7.1-29 ミノタウロス12
思考の限界を迎えた故、今日の修正は2周目でストップなのじゃ。
じゃから、読みにくい文になっておるかも知れぬが・・・ご了承くださいなのじゃ。
・・・え?いつも読みにくい?
・・・なら、問題は無いのう。
ワルツが不注意で打ち上げたせいで、放物線を描きながら、高度5000m付近を弾道飛行(?)していたアトラスとミノタウロス。
彼女が、その内、腕を組みながら不機嫌そうな表情を浮かべていたアトラスだけを回収して、2人で地底湖に戻ってきた後。
生体反応センサーを使って、ミノタウロスを見つけては鎖に繋いで、見つけては鎖に繋いで・・・と繰り返し、そして全てのミノタウロスを捕まえてから、ワルツたちはサウスフォートレスのシティーホール、つまり伯爵の所へと、戦果の報告に来ていた。
来ているメンバーは・・・ワルツ、アトラス、狩人、勇者の4人である。
他、地底湖で泳いでいたはずなのに全く濡れていないコルテックスは、ミノタウロスを食べ過ぎて再びグッタリとしていた飛竜と、彼女のことを心配そうに眺めていたイブ、そして、全ミノタウロスを自身が作った鎖で繋げてやり切った表情を浮かべていたシラヌイに、目の前のカオスな状況に呆れた表情を浮かべていたユキを連れて、先にエネルギアへと戻っていった。
9人全員で、ぞろぞろと伯爵のところへやってくるわけには行かないことを考えるなら、ちょうどいい人数と言えるだろう。
・・・まぁ、休暇を決め込んでいるコルテックスにとっては、そもそも、伯爵に会うつもりは無かったようだが。
というわけで。
ワルツたちは、地底湖から街へと繋がるトンネルを20分ほど歩いて、シティーホールまで戻ってきていた。
その際、太陽が頭の天辺を通過して、街に美味しそうな匂いが漂っていたのは・・・つまり、休暇(?)の半日をミノタウロスに費やしてしまった、ということ示していることになるだろうか。
そんな日差しの元、シティーホールの前には・・・
ムォォォォ!
と唸り声を上げる・・・猿轡を付けられた511頭にも及ぶミノタウロスたちが、鎖に繋がれた状態で並んでいた・・・。
「・・・なんだこれは」
何やら、建物の外が騒がしいことに気づいた伯爵が、外に出てくると、目の前に広がっていた表現しがたい光景に、戸惑いながらそんな言葉を呟いた。
すると、彼の娘である狩人が、難しそうな表情を浮かべながら短く事実だけを説明する。
「地下にいたミノタウロスを捕まえたワルツとアトラスが、ここまで全部連れてきたんです」
「・・・・・・そ、そうか・・・」
てっきり、殺処分するものだと考えていたら、生きている状態のミノタウロスを連れてきたことに、伯爵は眉を顰めながら、思わず頭を抱えてしまった。
ここまで連れてこられたは良いが、彼らを処分するにしても、自分たちの力量でどうにかなるものなのか、と悩んでいるらしい。
討伐して欲しいとは頼んだものの、邪魔だから殺して欲しい、とは頼めなかったようだ。
「しかし・・・どうして、生きたまま連れてきたのだ?」
当然のごとく湧いて出て来たそんな質問を、思わず口にする伯爵。
その疑問に対して答えたのは・・・狩人の横に立っていて、何やら金属製と思わしきひしゃげた棒を愛おしげに握っていた勇者であった。
「それは・・・・・・ワルツやアトラスたちの事情があって、お答えすることは出来ません」
と、端的に『答えられない』という答えを口にする勇者。
なお、言うまでもないことかもしれないが、ワルツがここまでミノタウロスたちを連れてきた理由は・・・彼らが可哀想になって殺処分出来なかった、というどうしようもない理由だったりする・・・。
「・・・そうか。これは拙いことを聞いてしまったようだ。討伐を依頼したのは私の方なのだから、その過程を聞くべきではなかったな・・・」
「いえ。『討伐』という意味では、依頼達成とは言えないので、気にしないでください」
そう言って、依頼を受けたワルツの代わりに、丁寧に頭を下げる勇者。
・・・そんな彼の振る舞いが、先日までの勇者のものとは大きく異なっているような気がした伯爵は、失礼ついでに、その疑問についても問いかけることにしたようだ。
「・・・何かあったのか?」
妙にしおらしい勇者に対して、辺りにいた者たちには聞こえないような小声で問いかける伯爵。
そんな彼には・・・もう一点、気になっていたことがあった。
「・・・・・・」ムスッ
「・・・ほんとごめん!」
先程から、少し離れた場所で、ワルツが両手を合わせながら、見知らぬ少年に対して平謝りしているのである・・・。
事情を知らない伯爵は、そんな2人の様子を見た結果、何か言い知れない複雑な出来事があって、勇者の態度が妙なのもソレに関係があるのではないか、と考えたようだ。
「・・・中々に説明が難しいですが・・・」
伯爵の質問に、様々な意味合いが含まれていることを感じた勇者だったが、一体ドコから手を付けて説明すれば良いのか、分からなくなってしまったらしく、すぐに言葉は出てこなかったようだ。
・・・なので彼は、とりあえず、今、伯爵が視線を向けている先の2人のことについて、先に説明することにしたようである。
「実は・・・彼、アトラスのことを、ワルツが吹き飛ばしてしまったようです」
「・・・え?」
「彼の話によると、ミノタウロスごと空に打ち上げられたとか・・・」
「・・・・・・」
一体、どんな戦い方をすれば、ミノタウロスごと少年を空に打ち上げられるのか想像できなかったためか、伯爵はその眼を、青く吸い込まれそうな色をしていた高い空へと向けた・・・。
「俺もどんなことがあったのかは、直接見ていないので、詳しくは分かりませんが、ワルツが珍しく謝罪しているところを見ると、彼女に落ち度があるのは間違い無さそうです」
そう言って、2人に対する報告を締めくくった勇者。
すると、伯爵は想像しても分からないワルツの謎戦闘について思考を止めると、勇者に対して改めて問いかけた。
「そうか・・・。それで、少し話は変わるかもしれないが・・・勇者殿にも、もしかして何かあったのか?急に態度が変わってしまわれたようだが・・・」
先日まで、共に酒を飲み交わしながら、友人のように親睦を深めたはずの勇者。
そんな彼が、まるで別人になってしまったかのように、態度を硬直化させていたのはどうしてなのか。
どうやら伯爵にとっては、ワルツと少年の行動よりも、勇者の反応のほうが気になっていたようだ。
「・・・実は・・・」
眉を顰めながら、少し視線を伏せて・・・そして勇者はその理由を口にした。
「ワルツの所に、弟子入りさせてもらおうかと・・・」
「!?」
自分にしか聞こえない程度の大きさの声で呟いた勇者に対して、驚きの表情を浮かべる伯爵。
要するに、勇者の言葉は・・・エンデルシアの『勇者』を辞める、という意味に他ならなかったのである。
「・・・それは本当か?」
驚き以外に何の色も含まない、シンプルな単色を顔に浮かべて、伯爵は再度問いかけた。
ただ・・・その色も長くは続かず、時間と共に急速に薄れて、元の表情に戻っていったのは・・・自分の娘もワルツのところでよろしくやっていることを思い出したからだろうか。
・・・というよりも、この国の背後でワルツたちが暗躍(?)していることを思い出したから、と言うべきか・・・。
「はい。俺は・・・もっと強くなりたかったんです。そうでなくては、仲間たちを守ることが出来ないと思いまして・・・」
と、ミノタウロスすら倒せない弱い自分のことを思い出して、辟易した様子で話す勇者。
そんな彼の脳裏では、弱い自身の姿と同時に・・・大量のミノタウロスを物ともせず、単に赤子の手をひねるようなもの、といった様子で戦っていた(?)元魔王の姿も浮かび上がってきていた。
彼女の後ろ姿に、勇者が感じていたのは、『憧れ』などという生易しいものではなく、99%が危機感、と言っても過言ではない厳しいものだったようである。
その結果、もしも今の自分が現役の魔王と戦ったらどうなるのかを想像して・・・勇者が、何を思って、何を感じたのかについては、言うまでもないことだろう。
「・・・・・・そうか・・・」
勇者の言葉を聞いて、複雑な表情を浮かべる伯爵。
『力に溺れるな』と言いたいのは山々だが、師として仰ぐ相手がワルツなら・・・と悩んでいるようだ。
すると、そんな2人の重苦しいやり取りに横から割り込む女性の姿があった。
「父様。心配せずとも大丈夫です」
父親の前だったためか、普段の粗暴なものとは異なる、丁寧な話し方をしていた狩人である。
「勇者殿は、私よりもずっと強い御仁です。ワルツの下で、すぐに強くなって、きっと本来の『勇者』としての役割を果たしてくれることでしょう(問題は、無事に仲間に入れるか、だけどな・・・)」
「ん?今なにか聞こえた気がするが・・・
「いいえ。気のせいでしょう」
「・・・・・・」
妙に、不安を掻き立てられるような発言が聞こえたような気がして、眉を顰める伯爵。
ともあれ、娘が空耳だというので、忘れることにしたようだ。
「・・・そうか。頑張るんだぞ?勇者。期待している」
「はい。・・・と言っても、今すぐに、というわけでありません。この街の復興が終わってからの話になるので、もう暫くはここで修行がてら、夜の酒のm・・・お手伝いをさせていただこうと考えています」
「・・・なら、今日も付き合ってもらおうか?」
「はい!」
そう言って、お互いに笑みを見せ合う伯爵と勇者。
どうやら、今夜も早めに酒場へと急行することになりそうである。
そして・・・ようやくアトラスと和解した様子のワルツから、ミノタウロスたちを殲滅(?)することに成功した、という報告を受けて、ミノタウロスたちを繋いでいた頑丈そうな鎖の先端を伯爵は受け取ることになった。
その際、彼は、『ミノタウロスを街の復興に生かせないか・・・』などと考えていたようだが、伯爵たちの身長の2倍以上はあるミノタウロスたちを、彼らが御せるのかは・・・不明である。
ワルツたちのこの行動が吉と出るか、凶と出るか・・・。
その話をするのは、この先、勇者たちの社会貢献活動(?)の期間が終わって、ワルツが再び彼らを迎えに来た時になることだろう・・・。
・・・え?
ミノタウロス編が面倒くさくなって、適当に切り上げた?
・・・否定はしないのじゃ。
いやの?
本当は、ちゃんと書いておったのじゃぞ?
ワルツとアトラスが地底湖に降りて、そしてトンネルを歩いて街に戻って・・・。
じゃがのう・・・。
その間、アトラスはずっと不機嫌なままだったのじゃ。
そんな話を書いても仕方ないと思って、色々と省略させてもらったのじゃ。
それに・・・このままじゃと、追加で3話は書かねばならぬ計算じゃったからのう・・・。
じゃから、キリがいいところ(?)で切り上げさせてもらったのじゃ。
・・・それはそうと・・・。
・・・あ、頭が・・・頭が痛いのじゃ・・・。
高負荷でおーばーひーと状態なのじゃ・・・。
このままじゃと、頭だけあっちっちーな狐になってしまうのじゃ・・・。
というわけで、今日も申し訳ないのじゃが、補足を省略させてもらうのじゃ。
・・・本当は、シラヌイと飛竜の話を追記したかったのじゃ・・・。
・・・頭が痛いから、りみったーが働いて、何も考えられないがのう・・・。
で、次回予告。
『常夏の海と密室の殺人』乞うご期待!、なのじゃ?
まぁ、犯人はワルツかコルで、死ぬのはアトラスかイブ嬢かのう。
で、迷探偵はテンポ、と。
先が見え見えなのじゃ・・・。




