7.1-25 ミノタウロス8
GRO注なのじゃ。
「じゃぁ早速、お手並み拝見、といこうじゃない?」
「・・・・・・分かった」
勇者がパーティーに参加するかどうかはともかくとして・・・。
封印の結界魔法の内側に隔離されてまった現状において、勇者をそのまま放置するという選択はない、と考えたワルツは、小手調べを兼ねて、彼にも戦ってもらうことにした。
すると、運がいいのか悪いのか・・・
ムォォォォ!(x8)
と、先に見える曲がり角の方から、ミノタウロスたちが大量に曲がってくる。
その様子を見て、ワルツは苦笑を浮かべて頬を掻きながら、
「いやー、このトンネルを作った本人として、どうかとは思うんだけどさ・・・もう少し真っ直ぐに掘ってもよかったね・・・。見通しが悪くて堪んないわ・・・」
そんなことを口にした。
ちなみに、トンネルの中に直角のコーナーが多いのは、地下核融合炉やトラップを作る際に、鉱脈を探して素材集めをした結果だったりする・・・。
その言葉を聞いた勇者は、ゆっくり地面から起き上がると、身体中に付いた埃を叩き落としながら、呆れたような・・・あるいは関心したような様子で口を開いた。
「・・・このトンネル、噂通り、ワルツたちが作ったんだな」
「伯爵に聞いてなかったの?」
「ニュアンスだけ、だな」
「ふーん・・・」
どうやら伯爵は、本来なら部外者である勇者に対して、ドコからドコまでを話して良いのか分からなかったようで、詳しい話を彼にはしていなかったようだ。
・・・まぁ、勇者が詳しい話を聞いてないことが分かっても、ワルツは面倒臭がって、結局、説明しないのだが・・・。
「それじゃぁ・・・とりあえず、狩人さんが半分、勇者がもう半分を倒す、ていうのはどうかしら?」
「おう!任せておけ!」
狩人は、そんな男っぽい口調でワルツの提案に頷くと、単身、ミノタウロスへと突っ込んでいった。
もちろん、そのうしろ姿には、目の前から動く壁のように迫ってきていたミノタウロスに対する恐れの色は全く見えない。
一方で・・・
「ま、マジか?」
と言いながら、無手のまま及び腰になる勇者。
そんな『勇者』とは思えないような振る舞いを見せる勇者は、その手を開いたり閉じたりしながら、ワルツに対して続けて問いかけた。
「も、もしかして、俺に素手で戦えと?!」
「あー、忘れてたわ。ウチのパーティーって、武器無しで戦える人が殆どだから・・・。実は狩人さんもそうよ?」
「え・・・」
ワルツのその一言に、勇者は次元の違いを感じたのか、思わず固まってしまったようだ。
なお、狩人の場合、無意識の内に、不可視のダガーが作れるとか作れないとか・・・。
「んー・・・じゃぁ、仕方ないから、武器を貸してあげるわ。はい、片手上げて」
「・・・?」
ワルツが片手を出せ、というので、勇者は首をかしげながら、その利き手を差し出した。
すると彼の腕の人差し指の先3cmほどの空間から・・・
ブゥン・・・
と、真っ黒な樹の枝のような・・・あるいは、小さな黒い雷とも言うべき、幾つか枝分かれをした、40cm程度の棒状の『何か』が現れる。
勇者の指の角度に追従して動くようで、これを使ってミノタウロスと戦え、ということらしい。
「あ、それ触ったら、命の保証は無いから気を付けてね?」
「ちょっ・・・」
もう少しで、反対側の手で触れるところだったためか、その言葉を聞いて、顔を青くする勇者。
「それ、本当は武器じゃないんだけど、説明すると長くなるから端折って説明すると・・・重力制御で作った次元の裂け目ね」
「・・・は?」
「ま、とにかく、試しに切ってきなさい。それが一番わかり易いと思うから」
「・・・分かった」
それ以上、説明する気の無さそうなワルツの言葉に、勇者は渋々頷くと、その全く重さを感じない『樹の枝』に少々不安を感じながら・・・先に戦っているだろう狩人の背中を追いかけたのであった。
ゴォォォッ!!
人の手で掘ったとは思えない滑らかなトンネルの地面を思い切り蹴って、突然生じた暴風のように前へと進む勇者。
眼を瞑っていても見えそうな彼のその姿は、全く気配のない狩人とは完全に正反対である、と言えるだろう。
そんな殺意の固まりが、自分たちに押し寄せてきたことを感じたミノタウロスたち4頭(?)は、前触れ無く倒れた別の4頭の仲間たちから視線を戻すと、迫り来る暴風に視線を向けた。
・・・次の瞬間、
ヌルッ・・・
とした、感触が、先頭に立っていたミノタウロス1体の身体と、そして『樹の枝』を振り下ろした勇者の腕に伝わってくる。
そして・・・
ドシャッ!
バタンッ・・・
・・・まるで、食紅の入った大きな水風船が破裂させるかのように、真っ赤な液体を周囲に飛散させながら、ミノタウロスは身体を2つに分けて、そのまま地面へと沈み込んでしまった。
「な、なんだこれ?!」
余りにも手応えが無さ過ぎたためか、指の先から生えている(?)謎の『樹の枝』に、勇者はそんな感想を口にしながら驚愕の表情を浮かべるも・・・しかし、すぐに次のターゲットを見据えると、彼は2体目のミノタウロスに突進した。
ドシャッ!
バタンッ・・・
そして、2体目もあっけなく、惑星の重力に逆らえなくなって、地面に吸い込まれる。
その頃になると、流石に仲間たちがやられていることに気づいたのか、残り2体のミノタウロスたちは、自分たちの得物構え、勇者に対して闘志をむき出しにした。
ムオォォォォ!!
ドシャッ!
バタンッ・・・
・・・しかし、闘志も雄叫びも、そして構えた頑丈なラブリュスでさえも、黒い枝のようなものを持った勇者には全く通用せず、あっけなく3体目も地面に溶けるように絶命してしまった。
そんな仲間たちの様子を見ていた最後の1体は・・・流石に怖気づいてしまったのか、勇者に対してラブリュスを放り投げると、一目散にその場を逃げ出してしまう・・・。
「ちょっ・・・!」
飛んできたラブリュスを、手にした『樹の枝』で往なそうとすると、抵抗なく切ってしまうために受け止められない、ということに気づいた勇者は・・・急遽、体勢を崩して避けることで、どうにか事なきを得ることに成功する。
しかし、その結果、最後に残ったミノタウロスと大きく距離を取られてしまったようだ。
「に、逃がすか!」
距離は8m程度。
勇者の脚力なら、十分追いつける距離である。
結果、彼は、逃げたミノタウロスの背中に向かって、突進しようとしたのだが・・・
パァンッ!!
「?!」
・・・自身を後ろから追い抜いていった白い何かが、逃げていたミノタウロスの背中に当たって・・・そして、たった一撃で、木っ端微塵に吹き飛ばしてしまった。
例えるなら・・・戦車版のショットガンとも言えるキャニスター弾を至近距離で喰らったのと同じような状態、と言えるかもしれない。
そして、勇者を追い抜いていったソレは・・・いや、彼女は、全く返り血の染まっていないその身体を振り向かせると、勇者に対して苦笑を浮かべながら口を開く。
「ミノタウロスが逃げてしまうそうでしたので、僭越ながら、代わりに処理させていただきました。ご了承ください」
そう言って、勇者に対して恭しく頭を下げる・・・元魔王。
そんな彼女を前に、勇者は・・・
「・・・だ、駄目だ。全く勝てる気がしない・・・」
そう言って、再び顔を青ざめさせた。
彼女がやってくるその直前まで、『これなら何にだって勝てそうな気がする・・・!』と思っていた彼の考えすらも、どうやらユキは、軽々と吹き飛ばしてしまったようだ。
「・・・はいはい。大体見せてもらったわ」
ある意味で戦意を喪失してしまっていた勇者の後ろから、ワルツはおもむろに声を掛けた。
「勇者は・・・やっぱり、勇者だけあって、筋力だけで戦おうとする癖があるみたいね。ま、悪いとは言わないけどさ」
「・・・確かに、自覚はあるな・・・」
「もしも、ウチのパーティーに入るなら、それだけじゃ、やっていけないわよ?腕力だけなら、ユキにも、そしてアトラスにも勝てないはずだし・・・」
「・・・なんで、みんなそんなに腕力があるんだよ・・・」
「そりゃ・・・人間じゃないからね?」
「・・・・・・」
ワルツの言葉に、思わず言葉を失う勇者。
恐らく彼にとっては、今、話している相手が、本物の魔神に見えているに違いない・・・。
「そういうわけで・・・強くなりたいなら、戦いの中で、必死になって自分の特技を磨いていくことね。ま、なんとかなるでしょ?分かんないけど・・・」
ワルツは適当な様子でそう言ってから・・・手際よく自分のノルマを達成して、ダガーのチェックをしていた狩人に対して問いかけた。
「えーと、狩人さん?まだ物足りないですか?」
「ん?どうしたんだ急に・・・」
「もう少し、勇者の戦い方を見てみたいなー、と思いまして、お付き合いしていただけないかな、と」
「あぁ。それなら全然構わないぞ?」
「そうですか。じゃぁ、追加でミノタウロスを用意しますね?」
『・・・は?』
ワルツが一体何を言っているのか分からず、思わず聞き返してしまう一同。
そんな彼、彼女たちの様子を気にすること無く・・・ワルツは、一見すると行き止まりに見える、直角に曲がっていたトンネルの壁を、その手で押した。
その瞬間、
ドゴォォォォン!!
と、トンネルのコーナーの壁が崩れて、むき出しになる空洞。
「いやー、実は、この地下トンネル。直角に見えて、実は少し掘りすぎていたりして、後で壁を埋めた部分がたくさんあるんですよ。で、今回、ミノタウロスが湧いてる場所っていうのが・・・」
ムォォォォ!!(x無数)
「・・・こういったデッドスペースなんですよね・・・」
『ちょっ!?』
てへぺろ状態のワルツが開けた穴の向こう側から無数に聞こえてくる雄叫びを聞いて、慌てる仲間たち。
どうやら勇者だけでなく、狩人も、そしてユキも、もうしばらく戦闘を強要されそうである・・・。
「・・・私、何すればいいんだろ・・・」
・・・まぁ、戦う術のないイブは単に暇だったようだが。
・・・納得できぬ。
納得できぬのじゃ!
こう、なんというか・・・長い文が読みにくいというか・・・。
何度も読んでおると、ゲシュタルト崩壊(?)を起こして、自分で何を書いておるのか分からなくなってくるのじゃ・・・。
まぁ、それは今始まったことではないがの?
さて・・・ここいらで一応予告しておくのじゃ。
今週の金曜日と、来週の水曜日。
多分、書けぬのじゃ・・・。
いやの?
地球の裏側にいても書いておったから、どうにかなるとは思うのじゃが、明日、明後日で、ストックを貯めることが出来なければ、書いておる時間とネットワークが無くて、アップロード出来ぬと思うのじゃ。
どうにか投稿予約を使って、2年目も毎日更新していきたいんじゃが・・・一応、出来なかった時のためにここに記して・・・・・・いや、何としても書くのじゃ!
・・・そのせいで、ただでさえ低いくおりてぃーが、底を抜けて、地面にめり込んでしまっても、どうか生暖かい眼で見守ってもらえると助かるのじゃ・・・。
まぁ、努力はするがの?
さて。
補足に入るのじゃ。
・・・キャニスター弾について。
詳しくは、動画などが沢山ある故、ggrなのじゃ!
・・・まぁ、それでも簡単に説明するなら・・・そうじゃのう、大きなショットガンなのじゃ?
もちろん、人が手で持って使うようなショットガンとは、規模がまるで異なるのじゃ。
小さな林などに向かって撃つと・・・多分、何も残らないんじゃなかろうかのう?
そんな、非人道的な、いやーな武器なのじゃ。
・・・全くもって、向けられたくはないの。
今日はそんなところかのう。
では、恒例の予告(?)。
・・・次回、『イブの覚醒!ミノタウロスなんてけちょんけちょんのギッタンギッ(略』乞うご期待!かもだしなのじゃ?
・・・あの犬娘が、そんな戦闘をする日は・・・・・・多分、来ないがの。




