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7.1-17 ミノタウロス2

「・・・えーと?何やってるのかしら?」


牛舎(?)に繋がれていた牛・・・もとい、ミノタウロスたち(120人?頭?匹?)が、


『(ムォォォォ!!)』


と何故か皆、猿轡をされて雄叫びを上げている・・・。

そんな空間の中で繰り広げられていた仲間たちのカオスな状況に、ワルツは重い頭を押さえながら、小高い岩の上に立っていたコルテックスに問いかけた。


「ちょっと暇だったので、牧場を建設してみようかと思いまして〜」


「えっ・・・」


するとコルテックスの言葉に、眼を点にして固まってしまうイブ。

その表情から察するに、彼女は・・・『さっき言ってたことと違うかもだし?!』などと思っているに違いない・・・。


それから、驚くイブの姿を気に留めること無く、ワルツはコルテックスに続けて質問した。


「いやさ?確かに、白と黒のまだら模様だから牛っぽいのは分かるんだけど・・・家畜にしてどうするの?食べるの?頭と下半身を除けば、完全に人じゃない・・・」


ミノタウロスの頭を除いた上半身は、体毛の生えていない普通の人間のそれと、全く同じだった。

つまり、彼らを解体して食べるとなると、その身体の半分は、人の・・・・・・いや、そういったカニバリズムな話は止めておこう・・・。

・・・つまり、人間がミノタウロスを食べるというのは、相当、敷居の高い行為だったのである。


ワルツはそう考えて、問いかけたのだが・・・。

問いかけられたコルテックスは小さくため息を付いてから、その内心を口にし始めた。


「最初はこの世界には無い牛乳を確保するために、メスのミノタウロスたちを捕まえて搾乳機に繋ぐつもりだったのですが、残念なことにメスの姿が見つけられなかったんですよね〜」


「で、気づいたら、牛舎を作るのに夢中になって、メスとかオスとかどうでもよくなったと?」


「流石はお姉さま〜。よく分かっていますね〜」


「・・・・・・」


自分ならそうする・・・と思って問いかけた結果、本当にその通りだったために、色々な意味で閉口するワルツ。


すると、コルテックスの隣にいて、ワルツと同じように微妙な表情を浮かべていたイブが、おもむろにその口を開いた。


「・・・ねぇ、コルテックス様?これからあのミノタウロスたち、どうするの?」


「それは〜・・・どうしましょうか〜?全て殺処分しなくてはならないはずなので、全てアトラスに任せる、という手もあるのですが〜・・・それだと少しお肉がもったいない気がするんですよね〜。とりあえずは、飛竜さんに食べてもらう、というのが妥当な線でしょうか〜」


とコルテックスが口にすると・・・


「(もがぁ!!)」


・・・牛舎の方で、何か、ミノタウロスの鳴き声ではない声が聞こえてきたようだが・・・そこにいた誰もが気にしていないようなので、おそらく気のせいなのだろう・・・。


一方、コルテックスに話題を振られた飛竜の方は・・・


「・・・・・・」


・・・ゲッソリとした様子で、地面に沈んだまま黙り込んでいた。

どうやらミノタウロスを食べる食べない以前の話で、飛竜のHPは、すでに0を割っているようだ・・・。


「ねぇ?飛竜・・・じゃなくてカリーナは何であんなことになってるわけ?」


本人の方は返事をすること自体が大変そうだったので、代わりにコルテックスへと問いかけるワルツ。


「この場所にあった鉄材料を、飛竜様のブレスを使って、牛舎の材料に変えたので、そのせいで疲れちゃったみたいですね〜。・・・まったく〜。最近のドラゴンたちは、みんな甲斐性(かいしょう)が無いですね〜。少しはルシアちゃんを見習って欲しいところです」


「いや、ルシアと比べたら・・・そりゃそうでしょ」


ワルツがそう言いながら、呆れたような表情を見せていると・・・


「(・・・いや〜、実はルシアちゃんや・・・それにカタリナ様だけではないんですけどね〜・・・)」ボソッ


とコルテックスが口の中だけで小さく呟いた。


「え?」


「いいえ〜。何でもないですよ〜?」


ワルツには聞こえなかったためか、思わず疑問の声を漏らしていたが、コルテックスは(はぐ)らかすようにそう言うと、その場でクルッと方向転換して、今もなお作業を続けていたシラヌイの方へ向かって歩いて行った。


そして、彼女は不意に立ち止まると、シラヌイに言葉を投げかける。


「あの〜、シラヌイちゃん?もう、鎖は十分なので、作らなくてもいいですよ〜?」


「・・・・・・」ブツブツブツ


カンカンカン!!


電気炉で加熱して柔らかくなった鉄を、相当な勢いで叩いて伸ばして・・・そしてC型にした鉄同士をくっつけO型にすると、その輪の中にC型の鉄を通して再びO型の鉄を形作っていく・・・。

シラヌイは、そんな単純作業を、嬉々とした表情を浮かべながら、超高速な手つきで繰り返して、長い鎖を作っていたのだが・・・どうやら、彼女は作業に夢中になりすぎて、誰の声も届かない自分だけの異空間に入り込んでしまっているようだ・・・。


「あの〜・・・シラヌイちゃん?」


シラヌイの前で、手を振って、自身の存在をアピールするコルテックス。

彼女が、シラヌイの側に近づくのではなく、少し離れた場所から声を掛けていたのは・・・やはり、シラヌイにとって気に食わない作品が出来た時に、とばっちりを喰う可能性を恐れていたためだろうか・・・。


「・・・何やってんの?」


「知らぬが仏〜・・・ですよ〜?」


「・・・急に真顔で言われると何か怖いんだけど・・・」


コルテックスの行動が気になったワルツが、その理由を問いかけると、彼女は普段のままの話し方で、急に真顔になって言葉を返してきた。

彼女が、詳しい理由を言わずに、そんな意味深気な行動を取ったのは・・・もしかすると、実際に何か見てはいけないシラヌイの行動を、目の当たりにしたから・・・なのかもしれない。


「どんなことがあったのかは知らないけど、暫く放っておくしか無いわね・・・」


「私もそれをおすすめします」


そう言い合って、お互いに頷くワルツとコルテックス。


すると、ワルツの3歩斜め後ろを、忠実にライントレース(?)して来ていたユキが、何かを思い出したのか、はっとした表情を見せて、手を合わせながら言った。


「・・・あ、そうだ!思い出しました!」


「え?何を?」


「ミノタウロスについての情報です」


そしてユキは、いつも通りの様子で説明を始めた。


「彼らは迷宮の中でも、特に封印された何かを守る守護者としての役割があると言われています。なので、ここにはもしかすると・・・お宝が眠っているのかもしれません」


すると・・・


『ふ()ん』


と今にも、『あっそ』と言いそうな表情で、そんな音を漏らすワルツとコルテックス。


「・・・な、何ですか?お2人方とも・・・。妙に反応が鈍いようですが・・・」


ユキが問いかけると、最初に言葉を返したのはワルツの方だった。


「いやさ?この世界に来てから、お宝らしいお宝を見たことがなくて、正直、『お宝』と聞いても、特に何も感動しないのよね・・・」


そう言いながら、頭の中で、王城の中に残されていた装飾品や金塊のことを思い出すワルツ。

そんな、一般的には『お宝』と呼ばれる類の品々に彼女が感動を示さないのは・・・恐らく、ワルツには、それらの装飾品が、単なる工業用材料にしか見えていないから・・・ということなのだろう。


その後で、今度はコルテックスが、頬に手を当てながら口を開いた。


「おねえさまと同じというのも何ですが、実は私もそうなのですよ〜。手に入れようと思えば、お金で何でも手に入りますしね〜」


『・・・・・・』


コルテックスの発言が、妙に夢のない言葉だったためか、思わず閉口するワルツとユキ、そしてイブ。

なお、一緒にいた狩人は・・・何故か自分のダガーを胸に抱えて、泣きそうな表情を浮かべながら、ミノタウロスたちに悲しげな視線を向けていたので、コルテックスやワルツの話は聞いていないようであった・・・。


それからコルテックスは、ユキの話を思い出しながら、そのまま言葉を続けた。


「でも、確かに、こういった場所でしか手に入らないお宝、という可能性も否定は出来ないので、探してみるだけの価値はあるかもしれませんね〜。・・・ですが、約束の時間が来てしまったようです」


そう言いながら、腕につけたシンプルなデジタル魔導腕時計を確認するコルテックス。


本来なら、こんなところで道草を喰っていないで、海に行って泳ぎたい・・・けど、宝探しも悪く無い・・・。

そんな副音声が彼女から漏れ出してきていた・・・そんな時であった。


『・・・?!』


急にコルテックスとイブと狩人の3人が、同時にその頭に生えた獣耳を、何かに反応するように動かしたのである。

飛竜も何らかの変化に気づいたのか、その重い首を(もた)げた。


「ん?何かあったの?」


「これは〜・・・拙いかもしれませんね〜」


『・・・えっ?』


急にそんなことを言い出したコルテックスに対して、思わず眉を顰めるワルツとユキ。

イブも、何らかの魔力を感じたようだが、それがどういったものに起因するものなのか分からなかったためか、彼女も首を傾げていた。


そんな3人に対して、何が起ったのかを、狩人がコルテックスの言葉を引き継ぐ形で補足する。


「・・・結界魔法を張られたようだな。どんな種類の結界魔法なのかは分からないが・・・恐らく、面倒な類のものだろうな・・・」


「えーと・・・どういうことですか?」


ワルツの問いかけに、魔力を感知できたものの中では、恐らく最も長い時を生きているはずの飛竜が、その可能性を口にした。


「・・・封印の結界魔法・・・ではないかと」


「なるほど・・・。つまり、私たち、結界の中に閉じ込められた、ということね?」


「可能性としては・・・その可能性が一番高いでしょうな・・・」


そう言って、首を縦にふる飛竜。


・・・そして、最後に口を開いたのは・・・ユキだった。


「あ、そういえば・・・ミノタウロスたちは、自分たちが守るお宝が外に持ち出されないように、結界を張って、侵入者を逃さないようにする、という話を聞いたことがあります。迷宮探検をほとんどしたことがなかったので、今まですっかり忘れていました」


『ちょっ・・・』


ニッコリと笑みを浮かべながら、今更になって重要な事を口にするユキに、物言いたげな視線を向ける一同。


そんなわけで・・・

どうやらワルツたちは、地下の洞窟に封印されてしまったようだ・・・。

GW?

GoWork?


・・・妾は思うのじゃ。

GWになると、よくテレビで見かける大量の人々。

彼ら彼女らは、一体どこから湧いて出てくるというのか・・・。

そして一体、どこにそんな時間があるというのか・・・。

妾には分からぬのじゃ・・・。

え?妾にもこの物語を書いておる時間がある?

・・・もう駄目かも知れぬ。


まぁ、そんなことは置いておいて。

今日の分の補足をするのじゃ!


・・・まぁ、1点だけ。

ワルツたち3人とコルたち5人の計8人が、地下道で何をしておったのか。

そのまとめ、なのじゃ。

・ワルツ 略

・ユキ ワルツの3歩後ろでミノタウロスの伝承ついて考えていた

・狩人 ユキの3歩後ろでミノタウロスを狩れないことについて考えていた

・コル 牧場経営(?)

・イブ 牧場設計(?)

・飛竜 重機

・シラヌイ 技師(バーサーカー状態)

・アトラス 家畜(猿轡装備)


・・・こんな感じなのじゃ。

まぁ、いつも通りじゃの。


というわけで、明日は封印結界をどうにかする、という話を書くのじゃ。

・・・いつになったら、サウスフォートレスを抜けて、南国の砂浜で・・・の話ができるようになるかのう・・・。

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