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7.1-20 ミノタウロス5

(危なっ!・・・これ、ミノタウロスの方じゃなくて、みんなの方を先に外側に連れ出してたら、取り返しの付かない事になるところだったわ・・・)


一同の眼の前で、突然姿を消してしまったミノタウロス。

もしも、彼(?)が現れず、自分が仲間たちのことを重力制御で浮かべて無理矢理に結界を超えさせていたなら・・・と想像して、ワルツは背筋にヒヤリとしたものを感じていた。


「・・・残念だけど、ジローは私たちのために犠牲となって、お星様になっちゃったみたいね・・・」


ある意味、仲間たちの代わりに犠牲となってしまったミノタウロスのことを慮りながら、イブの言葉を借りて、そんなことを呟くワルツ。

するとイブは、


「ううん。全然残念じゃないかも?だって、サブローもシローもいるし・・・」


ケロっとした表情を見せながら、そう口にした。

どうやら、イブを始めとして、その場にいた仲間たちは、もう少しで自分たちが死んでいたかもしれない、という危機に気づいていなかったようだ。

ただ、騒ぎにならなかったという点だけは、あと一歩で加害者になりそうだったワルツにとっては幸い、と言えるだろうか。


「・・・何で今まで、次郎が抜けてたのよ・・・」


仲間が気づいていないなら、『別に良いか・・・』と過ぎ去った危機をとりあえず忘れ去って・・・イブの言葉を聞いて浮かんできたどうでもいい疑問を口にするワルツ。


すると、その言葉自体に特に意味が含まれていないことを察したのか、ユキがおもむろに口を挟み込んできた。


「あの、ワルツ様?狩人様が・・・」


そう言って・・・地面に両手両膝をついて、項垂(うなだ)れている狩人に対して、戸惑いの視線を向けるユキ。

どうやら狩人の心のHPゲージ(ヤるき)は、ミノタウロスを狩るというイベントを達成できなかったために、0を下回ってしまったようだ・・・。


ワルツは、そんな狩人の側に腰を降ろすと・・・それから彼女の肩にそっと手を置いて、残念そうな表情を浮かべながら言った。


「・・・狩人さん。ミノタウロスは、まだ全部狩ったわけではないんですから、そんなに気を落とさないでください」


「どうして・・・どうして、ミノが目の前で消えるんだ・・・」


「・・・んー、どうしてでしょうね・・・」


・・・分かっていて、その理由を口にしないワルツ。

その代わりにユキが、何か説明をしようとしていたが・・・ワルツがユキだけに見える角度で、自身の唇に指を当ててると、ユキはちゃんと彼女の意図を読んで、口を(つぐ)んだようである。




それから、ワルツがどうにか狩人のことを(なだ)めて、心のHPを50%程度まで回復させた後で。

超えることの出来ない結界魔法の境界部分を調べていたユキが、小さくため息を吐いて首を振ってから、口を重そうに開いた。


「・・・これは、結界を無理矢理に超えることを考えるよりも、ミノタウロスをどうにかしたほうが早いかもしれませんね・・・」


「やっぱ、それが一番よねー。・・・・・・あれ?そういえばさ・・・」


ワルツはそんな前置きを口にしてから、首をかしげながらユキに問いかける。


「ミノタウロスが守ってるお宝の方をどうにかすれば・・・・・・結界が消える、っていうのは無いの?」


「お宝をどうにか・・・とは?」


「確かユキの話だと、そもそもこの結界は、お宝を外に持ちださせないようにするために展開されてるのよね?なら・・・例えば、そのお宝とやらを見つけて、私がこの結界魔法の向こう側に持ち出してみるとか・・・。まさか、お宝が結界の外に持ち出されたのに、いつまでも空気だけを守り続けるとか無いわよね?」


「・・・なるほど。確かに試してみる価値はあるかもしれませんね。・・・流石は魔神様です」


「いやいやいや・・・マシンだけど魔神(ましん)じゃないからね?」


と、半ば口癖になってしまったセリフを口にするワルツ。

その際、ユキもイブも、そして狩人も、何故か困惑の表情を浮かべていたようだが・・・詳しい理由は不明である。


「で・・・どこにそのお宝はあるわけ?」


「誰も動かしていないのでしたら・・・結界の中心にあるのではないでしょうか?」


「ふーん・・・。結界が円形に広がってるかどうかは定かじゃないけど・・・とりあえず、境界部分を3箇所探して、正接円の中心辺りを探してみましょうか」


『・・・え?』


ワルツが未知の言葉を唱えたためか、眼を点にして固まるユキと狩人。

・・・しかし、イブの方は、どうやら彼女の言っていることが理解できたようである。


「・・・測量?」


「んー、測量に使われることがあるかどうかは分からないけど、音や電波の発生源を算出する時とかには使うかもね」


「ふーん」


と、異世界人なのにも関わらず、『電波』という言葉を聞いても疑問には思っていない様子のイブ。

やはり彼女は、ある程度、現代世界の知識にも精通しているようだ。


そんな彼女の反応に気づきながらも、詳しく問いかけるようなことは無く・・・その代わりワルツは、仲間たち全員に向かって、その口を開いた。


「それじゃぁ、ミノタウロスを狩りながら、ここから少し離れた場所の結界の境界3点・・・えーと、ここを含めれば、残り2点ね。それを見つけて、お宝を探してみましょうか」


すると、


「おっけーかも?」

「ミノタウロス・・・次こそは必ず・・・」

「え?あ、はい・・・」


と、それぞれ反応を返す仲間たち。

そんな3人の言葉に共通して言えるのは・・・ワルツと同じく、『お宝』という言葉に、全くと言っていいほどに反応を示さないことだろうか・・・。


・・・ともあれ。

こうしてワルツたち一行は、来た道を地底湖のあった空間まで一旦戻って、別のトンネルへと足をすすめることにしたのである。




そして・・・水中に沈む機雷か何かを爆破しているのか、爆音と水柱が立ち上っている地底湖のその縁を、何も見なかった、といった様子でそのまま通過して、別の通路へとやってきたワルツたち。


なお、この通路は真っ直ぐ行くと・・・少々遠回りをしてサウスフォートレスの伯爵邸へと繋がっているはずである。

伯爵邸側から入ってくる際、Y字に分かれていた通路の1本に繋がる道、といえば分かるだろうか。


そのトンネルの中を、一列になってワルツたちが進んでいくと・・・


「・・・あのー、狩人さん?ミノタウロスがそこの角を曲がった所に潜んでいるみたいですよ?」


トンネルに入ってから3つ目の左曲がり角に差し掛かった際、ワルツの生体反応センサーに、何やら生物の影が映ったようだ。


「・・・!」


ワルツの言葉に一旦驚いた後で・・・ニンマリと笑みを浮かべる狩人。

それから彼女は、両手で腰のダガーを抜いて、一同の先頭へと足を進めていったのだが・・・・・・そのうしろ姿は、どう見ても、狩りをする者の姿には見えなかった・・・。


『・・・・・・』


そんな、彼女の後ろから、微妙な視線をその背に向ける仲間たち。


・・・そして狩人が、通路の角に身を潜め・・・その先を、そっと覗き込んだ・・・そんな時である。


「・・・?!わ、ワルツ!」


何を見たのか、彼女が急に大きな声を上げたのである。


「・・・!」


その声に、尋常ならないものを感じ取ったワルツは、狩人のいた通路の角を通り越して、その先へと跳躍した。


その結果、彼女の眼に見えてきたのは・・・


「・・・・・・なんて声を掛けて良いのかしらね?」


先程まで、別の通路で白い布を被せられていた勇者が、何故かこの通路で力なく横たわっていて・・・そんな彼に、今にもラブリュスを叩きつけようとしていたミノタウロス2体の姿だったのである。

どうやら、目の前の勇者は、本当に、ミノタウロスにすら勝てないようだ・・・。

勇者。

彼は・・・この物語では、ここまで単なるモブだったのじゃ。

じゃがの?

・・・いや、何でもないのじゃ。


まぁ、そんな思わせぶりな話は置いておいて・・・。

明日は平日じゃから、さっさと今日の()()の補足をしようと思うのじゃ。


内容が薄すぎて何もない・・・と思ったんじゃが、1点だけ。

地底湖で何が起こっておるのか・・・。

・・・まぁ、コルが何かをやっておるのじゃろう。

普通に泳げないコルなりの水遊び・・・と言えばいいじゃろうか?

・・・いや、水遊びではない可能性も否定はできぬがの。


そんなところかのう。

あとは・・・勇者の話は明日なのじゃ。

明日中に・・・出来るといいのう。


というわけで、次回、『勇者、断首!』乞うご期待、なのじゃ!

・・・もちろん嘘じゃがの。

そんな感じで、適当に書ければいいんじゃがのー。


そうそう。

そういえば今日はどんな感じで文を書いたのかを、ちょっとだけ記しておくのじゃ。

・・・できるだけ脱力して、てきとーな感じで、ゆっくりと・・・なのじゃ。


例えば、一番最初の方にある文。

『一同の目の前で、突然姿を消してしまったミノタウロス』

という文があるじゃろ?

今日は、これを、こんな感じで書いたのじゃ。


『いちどーの目の前で〜、突然、姿を、消してしまった、ミノタウロス〜』


・・・もう完全に、コルとイブ嬢のはいぶりっどなのじゃ・・・。

じゃから、書いた当時と同じように、本文をそんな感じで読むと・・・また違う感じの意味合いに見えるかも知れぬのう。

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