その場にそぐわない生物が雪の中から現れたのである。
チュゥ・・・?
・・・1匹のネズミである。
一見すると、変わった様子は見られない、単なるネズミのように見えたのだが・・・
『?!』
狩人とイブ、それにコルテックスと・・・ワルツは、驚愕の表情を浮かべた。
イブとコルテックスは、魔力的な意味合いで。
狩人の場合は、ネズミに碌な思い出が無いために・・・。
そしてワルツの場合は・・・そのネズミに、見覚えがあったからである。
「・・・やっば!」
ワルツが顔を青くして、焦った様子でそう口に瞬間、
ドゴォォォォン!!
と、爆音と・・・そして寒さが艦内を包み込んでしまった。
どうやら、目の前のネズミは・・・単なるネズミではなかったようである・・・。
つ、疲れたのじゃ・・・。
いやの?
二度寝して起きたら、トンデモナイ時間になっておって・・・必死になって書いておったらHPとMPが底を突いてしまったのじゃ・・・。
やはり、枕を変えたのが原因なのじゃろうかのう・・・。
まぁ、寝付きが良くなった事自体には、問題は無いんじゃがの?
まぁ、それは置いておいて、なのじゃ。
補足に入るのじゃ。
今日は2点。
まずは・・・狩人殿のことなのじゃ。
ネズミにろくな思い出がない狩人殿。
彼女は、旧2章で書いたように、マギマウスとの戦闘中、死にそうになったことがあったのじゃ。
その時の出来事が、未だに尾を引いておる、ということじゃの。
とは言っても、そこまで極端に苦手としているわけではないがの?
見た瞬間、少しだけ身体を硬直させてしまうのじゃ。
ほんの短い時間じゃが・・・の・・・。
・・・というか、某ネコ型ロボットのオマージュとして書いたのではないのじゃぞ?
最初に狩人殿がマギマウスに襲われた時は、単に、弱そうな魔物に負ける騎士たちを書きたかった故に、強くは無さそうな小さなネズミを登場させただけなのじゃ。
・・・それが気づくと、猫の獣人である狩人殿の苦手な魔物になっておったのは・・・どうしてじゃろうのう?
もしかすると、ネズミと猫というのは、物語の中では本来の関係が反転してしまう運命にあるのかも知れぬのう。
・・・う、うむ。この話はここまでなのじゃ!
で、次。
雪といえば、ユキ殿じゃと思うのじゃが・・・7.2章のメインストーリーで彼女を登場させる予定は無いのじゃ。
雪を見て興奮するのは、イブ嬢1人で十分じゃからの。
というか、ユキ殿の場合、サウスフォートレスでは、カタリナ殿に無断で下船しておった故、しばらく医務室からは出てこれない予定なのじゃ。
自業自得、というやつじゃろうのう。
まぁ、今日はこんなところなのじゃ。
・・・次回、『猫耳を食べられた狩人』乞うご期待!、なのじゃ?
・・・どうなのじゃろうのう?
狩人殿の頭から、猫耳が無くれば・・・・・・いや、あってもなくても、あんまり変わらないの。
狩人殿のあいでんてぃてぃーは、耳でも尻尾でもなく・・・その影の薄さ・・・いや、何でもないのじゃ!




