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7.1-28 ミノタウロス11

GRO注かもだしなのじゃ〜?

「で、いきなりで申し訳ないんだけど・・・勇者?その鉄パイプ、貸してくれない?」


「え?・・・いや、それは構わないが・・・」


貰ったはずの鉄パイプ(?)を、いきなり返せ・・・とまでは言わないものの、勇者が手に入れてから3秒経たない内に、『貸して欲しい』と言ってきたワルツに対して、彼は戸惑いながら、新しいその相棒を渋々といった様子で手渡した。


「それじゃぁ・・・ちょっと行ってくるわね?ついでに、そこのミノタウロスも借りてくわ」


そう言って・・・地底湖へと差し込んでいた日差しに向かって、鉄パイプと1頭のミノタウロスと共に、飛翔を始めるワルツ。


もしも、この鉄パイプが、本当にミノタウロスたちが守っているお宝だというのなら、封印の結界の外へと持ちだしてしまえば、仲間たちを閉じ込めている封印の結界が解ける可能性があったのである。

そんな仮説を実証するために、結界の影響を受けない彼女は、結界の外へとお宝を持ち出すことで、実際に確かめることにしたのだ。


「・・・ていうか、何処が境界部分なのかしら・・・」


飛び立ってから、どうやって結界の境界部分を見つけて、いかにして結界が無くなったかどうかを調べるか、ということを考え始めるワルツ・・・。


・・・その結果、


「・・・もう一匹、ミノタウロスを借りてくわねー」


結界検出用ミノタウロスと、結界解除確認用ミノタウロスの2頭を使って、結界の有無を確かめることにしたようだ。

そのついでに・・・


「んがっ?!」


コルテックスの前で、両腕で自身の頭を支えていたアトラスも連れてくる・・・。


「な、何だよいきなり・・・」


「え?そりゃぁ・・・実験台になってもらう的な?」


「は?」


「いやさー?ミノタウロスを使って、結界が無くなったことを確認したとするじゃない?でもさ、それで確実に安全を確認したって言えないと思うのよね・・・。最悪、ミノタウロスには通用しなくて、人だけに通用する結界が残ってたりした時に、仲間の誰かが誤ってその壁を超えて消し飛んじゃったりしたら大問題でしょ?だから・・・アトラスには、安全を確認するための実験台になってもらおうと思ったのよ」


「え?消し飛ぶ?初耳だぞ、それ・・・」


「あぁ・・・言ってなかったわね」


「・・・・・・」


(コルテックス)以上に横暴で適当な姉を前にして、計測した数値以上の重力加速度が襲いかかっていた重い頭をどうにかして手で支えようとするアトラス。

それから、無理矢理に生体が結界を越えようとすると、何処かへと身体が消し飛んでしまう、という話を、ワルツに聞いて・・・その結果、彼は思わず声を上げた。


「お、俺に死ねと?!」


「いいえ。多分、アトラスが完全に消し飛ぶことはないわよ?生きてるミノタウロスは消し飛んじゃったけど、生き物じゃない私が超える分には何の問題もなく超えられたしね。だから、アトラスが結界を越えようとすると・・・ニューロチップと骨格だけは、なんとか残るんじゃないかしら?」


「嫌すぎるだろソレ・・・」


ワルツの説明を聞いたアトラスは、結界を超えた結果、生体の細胞部分だけが消し飛んで、レントゲンで写した骨格のように、金属で作られたフレームだけが残ってしまうだろう自身の姿を想像して、顔を青くした。


そんな彼の様子に、流石のワルツでも横暴すぎたことを自覚できたのか、彼女は仕方なくフォローすることにしたようだ。


「まぁ、最悪、少しずつ超えればいいじゃない。腕くらいなら、近くにカタリナもいるんだし、すぐに治してくれるわよ。きっと」


「・・・はぁ・・・分かったよ。最悪の場合はどうにかしてくれよな」


勇者の体細胞から作られていたアトラスは、自身が犠牲になることで仲間たちが確実に助かるなら、と考えたのか・・・嫌々ながらもワルツの作戦(?)に協力することにしたのであった・・・。




それから、地上へと繋がる縦穴を、天井から地上までおよそ半分ほどの距離まで進んだ辺りで・・・


ムォ・・・


ワルツが進路上に浮かべていたミノタウロスの身体が、突然、蒸発するように消し飛んだ・・・。

どうやら、結界の境界部分を超えてしまったらしい。


「ここね」


「絶対、あんな風にはなりたくないな・・・」


突如として消えてしまったミノタウロスのことを、自分に置き換えて考えたのか、心底イヤそうな表情を浮かべるアトラス。

まぁ、それでも、ちゃんと結界の手前で止まった姉の行動に対して、彼はホッと胸を撫で下ろしていたようだが。


「それで・・・これからどうするんだ?」


「そうね・・・」


ワルツはそう短く呟くと、手にしていた鉄パイプ(?)を重力制御で浮かべ・・・


「この鉄パイプ(おたから)を、結界の外に出したら・・・もしかすると結界が消えるかもしれない、ってイブだかユキだったかが言ってたのよ。というわけだから・・・」


そしてソレを結界の外へと・・・撃ちだした。


ドゴォォォォン!!


・・・ただし、勇者からの借り物だったので、紛失したら困ると思ったのか、青い空に向かって無闇に放り投げるようなことはせず、縦穴の地上付近の壁に刺すことにしたようだ。

なお、もちろんその場所は、結界の外側である。


「・・・で、どうなのかしらね?」


「・・・どうって?」


「結界が消えたかどうか」


「・・・こんなんで消えるのか?」


「さぁ・・・」


「・・・・・・」


そう言い合ってから、戸惑いの表情を浮かべて、黙りこむワルツとアトラス。

魔力を感じ取ることの出来なかった2人にとっては、結界が消えたとしても、消えなかったとしても、その存在も変化も認知することが出来なかったのだ。


故にワルツは、


「・・・ま、それを確認するために、2体目のミノタウロスを連れてきたんだけどね・・・」


結界が消えたかどうかを確認するための生け贄(ミノタウロス)を連れて来たのである。


・・・というわけで、


「それじゃぁ、行くわよ?」


ムォォォォ!?


命の危険を感じているのか、必死になって暴れている様子のミノタウロスを、ワルツは重力制御を使って一思(ひとおも)いに・・・


「・・・・・・なんか、可哀想になってきた」


「・・・は?」


・・・一思いに犠牲にできなかったようである。


「今更、何で悩んでるんだよ・・・」


つい数十秒前に、別のミノタウロスを犠牲にしたにも関わらず、突然、訳の分からないことを言い出したワルツに対して、思わずジト目を向けてしまうアトラス。


そんな、呆れた視線を向けられたワルツは、大きくため息を吐きながら・・・しかし、開き直って言った。


「・・・じゃぁ、逆に聞くけど、アトラスはあのミノタウロスのことを()れる?」


「何だよ急に・・・」


姉は一体、何を言っているのか、と思いつつも、アトラスは浮かべられていたミノタウロスに対してその視線を向けた。

するとそこでは・・・


ウルウル・・・


と、つぶらな瞳で命乞いをする様子のミノタウロスが・・・。


「・・・もう、眼を瞑って殺るしか無いだろ・・・」


「・・・いやー・・・そうよねー。それしか無いわよね・・・」


どういうわけか釈然としない表情を浮かべながらも説得するように話すアトラスの言葉を聞いて、ワルツは深く考えこむように眉を顰めた。

今の彼女の心境を例えるなら・・・牧場の牛に名前を付けて、そして食肉に加工するために屠殺しなければならなくなった牧場関係者の心境、といったところだろう。


「殺りたくないけど・・・殺るしかないわね・・・」


イブがミノタウロスたちに名前を付けていたことに対して、あーでもないこーでもないと考えていた自分が、今、こうしてミノタウロスを犠牲にすることについて忌避感を感じていることに、人知れず頭を悩ませるワルツ。


そしていいだけ悩んだ後で、彼女は・・・ついにミノタウロスを犠牲にすることを決心したようだ。


「・・・眼を瞑って、殺ればいいのよね?」


「姉貴の呟きを聞いている限り、なんか変な方向に進んでる気がしなくもないが・・・そうだな。姉貴が眼を瞑ることで楽になるって言うなら、ソレでいいと思うぜ?」


「・・・分かったわ。アトラスに相談して、随分楽になったわ・・・」


「・・・なんか気持ち悪いな・・・」


普段と違って、妙に素直なワルツの様子に、苦笑を浮かべるアトラス。


・・・そして、その時は訪れた。


「じゃぁ、行くわよ!」


そう言って、アトラスの言う通りに(カメラ)を閉じ、重力制御の力場の方向を調整するワルツ。


それから間もなくして、


「っ!」


ドゴォォォォン!!


そんな爆音を上げながら・・・ミノタウロスは空に向かって打ち上げられたのである。


「ふぅ・・・。スッキリした!」


ワルツは、そう言いながら清々しい表情を浮かべ、眼を開けて空を見上げた。


するとそこには、空に向かって無事(?)に上昇し続けるミノタウロスの姿が見えていたので・・・結界は無事に消え去った、ということなのだろう。

やはり、鉄パイプはミノタウロスたちのお宝になっていたようだ。


「うん。じゃぁ、帰りましょうか」


彼女は安心したような表情を浮かべてから、目の前にいるだろうアトラスへと視線を戻した。


・・・しかし、そこには、彼の姿は無かったのである。

忽然・・・。

そんな言葉が、現状を過不足なく的確に表現できるだろう。


「・・・あ・・・」


彼がどこへと消えたのか、ようやく理解して、唖然とした表情を浮かべるワルツ。


・・・どうやらアトラスは、ワルツが眼を瞑って重力制御を操作したせいで、ミノタウロスと共に、高い高い空へと打ち上げられてしまったようだ・・・。

え?今日は書けなかったんじゃないのか?

それのう・・・どうにかなったから、こうして書いておるのじゃ?

為せば成る、というやつじゃろうかのう。


まぁ、それはいいのじゃ。

問題は・・・まだ、窮地を脱していないことなのじゃ。

来週も忙しい日々が続く故・・・どうにかこの土日で、3〜4話くらいは、ストックを作っておきたいものじゃのう・・・。

来月初めには・・・今日や来週とは比べ物にならないほどの大変な密度で、スケジュールが詰まっておるからのう・・・。

ミッドエデンの上下院議長は、暇じゃないのじゃぞ?

・・・殆ど、コルテックスが取り仕切っておるがの・・・。


・・・そんなこんなで。

今日の分を補足してしまうのじゃ。

まぁ、正しくは、昨日書いた文じゃがの。


で・・・何か補足することはあったかのう・・・。

あぁ、そうじゃ。

空を飛んでいったミノタウロスの姿は良いとして、彼(?)と共に打ち上げられただろうアトラスの姿はどこへと消えたのか、についてかのう。


それは・・・ミノタウロスよりも前を飛んでおるために、ワルツからは影になって見えておらぬだけなのじゃ。

アトラスとミノタウロスとで、同じ人形(ひとがた)ゆえ、Cd値はそう変わらぬはずじゃから、表面積の大きなミノタウロスの方が空気抵抗が大きくて、速度があまり出なかったのじゃろうのう・・・。

え?Cd値?

ggrなのじゃ!


他は・・・まぁ、いいじゃろう。

これから、BLDCM用のいんばーたーを作らねばならぬから、今日()さっさと、御暇させていただくのじゃ!


・・・次回、『アトラスの葬儀』乞うご期待!なのじゃ?

・・・その場合・・・やはり、国葬になるのかのう?

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